発達障害グレーゾーンとは?特徴は? 仕事上の困難を解説

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
近年、発達障害グレーゾーンという言葉を聞く機会が増えているかと思います。
あなたは以下のようなことで悩んでいませんか?
- 発達障害グレーゾーンという言葉を聞くけど、どういう意味?
- 発達障害グレーゾーンかもしれない、どんな仕事が向いているのか
このコラムでは、発達障害グレーゾーンの概要や仕事上の困難、対策などについて解説します。
このコラムは主に、発達障害グレーゾーンのある本人、または「自分は発達障害、発達障害グレーゾーンではないか」と思っている本人に向けた内容になっています。
気になる章だけお読みいただいて問題ありません。
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目次
発達障害とは?

発達障害とは、脳の機能的な問題や働き方の違いにより、物事の捉え方や行動に違いが生じることで、日常生活および社会生活を送る上で支障が出る、生まれつきの脳機能障害のことです。(参考: American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、こころの情報サイト「発達障害(神経発達症)」、NHK福祉ポータル ハートネット「そもそも「発達障害」って?|大人の発達障害ってなんだろう? - 大人の発達障害」、宮尾益知・監修『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』、松本卓也、野間俊一・編著『メンタルヘルス時代の精神医学入門 ーこころの病の理解と支援ー』、福西勇夫・山末英典・監修『ニュートン式 超図解 最強に面白い!! 精神の病気 発達障害編』)
発達障害は主に、以下の3つの診断名に分類されます。
- ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)
- ASD(自閉スペクトラム症/広汎性発達障害)
- LD/SLD(限局性学習症/限局性学習障害)
同じ診断名でも、人によって多様な特性が現れるのが発達障害の特徴です。また、いずれかの発達障害のある人は、他の発達障害が併存している可能性もあります。
発達障害の概要や種類、原因、治療方法などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
発達障害グレーゾーンとは?

発達障害グレーゾーンとは、発達障害と同様の特性や傾向がいくつか認められるものの、診断基準を満たすほどではないため、発達障害と診断されるには至らない状態のことです。(参考:姫野桂『発達障害グレーゾーン』)
発達障害グレーゾーンという言葉は、医学的に正式な診断名称ではありません。
複数ある発達障害の診断基準の一部を満たしていないために、発達障害の確定診断をつけることができない状態のことを、発達障害グレーゾーンと表現しているだけです。
発達障害グレーゾーンは症状が軽いという意味ではない

発達障害グレーゾーンは、症状が軽いことを意味するわけではありません。
特性による困りごとはあるものの、発達障害の確定診断が出ないため、周囲からの理解を得づらく、サポートを利用できないこともあります。
例えば、発達障害グレーゾーンのある人は、確定診断を受けていなければ、発達障害を理由に障害者手帳を取得することはできません。このように、発達障害グレーゾーン特有の困難は少なからずあります。
なお、発達障害者支援センターなど、発達障害グレーゾーンのある人でも利用できる発達障害のある人向けの支援機関はあります。困った際にはそちらに相談してみてもよいかもしれません。
発達障害グレーゾーンの二次障害とは?

二次障害とは、主障害に起因して起こる副次的な障害のことです。ここで取り上げている発達障害グレーゾーンの二次障害とは、発達障害グレーゾーンの傾向・特性に伴って発生する精神障害やひきこもりなどの二次的な困難や問題のことを指します。(参考:齊藤万比古『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』、小栗正幸『発達障害児の思春期と二次障害予防のシナリオ』)
発達障害グレーゾーンの二次障害は、うつ病といった精神面に現れることもあれば、暴力などの行動面で現れることもあります。発達障害に関連して起こる二次的な問題の総称です。
なお、発達障害グレーゾーンがあると、必ず二次障害が発生するわけではありません。
発達障害グレーゾーンの傾向・特性が原因で発生する以下のような困難や問題は、発達障害グレーゾーンの二次障害に該当します。
- 周囲とのコミュニケーションが上手く取れずに適応障害になる
- うつ病や不安障害などの精神障害を発症する
- ひきこもり状態になる
二次障害については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
発達障害グレーゾーン自体は障害者手帳取得対象外

障害者手帳の発行には、医師による発行のための診断書が必要です。そのため、診断を受けていない発達障害グレーゾーンのある人は、発達障害を理由に障害者手帳を取得することができません。
障害者手帳とは、一定以上の障害のある人に交付される手帳のことです。
障害者手帳を所持する人は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)の対象となり、さまざまな支援を受けられます。(参考:厚生労働省「障害者手帳について」、e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)
ただし、二次障害としてうつ病などがある場合は、発達障害とは診断されていなくても、症状によっては障害者手帳の一種である精神障害者保健福祉手帳の申請対象となります。
他の病気や障害がなく、発達障害グレーゾーンのみがある場合、障害者手帳を取得することはできないという点は、注意しておきましょう。
障害者手帳については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
発達障害グレーゾーンのある人が抱える仕事上の困難

発達障害の特性によって異なりますが、人によって仕事上で困難になるケースがあります。
仕事をする際は自分が何を苦手としているかを理解しましょう。
あくまで一例ですが、発達障害のある人が抱える仕事上の困難は以下のとおりです。
- 業務の遂行が難しい
- 自分の特性に関する理解を職場で得づらい
- 誰に相談していいかわからない
- 二次障害がある
発達障害のある人が抱える仕事上の困難については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
発達障害グレーゾーンのある人ができる対策:種類別に解説

ASDのある人が仕事上の困難に対してできる対策は、以下のとおりです。
- 曖昧な指示ではなく、具体的な指示を求める
- 話を聞くとき、相手の顔を見てあいづちを打ちながら聞く
- 視線を合わせるのが難しければ鼻のあたりを見る
- あらかじめ「すみませんが、目を見て話すと緊張してしまうんです」と伝える
- 上司に「報告、連絡、相談」をしてよいタイミングをあらかじめ確認しておく
- 予定の変更にパニックになりやすいことを伝え、予定の変更が予想されるときには理由とともに早めに教えてもらえるようにしておく
- 暗黙のルールを明文化して理解する(例:「今度遊びにおいで」「またご飯でも行こう」と言われても、社交辞令の可能性を考慮し、電話やメールで確認を取ってからにする/相手の体型や外見のことは口にしない/話す内容や口調を相手や場面によって切り替えるなど)
- 過敏な感覚をツールでカバーする
- 聴覚過敏の場合、ノイズキャンセリングイヤホンを使う
- 感謝や謝罪の言葉を、スムーズに伝えられるように練習してておく
ADHDのある人が仕事上の困難に対してできる対策は、以下のとおりです。
- 「忘れっぽい」「ミスを防ぎたい」とあらかじめ上司や同僚に伝えた上で、メモを取るようにしておく
- スマホのアラーム機能などを利用して、予定していた作業にリマインドを行う
- 仕事と違うことを考えそうになったときに、顔を洗ったり、背伸びをしたりして自分でストップをかける習慣をつくる予定・指示・作業工程・時間割などを紙に書き出して視覚化し、見てわかるようにする
LD/SLDのある人が仕事上の困難に対してできる対策は、以下のとおりです。
- 会議などで使用する書類は、先に目を通すためにあらかじめ渡してもらう
- 使用したい道具について、あらかじめ周囲に伝えておく
- 電子ファイルのテキストを、自分の得意なフォントや文字幅のテキストに変換する(紙の書類はスキャン→テキスト化→変換する)
- 署名をハンコなどで代用する
- 筆記のメモが苦手なことを伝え、メモはスマホ・タブレット・PCで取る
仕事ができないと悩む発達障害のある人ができる対策については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
まとめ:周囲の理解を得るためにコミュニケーションを取っていくこと

発達障害グレーゾーンのある人は明確な診断をもらっていない分だけ、発達障害のある人とはまた別の苦労を抱えることもあります。
しかし、ご自身の特性を理解して仕事を工夫すること、そして周囲の理解を得るためにコミュニケーションを取っていくことは、発達障害のある人と同様に大切です。
特性をハンデのように感じられることもあるかと思いますが、それもひとつの個性だと受けとめる姿勢が大切です。
発達障害グレーゾーンとはなんですか?
発達障害グレーゾーンとは、発達障害と同様の特性や傾向がいくつか認められるものの、診断基準を満たすほどではないため、発達障害と診断されるには至らない状態のことです。
詳細については、こちらで解説しています。
グレーゾーンってことは、発達障害よりも症状が軽いってことですか?
発達障害グレーゾーンは、症状が軽いことを意味するわけではありません。特性による困りごとはあるものの、発達障害の確定診断が出ないため、周囲からの理解を得づらく、サポートを利用できないこともあります。
詳細については、こちらで解説しています。
監修志村哲祥

しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。
臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。
【著書など(一部)】
『子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数
日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」
監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
監修角南百合子
すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→