発達障害の雇用まとめ 最新の雇用状況や就職を有利に進めるコツ、向いてる仕事などを解説 | キズキビジネスカレッジ  

発達障害の雇用まとめ 最新の雇用状況や就職を有利に進めるコツ、向いてる仕事などを解説

こんにちは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。

発達障害の診断を受けた人や、診断は受けていないが自分は発達障害かもしれないと思っている人のなかには、就職に関する以下のようなお悩みがあるかと思います。

  • 自分に向いてる仕事はあるのか
  • 発達障害のある人の雇用はどんな状況なのか
  • 就職するコツはあるのか

このコラムでは、発達障害のある人の最新の雇用状況や働き方、就職を有利に進めるコツ、向いてる仕事、事業主が選考時に見ているポイント、就職前後に雇用先に伝えておくべきポイントについて解説します。

「発達障害と就職・転職」について悩んでいる人は、ぜひ最後まで読んでみてください。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、発達障害のある人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

発達障害とは?

発達障害とは、脳機能の発達に関する障害です。

発達障害者支援法によると、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害」が、発達障害に該当します。

さまざまな種類の発達障害があり、複数の障害が併存する人も珍しくありません。

ここでは、主な発達障害として、以下3種類を簡単に解説します。(参考:政府広報オンラインHP「発達障害って、なんだろう? | 暮らしに役立つ情報」、国立障害者リハビリテーションセンターHP「発達障害とは」、e-Gov法令検索「平成十六年法律第百六十七号発達障害者支援法」

ASD(自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)

ASD(自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)とは、対人関係・コミュニケーションや、物事へのこだわりに特性がある発達障害です。

場の空気や相手の気持ちを読み取ることが難しく、他者と関わることが苦手な傾向があります。

さらに物事へのこだわりが強く、物の配置・行動の順番・独自のやり方に固執するのも特徴のひとつです。

ADHD(注意欠如・多動性障害)

ADHD(注意欠如・多動性障害)は、集中したりじっとしたりすることが苦手で、考えるよりも先に動いてしまう特性がある発達障害です。

不注意な特性が強く出る場合や、多動性の特徴が強く現れる例、不注意・多動性の両方が強く出るケースなど、特性の強さは人によって異なります。

LD/SLD(学習障害/限局性学習症)

LD/SLD(学習障害/限局性学習症)は知的な発達に遅れがないのに、読む・書く・計算する・推論するといった学習行為が難しい特性の発達障害です。

1つの能力に支障がある人だけでなく、複数の能力に問題がある人もいます。

「教科書が読めない」「算数が極端に苦手」などのため、学校に行き始めたくらいの段階でLD/SLD(学習障害/限局性学習症)と判明することも珍しくありません。

発達障害のある人の最新の雇用状況

発達障害のある人の雇用状況は、法改正や社会情勢に応じて、常に変化しています。

この章では、発達障害のある人の最新の雇用状況について解説します。

この章では発達障害のある人の最新の雇用状況について解説します。就職の計画を立てる際に役立ててください。(参考:厚生労働省「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」、厚生労働省「事業主の方へ」、厚生労働省「精神障害者の算定特例の延長について(案)」、厚生労働省「令和4年障害者雇用促進法の改正等について」、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「障害者雇用納付金」

発達障害のある人の雇用は増加傾向にある

発達障害に限らず、障害のある人の雇用状況は、法令などの改善が進んでいるため、増加傾向にあります

厚生労働省によると、民間企業に雇用されている障害のある人は約61万人。前年度から約2.7%増加し、19年連続で過去最高を記録しました。(参考:厚生労働省「令和4年 障害者雇用状況の集計結果」

また、民間企業での雇用障害者数の約61万人のうち、身体障害・発達障害を含む精神障害・知的障害の内訳は以下のとおりです。

  • 知的障害のある人:約14万6426.0人(前年度比約4.1%増)
  • 精神障害(発達障害を含む)のある人:約10万9764.5人(前年度比約11.9%増)
  • 身体障害のある人:約35万7767.5人(前年度比約0.4%減)

さらに実雇用率は11年連続で過去最高の約2.25%を記録し、法定雇用率達成企業の割合は前年度の約47.0%から約48.3%まで増加しています。

次に、発達障害のある人の雇用が増えている背景を確認しましょう。

法定雇用率が引き上げられた

障害者雇用促進法43条第1項によって、各企業や公的団体に、法定雇用率が定められています。

法定雇用率とは、その職場の従業員数に応じて、一定の障害のある人の従業員を雇用するように定められた割合のことです。(参考:厚生労働省「事業主の方へ」

2018年4月の障害者雇用促進法の改正から、発達障害を含む精神障害のある人も雇用義務の対象となりました。

そのため法定雇用率も民間企業の場合で「2.0%から2.2%」に、2021年3月の改正では「2.2%から2.3%」に上昇しました。

現在は民間企業の法定雇用率が2.3%で、従業員を43.5人以上雇用している事業主は1人以上の障害者を雇用することが義務付けられています。

さらに、厚生労働省によると、2024年には2.5%へ、2026年には2.7%へ引き上げられることが決まりました。(参考:厚生労働省「令和5年度からの障害者雇用率の設定等について」

法定雇用率の上昇に伴い、今後も障害のある人の雇用増加が期待できます。

発達障害がある大学生・短大生・高専生が増加している

独立行政法人日本学生支援機構によると、発達障害がある大学生・短大生・高専生が増加していることがわかりました。(参考:独立行政法人日本学生支援機構「令和4年度(2022年度)障害のある学生の修学支援に関する実態調査」

発達障害がある大学生・短大生・高専生は、以下のように増えています。

発達障害者の在籍数
  • 2018年度:6047人
  • 2019年度:7065人
  • 2020年度:7654人
  • 2021年度:8698人
  • 2022年度:1万288人

発達障害のある学生が増えている背景は、発達障害への認知度が高くなっていることが挙げられます。

在学中や就職活動中に発達障害を疑い、受診する人も珍しくありません。

発達障害のある大学生・短大生・高専生が増加していることから、障害のある学生の就職は充実していくと考えられています。

事業主の障害者雇用を促す特例で雇用増加が見込める

法定雇用率の引き上げにくわえて、特例措置も取られているため、雇用増加が見込めます

2018年4月から精神障害者の雇用が義務化されたことで、以下のような特例措置が設けられました。

特例措置の内容
  • 従来は0.5人としてカウントされていた、短時間労働の精神障害のある人も1人として算定
特例措置の対象となる被雇用者の状況
  • 週20時間以上30時間未満の労働で雇用開始から3年以内
  • 精神障害者保健福祉手帳を取得して3年以内
  • 2023年3月31日までに雇い入れられ、精神障害者保健福祉手帳を取得した場合

改正以後5年間限定の特例措置の予定でしたが、2023年4月から期間を定めず延長されています。

さらに、2024年4月以降は、10時間以上20時間未満の精神障害のある人を0.5人でカウントする特例措置が実施される予定です。

法定雇用率を満たすために必要な人数が減ることで、障害者雇用に不安を抱える事業主は「少人数なら雇用できる」と考えます。

「少人数の雇用であれば環境を整えやすい」と障害者雇用へ積極的になる事業主が増えれば、発達障害のある人が働ける場所が社会規模で増えるでしょう。

また、障害のある人を雇用する事業主に対して助成・援助する、調整金も事業主の障害者雇用を促す施策のひとつです。

法定雇用率を達成すると、従業員が100人以上いる事業主は障害のある人1人につき月額2万9000円、従業員が100人以下の事業主は障害のある人1人につき月額2万1000円を受け取れます。

助成金により障害者雇用の負担を減らせるため、コスト面で悩んでいた事業主も障害者雇用を進められます。

以上のような改正・制度の発足は、今後も行われる見込みです。

雇用状況は社会情勢の影響を受ける

発達障害のある人の雇用は増加傾向にありますが、社会情勢の影響を受ける点に要注意です。

実際に、新型コロナウイルスが流行し始めた2020年、障害のある人の就職件数は12年ぶりに減少しました。

雇用状況は日々改善されているものの、社会の流れによっては大きく変動します。

発達障害のある人​が就職を成功させるためには、社会情勢や最新の雇用状況を把握することが大切です。

自分1人で情報を集めるのが難しい人は、就労移行支援事業所などのサポートを受けることも検討してみてください。(参考: 厚生労働省「令和2年度 ハローワークを通じた障害者の職業紹介状況などの取りまとめを公表します」

発達障害のある人の働き方は2種類

発達障害のある人は、「障害者雇用」「一般雇用」という2種類の働き方から自分に合ったほうを選択できます。

どんな働き方が自分に合っているか確認するためにも、雇用形態の違いを確認しましょう。

種類①障害者雇用

障害者雇用とは、障害のある人を対象とした雇用枠のことです。障害の特徴や内容に合わせて安心して働けるようにするため、いわゆる一般雇用とは就労条件が異なります。

「ある人に障害者雇用枠を適用できるかどうか」は、実際には「障害者手帳を所持しているかどうか」で判断します。

障害者手帳とは、障害のある人がその程度や内容によって交付される手帳のことです。

障害者雇用の対象となる「障害者」には、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害も含む)の3つの分類があり、それぞれ障害者手帳の種類も異なります。

身体障害のある人
  • 身体障害者手帳
知的障害のある人
  • 療育手帳(自治体によって名称が異なる場合があります。例:東京都の「愛の手帳」)
  • 判定書(児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医、障害者職業センターが発行)
精神障害のある人
  • 精神障害者保健福祉手帳

身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳・身体障害者手帳のいずれかを保有していれば、障害者雇用で働ける可能性があります。

障害者雇用の選考は、書類選考・面接に加えて、実際の業務に携わる上での能力や障害への対策を確認するのが一般的です。

なお、障害者雇用では、障害の特性にあわせた配慮を受けられるため、長く働ける環境があるといえます。

障害者雇用促進法では、「障害者手帳を取得していない、障害のある人」も「障害者雇用」の対象です。(参考:厚生労働省「障害者雇用促進法における障害者の範囲、雇用義務の対象」

しかし、障害者手帳を取得していない障害のある人を障害者雇用枠で雇用したとしても、障害者雇用促進法上、法定雇用率に算定できません。

そのため、事業主は「障害者手帳を取得していない、障害のある人」を、障害者雇用という意味では、積極的に採用しない傾向にあります

種類②一般雇用

一般雇用とは、障害者雇用以外の雇用枠のことです。障害の有無にかかわらず誰でも応募することが可能です。

障害者雇用と比べると、一般雇用は求人数が多い傾向にあり、選べる職種・業界が幅広くなるのが魅力です。また、給与水準が比較的高いという傾向もあります。

発達障害のある人がいわゆる一般雇用で就職活動・就労をする場合、病気や障害などを相手先に開示して就職活動・就労をする方法(オープン就労)と、病気や障害などを相手先に開示しないで就職活動・就労をする方法(クローズ就労)があります。

発達障害について開示した上で就職活動・就労をすると、障害への配慮を受けられる可能性があります。

病気や障害などを相手先に開示することのメリットとデメリット、開示しないことのメリットとデメリットはそれぞれいくつかあります。

オープン就労とクローズ就労については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

正規雇用・非正規雇用のいずれかを選ぶ

発達障害のある人に限らず、就職時には正規雇用・非正規雇用のいずれかを選択する必要があります。

正規雇用とは、一般的に雇用期間や職務地などを定めずにフルタイムで勤務する雇用形態のことです。

正規雇用の場合、雇用状況や経済面が安定する点がメリットと言えます。その一方、責任が重くなる傾向にあります。

非正規雇用とは、契約期間が定められた雇用形態のことです。

自身の生活を優先した自由度の高い働き方ができる点がメリットと言えます。一方で、正規雇用と比べると給与が低い傾向にあり、急に職がなくなるリスクがある点はデメリットと言えるでしょう。

なお、一般的に、障害のある人は非正規雇用が多い傾向があります。(参考:厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査の結果を公表します」、厚生労働省「障害者雇用のご案内~共に働くを当たり前に~」

厚生労働省の発表によると、雇用されている障害のある人のうち正社員になっているのは約22.7%です。

とはいえ、「最初のうちは望まぬ非正規雇用」だったとしても、「安定的に働けると見なされて、正規雇用に転換する」ということもあります。

正規雇用・非正規雇用それぞれの特徴を把握し、自分に合った働き方を考えてみましょう。

発達障害のある人が就職を有利に進めるコツ9選

発達障害のある人が就職を有利に進めるためには、いくつかの工夫が必要です。

この章では、発達障害のある人が就職を有利に進めるコツについて解説します。

就職を成功させたい人は、この章で紹介するコツを実践してみてください。

コツ①医師やカウンセラーのアドバイスを受ける

発達障害のある人は、かかりつけの医師やカウンセラーに相談してから就職を始めるのがオススメです。

継続的に診てくれている医師やカウンセラーであれば、あなたの特性・状態をチェックした上で適切なアドバイスを受けられます

また、相談するなかで、自分ではわかっていなかった悩みや、就職で優先したい条件が見えてくるでしょう。

コツ②二次障害がある場合は治療に専念する

発達障害に関連して不適切な対応を受けて起こる心理的な症状の「二次障害」がある人は、まず治療に専念するとよいでしょう。

焦って就職すると、二次障害が悪化するリスクがあります

就職を有利に進めるためにはまず二次障害を治療して、安定して働ける状態まで回復するのが大切です。

経済的に不安な人は、お住まいの自治体の障害福祉を担当する部署・窓口や専門家、支援機関などに相談してみてください。

コツ③特性をカバーする習慣を身につける

発達障害のある人が就職を有利に進めるためには、特性をカバーする習慣を身につけましょう。

特性があっても、うまくカバーできれば業務中の悩みや負担を減らせます

例えば、ASDであれば、仕事の予定をスケジュールに記載したり、やるべき仕事を一覧にしたりするのが効果的です。

ADHDであれば、指示されたことをすべてメモに取り、仕事に必要なものをすべて鞄1つにまとめるとミスを減らせます。

あなたの特性に詳しい医師・支援機関の専門員・家族と協力して、特性をカバーできる習慣を見つけてみましょう。

コツ④就労移行支援事業所を利用する

4つ目のコツは、「就労移行支援事業所を利用する」です。

就労移行支援とは、「障害者総合支援法(一般企業などへの就職を目指す、病気や障害のある方」向けに、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)」に基づいて行われる福祉サービスのことです。(参考:e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」

実際のサービスは、国の基準を満たしたさまざまな民間の「就労移行支援事業所」が行います。

就労移行支援事業所では、体調管理の方法、職場でのコミュニケーションの基礎スキル、就職に必要な専門スキルなどを学ぶことができます。

さらには、実際の就職活動でのアドバイス、就職後の職場定着支援も含む、総合的な就労支援を受けることが可能です。

なお、私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)も就労支援事業所のひとつです。

就労移行支援については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

コツ⑤職業訓練を受けてスキルを習得する

発達障害があっても有利に就職したい人は、職業訓練を受けてスキルを習得するのもよいでしょう。

職業訓練は、就職に役立つ職業スキル・知識を習得できる公的サービスです。

有料のコースもありますが、多くは無料で利用できます。

一般的な事務スキルやITに関する専門スキル、物流工程の知識や電気設備技術など、習得できるスキル・知識はさまざまです。

スキルや知識が基礎から身につくだけでなく、実際に働いたときの状況をイメージできるのも魅力でしょう。

さらに職業訓練に通えば、受講手当を受け取れる場合があります。

なお、職業訓練を受けるためには、ハローワークの窓口へ申し込む必要があります。

通える範囲に職業訓練校があるか、希望のコースを受けられるか、まずは確認してみてください。

また、お住まいの都道府県に設置されている「ハローワーク」でも、公共職業訓練への斡旋や、事業主と3か月の有期雇用契約を締結して働く「障害者トライアル雇用」を実施しています。気になる人はハローワークに確認してみましょう。(参考:厚生労働省「ハロートレーニング」

コツ⑥アルバイトとして働き始めてみる

就職する前に、まずはアルバイトとして働き始めてみるのもオススメです。

アルバイトとして働くことで、まず「労働」自体に慣れていけます

さらに得意・不得意な作業や、向いてる働き方を探すのにもアルバイトは最適です。

一定期間働けた実績や過去の作業経験があれば、就職時にアピールできるでしょう。

また勤務先によっては、アルバイトから正規雇用を目指せるケースもあります

万が一続けられなかったとしても、不向きな業種・働き方がわかったことで、次の就職に役立つでしょう。

コツ⑦働き方を再検討する

こちらで解説したとおり、就職する前に、いわゆる一般雇用なのか、障害者雇用なのか、正規雇用か非正規雇用かなど、自分に合った働き方がどれか再検討しましょう。

働き方が合っていないと、就労自体が負担になり働き続けるのが難しくなります。

例えば正社員としていわゆる一般雇用で採用されていた人は、配慮を受けられる障害者雇用や、勤務日の少ない非正規雇用に変えると、就労のストレスが減るかもしれません

無理なく働き続けるためには、特性・経済状況・向き不向きなどを総合的に考え、あなたが働きやすい方法を選択しましょう。

コツ⑧発達障害者支援センターなど専門の支援機関の利用する

発達障害者支援センターなど専門の支援機関で、雇用について相談するのもオススメです。

発達障害で悩む人は、以下のような専門機関に頼れます。

どの支援サービスも基本的に無料で利用できるので、気になるところがあれば問い合わせてみましょう。

コツ⑨就労継続支援A型/B型での就労する

就労継続支援A型/B型は、一般企業での就労が難しい人に対して、実業務の機会やスキルアップのための職業訓練を提供する事業です。

A型とB型の違いは雇用契約と年齢制限の有無であり、利用者の障害に差はありません。

雇用契約がある、65歳未満を対象としたA型のほうが賃金が高い傾向があります

一般企業への就職が難しい人や、支援を受けながら働きたい人は、就労継続支援事業所での就労も考えてみてください。

就労継続支援A型/B型については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

発達障害のある人に向いてる仕事:種類別に解説

この章では、発達障害のある人に向いてる仕事を種類別に解説します。

なお、向き・不向きは特性や性格によって異なります。必ずあなたに向いてるわけではありません。

紹介する内容は、あくまで「発達障害のある人にも向いてる仕事がある」という安心材料としてください。

実際に就職先を探す際は、医師や専門家のアドバイスをもとに、自分に合った仕事を考えてみましょう。(参考:発達障害ナビポータル「自分に向いている職業・職種が知りたい」、発達障害ナビポータル「職場開拓」

ADHDのある人に向いてる仕事:発想力・独創性・行動力・好奇心を活かす

アイディアが次々と浮かんで集中できなくなったり、思いつくと待てずにすぐ行動してしまったりするのが、ADHD(注意欠如・多動性障害)ならではの特性です。

そのためADHD(注意欠如・多動性障害)のある人は、発想力・独創性・行動力・好奇心を活かせる仕事に向いてる傾向があります。

特に不注意性が強い人は、発想力・独創性を活かせるデザイナー・イラストレーターなどのクリエイティブ職がオススメです。

また行動力・好奇心がある、多動・衝動性が強い人は、営業職・ジャーナリストのような職業なら特性が有利に働く可能性があります。

ADHDのある人に向いてる仕事については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

ASDのある人に向いてる仕事:個人でまたはマニュアルどおりにできる仕事を選ぶ

ASD(自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)のある人は対人関係が苦手でこだわりが強い傾向があります。そのため、個人で進められたり、マニュアルどおりにできたりする仕事を選ぶのがオススメです。

具体的には経理職・事務職・プログラミングなどのIT職・法務職などが向いてるといわれています。

以上の仕事は、ある程度の正解が決まっており、合理的に仕事を進められる点からASD(自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)のある人とマッチしやすいでしょう。

ただし職場によっては、事務職・IT職でも対人関係が多い場合があるので、注意してください。

ASDのある人に向いてる仕事については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

LD/SLDのある人に向いてる仕事:PC・タブレットを使って働ける職場を選ぶ

LD/SLD(学習障害/限局性学習症)のある人は、PC・タブレットを柔軟に使える職場を選ぶのがよいでしょう。

読む・書く・計算するといった苦手な行動をツールでサポートできれば、問題なく働ける傾向があります。

LD/SLD(学習障害/限局性学習症)のある人の場合、仕事内容よりも職場環境が働きやすさに影響します

職場を探す際は、「スマホでメモを取る」「書類は常にテキストデータで共有してもらう」といった配慮をしてもらえるかチェックするのがオススメです。

LD/SLDのある人が仕事でできる対処法については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

補足:特定分野へのこだわり・知識を活かす専門職もオススメ

発達障害のある人のなかには、特定分野へのこだわりが強い人が少なくありません。

こだわりが強い人は、専門知識を活かせる以下のような職業がオススメです。

  • プログラマー
  • エンジニア
  • 研究者
  • 芸術家

関心分野と専門性がマッチすると、すばらしい成果を上げられる可能性があります

以上の職業はあくまで一例です。あなたが興味関心を持てる分野ではないかもしれません。

自分が興味を持てる分野に専門職があるか、ぜひ探してみてください。

発達障害のある人を雇用する事業主が選考時に見ているポイント4点

この章では、発達障害のある人を雇用する事業主が選考時に見ているポイントについて解説します。

自分が当てはまるか考えてみてください。事業主がチェックする点を把握すると、就職活動中にアピールすべき強みが見えてきます。

あなた1人で考える必要はないので、かかりつけの医師や専門家、支援機関など、支援してくれる人と一緒に見てみましょう。(参考:厚生労働省「障害者雇用のご案内~共に働くを当たり前に~」

ポイント①自分の特性をしっかり理解・対処できているか

発達障害のある人を雇用する事業主は、応募者が自分の特性をしっかり理解できているかを見ています。

障害の程度や特性は人によって大きく異なるので、自分の状況を具体的に説明できることが重要です。

できること・できないこと・必要な配慮を伝えられると、面接担当者が採用後の具体的なイメージができるようになります。

自分の特性をしっかり理解したうえで、事業主と「業務内容が適正かどうか」をすり合わせられると、雇用してもらえる可能性が高くなるでしょう。

ポイント②業務をやり遂げるスキルや経験があるか、スキルを獲得できそうか

発達障害の有無に関わらず、事業主が人を雇用する際は業務をやり遂げるスキルや経験があるかをチェックします。

選考時にスキルや経験が足りなくても、現在の知識や技術・過去の経験から、「今後できるようになる」と判断されれば雇用されることも少なくありません。

事業主に自分のスキルや経験をうまく伝えるためには、事前に現時点の知識・技術を分析しましょう。

業務で役立つ能力や、スキル不足を乗り越えた経験があれば、就職活動で積極的にアピールできます。

ポイント③長く働けるか

事業主は、選考時に長く働けるかをチェックしています。

従業員を雇用する際、求人広告・面接担当者の人件費などコストがかかるので、事業主は採用者に対して「長く働いてほしい」と思っています

なお、厚生労働省によると、障害別の平均勤続年数は、以下のとおりです。(参考:厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査」

  • 発達障害のある人:約3年4か月
  • 知的障害のある人​​:約7年5か月
  • 身体障害のある人:約10年2か月

発達障害のある人の平均勤続日数は比較的短いので、発達障害のある人の雇用において「職場定着・安定就労」が課題とされています。

長く働けることをアピールするためには、アルバイトでの就労経験が有効です。

また二次障害があるのに無理して働くと、就労後に容体が悪化するリスクがあります。

長く働くためには、二次障害を治療してから就労するのがよいでしょう。

ポイント④頼れる支援者や家族がいるか

発達障害のある人を雇用する事業主は、頼れる支援者や家族がいるかも確認しています。

障害のある人が万が一調子を崩したり、事業主が配慮や注意の仕方に悩んだりしたときに、サポートしてくれる人がいると事業主側も安心です。

周囲にサポートしてくれる人がいない人は、就労移行支援事業所などの支援機関に相談しておくとよいでしょう。

発達障害に関して、就職前後に雇用先に伝えておくべきポイント2点

発達障害を開示する場合、就職前後に雇用先へ自分の要望を伝えておくと、スムーズに働けるようになります。

この章では、雇用先へ伝えておくとよい一般例について解説します。

必ずあなたに当てはまるわけではありません。あくまで参考程度にしてください。(参考:厚生労働省「就労パスポート活用の手引き」、厚生労働省「第2章障害者の雇用管理上の留意点」

ポイント①配慮してほしいこと

まずは、配慮してほしいことを具体的に伝えましょう。

発達障害の特性・程度は人によって異なるため、どこを配慮してほしいかを職場の人が完璧に理解するのは難しいといえます。

自分が困っている点や、配慮が必要なことをピックアップしてみてください。

一方的な配慮の要求ではなく、まずは自分でしている工夫も伝えられるとより良い印象につながります。自分で工夫できる点と、それでも配慮が欲しい点を整理して伝えてみてください。

ポイント②得意な分野・業務

自分が苦手なことだけでなく、得意な分野・業務についても伝えるとよいでしょう。

得意なことを職場の人に把握してもらえれば、部署異動の際に配慮してもらえる可能性があります。

また一方的に配慮してほしいことを伝えても、理解してもらうのは難しい傾向があります。

自分から歩み寄る姿勢を見せることで、スムーズに交渉できるでしょう。

伝え方の具体例

配慮してほしいポイントや、得意な分野・業務を伝える際は、以下を参考にしてください。

ADHDの場合
  • ケアレスミスが多いので、できる限り上司にダブルチェックをお願いしたいです。
  • タスクの優先順位をつけるのが苦手なので、上司に都度タスクを進める順番を相談したいです。
  • スケジュールを忘れないように、タスク管理できるツールを使わせてもらえないでしょうか。
ASDの場合
  • 柔軟な対応を求められると、パニックになりやすい特性があります。
  • 指示は口頭ではなく、図や表を使って紙で出してもらえるとスムーズに理解できます。
  • マニュアルどおりに進める業務が得意なので、定型業務がメインの部署に配属してもらえると助かります。
LD/SLDの場合
  • 字を読むのが苦手なので、議事録の代わりに会議内容を後から再度聞けるように、会議へICレコーダーを持ち込みたいです。
  • 聞くのが苦手なので、テキストベースで指示していただけるでしょうか。
  • 書くのが困難なため、日報は手書きではなくPCを使用できると助かります。

業務が始まってから困らないように、選考時や配属面談の際に特性や要望をしっかり伝えておきましょう

もし特性や要望を伝えて不採用になっても、気にしすぎないでください。

特性や要望を伝えず採用されると、業務中の負担が大きくなる可能性があります。そうすると、長く働き続けるのが難しくなるかもしれません。

就職後の苦労を減らすなら、特性や要望を理解してくれる職場を選ぶのが大切です。

ミスマッチを防ぐためにも、自分の特性や要望を伝えるようにしましょう。

まとめ:発達障害のある人は雇用状況を把握し、支援を受けながら就職活動を始めよう

発達障害のある人の雇用状況は、法改正や社会情勢に影響して、常に変動しています。

常に最新の雇用状況を把握できれば、自分に合った就職活動の戦略を立てられます

発達障害のある人が有利に就職を進めるためには、特性をカバーする習慣を身につけたり、支援者に頼ったりすることが大切です。

あなた1人ですべて解決しようとするのではなく、家族やサポート団体にフォローしてもらうと、就職が成功する可能性が高くなります

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)でも、発達障害のある人の就職を支援しています。

就職について相談したい人や、専門家からアドバイスを受けたい人は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

よくある質問(1)

発達障害のある場合、どのような雇用形態になりますか?

発達障害のある人は、2種類の働き方から自分に合ったほうを選択します。詳細はこちらをご覧ください。

よくある質問(2)

発達障害に関して、就職前後に雇用先に伝えておくべきポイントを教えてください。

まずは、配慮してほしいことを具体的に伝えましょう。また、自分が苦手なことだけでなく、得意な分野・業務についても伝えるとよいでしょう。詳細はこちらをご覧ください。

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

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翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

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