発達障害のある人が利用できる就労支援 探すポイントを解説

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
発達障害の人が利用できる就労支援はたくさんあります。
このコラムでは、発達障害のある人が利用できる就労支援機関や就労支援内容、そうした支援を行っている就労支援機関を探すポイントについて解説します。
このコラムを読むことで、あなたの適職に向けた就職・転職活動や、就職・転職してからの安定した勤務に役立つはずです。
ご興味のあるところだけご覧いただいても大丈夫ですが、「他にもこんなにサービスがある」と知ることは今後の安心にもつながります。お時間のあるときに全文をご覧いただくことをオススメします。
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目次
発達障害のある人が利用できる就労支援内容11選
この章では、発達障害のある人が就職・転職活動前から就職・転職活動後までに利用できる就労支援内容について解説します。
すべての就労支援機関で実施しているわけではありません。必要な支援内容に応じて、就労支援機関を検討してみてください。
支援内容①職業相談

就労支援機関では、職業についてのさまざまな相談が可能です。
- 前職で抱いていた悩み
- 自分に向いてる職業・働き方
- 避けた方がよい働き方
就労支援機関に相談することで、特性への理解を深めるとともに、あなたが長く働き続けるための助言を得られるはずです。
支援内容②メンタル面や生活面の相談
直接的に仕事に関係するかどうかに関わらず、メンタル面の相談も可能です。
臨床心理士や公認心理師、精神保健福祉士、社会福祉士などのメンタルヘルスに関連する資格を持つスタッフが在籍している就労支援機関もあります。
- メンタルを安定させる方法
- 自己管理の方法
- 生活を改善する方法
- 自分の考え方のクセ
- 職場や私生活でのコミュニケーション方法
発達障害の特性によっては、二次障害につながることがあります。ぜひ、メンタル面についても相談してみましょう。
支援内容③職業能力開発・職業訓練・スキル習得

仕事に必要な各種スキルを習得できる就労支援も多数あります。学べるスキルの種類や講義方法は、就労支援機関によって大きく異なります。
例えば、以下は、私たち就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)が行っている講義の具体例です。
- 会計:企業分析、簿記試験対策、財務諸表の基礎知識
- 英語:英会話、TOEIC対策、記事の翻訳、英文メール作成
- ライティング:SEO記事の作成、ライティングの基礎知識
- マーケティング:ウェブサイトのアクセス解析、SNS広告作成、Webページ作成
グループワーク形式での講義では、スキルと合わせてコミュニケーションも学ぶことができます。
支援内容④職業体験・インターン
求人元と連携した職業体験・インターンも、就労支援の一つです。
職業体験・インターンでは、その職場に通勤して、実際の仕事に近い内容の業務を行います。
仕事内容や職場の雰囲気があなたに合っていれば、その職場や似た職場への正式なエントリーを検討できるでしょう。
また、それまでの就労支援で身につけた専門的なスキルやコミュニケーション力を実践に応用してみることもできます。
支援内容⑤履歴書・職務経歴書の作成サポート

履歴書・職務経歴書などの各書類は、人の目を通すことで、よりよいものを作成できます。
具体的には、以下のようなものがあります。
- 各書類の基本的な書き方講習
- 実際のあなたやエントリー先に合わせた各書類の添削
発達障害の特性を上手に伝えたい場合や、発達障害の特性を隠したい場合、発達障害の特性に関連して短期離職を繰り返したりしている場合は、これらの就労支援は、より一層役立つでしょう。
支援内容⑥面接対策
面接も、しっかり練習を行うことで、就活の成功は近づきます。具体的には、以下のようなものがあります。
- 基本的なマナー・受け答えの講習
- 一般的な想定問答の作成
- 模擬面接
- 実際のあなたやエントリー先に合わせた対策
発達障害の特性として臨機応変な対応が苦手、言葉の意図を理解しづらいなどがある場合は、こうしたサポートは特に役立ちます。
支援内容⑦求人情報の紹介

一部の支援機関では、具体的な求人情報の紹介を受けられることがあります。
例えば、就労移行支援事業所を通じて、インターン・求人の案内や、会社説明会を行うことがあります。
そうした職場は、一般的に、発達障害への理解が深いと言えます。また、業務や働き方、求める人材などについて、支援機関を通じた確認もしやすいでしょう。
さらに、スタッフから、求人ごとの向き・不向きやインターンに参加した方がいいかどうかなどのアドバイスも受けやすいはずです。
自分で求人を探すことも大切ですが、こうした紹介による出会いで、あなたにとっての適職が見つかる可能性もあるということです。
支援内容⑧リワーク
リワークとは、「return to work」の略で、病気や障害が原因で休職中の人を対象に行う、復職や転職、再就職に向けたリハビリテーションのことです。リワークプログラムと同じ意味で、復職支援プログラムや職場復帰支援プログラムという名称が使われることもあります。
リワークは、一般的には、休職中の人が利用対象となることが多いようですが、一部、退職・離職した人が対象になることもあります。
ただし、実施する支援機関によっては、退職・離職した人にも同様のプログラム、または専用のプログラムを行っていることもあります。(参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「職場復帰支援についてよくいただくご質問への回答」、メンタルクリニックいたばし「リワークプログラム案内」、一般社団法人日本うつ病リワーク協会「リワークプログラムについて」)
リワークについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
支援内容⑨トライアル雇用

トライアル雇用とは、就職・転職に困難を抱える人を原則3ヶ月間、試行雇用する制度のことです。その人の能力を見極めて、期間の定めのない雇用に移行することを目的としています。(参考:厚生労働省「トライアル雇用」)
就職・転職を希望する病気や障害のある人や職歴に空白がある人、就労経験が少ない人などが対象です。試用期間中に仕事・職場の相性を見極めることができ、スキルも身につけることができます。もちろん、賃金も支払われます。
トライアル雇用後には、8割近くの人が期間の定めのない雇用に移行しています。(参考:厚生労働省「求職者の方へ 「トライアル雇用」に応募してみませんか?」、厚生労働省「事業主の方へ トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)のご案内」)
トライアル雇用については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
支援内容⑩職場定着支援
職場定着支援とは、病気や障害のある人が、就労先の労働環境や業務内容に順応し、長く働き続けられるようにサポートする支援制度のことです。
この仕組みがあることで、就職者は、その職場でより長く、より快適に働き続けることができるようになります。
サービスの種類によっては、職場の業務に関わる指導・助言だけでなく、生活リズムや体調の管理などの生活面のサポートも受けられます。
就労移行支援事業所の場合、就労移行支援事業所を通じて就職した人と職場の間に入り、現在の状況や必要なサポートなどを話し合っていく仕組みがあります。
職場定着支援については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
支援内容⑪就労支援デイケア

就労支援デイケアとは、就労を目指す人を対象とするデイケアのことです。(参考:東京都福祉局「就労/進学・復学コース(デイケア)」)
目的に合わせて、体力や集中力の獲得、病気や障害の対処法の習得、コミュニケーションのスキルアップなどを目指します。
就労支援デイケアは、一部の精神科デイケアなどで利用できます。
発達障害のある人が利用できる就労支援機関

この章では、発達障害のある人が利用できる就労支援機関を紹介します。
- ハローワーク(公共職業安定所)
- 転職エージェント
- 就労移行支援事業所
- 障害者就労支援センター
- 地域障害者職業センター
- 地域若者サポートステーション(サポステ)
- 職業能力開発校
- キャリア形成・リスキリング支援センター
- 発達障害者支援センター
- 精神保健福祉センター
- 基幹相談支援センター
- ジョブコーチ(職場適応援助者)
- 障害者就業・生活支援センター
- 就労移行支援事業所
発達障害のある人が利用できる就労支援機関については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
発達障害のある人が就労支援機関を探すポイント5選
就労支援の内容や実施する支援機関はたくさんあります。そのため、自分に合った就労支援機関を見つけることが大切です。
この章では、発達障害のある人が就労支援機関を探すポイントについて解説します。
ただし、ここで解説する内容はあくまで一般論です。
支援機関に相談するなかで方向性が定まっていくこともよくある話です。あせらず、じっくりとあなたに合う支援機関を見つけていきましょう。
ポイント①利用可能かどうか

まずは、あなたがその就労支援を利用可能かどうかを確認しましょう。
WEBサイトなどに記載されている情報だけで判断できる部分もありますが、実際には利用条件には幅があることもあります。
利用条件や利用料金などを、お住まいの自治体の担当する部署・窓口や支援機関に問い合わせてみるといいでしょう。
あなたの状況や就労支援の種類によっては、医師や自治体の許可が下りたら利用可能になる可能性もあります。
また、仮に希望する就労支援を利用できない場合、利用可能な就労支援を紹介されることもあります。
ポイント②求める支援内容があるか
就労支援機関ごとに、実施している就労支援の内容が大きく異なります。
あなたの求める支援内容があるかどうかを確認しましょう。
- 直接的な求人紹介があるか
- 実際の就職活動の際には、どのようなサポートがあるか
- 学べるスキルの種類はどの程度あるのか
- どの程度のレベルのスキルを学べるのか
- どれくらいの頻度で利用できるか
ポイント③雰囲気や方向性の相性が合いそうか

就労支援機関ごとに、その雰囲気や方向性が大きく異なります。
あなたにその支援機関の雰囲気や方向性の相性が合いそうかどうか、見学や体験などを行い確認しましょう。
- 和やかな雰囲気か
- ビジネスライク・事務的な雰囲気か
- 障害者雇用に力を入れているのか
- 一般雇用にも力を入れているのか
- カリキュラムが明確に定められているのか
- どの程度柔軟か
- 他の利用者との交流があるか、ある場合多いのか、少ないのか
ポイント④希望する職種の就職実績はどうか
就労支援機関ごとに、就職実績が大きく異なります。
現時点で希望する仕事や働き方がある場合、その就職実績の状況を確認しましょう。
ただし、現時点で実績が少ない場合でも、あなたの希望職種や支援機関の支援内容、求人状況などが変わっていく可能性はあります。
また、実績以外の部分があなたにピッタリ合っていることもあるでしょう。
他のプラス面も考慮にいれて、総合的に検討することをオススメします。
ポイント⑤発達障害の特性に対する配慮があるか

就労支援機関と一言で言っても、すべての支援機関が発達障害の特性に理解・配慮があるわけではありません。
自分にとってベストな選択をするためには、発達障害の特性に理解・配慮がある就労支援機関を探すのがオススメです。
発達障害のある人が利用できる支援機関については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
就労支援とは?
この章では、就労支援の概要などについて解説します。(参考:厚生労働省「障害者雇用促進法の概要」、文部科学省「第8章 障害者の自立支援と地域福祉の推進」、文部科学省「発達障害者雇用促進法」)
就労支援の概要

就労支援とは、病気やケガ、障害などによって、就労に関する困難を抱えている人に対して、就職や社会生活をサポートする目的で行われるサポートのことです。(参考:新保美香「就労支援の基本的な考え方〜基礎編〜」、新保美香「就労支援の基本的な考え方」)
公的には、障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)に基づいて行われる福祉サービスのことを指します。
このコラムでは、公的機関、民間機関を問わず、あらゆる主体が行う就職や社会生活をサポートする目的で行われるサービス全般を、就労支援として解説します。(参考:e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)
公的な就労支援は、主に就労移行支援と就労継続支援(A型・B型)、就労定着支援の3つに分けられます。
- 就労移行支援:働くために必要な就労スキルを学ぶための支援
- 就労継続支援(A型・B型):実際に働く場所を提供する支援
- 就労定着支援:長く働き続けるための支援
それぞれの状況によって適したサービスは変わってきます。まずは、発達障害のある人の就職や社会生活のためには、さまざまなサービスがあることを知っておいてください。
就労支援の利用料金
就労支援の利用にあたっては、サービス内容や世帯の収入状況などによって、料金が必要なことがあります。
ただし、収入状況によって利用料金が減額される場合や、相談のみなら無料などの条件付きで無料になる場合などもあります。
また、就労継続支援(A型・B型)の場合は、工賃・賃金をもらいながら利用できます。
就労支援の利用条件

就労支援を利用できる条件は、支援機関やサービス内容によって異なります。発達障害のある人の場合、原則的には、発達障害であることを証明する専門の医師の診断書が必要です。
支援機関によって、ほかの利用条件が設けられていることもあります。
利用条件の例としては、以下のようなものがあります。
- 年齢:◯歳から◯歳までが利用可能など
- 目的:一般企業への就職を希望している方が利用可能など
- 利用期間:最長で24か月の利用が可能など
- 就労状況:現在離職中であることなど
- その他:自治体による利用許可が必要など
発達障害とは?

発達障害とは、脳の機能的な問題や働き方の違いにより、物事の捉え方や行動に違いが生じることで、日常生活および社会生活を送る上で支障が出る、生まれつきの脳機能障害のことです。(参考: American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、こころの情報サイト「発達障害(神経発達症)」、NHK福祉ポータル ハートネット「そもそも「発達障害」って?|大人の発達障害ってなんだろう? - 大人の発達障害」、宮尾益知・監修『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』、松本卓也、野間俊一・編著『メンタルヘルス時代の精神医学入門 ーこころの病の理解と支援ー』、福西勇夫・山末英典・監修『ニュートン式 超図解 最強に面白い!! 精神の病気 発達障害編』)
発達障害は主に、以下の3つの診断名に分類されます。
- ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)
- ASD(自閉スペクトラム症/広汎性発達障害)
- LD/SLD(限局性学習症/限局性学習障害)
同じ診断名でも、人によって多様な特性が現れるのが発達障害の特徴です。また、いずれかの発達障害のある人は、他の発達障害が併存している可能性もあります。
発達障害の概要や種類、原因、治療方法などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
まとめ:就労支援を利用し、あなたに合った就職先を探していきましょう

発達障害のある人の就労支援を行う支援機関はたくさんあります。
支援機関に相談することで、よりあなたに合ったスキルを身につけたり、働きやすい就職先を探したりすることができます。
ひとりで抱え込まずに、ぜひ、就労支援を利用してみてください。あなたに合った就職先を探していきましょう。
あなたが希望する仕事で就労できることを祈っています。
就労支援とは何ですか?
就労支援とは、病気やケガ、障害などによって、就労に関する困難を抱えている人に対して、就職や社会生活をサポートする目的で行われるサポートのことです。
詳細については、こちらで解説しています。
発達障害のある人が利用できる就労支援内容を教えてください。
以下が考えられます。
- 職業相談
- メンタル面や生活面の相談
- 職業能力開発・職業訓練・スキル習得
- 職業体験・インターン
- 履歴書・職務経歴書の作成サポート
- 面接対策
- 求人情報の紹介
- リワーク
- トライアル雇用
- 職場定着支援
- 就労支援デイケア
詳細については、こちらで解説しています。
監修志村哲祥

しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。
臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。
【著書など(一部)】
『子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数
日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」
監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
監修角南百合子
すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→