発達障害の二次障害とは? 抱える悩みや予防策、対処法を解説

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
発達障害のある人の中には、発達障害の二次障害に悩む人が少なくありません。
あなたも、発達障害の二次障害による苦労や症状に悩んではいないでしょうか?
このコラムでは、発達障害の二次障害の概要や発達障害の二次障害のある人が抱える悩み、予防策、対処法について解説します。あわせて、発達障害の二次障害のある人が利用できる支援機関を紹介します。
このコラムを読むことで、きっとこれまでよりも生きやすくなるはずです。
発達障害の二次障害にお悩みのあなたへ
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目次
発達障害とは?

発達障害とは、脳の機能的な問題や働き方の違いにより、物事の捉え方や行動に違いが生じることで、日常生活および社会生活を送る上で支障が出る、生まれつきの脳機能障害のことです。(参考: American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、こころの情報サイト「発達障害(神経発達症)」、NHK福祉ポータル ハートネット「そもそも「発達障害」って?|大人の発達障害ってなんだろう? - 大人の発達障害」、宮尾益知・監修『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』、松本卓也、野間俊一・編著『メンタルヘルス時代の精神医学入門 ーこころの病の理解と支援ー』、福西勇夫・山末英典・監修『ニュートン式 超図解 最強に面白い!! 精神の病気 発達障害編』)
発達障害は主に、以下の3つの診断名に分類されます。
- ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)
- ASD(自閉スペクトラム症/広汎性発達障害)
- LD/SLD(限局性学習症/限局性学習障害)
同じ診断名でも、人によって多様な特性が現れるのが発達障害の特徴です。また、いずれかの発達障害のある人は、他の発達障害が併存している可能性もあります。
発達障害の概要や種類、原因、治療方法などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
発達障害の二次障害とは?

二次障害とは、主障害に起因して起こる副次的な障害のことです。ここで取り上げている発達障害の二次障害とは、発達障害や発達障害グレーゾーンの傾向・特性に伴って発生する精神障害やひきこもりなどの二次的な困難や問題のことを指します。(参考:齊藤万比古『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』、小栗正幸『発達障害児の思春期と二次障害予防のシナリオ』)
発達障害の二次障害は、うつ病といった精神面に現れることもあれば、暴力などの行動面で現れることもあります。発達障害に関連して起こる二次的な問題の総称です。
なお、発達障害があると、必ず二次障害が発生するわけではありません。
発達障害や発達障害グレーゾーンの傾向・特性が原因で発生する以下のような困難や問題は、発達障害の二次障害に該当します。
- 周囲とのコミュニケーションが上手く取れずに適応障害になる
- うつ病や不安障害などの精神障害を発症する
- ひきこもり状態になる
発達障害の二次障害の種類
発達障害の二次障害は以下の2種類に分類されます。
- 内在化障害
- 外在化障害
なお、内在化障害と外在化障害は、単独ではなく複合的に表れる場合も少なくありません。(参考:齊藤万比古『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』)
症状①内在化障害

内在化障害とは、自己の内的な苦痛を特徴とするもののことです。怒りや葛藤、不安、気分の落ち込み、強迫症状、対人恐怖、ひきこもりなどが現れることがあります。
また、分離不安障害、社会不安障害、全般性不安障害、気分障害、強迫性障害などの精神疾患が生じることもあります。(参考:齊藤万比古『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』)
分離不安障害とは、家または愛着をもっている人物からの分離に関する、過剰な恐怖または不安を基本的特徴とする病気のことです。(参考:日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』)
社会不安障害とは、人の前でスピーチをしたりするなど、人に注目されることが怖くなったり、あるいは、他の人の目があるところで食事をしたり文字を書いたり、視線を感じたりすることに強い苦痛を感じたりする病気のことです。(参考:厚生労働省「不安障害」)
全般性不安障害とは、慢性的にコントロールできない不安感を覚える病気のことです。パニック発作や過呼吸をしばしば生じたり、落ち着きがない、疲れやすい、イライラする、筋肉が緊張しているなどの症状も見られたりすることがあります。(参考:日本精神神経学会「大坪天平先生に「全般不安症(GAD)」を訊く」、厚生労働省「不安障害」)
気分障害とは、気分の上下動が主な症状として表れる病気のことです。うつ状態のみを認める時はうつ病と呼び、躁状態・軽躁状態も生じることがある場合には、双極性障害(躁うつ病)といいます。(参考:厚生労働省「精神障害(精神疾患)の特性(代表例)」)
強迫性障害とは、きわめて強い不安感や不快感・強迫観念をもち、それを打ち消すための行為・強迫行為を繰り返す病気のことです。
例えば、手が汚れているのではないかと気になって仕方がないために、手を一日に何十回・何百回も洗ったり、家の鍵を閉めたか気になって仕方がないために、会社に行く途中に何度も自宅に戻って施錠の確認をする、歩く歩数を奇数や偶数におさめたりする、儀式的な行為をしないと気が済まないなどがあります。(参考:厚生労働省「強迫症/強迫性障害」)
ひきこもりや不登校など、疾患そのものではない二次障害自体は、医学的な直接の治療対象とはなりません。
ただし、そのような病気以外の二次障害をサポートする支援機関などもたくさんあります。
発達障害そのものについても、あなただけで悩みを抱え込まず、ぜひ積極的に支援機関を利用してください。
症状②外在化障害
外在化障害とは、行動上の問題として他人に向けて表現するもののことです。しばしば怒りや葛藤を理由として、暴力、家出、放浪、反社会的犯罪行為に至ることなどが挙げられます。また、反抗挑戦性障害や素行障害などの精神障害が生じることもあります。(参考:齊藤万比古『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』)
反抗挑戦性障害とは、怒りっぽく易怒的な気分、口論好き、挑発的な行動、または執念深さなどの様式がしばしば持続することを本質的な特徴とする障害のことです。(参考:日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』)
素行障害(行為障害)とは、反抗的で攻撃的な非行行為を繰り返す障害のことです。この非行行為は、年齢相応に必要な社会的規範や規則から著しく逸脱しています。その非行行為を引き起こす原因としては脳の障害、精神的な障害、人格発達のゆがみ、家庭環境や社会的環境の影響などがあります。(参考:厚生労働省「行為障害」)
いずれも、程度の差はあれ、思春期に見られるケースが多いですが、大人になってからも反社会的な傾向が持続する人もいます。
発達障害の二次障害の原因

発達障害の二次障害の原因は、発達障害の特性に伴うストレスや不適応と考えられています。
その特性から、周囲から孤立したり、職場でいじめにあったり、過剰に叱責されたりするなど、精神的な圧迫を受けている人もいます。そうした状況によって、うつ病の発症などの二次障害を引き起こすのです。
発達障害の二次障害の原因になりやすい悩みについては、こちらで解説しています。
発達障害があっても、必ず二次障害があるとは限らない
発達障害があっても、必ず二次障害が発生するわけではありません。
発達障害の特性にあわせて学校や職場の環境を選んだり、環境を変えることができれば、二次障害が生じるほど深く悩まず生活できる可能性もあります。
二次障害の予防策については、こちらで解説します。
発達障害の二次障害の原因になりやすい悩み7選
発達障害のある人には、それぞれに悩みがあります。
この章では、発達障害の二次障害の原因になりやすい悩みについて解説します。
よくある悩みであるということは、色んな人が対処法を考えたり試したりしているということです。
(参考:水島広子『正しく知る不安障害~不安を理解し怖れを手放す~』、なかむらクリニック「発達障害って何だろう② -こだわり-」、日本経済新聞「発達障害患者や家族、苦労の連続 医師の理解不足が壁に」、学校保健「いじめ、二次障害の問題」、障害者職業総合センター「就業経験のある発達障害者の職業上のストレスに関する研究-職場不適応の発生過程と背景要因の検討-」、兵庫県こころのケアセンター「トラウマと発達障害」、厚生労働省「ストレス脆弱性」)
悩み①自分に自信が持てない

1つ目の悩みは、自分に自信が持てないことです。
発達障害のある人は、幼少期から学校などの集団生活の場で、発達障害ではない人ができることが、自分にはできない状況に直面しやすいと言われています。
例えば、ASDのある人であれば、グループワークや集団行動の際に、周囲と足並みを揃えることができず、ちぐはぐな行動を取って、悪目立ちをしてしたり、いつのまにか嫌われたり、避けられたりするといった事例が見られるでしょう。
そうした挫折体験を繰り返す中で、自信を失う人が多いのです。
特に発達障害の診断を受けず社会人になった人は、仕事が思うように進まないのは自分の能力不足だからだと独り合点して、「自分はダメだ」と落ち込みやすいとされています。
発達障害が理由で思った成果が出せず、自信が持てなくなり、抑うつ症状を示す人も少なくないようです。
悩み②ネガティブな考え方になりやすい
2つ目の悩みは、ネガティブな考え方になりやすいことです。
自信喪失と近いですが、発達障害のある人の中には、新しく物事を始めようとしても、過去の失敗が思い出されて、「どうせまた失敗する」とネガティブに考える人がいます。
中には、人前での発表やプレゼンテーションを過度に恐れるなど、不安障害のような明確なかたちで二次障害が出現する人もいます。
こうしたことで、ネガティブな思考が癖になり、行き詰まりを感じることが多いようです。
悩み③人と接するのが怖い

3つ目の悩みは、人と接するのが怖いことです。
この悩みは、特にコミュニケーションに困難を覚えるASDのある人に多く見られると考えられます。
例えば、立場に応じて敬語を使うなど、言葉遣いを変えるのが一般的とされていますが、ASDのある人は、そもそも上下関係を感覚的に把握することが難しく、上司に対して友達に対するような話し方をしてしまう場合があるのです。逆に、同級生同士のような仲であっても敬語で話し続けるようなこともあります。
発達障害の特性は、本人がカバーできる範囲が限られている上に、自覚を持ちづらい面もあります。
こうしたコミュニケーションの様式の違いや特性が原因となってトラブルが頻発すると、発達障害のある人は、人と接することを恐れるという二次障害を抱えやすくなります。
悩み④こだわりが強いため、周囲と衝突しやすくなる
4つ目の悩みは、こだわりが強いために、周囲との衝突をしやすくなることです。
こだわりの強さは、発達障害の中でも特にASDのある人の特性のひとつと言われています。
具体例としては、以下のようなものがあります。
- 遊びの中で負けるとひどく怒る
- 生活習慣が変わるのを嫌う
- 融通が利かない
- 気持ちの切り替えが難しい
こうしたこだわりの結果、周囲とうまくやっていけず、二次障害に繋がることがあります。
悩み⑤周囲の理解不足や偏見がある

5つ目の悩みは、周囲の理解不足や偏見があることです。
日本経済新聞によると、発達障害については、医師の中でさえ理解不足が見られるそうです。(参考:日本経済新聞「発達障害患者や家族、苦労の連続 医師の理解不足が壁に」)
医師以外の、同僚などの職場の人、家族、友人などの周囲の人については、なおさらかもしれません。
理解を得られない結果、様々な人たちとの関わりを避け、悩みを相談できず、二次障害に繋がることがあると考えられます。
悩み⑥いじめや差別がある
6つ目の悩みは、いじめや差別があることです。
こちらで紹介した悩みとも関連しますが、特性への理解がない場合、周囲からのいじめや差別につながることもあります。
そうした状況では、うつ病などの二次障害に繋がりやすいということは理解しやすいと思います。
悩み⑦ストレスや心の傷がある

7つ目の悩みは、ストレスや心の傷があることです。
障害者職業総合センターは、発達障害とストレスの因果関係について以下のように書いています。(参考:障害者職業総合センター「就業経験のある発達障害者の職業上のストレスに関する研究-職場不適応の発生過程と背景要因の検討-」)
一般のストレスモデルを背景としたメタ分析研究を俯瞰した報告からは、「過剰な“職場からの要求”」、「低い“仕事のコントロール”」、「高い“努力・報酬不均衡”」、「職場のいじめ」ならびに「社会的支援の少なさ」がうつ病発症に寄与する可能性が示唆されていた。
(中略)
発達障害者においては、障害特性がストレス脆弱性を高めていることが多数の調査研究において報告されている。職場における発達障害者のストレスを検討する上では、障害特性(あるいはその人の認知特性)を適切に評価し、把握することが必須である。
(参考:障害者職業総合センター「就業経験のある発達障害者の職業上のストレスに関する研究-職場不適応の発生過程と背景要因の検討-」)
※ストレス脆弱性とは、「その人の生まれ持った素質(先天的な要素)と学習・訓練などによる生まれてからの能力やストレスへの対応力(後天的な要素)などに関連してその人が持っている病気のなりやすさ」を意味します。
(参考:厚生労働省「ストレス脆弱性:用語解説|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト」)
つまり、発達障害の特性のためにストレスが生じやすく、二次障害が起こりやすいと考えられるということです。
さらに、傷つきやすさも発達障害と深い関わりがあると言われています。
映像記憶の能力があるような場合、学校の教師からの激しい叱責や、職場の同僚からのいじめなど、本人にとって強烈なインパクトになり得る出来事は大きな心の傷として心に強く残ります。
そうした心の傷があることで、「同じようなことが起きるのではないか」と思い、就職や転職・進学などの場面で新たな環境に行けないことがあるのです。
発達障害の二次障害への予防策10選
この章では、発達障害の二次障害への予防策について解説します。(参考:星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち〈職場編〉』、木津谷岳『これからの発達障害者「雇用」』)
前提:医師や専門家、支援機関に相談する

前提として大切なのは、できる限り医師や専門家、支援機関に相談することです。
人間関係で傷ついた経験から「人と接するのが怖い」という人は、信頼できる友人や家族、支援機関の支援員などに、まずは相談してみてください。
そうした人たちを頼ることで、一人で抱え込むよりも、問題解決がずっとスムーズに進みます。
その上で、以下の対処法を参考にしてみてください。
予防策①小まめに休憩する
1つ目の予防策は、小まめに休憩することです。
発達障害の二次障害の程度とは別に、発達障害のある人は、比較的ストレスに弱い傾向にあるとされています。
また、ASDのある人やADHDのある人の中には、疲労しているにも関わらず、長時間を通して作業に取り組む「過集中」の状態に入ることがあります。
こうした状態の際は、心身の限界を見極められずに、過労で倒れることも珍しくありません。
そのため、仕事の合間にできるだけ小まめに休憩することが大切です。
日頃から定期的に休暇を入れるなど、あまり連勤が続かないように自己管理をすると、無理なく仕事を続けることができるでしょう。
予防策②生活リズムを整える

2つ目の予防策は、生活リズムを整えることです。
発達障害のある人は、過集中であったり、こだわりのあることに夢中になったりするなど、時間を忘れる人が少なくありません。
結果的に夜更かしにつながりやすく、生活習慣が乱れやすいと言われています。
生活リズムが整わない状態で仕事に取り組むと、睡眠の質が悪くなり疲労がたまりやすくなる上に、日中のパフォーマンスも落ちて、心身ともにストレスを抱えやすくなります。
そうなると、精神疾患などの二次障害を発症・再発する可能性も高まります。
できるだけ生活リズムを整えるようにしてください。
具体的には、毎日三食きちんと食事を摂り、決まった時間に目を覚まして朝日を浴びるようにしましょう。
予防策③ストレスへの対処法を身につける
3つ目の予防策は、ストレスへの対処法を身につけることです。
日頃からストレスを溜め込まないように努めることも重要ですが、それでストレスが全くなくなるわけではありません。
精神衛生を保つためには、ストレスを上手に発散することも大切です。
あなたなりに、リラックスできる方法を探してみてください。
一般的に知られているリラックス法には、以下のようなものがあります。
- 1分間、目をつむって深呼吸をする
- 肩を上下させたり回したりする
- アロマテラピーを用いる
- 10分程度のストレッチを行う
- いつもより長くお風呂に浸かる
- 瞑想やマインドフルネスを実践する
可能であれば、職場でできる簡単なリラックス法と、帰宅してゆっくり時間を取ってできるリラックス法の2種類を習慣とするのがオススメです。
ストレスへの対処法は人によって異なるので、色々な方法を試して自分に合うリラックス方法を見つけ、試してみましょう。
予防策④発達障害の特性について理解を深める

4つ目の予防策は、発達障害の特性について理解を深めることです。
医師から発達障害と診断されると、受け止める気持ちがあっても、特性への悩みや不安からストレスを抱える場合もあるでしょう。
しかし、発達障害があっても、特性との向き合い方を理解することで、悩みや不安を軽減しながら暮らすことができます。あなたをサポートする支援機関などもたくさんあります。
支援機関とも話しながら、自分にとって二次障害が生じにくい、ストレスを感じにくい環境とはなにかをイメージしてみましょう。
家族がいる場合、環境の改善には家族の協力があるとよいでしょう。
家族に特性や悩みなどを共有できるなら、どのような環境だと過ごしやすいかを全員で考える時間を作りましょう。家族に話すべきかわからない、どう話したらいいのかわからない、というお悩みも、支援機関であれば相談可能です。
予防策⑤周囲の人に特性を理解してもらい支援を得る
5つ目の予防策は、家族や友人、職場など周囲の人に理解してもらい、支援を得ることです。
発達障害があることは、悪いことでも恥ずかしいことでもありません。
そうはいっても、自分に障害があるということを周囲にカミングアウトできるかどうかは、悩ましいところでしょう。残念ながら、現実問題として、差別や偏見がないわけでもありません。
その上で、カミングアウトできるようであれば、ご家族やご友人、職場の同僚などにその旨について相談しましょう。
そうすることで、あなたの特性について理解を得られたり、具体的な支援を得やすくなったりすることがあります。
なお、カミングアウトするべきか、どうかについては、医師や支援機関に相談できます。あなた一人で思い詰めないでください。
予防策⑥就労や就学において、合理的配慮を利用する

6つ目の予防策は、就労や就学において、合理的配慮を利用することです。
合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と同じように生活し、活動できる均等な機会を確保するために必要な配慮のことです。障害のある人が業務上で支障があったときに改善するための措置を取ることも合理的配慮に含まれます。(参考:e-Gov法令検索「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)」、政府広報オンライン「事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化」)
配慮の具体例としては、以下のようなものが考えられます。
- 仕事での電話対応が苦手なら、その担当から外してもらい、代わりに別の業務を担当する
- 騒がしい環境が苦手なら、職場の席を人の出入りが少ない場所にしてもらう
- コミュニケーションを取るのが苦手なら、人との関わりが少ない業務の担当にしてもらう など
配慮を求める相手に発達障害があることを開示する必要があります。また、就労や就学において合理的配慮を実現させるためには、本人に関わる人々が一つのチームとなって話し合うことが大切です。
自分にどのような合理的配慮が必要で、職場や学校にどう伝えればよいかについても医師や支援機関に相談できます。積極的に話し合える機会を設けてみてください。
合理的配慮については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
予防策⑦自分に合った環境を選ぶ
7つ目の予防策は、自分に合った環境を選ぶことです。
発達障害のある人は特性について悩んだり不安を抱えたりするケースが多いほか、特性を欠点と捉えて、ストレスを抱えて二次障害につながる可能性もあります。
NHKスペシャル取材班は、「発達障害があっても、特性にあわせた環境や仕事を選ぶことで、深く悩まずに暮らすことができる」と言います。(参考:NHKスペシャル取材班スペシャル取材班『発達障害を生きる』)
発達障害のある人やそのご家族は、本人の特性に合った環境を選ぶことで、より生きやすくなるということです。
具体例としては以下のようなものがあります。今後の参考にしてみてください。
- 対人関係が苦手だと感じるなら、一人で完結するような仕事を選ぶ
- 音読を苦手とする特性がある学生なら、オンラインを導入したスクールに変えてみる
- コミュニケーションを取るのが苦手なら、人との関わりが少ない職種を選ぶ など
また、発達障害があることを開示する場合、障害者雇用で就労することも可能です。
障害者雇用については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
予防策⑧心の傷への対処法を身につける

8つ目の予防策は、心の傷への対処法を身につけることです。
発達障害のある人は、心の傷によって特性が強く表れることがあります。その結果、できていたことができなくなるという二次障害が発生することもあります。
心の傷への対処法を身につけることで、そうした状況を防ぎやすくなります。心の傷を治していきたいときは、医師や心理士に相談するのもオススメです。
予防策⑨気軽に相談できる環境を日頃から確保しておく
9つ目の予防策は、気軽に相談できる人環境を日頃から確保しておくことです。
発達障害のある人がその特性に悩みや不安を抱えるケースは多くあり、そこからくるストレスが発達障害の二次障害につながる可能性もあります。
そんなとき、気軽に相談できる環境があれば、多少はその困難や課題の解消につながるでしょう。
いずれにせよ、家族や友人、同僚などの中に、気軽に相談できる環境を日頃から確保しておくといいでしょう。
発達障害の二次障害への対処法3選
この章では、発達障害の二次障害として病気や障害を発症している人に向けて、発達障害の二次障害への対処法について解説します。
前提:通院やカウンセリングを継続する

うつ病などの精神疾患は、寛解したとしても、ストレスを抱え込むと再発する可能性があります。
大切なのは、治ったからと油断せずに、様子を見ながら通院やカウンセリングを継続することです。
特に、治療薬を服用している場合には、断薬したことをきっかけに症状が再発するケースがあります。
再発を防ぐためにも、医師の判断には必ず従うようにしましょう。
以上の点に留意した上で、これから紹介する予防策を講じるようにしてください。
対処法①医師の診察を受ける
最も大切なことは、医師の診察を受けることです。
発達障害のある人は、自分でも気づかないうちに、発達障害の二次障害としてうつ病などの精神障害を発症している場合があります。
抑うつ症状が続いたり、過度の不安で息苦しさを感じたりするなど、わずかでも兆候を感じるようでしたら、まずは医師の診察を受けてみてください。
特に、我慢を積み重ねてきた人の場合は、休職などの具体的な対応策を勧められるかもしれません。
その際は、職場にも必ず相談して、できる限り早く医師の判断に従えるように準備を進めましょう。
また、治療薬を処方された場合には、自己判断で服用を中断しないことが大切です。
なお、主治医の方針に納得できなかったり、処方された治療薬で改善されている実感が持てなかったりする場合には、セカンドオピニオンを求めて別の医師の診察を受けるのもひとつの手段です。
主治医と異なる方針を示されるようであれば、あなたが信頼できる方の医師の判断に基づいて、治療に専念しましょう。
ただし、一般論として、セカンドオピニオンでも治療の方針があまり変わらないようなら、多少納得できないところがあっても、かかりつけの医師の方針に従うことをオススメします。
また、代替医療や民間療法ではなく、医療機関の治療を受けるという点も重要です。
成果がすぐに出ないからといって、医療機関ではない機関を利用するのは避けるようにしましょう。
発達障害の二次障害としてよく見られるうつ病と休職の詳細については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
対処法②焦らずに治療に専念する

発達障害の二次障害のある人は、焦らずに治療に専念することを心掛けてください。
生真面目で責任感の強い人ほど、長期の休養を取るときには「早く仕事に戻らないと」と焦りがちです。
しかし、精神疾患を発症している場合には、焦りが元となって自分を追い詰めることで治療が遅れ、寛解まで時間を要することが多いのです。
特に、発達障害の二次障害から休職している人は、調子が安定する前に仕事復帰をすると、すぐに再休職するケースが少なくありません。
「今は治療に専念するべき」と自分に言い聞かせながら、焦らずに発達障害の二次障害と向き合っていきましょう。
対処法③定期的なカウンセリングを受ける
3つ目の対処法は、定期的なカウンセリングを受けることです。
定期的にカウンセリングを受けて経過観察を行うことで、問題点に気づき、無理のない範囲で歪みを修正する一助になります。
すでに発達障害の二次障害の治療をしている人の中には、医師による診察と治療薬の処方のみで、臨床心理士などによるカウンセリングを受けていない方もいるでしょう。
そのような方は、専門のカウンセラーによる定期的なカウンセリングを検討してみましょう。カウンセリングは、精神科デイケアや精神科訪問看護の中で提供されることもあります。
発達障害に悩む人は自分の状態を自覚することが苦手な場合が多いため、ご自身では気付いていなくても、何らかの徴候や認知の歪みが発生しているケースがあります。
ぜひ、カウンセリングを受けてみてください。カウンセリング先がわからない場合は、主治医や支援機関などに相談すると、紹介されることもあります。
補足:二次障害の治療・解決した場合、就労支援を受ける

二次障害の治療・解決した場合、就労支援を受けるのも視野に入れておきましょう。
特に就労に力を入れてサポートする支援機関が多数存在します。
中には職場とあなたの間に入り、業務内容や仕事量といった労務環境の調整をする支援機関もあります。
発達障害の二次障害を治療しながら働き方も改善したいという人は、ぜひ支援機関に相談をしてみてください。
発達障害の二次障害の治療法
この章では、発達障害の二次障害の治療法について解説します。
治療法①精神療法

精神療法とは、精神科医や臨床心理士などとの対話や作業を通じて考えを整理したり、思い込みを修正していったりする、心理的なアプローチのことです。
代表的な治療法として、思考の偏りや物事を解釈する際の認知の歪みを自覚し、それを修正していく認知行動療法などがあります。
複数の精神疾患を併発しているなど、状況によっては薬物療法とあわせて行う場合もあります。
また、精神科デイケアや精神科訪問看護を通じて心理的ケアが行われることもあります。
治療法②薬物療法
薬物療法とは、薬の服用によって病気の症状を緩和させる方法のことです。
うつ病や不安障害など二次障害で見られる精神障害は、抗うつ薬や抗不安薬を用いる薬物療法が効果的なことがあります。
二次障害の一つである暴力などの外在化障害に対しても、攻撃性をコントロールするために薬物療法が用いられることがあります。
なお、薬物療法のみで治療を進めるのではなく、認知行動療法や家族療法など、いくつかの治療法を併用するケースも多いようです。
治療法③家族療法

家族療法とは、家族全体を1つの構造として捉え、家族にアプローチすることで問題の緩和を図る心理療法です。
発達障害の二次障害のある人が、家族からの理解や協力を得るために有効と考えられます。
本人をはじめ、家族の悩みや相談を臨床心理士などの専門職が受け、家族ぐるみで適切な対処法を探り、症状や問題行動の改善を図ります。
治療法④環境調整
環境調整とは、発達障害の二次障害の特性や症状から困難さを感じている環境を調整することです。
困難の原因となる環境を整えることで、課題感やストレスを軽減できる可能性があります。
環境調整には、物理的な環境の整備はもちろん、特性や症状を補うためのツールの用意、手順やルールの明文化、スケジュールの可視化、周囲の人の接し方の変更などが含まれます。
まとめ:発達障害の二次障害に悩む人は専門家に相談してみましょう

発達障害の二次障害のある人は、まずは焦らずに、二次障害を治すことに専念しましょう。
その際には、医師やカウンセラー、専門家、支援機関、信頼できる友人、家族などの協力を仰ぐことが大切です。
一人で抱え込まずに、周りの人と協力しながら、二次障害を緩和していってください。
このコラムが、発達障害の二次障害に悩む人の助けになったなら幸いです。
<よくある質問>発達障害の二次障害とは何ですか?
二次障害とは、主障害に起因して起こる副次的な障害のことです。ここで取り上げている発達障害の二次障害とは、発達障害や発達障害グレーゾーンの傾向・特性に伴って発生する精神障害やひきこもりなどの二次的な困難や問題のことを指します。
詳細については、こちらで解説しています。
発達障害の二次障害の原因になりやすい悩みはありますか?
以下が考えられます。
- 自分に自信が持てない
- ネガティブな考え方になりやすい
- 人と接するのが怖い
- こだわりが強いため、周囲と衝突しやすくなる
- 周囲の理解不足や偏見がある
- いじめや差別がある
- ストレスや心の傷がある
詳細については、こちらで解説しています。
監修志村哲祥

しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。
臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。
【著書など(一部)】
『子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数
日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」
監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
監修角南百合子
すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→