発達障害による聴覚過敏とは? 対策法や支援機関を解説 | キズキビジネスカレッジ  

発達障害による聴覚過敏とは? 対策法や支援機関を解説

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)利用者の社会福祉士・精神保健福祉士の清水太郎です。

あなたは、生活する中で以下のようなことでお悩みではありませんか?

  • 周りの音や声がうるさく聞こえて、外出することがつらい
  • 目の前の作業に集中したいのに、周囲の話し声で気が散る

以上のようにお困りがある人は、聴覚過敏という症状があるのかもしれません。

音や声は意識しなくても聞こえてくるので、気になるとつらいですよね。

このコラムでは、聴覚過敏にお困りの人へ向けて、特に発達障害に原因がある場合にフォーカスし(※)、対策や利用できる支援等を、参考資料、キズキビジネスカレッジの知見、私自身の経験などに基づいて解説します(※ただし、ご紹介する「対策」は、発達障害の有無に関わらず利用できます。)。

また、「聴覚過敏のある人の周囲の人たちに向けて、ご本人と接する上で理解していただきたいこと」もお伝えします。

ぜひ参考にしてみてください。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、聴覚過敏のある発達障害のある人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

聴覚過敏とは?

そもそも聴覚過敏とは?

聴覚過敏とは、後述する「感覚過敏」といわれる特性の一種です。

聴覚過敏について、その症状や種類について解説します。

参考

①聴覚過敏の症状

聴覚過敏のある人は、耳から入ってくる音の聴き取りに悩みを抱えており、疲労やストレスを抱えやすいです。

聴覚過敏の影響は、無意識に生じている場合もあります。

「必要な内容は聞き取れているし、コミュニケーションはきちんと取れていて、上手くいっているはずなのに、なぜか職場で集中が持続できなかったり、人混みで疲れやすくなったりする」という形で現れることもあります。

これは、本来音を選別することが苦手な脳が、不得意なことをするためにフル稼働していることによる疲労なのです。

ストレスの程度は人それぞれであり、少し気になるくらいの人もいれば、寝込むほどつらく感じる人もいます。

聴覚過敏の症状や診断基準、治療について研究は行われていますが、まだまだわからないことが多く、社会的認知は十分に進んでいるとは言えません。

②感覚過敏の種類

②感覚過敏の種類

「感覚過敏」には、主に嗅覚・聴覚・視覚・触覚・味覚の5種類があります。

(1)嗅覚過敏
  • 匂いに対しての感覚過敏です。
    例えば石鹸、香水、柔軟剤などの匂いを不快に感じます。
    満員電車の中など人混みで多くの匂いを感じると頭痛や吐き気が起こる人もいます。
(2)聴覚過敏
  • これまでに述べてきたとおりです。
(3)視覚過敏
  • 目から入る刺激に対する感覚過敏です。
    明るさに対する過敏と色に対する過敏があり、TV番組などでのフラッシュ演出がつらい、太陽の光が眩しすぎる、原色など特定の色に刺激を感じ、直視できないなどがあります。
(4)触覚過敏
  • 皮膚に触れる物に対しての感覚過敏です。
    洋服の素材によって、ゴワゴワ・チクチクするという感覚があったり、フィット感が気になりすぎたりする、などがあります。
(5)味覚過敏
  • 味に対する感覚過敏です。
    独特な食感や舌触りの食べ物が苦手だったり、味付けや油分が気になったりと様々です。
    筆者の周りでは、缶ジュースなどの飲料は、鉄の味がどうしても気になり、ペットボトルでしか飲めない、という人もいます。

感覚過敏には多くの種類があり、上記には分類しきれないこともあります。

その強弱も人によって違いがあります。感覚過敏のある人は、単一ではなく、複数の感覚刺激について困りごとを抱えているケースが多いようです。

感覚過敏それぞれについて、どんな感覚なのかを感じたい人や知ってみたい人は、次の動画を確認してみてください。

参考動画

③感覚鈍麻について

実は、感覚過敏とは逆の症状である「感覚鈍麻」というものもあります。

刺激を通常よりも過剰に感じやすいのが感覚過敏ですが、対して感覚鈍麻は、感じられる刺激が通常よりも不足しています。

感覚鈍麻の症状には、例えば、お湯に触れても熱さを感じにくかったり、身体を物にぶつけても痛みを感じにくかったりする、ということがあります。

ふとしたときに、身体に残った火傷の跡や、あざなどを見つけて、起こった出来事を後から知るのです。

また、「自分は身体が強く、疲れにくいから平気」と思って毎日がんばり続けていたら、ある日突然限界がきて、体中がしんどくてバッタリと起き上がれなくなる人もいます。

感覚の問題がさらに奥深いと感じられるのは、同じ人に感覚過敏と感覚鈍麻の両方が見られる場合があることです。

特定の感覚に過敏だからといって、全ての感覚に対して過敏なわけではなく、それぞれについて具体的な認識をしておく必要があります。

④聴覚過敏/鈍麻の原因 ~「発達障害」との関係について~

④聴覚過敏/鈍麻の原因 ~「発達障害」との関係について~

聴覚過敏/鈍麻の原因にはいくつか考えられます。

メニエール病や突発性難聴といった疾病による、耳そのものの機能的な原因だけではなく、刺激を受け取る「脳」のはたらき方の偏りにも原因があると考えられています。

この「脳のはたらき方に偏りがあること」を原因とした聴覚過敏/鈍麻(を含む感覚過敏/鈍麻全般)を抱える方については、世界的な精神疾患の診断基準として用いられているアメリカ精神医学会の『DSM-5』(『精神疾患の診断・統計マニュアル』)をはじめとして、「発達障害」との関連が示されています。

⑤「発達障害」について

⑤「発達障害」について

発達障害とは、生まれつきの特性であり、大人になってからも、実際の年齢と比べて、通常よりも行動面や情緒面で、発達に偏りが見受けられるのが特徴です。

発達障害には、自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習症(学習障害、LD・SLD)などが含まれます。これらは、生まれつき脳の働き方に違いがあるという点が共通しています。

同じ障害名でも特性の現れ方が違ったり、いくつかの発達障害が併存していたりすることもあります。

自閉スペクトラム症(ASD)
  • 相互のやりとりを要するコミュニケーションや相手の気持ちを読み取った振る舞いが苦手
  • 特定のことのみに強い関心をもっていて、強いこだわりがある
注意欠如・多動症(ADHD)
  • 落ち着きがない、待てない(多動性-衝動性)
  • 注意が持続しにくい、作業にミスが多い(不注意)
学習障害(LD)
  • 全般的な知的発達には問題がないのに、読む、書く、計算するなど特定の学習のみに困難が認められる

⑥発達障害と聴覚過敏/鈍麻

通常、人の脳には、雑多な情報の中から自動的に必要なものだけを拾い出してくる機能があります(これを心理学用語で「選択的注意/聴取」といいます)。

しかし、発達障害のある人は、聞こえてくる情報や刺激の取捨選択がうまくできず、不要な音まですべて気になる傾向があります。

本当に必要な、聞きたい内容に集中できなくなるのです。

発達障害と聴覚過敏/鈍麻

例えば、聴覚障害のある人が補聴器を使用することで、すべての雑音を拾い、逆に困りごとを感じるのと、同じような状態と想像するのがよいでしょう。

「マンツーマンでの会話では何の支障もないのに、複数の人が参加する飲み会や、会議などの場面では、発言が飛び交うため、聞き取りが途端に苦手になり、内容が覚えられなくなる」というケースもあります。

こうした状況に心当たりがあるならば、症状への対策や、周囲への配慮について、一度検討していくことをオススメします。

⑦聴覚過敏のある人の困りごと

聴覚過敏のある人の困りごと

「聴覚過敏」の症状がある人は、生活の中で、下記のような困りごとを感じることがあると言われます。

  • 人混みのある場所など、様々な音があふれている環境では、疲れが溜まり、体調が悪くなる
  • 目の前の人の声と周りの声の音量が同じくらいに聞こえ、会話が聞き取りにくい
  • 蛍光灯のノイズ音や時計の秒針の音が気になる
  • 掃除機やドライヤーなど、家電の音が耳に刺さるように聞こえてくる
  • 工事現場、踏切の警報器など、街中で突然鳴り響く大きな音が苦手

また、疲れやストレスが溜まってくると、聴覚過敏が強くなることが多いようです。

そのため、疲労が溜まって限界が来る前に、ご自身のストレス対象が何であるかを把握し、対策を見つけようとする意識が大切です。

聴覚過敏について、本人ができる対策6選

聴覚過敏について、本人ができる対策6選

聴覚過敏について、ご本人ができる具体策を紹介します。

対策は、日常生活(私生活)に限らず、社会生活(学校・職場など)でも活用できます。

ただし、「聴覚過敏が必ずよくなる方法」は、現時点ではまだ確立されておりません。

いろいろな方法を試していく中で、ご自身に合うものが見つかればよいと思います。

対策①暮らしの中で聞こえる音を環境的に減らす

生活の中で聞こえる音を減らしましょう。

具体的には、次のような方法があります。

  • テレビを長時間つけない
  • 周囲が騒がしいと感じるときは、別室で休む
  • 買い物は人のいない時間を狙うか、ネットですませる

対策②外で活動する際は目安時間を決めておく

対策②外で活動する際は目安時間を決めておく

家の外で活動する際は、疲れが残らないように、「○○時までには帰る」など、目安時間を決め、計画を立てておきましょう。

長時間の外での活動は、慣れてきてから徐々に時間を延ばしていけばよいのです。

対策③食事・睡眠その他の生活面を見直す

睡眠や食事を改善しましょう。

疲れやストレスが増えなくなって、聴覚過敏が緩和される場合があります。

特に栄養面では、ビタミンB群の継続的な摂取が効果的であるという結果も伝えられています。

必要に応じて、食べ物やサプリメントで補うとよいでしょう。

対策④アイテムを活用する

対策④アイテムを活用する

日常生活では、大きな音のある場所をなるべく避けるとともに、刺激を軽減できるアイテムを活用することが有効です。

聴覚過敏に役立つアイテムは、おおまかに次の3つがあります。

  • イヤーマフ系
  • イヤホン・ヘッドホン系
  • 耳栓系(アナログ/デジタル)

例として、次のような使い分けができます。

  • 全体的に音量を減らしたいとき:アナログ耳栓やイヤーマフを使用
  • 特定の音域にある音(エアコンやざわつきなど)を減らしたいとき:デジタル耳栓やノイズキャンセリングイヤホンを使用

これらのグッズを持ち歩くことで、苦手な音がある環境であっても、聞こえてくる音を減らすことができるため、安心できるでしょう。

■耳栓の選び方

アイテムの中でも、耳栓は、大きくなくてかさばらないという点で、まずは生活に取り入れやすいかと思います。

耳栓には多くの種類がありますので、まず前提として、「聞こえてくる音には、それぞれに音域がある」ということを知っておきましょう。

音域によって、次のような選び方があります。

  • 生活騒音が気になる→低音域カット重視の製品
  • 人の声が気になる→中~高音域カット重視の製品
筆者オススメの耳栓
  • デジタル耳栓(キングジム)
    〈特長〉低音域カット重視型。生活騒音対策に有効。安価だが、ノイズキャンセリングイヤホンと同程度の効果が見込めます。
アイテム活用の注意点
  • これらのアイテムを常に使用していると、過敏さが増す場合があります。
    「どうしても苦手な音がある環境にいるときのみ使用し、それ以外では外す」など、使うときと使わないときを分けるとよいでしょう

対策⑤周囲の人へ聴覚過敏であることを伝える

聴覚過敏であることを周囲に伝えると、配慮を得られることがあります。

その手段の一つとして、「聴覚過敏保護用シンボルマーク」があります。

このマークは、聴覚過敏の保護用具を使っていることと、聴覚過敏の状態の程度について周知することを目的として設計されたものです。

この「聴覚過敏保護用シンボルマーク」は、誰でも無償で印刷し、利用することができます。

シールなどにしてイヤーマフなどのグッズに貼ったり、カバンにぶら下げたりすると効果的でしょう。

以下のリンクで、無料でマークのデータをダウンロードし、利用することが可能です。

対策⑥(特性上ご自身だけでは対策しきれないため)周囲へ配慮を求める

対策⑥(特性上ご自身だけでは対策しきれないため)周囲へ配慮を求める

対策⑤とも関連して、特に仕事について聴覚過敏の症状が原因で支障が出る場合は、職場側に症状を説明し、理解やサポートを求めてみましょう。

ご自身の特性や症状について話すことで、「合理的配慮」を得られることがあります(各職場によって、配慮の程度は変わります)。

合理的配慮とは
  • 働く人一人ひとりの特徴や場面に応じて、就労の上で発生する、困難さを取り除くための調整のことを「合理的配慮」と言います。
    この配慮の対象者は、障害者手帳の有無や、障害の種別(身体・知的・精神)、雇用の形態(障害者雇用か一般雇用か)を問わず、社会のなかで困難さを抱えているすべての人であることがポイントです。

(参考:厚生労働省※PDF「合理的配慮指針」)

合理的配慮の例
  • 職場での聴覚保護アイテム(耳栓などの)の使用について許可を得る
  • 騒音の多い業務機器の担当や、通路側に近い座席となることを避ける
  • 集中を要する業務の際は、なるべく声掛けを控えてもらう
合理的配慮の注意点
  • 一方で、配慮の相談時には、注意点もあります。
    それは、合理的配慮の提供は、職場側に「過重な負担」がない場合に限る、ということです。

(参考:e-gov「障害者雇用促進法 第36条の2,同3」)

以上を踏まえて、合理的配慮を依頼する際の注意点に、「あれもこれもと全て盛り込もうとすると、職場側として『どんな配慮が効果的なのか』がわかりづらくなる可能性があります。

ご自身にとって本当に必要な事項を伝えることが大切です。

また、「職場からの配慮」をより得やすくするために、「障害者枠」で就職する方法もあります。

「障害者枠」での雇用
  • 「障害者枠」とは、障害者を対象とする求人・雇用枠のことです。障害者枠ではない求人・雇用は俗に「一般枠」と言います。

障害者枠では、ご自身の障害特性や程度に応じて、業務の内容や量の調整を得ながら働くことができます。

一方で、障害者枠は一般枠と比べたとき、給与水準などの待遇面にデメリットがある傾向があるので、ご自身の将来像とも併せて考える必要があるかもしれません。

また、障害者枠で働くためには、障害者手帳の申請・取得が必須条件になります。

詳しくは下記コラムにて解説がありますので、参考にしてみてください。

医療機関への受診・相談

医療機関への受診・相談

聴覚過敏/鈍麻を含む、感覚過敏/鈍麻全般について、直接的な治療薬や治療法は、残念ながら確立していないのが現状です。

しかし、症状による困りごとをそのままにしておくと、精神的なストレスとなり、生活全般について幅広く影響が出てくることがあります。

一人で抱え込まず、専門医と相談することをオススメします。

①医療機関について

聴覚過敏の原因や対処法について、医師の専門的な目線でアドバイスがもらえれば、生活を見直すきっかけになりますし、安心して過ごすことができるようになります。

また、聴覚過敏/鈍麻があることによる生活への影響と、その配慮に関する助言を、「診断書」として出してもらうことが可能です。

診断書があれば、前章までに紹介した様々な制度やサービスを利用したり、職場への配慮を伝えやすくなったりして、より無理のない生活を送るために役立ちます。

発達障害があると思われる場合は、精神科・心療内科でのご相談がよいでしょう。

主治医にどのような症状にお困りかを相談してみましょう。

過敏さからくるストレスや精神的なものを和らげる薬の処方をしてもらえるほか、カウンセリングなどの心理療法が受けられます。

「発達障害以外の原因が考えられて、どこを受診するべきか迷う」場合は、まずは耳鼻咽喉科で相談してみましょう。

②診察時に役立つセルフチェックツール

②診察時に役立つセルフチェックツール

聴覚過敏/鈍麻に関する困りごとは、無意識に感じていたりします。

また、聴覚の困りごとは目に見えないため、うまく言葉にして伝えることが難しいと思います。

そして、聴覚過敏/鈍麻のある人は、院内の雑音や音の出る検査機器や診察・治療で体調が悪くなる、といったケースがあります。

そのため、病院へ行くと診察の際に話すことを面倒に感じることもあります。

ご自身の症状で困っている内容を言葉にしたり、要望を伝えたりするときに、役立つツールがあるので、下記にご紹介します。

参考

感覚特性チェックシート/感覚特性見える化シート」(障害者職業総合センター)
医療機関向け感覚過敏相談シート」(感覚過敏研究所)

③一度は病院に行くことがオススメ

繰り返しになりますが、聴覚過敏/鈍麻そのものに対しての治療法は、残念ながら、完全には確立していません。

また、専門分野の異なる医師によって、聴覚過敏/鈍麻の症状に対する捉え方が異なることもあるため、「違う医師に診てもらったら違う診断結果が出た」なんてこともあるかもしれません。

ですが、一度は病院に行ってみることをオススメします。

聴覚過敏に関連して、「原因」への対処法がわかったり、関連する病気がわかったりする可能性があるからです。

自己判断で放っておかないようにしましょう。

もし受診科がご自身の症状とは違った場合は、専門的に見てもらえる病院を紹介してもらいましょう。

聴覚過敏・発達障害の人が利用できる支援機関・サービス8選

聴覚過敏・発達障害の人が利用できる支援機関・サービス8選

「発達障害と聴覚過敏」にお困りの人が利用できる支援機関・サービスについてご紹介します。

ただし、ご紹介するものは、「働くことの悩みについてのサポート団体」や「発達障害に関連したサポート団体」です(「全国的な、聴覚過敏にのみ特化した支援機関」は、KBCの知見の範囲ではありませんでした)。

とは言え、聴覚過敏の原因が発達障害にある場合、聴覚過敏以外の困りごとも抱えられていることが多いです。

そのため、ご紹介するような、総合的な支援を受けられる場があると安心できます。

参考文献

前提としての補足

ご紹介する各団体への相談では、診断書や障害者手帳の提示は不要なことが多いです(「本格的な利用」のためには必要となることもあります)。

また、サービス内容にもよりますが、多くは無料で利用できます(障害の程度によっては実費が必要になることもあります)。

「診断書」については、病院にもよりますが、通常、発行してもらうためには、複数回の通院・診察が必要になりますので、支援を利用したいなら、早い段階で診断を受けるようにしましょう。

どの支援機関・サービスに頼るのがよいかわからないという場合には、まずはお住いの自治体(障害福祉課)に問い合わせてみることをオススメします。

下記のような支援機関・サービスがあるとご存知になった上で、お一人だけで悩まず、ぜひ積極的に利用されることをオススメします。

※特に②以降のサポート機関は、「発達障害が関係する(と思われる)場合」に利用可能です。

①地域若者サポートステーション

地域若者サポートステーションは、発達障害や聴覚過敏の有無に関係なく、「働くことに悩みを抱えている15~49歳までの人」が利用できます。

厚生労働省委託の支援機関であり、お仕事をされていない人や就学中でない人たちの就職~職場定着までを全面的にバックアップします。

多様な支援プログラムが実施されており、働くことへの自信づくりができるでしょう。

②就労移行支援・就労定着支援

②就労移行支援・就労定着支援
就労移行支援
  • 就労移行支援の目的は、当事者がご自身の病気や障害と向き合いながら、就職し、安定して働き続けられることであり、障害者総合支援法に基づいて行われる障害福祉サービスです。

この支援は、公的な認可を受けた「就労移行支援事業所」が行います。

利用の際には、障害者手帳は必須ではなく、専門医による診断書があればサービスを受けることができます。

受けられる支援内容は、事業所によって異なりますが、主に以下の5つです。

  • 生活習慣改善のサポート
  • メンタル面のケア
  • 仕事で必要なスキルの講習
  • 実際の就職活動の支援
  • 職場定着支援(事業所による)

担当医やカウンセラーの見解を基に、働く上での聴覚過敏への対処方法や、就労先への合理的配慮の伝え方、自身に合う働き方の検討をサポートしています。

就職活動の支援では、履歴書の添削や模擬面接のみならず、就職先やインターン先の候補を提示してもらうこともできます。

就労定着支援
  • 就労定着支援の目的は、支援機関の利用を経て就職した人を対象として、より長く働き続けられるように、その職場への定着のサポートを行うことです。

具体的な支援内容としては、一般的な定期面談の他に、就職先での業務内容や業務量の調整などがあり、特性や症状による困りごとで、仕事が長続きするか不安を感じる人にオススメです。

支援機関が「就労移行支援事業所」の場合、前項の「就労移行支援」から「就労定着支援」まで、一貫して支援を受けることができます。

あなたが気になる支援を行っている事業所があるようでしたら、問い合わせてみることをオススメします。

③障害者職業センター

障害者職業センターは、障害のある人に対して専門的な職業リハビリテーションを提供している施設です。

障害者雇用促進法に基づいて、全国の各都道府県に最低1か所ずつ設置されています。

障害のあるご本人の就労のために、下記支援を行っています。

職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業
  • ジョブコーチにより、円滑な就職と職場への適応のサポートが行われます
精神障害者総合雇用支援
  • 精神障害者担当カウンセラーにより、主治医や医療関係者との連携のもと、総合的な支援を実施します。
リワーク支援
  • 職業カウンセラーやワークアシスタントにより、休職中の人が安心して職場へ復帰できるように支援を行います。

また、障害者職業センターは、当事者であるご本人だけでなく、事業主や地域の障害者支援を行う機関に対しても、専門的な助言や援助を行っており、地域全体の支援ネットワークづくりを行っています。

④障害者就業・生活支援センター

④障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターでは、就労だけでなく、金銭管理などの経済面や住居のことまで、多岐にわたって相談できます。

そのため、就職に関する相談だけでなく、「生活習慣を整えるための具体的な助言がほしい」など、日常生活のサポートも受けたい人にオススメです。

⑤ハローワーク

各都道府県に設置されたハローワークでも、障害のある人たちに向けた支援を行っています。

ハローワークで求職登録を行うと、障害特性や希望職種に応じた職業相談を受けることが可能です。

⑥発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、発達障害の症状に悩む当事者や、そのご家族の生活をサポートに特化した支援機関です。

具体的な支援内容は事業者や自治体によって異なりますが、生活上の障害特性に関する困りごとの相談の他、就労支援事業として、求人に関する情報提供や、就業先へのアドバイスを行っています。

窓口は、各都道府県や指定の事業所に設置されています。

ご興味があれば、お近くの相談窓口を探してみてください。

⑦精神保健福祉センター

発達障害を含む精神障害のある人のサポートを目的に、精神保健福祉法によって各都道府県に設置された支援機関です。

発達障害のある人は、社会生活上の困難から、ストレスを抱え込み、うつ病などの精神疾患を併発する場合が少なくありません(「二次障害」といいます)。

そのため、相談先として精神保健福祉センターを利用する人もいます。

また、ご本人だけでなく、ご家族や関係者からも精神衛生に関する相談を受け付けており、匿名の相談も受け付けています。

⑧障害者手帳の取得

⑧障害者手帳の取得

障害者手帳は、医師からの診断書があれば取得することができます。

障害者手帳には3種類あり、発達障害の場合には「精神障害者保健福祉手帳」が該当します。

障害者手帳を取得することによって、生活費を節約したり、障害者雇用枠に応募したりすることができます。

障害者手帳を取得することの詳細については、下記コラムに記しています。ぜひご覧ください。

聴覚過敏について、周囲が理解しておくこと

聴覚過敏について、周囲が理解しておくこと

この章は、聴覚過敏の本人ではなく、その周囲(特に職場)にいらっしゃる人たちへ向けた内容です。

参考文献

発達障害の人の雇用と合理的配慮がわかる本』(弘文堂)石井京子・池嶋貫二・林哲也・村上由美 著
大人の発達障害と就労支援・雇用の実務』(日本法令)山下喜弘・田中建一・加藤千恵子 著
発達障害の人が上手に勉強するための本』(翔泳社)安田祐輔 著

①聴覚過敏の表れ方は、人によって異なる

①聴覚過敏の表れ方は、人によって異なる

聴覚過敏は、個々に症状の表れ方が異なります。

そのため、必要な配慮も個々に異なります。

よって、配慮を提供する際には、どのような配慮が必要かを本人と話し合い、提供内容を状況に応じて決定していくことになります。

②発達障害のある人は、集中力に特性があるケースが多い

聴覚過敏の有無に関わらず、発達障害のある人は、集中力に特性があるケースが多いです。

発達障害のある人は、うまく環境に適合したときは、非常に高い集中力を発揮して仕事に取り組み、他の人に比べて、めざましい成果を残すことができる場合もあります(個人差はあります)。

しかし、周囲の騒音や頻繁な声掛けといった何らかの原因で、その集中力が途切れたときには、再び取り戻すのに大変な労力を費やすことになります。

そうした状況を避けるために、職場側として、本人から特に配慮の要望として具体的に伝えられていなくとも、当事者の感じ方に思いやりを持っていただければ幸いです。

③聴覚過敏・発達障害の当事者への対応は、職場全体への相乗効果が期待できる

③聴覚過敏・発達障害の当事者への対応は、職場全体への相乗効果が期待できる

聴覚過敏や発達障害のある人への個別の環境調整は、職場側からすると大きな負担になるように感じるかもしれません。

しかし、調整によって各員が力を発揮し、より大きな成果を残せるようになれば、職場にとっても相乗効果が期待できます。

また、障害のある人への配慮を通じた職場環境の見直しを通じて、気づくことがあるかもしれません。

職場全体の心理的な安全性もきっと高まっていくことでしょう。

上記を踏まえまして、聴覚過敏や発達障害の当事者には、状況に応じて下記のような配慮の提案もできると、なおよいと思います。

提案①差し迫った業務の際は、本人が集中できる場所を確保する

騒音が気になることへの対策は、日常的にはイヤホンや耳栓の着用を認めることで対応可能です。

しかし業務上、正確かつ至急を要する作業を完成させたい場合には、集中できる場所(別室や静かなスペース)の確保や、席替えを提案するのがよいでしょう。

提案②視覚的に教える

提案②視覚的に教える

聴覚過敏への直接の対策ではないのですが、視覚的に情報を提示することは、有効な方法です。

本人に視覚的な見通しを前もって持ってもらうことで、安心して過ごしやすくなり、不安感が軽減され、症状が軽減される可能性があります。

声掛け(だけ)ではなく、図やマニュアルなどを用いて教えることを配慮に取り入れましょう。

「いいところ」にも目を向けましょう

補足~「いいところ」にも目を向けましょう~

あなたは、聴覚過敏の症状に悩まされてきたことが多いかもしれません。

ですが聴覚過敏の人は、次のような「いい面」を持つこともあります。

語学学習に強いことがある
  • 聴覚過敏のある人は、英語など、外国語の細かい発音を聴き取ることが得意なことがあります。
音楽的感性に優れていることがある
  • 聴覚過敏があるからこそ、繊細な音の世界が理解でき、それが音楽などの芸術的な才能として表れることがあります。

もちろん、「聴覚過敏や発達障害の人の全てに『才能』がある」とは言いません。

ですが、「考え方を変えてみることで、不安が和らぎ、聴覚過敏が落ち着くこともある」ということは、覚えておくと役に立つと思います。

心理学の世界には、「レジリエンス(=しなやかな心的耐性)」という概念があります。

より踏み込んだ説明をすると、次のようなイメージです。

「困難な状態にあっても、いかにしてプラスの面に目を向けて、生活の維持や幸福に繋げていくか、と思えるような心の持ち方」

実際、この概念はビジネスシーンでも、人材育成において注目され始めており、様々な困りごとを感じる状況で応用が利きます。

人生をより豊かにしていく視点で、ぜひ意識してみましょう。

まとめ

まとめ

聴覚過敏や発達障害に関連して、対策やサポート団体などをご紹介しました。

お悩みをあなただけで抱え込まず、支援者と協力しながら「これからのこと」を考えていただければ幸いです。

この記事がお役に立ったなら幸いです。

よくある質問(1)

(発達障害が関係する)聴覚過敏について、自分でできる対策を知りたいです。

例として、次のような対策があります。

  1. 暮らしの中で聞こえる音を環境的に減らす
  2. 外で活動する際は目安時間を決めておく
  3. 食事・睡眠その他の生活面を見直す
  4. アイテムを活用する
  5. 周囲の人へ聴覚過敏であることを伝える
  6. (特性上ご自身だけでは対策しきれないため)周囲へ配慮を求める

詳細はこちらをご覧ください。

よくある質問(2)

発達障害と聴覚過敏の自分が利用できるサポートを知りたいです。

例として、次のようなサポート(団体)があります。

  1. 地域若者サポートステーション
  2. 就労移行支援・就労定着支援
  3. 障害者職業センター
  4. 障害者就業・生活支援センター
  5. ハローワーク
  6. 発達障害者支援センター
  7. 精神保健福祉センター
  8. 障害者手帳

詳細はこちらをご覧ください

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

Amazon
翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

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