発達障害のある人に向いてる仕事を紹介 ADHD・ASD・SLD別に解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
あなたは、発達障害の特性に悩む中で、どうすれば特性とうまく付き合いながら仕事をしていくことができるのか、考えていらっしゃるのではないでしょうか。
発達障害のある人の場合、向いてる仕事、向いてない仕事が特にはっきりと分かれる場合があります。向いてる仕事に就職した場合、集中力や発想力などの特性を活かせて、楽しく充実した社会人生活を送れる可能性が高まります。
この記事では、発達障害のある特性による仕事の悩み・悩みへの対処法や向いてる/向いてない可能性がある仕事、適職の探し方などをお伝えします。
この記事を読むことで、向いてる仕事・適職を見つけやすくなるはずです。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、発達障害のある人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
発達障害のある人に向いてる仕事:ADHD・ASD・SLD別に紹介
ここからは具体的に、発達障害のある人に向いてる可能性がある仕事(職業)の例を見ていきましょう。
発達障害の特性には、次のように、向いてる仕事に生かすこともできるのです。
- 興味のある仕事に集中力を発揮する
- 新しいアイデアを多く思いつく
- 行動力がある
発達障害の特性(強み・弱み)は、共通する部分がある一方、人によって異なります。また、各仕事の環境も、それぞれの職場や業務内容によって異なります。
先ほどの「職場での対策」と同じく、これから紹介する仕事はあくまで例です。「この仕事が絶対に向いている」「この仕事じゃないと絶対に向いてない」という意味ではありません。
まずは、「発達障害があっても、向いている仕事は見つかる」という安心材料にしてください。
その上で、「実際のあなたに向いてる仕事」は、「それぞれの仕事がなぜオススメなのか」「実際のあなたに向いていそうか」「環境の合う求人がありそうか」などについて、就労移行支援施設や就職エージェントなどにも相談しながら検討することで、きっと見つかるはずです。
なお、発達障害のある人を取り巻く雇用環境などにつきましては、コラムに書いています。ご興味がありましたらご覧ください。
ADHDの人に向いてる仕事
ADHDの人に向いてる可能性がある仕事を、「不注意の傾向が強い人」「多動・衝動性の強い人」向けに2つに分けてご紹介します。
(1)不注意の傾向が強い人に向いてる仕事例3選
不注意の傾向が強い(アイデア、考えがたくさん浮かんでくる)人には、以下のようなクリエイティブ系の仕事で活躍できるかもしれません。
- デザイナー
- アニメーター
- イラストレーター
不注意型ADHDの人の特性に、「作業中でも取り留めのない考えやアイディアが浮かびやすい」があります。上の3つのような仕事であれば、そうした発想力や独創性を活かせる可能性があります。
(2)多動・衝動性の傾向が強い人に向いてる仕事例4選
多動・衝動性の傾向が強い人には、テキパキと行動できる性質を活かした以下のような仕事が合うかもしれません。
- 営業職
- ジャーナリスト
- カメラマン
- 起業家
上記のような仕事は、一か所に留まることが少ない仕事のため、多動・衝動性の傾向が強い人に向いてる場合があるのです。
「営業職として営業先を回る」「ジャーナリストとして取材に行く」「カメラマンとして撮影場所を転々とする」「起業家として様々な事業を立ち上げる」などが、特性の活かし方として考えられます。
ただし、多動・衝動性の傾向が強い人の中には、段取りを頭の中で組み立てながら、並行して作業をするのが苦手な人も多いです。
そのため、「作業のリスト化」や「自分専用のマニュアルを作る」といった仕事の工夫が必要になってくるという点は覚えておいてください。
(3)興味のあることに集中できる人に向いてる仕事例3選
不注意型、多動・衝動型のいずれでも、ADHDの人の中には興味のあることに対する集中力がとても高い人がいます。
興味のある分野に高い集中力を発揮できる人には、以下のような仕事が向いてる可能性があります(これは、次項のASDの人も同じです)。
- プログラマー
- エンジニア
- 研究者
上記のような仕事は、いずれも専門性が高いという特徴があります。
ADHDの人は、関心分野と職種の専門性が合致したときには、素晴らしい成果を発揮できる可能性があります。
発達障害に関する著書を多く残している福島学院大学大学院教授の星野仁彦先生は、専門的な資格を取ることでなれる専門的技術職こそがADHDの人の一番の適職だと明言しています(参考:星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち〈職場編〉』)。
もちろん、興味の方向性によっては、上記例以外にも適職はあるでしょう。関心分野への専門知識や技能を活かして、作曲家や音楽家、ゲームやマンガのクリエイターなどの芸術方面へ進む人もいらっしゃいます。
大切なのは、次の2つを意識することです。
- 自分が何に関心を持っているのかを吟味すること
- 自分の特性を理解して、苦手なことを避けること
ASDの人に向いてる仕事
ASDの人「は、以下のような仕事が向いてる可能性があります。(参考:『図解よくわかる大人の発達障害』)
- 会計士
- カメラマン
- 駅員
- 動物の調教師
- アニメーター
- プログラマー
- 数学者
- 校正者
ASDの人は、上記のような、「決まった作業手順があり、それに集中して取り組む」といった仕事が向いてることが多いです。
「ASDと向いてる仕事」については、コラムで詳細に紹介しています。よければご覧ください。
SLDの人に向いてる仕事
SLDの人の場合、苦手部分を補助道具(スマホ・タブレットなど)でサポートできる場合、特に支障なく仕事できることが多いです。
よって、仕事を選ぶ際には、「そういった面への理解がある職場かどうか」という点をチェックする必要があるでしょう。
- メモをスマホやタブレットで取ることができるか
- 書類を紙ではなくテキストデータでもらえるか
- 提出書類などを手書きでなくPCやスマホで作成してもいいか
補足①:「一人でできる仕事が向いてるかどうか」という観点もアリ
発達障害の特性が次のように現れている人は、「一人でできる仕事」が向いてる可能性があります。
- 暗黙の了解や空気を察するなどの、人とのコミュニケーションが難しい
- 周りに合わせて、柔軟に対応を変えることが難しい
- 話し声や環境音が気になり、集中できない
- 集中すると周りが見えなくなる
もちろん、「完全に一人で完結する仕事」はありません。ですが、「他の職種と比べると、人との関わりが少ない仕事」というのはあります。例えば、以下のような職種です。
- ITプログラマー
- エンジニア
- デザイナー
- 研究者
特に「ADHDとプログラマー」の関係にご興味のある人は、下記コラムをご覧ください。
また、異動の可能性がある会社員ではなく、個人事業主(フリーランス)や起業の形で、「その仕事」を専門的に行うという方法もあります。ただしその場合には、登記・税金・社会保険関係などに関係する業務も行う必要がある点には注意が必要です。
補足②:「チームで進める仕事が向いてるかどうか」という観点もアリ
前項とは逆に、次のような特性を持つ方もいらっしゃるでしょう。
- 仕事の進め方を柔軟に変えることが苦手
- 自由な発想を求められる仕事が苦手
こうした方は、「決まった業務を決まったとおりに、チームで縦割りに分担して複数チェックを行う仕事」が向いてる可能性があります。やや具体的すぎるかもしれませんが、次のような職種が考えられます。
- 金融機関の事務受託センター
- 品質調査・分析センター
- 成分分析センター
発達障害のある人に向いてない仕事:ADHD・ASD・SLD別に紹介
続いて、反対に、発達障害のある人には向いてない可能性のある仕事を紹介します。
前章同様に、「実際のあなたの特性」や「実際の職場」によって、絶対に向いてない」というわけではありません。何度も繰り返すとおり、「実際のあなた」への向き不向きは、サポート団体などと話しながら確認していきましょう。
①ADHDの人に向いてない仕事
一般的に、ADHDの人には、スケジュール管理を求められる仕事や事務仕事が向いてないと言われています。代表的なものは、下記の3つです。
- 秘書
- 経理
- 総務
細かなスケジュール調整が必要となる仕事は、ADHDの人には向いてないことがあります。
細かな作業が必要です。また、淡々とした作業をこなすことが基本となる上に財務管理を行うため、ミスに厳しい職種です。
細かな作業が必要です。業務内容が多岐にわたるため、一見するとADHDの人の多動性を活かせるように思えるかもしれません。ですが、マルチタスクをする必要があるので、ADHDの場合は作業効率がガクンと落ちることがあるのです。
いずれも内勤なために行動力を活かせない、という点もADHDの人にはネックになる可能性があります。
②ASDの人に向いてない仕事
一般に、ASDの人は、対人コミュニケーション、マルチタスクが多い仕事が向いてないと言われます。代表的なものとして、以下の3つが考えられます。
- 営業
- 接客
- 総務
対人コミュニケーション能力が求められる仕事の代表例です。
営業や接客に比べると、初対面の人とのコミュニケーションは少ないかもしれませんが、「総合的に組織の業務を扱う仕事」という名前の通り、マルチタスク能力が求められます。
③SLDの人に向いてない仕事
SLDの人は、適切なサポートや補助道具が使用できれば、向いてない仕事として挙げられるものは基本的にありません。
しかし例えば、以下のようなパターンはあまりオススメできないかもしれません。
- 読字障害(読むことに対して難しさがある学習障害)の人が、書類をたくさん読む仕事に就く
- 書字障害(書くことに対して難しさがある学習障害)の人が、書類の手書きが多い仕事に就く
発達障害のある人の仕事の探し方・選び方
最後に、この章では、発達障害のある人が自分に合った仕事を探すためにできることを紹介します。
適職探しをする上では、専門機関や支援機関の利用がオススメです。発達障害のある人が利用できる支援機関は、たくさんあります(無料で利用できるものもたくさんあります)。
周囲の力を借りながら、あなたが能力を発揮しやすい仕事を探しましょう。
方法①医師やカウンセラーに相談する
まずは、医師やカウンセラーに相談することが大切です。
「特性に関する悩みならともかく、仕事の悩みを医師に話していいの?」と思うかもしれません。しかし、発達障害に伴って生じる悩みである以上、専門医はそういった相談も受けつけています。安心して悩みを打ち明けてみてください。
継続して診てもらっているかかりつけ医であれば、あなたの特性にも詳しいので、あなたに合ったアドバイスを得られるでしょう。
また、臨床心理士・公認心理師によるカウンセリングを受けるのも一つの手段です。仕事に関する悩みも相談できます。特に発達障害に理解の深いカウンセラーは、日本臨床心理士会のウェブサイト「臨床心理士に出会うには」から検索可能です。
方法②専門の支援機関を利用する
2つ目は、「専門の支援機関を利用する」です。発達障害のある人が利用できる公的な支援機関の例として、以下が挙げられます。
- 発達障害者支援センター
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
確定診断が下りていなくても、ADHDの傾向に伴う困難があれば、相談を受け付けています。全国の一覧は、国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害者支援センター・一覧」をご覧ください。
仕事に関するお悩みや職業相談を受け付けています。特に仕事のことでお困りの方に向いてるかもしれません。 全国の一覧は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センター」、厚生労働省「障害者就業・生活支援センター一覧」をご覧ください。
いずれの支援機関も、基本的には無料でサービスを提供しています。
また、「ハローワーク」や「職業訓練校」などで、専門的な職業訓練を受けながら、「どんな仕事が自分の適職なのか」を考えるのもよいでしょう
ハローワークを通じて、障害を持つ人に特化した職業訓練につながることもできます。(参考:厚生労働省「ハロートレーニング(障害者訓練))。
どの支援機関がよいかわからない場合には、通常は、お住まいの市区町村役所の障害者福祉の担当部署が窓口になっていますので、そちらに問い合わせてみてください。
他の団体も含めて、発達障害のある人が利用できる就労支援(就職・労働のためのサポート)は、下記コラムにまとめています。よければご覧ください。
方法③就労移行支援事業所を利用する
就労移行支援事業所では、病気や障害と向き合いながら一般企業への就職を目指す人向けに、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスを提供しています。(参考:厚生労働省※PDF「就労移行支援事業」)
就労移行支援事業の対象となるのは、以下の条件を満たす人です。
- 原則18歳から65歳未満であること
- 一般企業への就職または仕事での独立を希望していること
- 精神障害、発達障害、身体障害、知的障害や難病を抱えていること
上記を満たすなら、障害者手帳を所持していなくても利用可能です。
具体的な支援内容は事業所によって異なりますが、あなたの障害特性に合わせた「個別支援計画」に基づいて、一般的には次のようなサポートを行います。
- 職業相談(どんな仕事が向いてるかなど)
- メンタル面のケア
- 専門的なスキルの講習
- 実際の就職活動の支援(向いてそうな求人の紹介、履歴書作成のサポート、面接練習など)
- インターン先の紹介
相談は無料ですので、実施内容に興味がある事業所が見つかったら、問い合わせてみることをオススメします。
就労移行支援事業所の詳細は、下記コラムをご覧ください。
事業所によっては、就職後の職場定着支援も行っています。
「あなた(労働者)」と「職場」の間に入って、仕事での悩みや希望などを調整します。障害者職業総合支援センターの調査研究によれば、職場定着支援を受けた人とそうでない人で、1年後の職場定着率に20%近い差が出ていますので、定着に向けたサポートも重要です。(出典元:障害者職業総合支援センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」)
方法④障害者枠を検討してみる
最後は「障害者枠を検討してみる」です。求人・雇用の中には、「障害者枠」というものがあります。
文字どおり、「障害者を対象とする求人・雇用枠」のことです(障害者枠ではない求人・雇用のことは「一般枠」と言います)。
障害者枠雇用であれば、発達障害の特性や程度に応じて、職場から業務内容や業務量への配慮を得ながら働くことができます。特に障害者雇用枠が多めに用意されている「特例子会社」という職場もあります。
これまで「一般枠」で働いてきた発達障害のある人は、「障害者枠」に移ることで、これまでと同じ仕事(業界・業種)であっても、仕事のつらさを軽減できるかもしれません。
一方で、障害者枠は、一般枠に比べると、給与や昇進などのキャリア面において、水準が低い場合もあります。
障害者枠と一般枠のどちらにするかは、あなたの発達障害の特性や程度、経済状況、生活と仕事の優先順位などを総合的に考えて判断することが大切です。
雇用枠を考える際にも、医療機関や支援機関への相談をオススメします。
なお、障害者枠で働くためには、通常は障害者手帳(発達障害の場合「精神保健福祉手帳」)が必要です。
障害者枠・一般枠・特例子会社・障害者手帳の詳細は、それぞれ下記のコラムにまとめていますので、ご興味がありましたらご覧ください。
改めて、発達障害とは?
ここまで、発達障害のある人に向いてる仕事・適職を紹介してきました。
この章では改めて、発達障害の概要を紹介します。(参考:『精神診療プラチナマニュアル第2版』『発達障害のある子と家族のためのサポートBOOK 小学生編』、厚生労働省「発達障害」)
①発達障害とは「生まれつきの特性」のこと
発達障害は、生まれつきみられる脳の働き方の違いにより、幼児のうちから行動面や情緒面に特徴がある状態です。
発達障害は、先天的な(=生まれつきの)ものですので、しつけ、育て方、心理的な病気を原因とするものではありません。
また、「大人になってから発達障害になる」ということはありません。
よく言われる「大人の発達障害」とは、「大人になるまでは『困難』がなかった」、または「『困難』はあったけれど診断を受けていなかった」などの状態を意味します。
なお、一口に発達障害といっても、その特性には様々な種類があり、多くの場合はそれぞれの特性が混ざり合って現れます。
②発達障害かどうかは、医師だけが診断できる
「ある人が発達障害かどうか」は、医師だけが診断できます。まだ診断を受けていない方は、発達障害の診断を行っている心療内科や精神科への受診をオススメします。
発達障害の知識を持つ専門医に診てもらうことで、ご自身の特性に対する対処法をより考えやすくなると思います。診断が出ることで「自分の『困難』の原因がわかって安心した」と言う方は珍しくありません。
一方で、「自分が障害を持っていると診断されるのが怖いから、病院には行きたくない」と思う方もいらっしゃいます。
確定診断が出るのが不安な方は、「病院で検査を受けるべきか」というところから、サポート団体に相談することをオススメします。(前述の「専門の支援機関を利用する」をご覧ください)特性の度合いによっては、診断が出なくても仕事や日常生活をうまく送れるようになる工夫もあります。
その上で、行ってみた病院の診断に納得できなかったり、その後の方針が合わなかったりしたときは、別の病院に行く(セカンドオピニオンを求める)こともできます。
③発達障害のグレーゾーンとは
発達障害グレーゾーンとは、「発達障害と同じような特性があるものの、特性が診断基準に達するほどではない層」を意味する俗称です。
「発達障害の特性にはムラがある」という考えが、2013年の、アメリカ精神医学会による『DSM 精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版』刊行以来、浸透しています。
そうした中で、「特性はあるものの、発達障害の確定診断が下りるほどではない」という「グレーゾーン」の存在が知られるようになったのです。
グレーゾーンの人たちは、発達障害の診断が下りている人とはまた異なる、悩みや生活上の困難を抱えています。
特に「発達障害グレーゾーンと仕事」の詳細は、下記コラムに書いています。ご興味がありましたらご覧ください。
発達障害のある人の仕事の悩みと対応法:ADHD・ASD・SLD別に紹介
この章では、発達障害の種類ごとに「特性による仕事(私生活)でのよくあるお悩み」と、「お悩みへの対応法」をお伝えします。
①前提:あなた一人でお悩みを抱え込まないで
発達障害の特性の現れ方は一人ひとり異なります。ですので、ご紹介する対応があなたにピッタリ合うとは限りません。
ご紹介する悩みや対応例は、まず、「自分以外にも似た悩みを抱える人がたくさんいる」「ということは、対応法もたくさんあるはず」という安心材料にしてください。
その上で、実際の「あなたのための対応」は、医療機関(心療内科・精神科)や発達障害のサポート団体(就労移行支援施設や発達障害者支援センターなど)と話をしていくうちに、より具体的に見つかっていくと思います。
②ADHDの人の困難
ADHD(注意欠如・多動症)は、「不注意」「多動性・衝動性」が強く、その行動が生活上で支障をきたす状態のことを言います。
仕事や私生活での悩みの例には、次のようなものがあります。
- 忘れ物や記入漏れなどのミスが多い
- 確認作業がうまくいかない
- 整理整頓が苦手で物を失くすことが多い
- マルチタスクがうまくこなせない
- 気が散りやすく、貧乏ゆすりなど常に身体を動かしていないと落ちつかない
- 他人の意見に耳を傾ける前に発言したり行動したりする
- 優先順位をつけることが苦手で、場当たり的になりやすく、締切を守りづらい
- 場に合わせた発言をするのが難しい
③ADHDの人が仕事の場面でできる対策
ADHDの人が仕事の場面でできる対策には、次のような例があります。(参考:『図解 よくわかる大人の発達障害』)
- 「忘れっぽいので」「ミスを防ぎたいので」とあらかじめ上司や同僚に伝えた上で、メモを取るようにしておく
- スマホのアラーム機能などを利用して、予定していた作業にリマインドを行う
- 仕事と違うことを考えそうになったときに、自分でストップをかける習慣をつくる(顔を洗う、背伸びをするなど)
- 予定・指示・作業工程(手順)・時間割などを紙に書き出して視覚化し、見てわかるようにする
なお、マルチタスクとケアレスミスの対策については、以下のコラムで詳しく解説していますので、ご興味がありましたらご覧ください。
④ASDの人の困難
ASD(自閉スペクトラム症、旧名称として、自閉症・アスペルガー症など)とは、社会性・コミュニケーション・想像力の3つにおいて特性があり、日常生活に困難を感じるものです。
- 場の状況や上下関係に気が回りづらく、TPOに合わせた行動が難しい
- 周囲から、「話を聞いていない」と誤解されやすい
- 質問の意図、身振り、比喩、冗談、「本音と建前」などを理解しづらい
- 報告、連絡、相談がうまくできない
- 決まった順序に強いこだわりがある
- 予定が変わるとパニックになりやすい
- 暗黙のルールなど明示されてない決まりに疎い
- 感覚過敏がある(聴覚過敏の場合、大きな音が苦手など)
⑤ASDの人が、仕事の場面でできる対策
ASDの人の悩みの対処法として、以下のようなものが考えられます。(参考:『図解 よくわかる大人の発達障害』
- 話を聞くとき、相手の顔を見て相槌(あいづち)を打ちながら聞く(視線を合わせるのが難しければ鼻のあたりを見る、あらかじめ「すみませんが、目を見ながら聞くとうまく理解できなくなってしまうんです」と伝えるなど)
- 上司に「報告、連絡、相談」をしてよいタイミングをあらかじめ確認しておく。
- 予定の変更にパニックになりやすいことを伝え、予定の変更が予想されるときには理由とともに早めに教えてもらえるようにしておく
- 暗黙のルールを明文化して理解する(例:「今度遊びにおいで」「またご飯でも行こう」と言われても、社交辞令の可能性を考慮し、あらかじめ電話やメールで確認を取ってからにする/相手の体型や外見のことは口にしない/話す内容や口調を相手や場面によって切り替えるなど)
- 過敏な感覚をツールでカバーする(聴覚過敏の場合、ノイズキャンセリングイヤホンを使うなど)
- 感謝や謝罪の言葉を、テンプレート化して頭に入れておく
「ASD特性の職場での対処法」は、コラムに詳しく書いています。ご興味がありましたらご覧ください。
⑥SLDの人の困難
SLD(学習障害)とは、「読む・聞く・話す・書く・計算する・推論する」といった6つの能力の1つ以上に、習得や使用の困難がある発達障害です。
どの能力に特性・困難があるかは、人によって異なります。
- 細かい文字の多い書類や苦手なフォントで書かれた書類を読むことが大きな負担になる
- 署名やメモを手書きできない
⑦SLDの人が、仕事の場面でできる対策
SLDの人が仕事の場でできる対策には、次のようなものが考えられます。
- 会議などで使用する書類は、先に目を通すためにあらかじめ渡してもらう
- 使用したい道具(リーディングトラッカーやタブレット)について、あらかじめ周囲に伝えておく
- 電子ファイルのテキストを、自分の得意なフォントや文字幅のテキストに変換する(紙の書類はスキャン→テキスト化→変換する)
- 署名をハンコなどで代用する
- 筆記のメモが苦手なことを伝え、メモはスマホ・タブレット・PCで取る
まとめ:「自分の特性や興味を理解すること」が大切
発達障害の特性と、特性に関連して向いてる仕事・向いてない仕事などをお伝えしてきました。
発達障害は、一人ひとり特性の現れ方が異なります。ですので、適職と思える仕事を探すためには、「自分の特性や興味を理解すること」が大切です。
そのためにも、医療機関や就労移行支援などの支援機関をご活用いただけたらと思います。
この記事が、発達障害のあなたの仕事・適職探しに役立ったなら幸いです。
発達障害の自分に向いている仕事を知りたいです。
例として、次のようなものが考えられます。「ADHDの人には、営業職・ジャーナリスト・カメラマン」、「ASDの人には会計士・プログラマー・校正者」。理由や他の仕事も紹介しますので、詳細はこちらをご覧ください。
発達障害の自分に向いてない仕事を知りたいです。
例として、次のようなものが考えられます。「ADHDの人には、秘書・経理・総務」、「ASDの人には営業・接客・総務」。詳細はこちらをご覧ください。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
執筆西村二架
にしむら・にか。精神保健福祉士。
1992年生まれ。関西学院大学文学部卒業後に京都医健専門学校で学び、2019年に国家資格・精神保健福祉士資格を取得。2018年8月から、キズキ共育塾(不登校・中退・発達障害・社会人などのための個別指導塾)で講師として勤務。現在は主任講師として国語・数学・英語・小論文・面接の学習支援およびメンタル支援を担当。また、うつや発達障害の方々のための就労移行支援事業所キズキビジネスカレッジでも英語などを教える。2024年1月現在、TOEIC920点を所持。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→