ADHDのある人に向いてる仕事 向いてる働き方を解説 | キズキビジネスカレッジ  

ADHDのある人に向いてる仕事 向いてる働き方を解説

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。

近年、発達障害の一種であるADHD(注意欠如・多動性障害)による仕事上の困難を抱えている人が多くなっていると言われています。

ADHDのあるあなたも以下のような悩みを抱えていませんか?

  • 今の仕事を続けられるの?
  • この就職先で大丈夫か…

このコラムでは、ADHDのある人に向いてる仕事や向いてる働き方、向いてない仕事について解説します。

ADHDと向き合いながら働き続けられる環境を見つける手助けになれば幸いです。大人のADHDと仕事については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、ADHDのある人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

ADHDのある人に向いてる仕事

この章では、ADHDのある人に向いてる仕事について解説します。

なお、解説する仕事は、あくまで一般論です。その特性や程度は人によって異なります。以上の仕事以外にも、同様の特徴がある仕事であれば、ADHDのある人に向いてる可能性が高いでしょう。

同じの仕事であっても、向いてるかどうかは、実際のあなたや実際の職場の環境、マニュアル、サポート体制などによって異なります。

実際のあなたに向いてる仕事は、支援機関に相談する中で、具体的に見つかっていくはずです。働きたい仕事がある場合、以上の仕事を参考にしつつ、ご自身で調べてみたり、専門家や支援機関に相談したり、実際の求人元に問い合わせたりしてみましょう。

仕事①不注意の傾向が強いADHDのある人に向いてる仕事3選

不注意性の傾向が強いADHDのある人は、クリエイティブ系の仕事で活躍できるかもしれません。

クリエイティブ系の仕事
  • デザイナー
  • アニメーター
  • イラストレーター

不注意性の傾向が強いADHDのある人は、好奇心が強く、感受性に優れています。そのため集中するべき場面でも取りとめのない考えやアイディアが浮かび、気が散りやすくなります。

そのような場合は、以上のような仕事で、そうした発想力や独創性を活かせるかもしれません。

仕事②多動性・衝動性の傾向が強いADHDのある人に向いてる仕事4選

多動性・衝動性の傾向が強いADHDのある人は、行動力を活かせる仕事が合うかもしれません。

行動力を活かせる仕事
  • 営業職
  • ジャーナリスト
  • カメラマン
  • 起業家

以上のような仕事は、一か所に留まることが少ないため、行動力のある多動性・衝動性の傾向が強いADHDのある人に向いてる場合があります。

以下のような特性の活かし方が考えられるかもしれません。

  • 営業職として営業先を回る
  • ジャーナリストとして取材に行く
  • カメラマンとして撮影場所を転々とする
  • 起業家として様々な事業を立ち上げる

ただし、多動性・衝動性の傾向が強いADHDのある人の中には、段取りを頭の中で組み立てながら並行して作業をするのが苦手だと感じる人もいます。

そのため、作業のリスト化や自分専用のマニュアルを作るなどの仕事の工夫が必要になってくるかもしれません。

仕事③興味のある分野への集中力が高いADHDのある人に向いてる仕事3選

不注意性や多動性・衝動性の傾向に限らず、興味のある分野への集中力が高いADHDのある人もいます。

興味のある分野に高い集中力を発揮できるADHDのある人には、専門性の高い仕事が合うかもしれません。

興味のある分野への集中力を活かせる仕事
  • プログラマー
  • エンジニア
  • 研究者

ADHDとプログラマーについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

ADHDのある人は、関心分野と職種の専門性が合致したときに、能力を発揮しやすく、活躍しやすいと言われています。

福島学院大学大学院教授の星野仁彦氏は、専門的な資格を取ることでなれる専門的技術職こそがADHDのある人の一番の適職だと言います。(参考:星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち〈職場編〉』

とはいえ、興味を持てる分野は人によって異なるため、以上の3つの仕事が必ずしも適職であるとは限りません。また、関心分野への専門知識や技能を活かして、作曲家や音楽家などの芸術方面へ進むケースもあるかもしれません。

大切なのは自分が何に関心を持っているのかを吟味することと、その一方で、自分の特性を理解して、苦手なことを避けることです。

ADHDのある人に向いてる3つの働き方

この章では、ADHDのある人に向いてる働き方について解説します。

働き方①裁量労働制

裁量労働制とはみなし残業制の一種で、実際に働いた時間は何時間であれ、契約した労働時間分を働いたことにする制度のことです。

労働者の裁量で残業や業務の進め方を決められるため、自由度の高い働き方となっています。

主に経営に関わるような企画業務や、保守開発といった技術性を求められる専門業務で適用されることが多いです。

ただし、職場によっては、あらかじめ定められた残業時間と残業代を含む給料のバランスが悪かったり、事実上、残業時間が非常に長くなったりすることもあります。

就職や転職にあたっては、その職場の裁量労働制は、実際はどのように機能しているかを確認するとよいでしょう。

働き方②フレックス制

フレックス制とは、会社の決めた必ず労働していなくてはならないコアタイムや所定労働時間・総労働時間に就業していれば、始業と終業の時間を労働者本人が選択できる就労形態のことです。

例えばコアタイムは14時から16時で、所定労働時間は7時間という場合、7時間働いていれば、14時前ならいつ始業してもよく16時以降ならいつ終業してもよいとされます。

裁量労働制と似て見えるかもしれませんが、フレックス制は、基本労働時間・残業時間などについて実際の労働時間が測られるのに対して、裁量労働制では実労働時間を測られないという違いがあります。

働き方③フリーランス

3つ目は、フリーランスです。

フリーランスとは、組織に属さずに個人で仕事を請け負う働き方のことです。

単発の仕事毎に契約をし、自分の経験や専門技術を活かせるため、最も自由度が高いと言えます。

ただし、仕事を取る努力は会社員よりも大変なことも多く、また、仕事がないときには収入もなくなります。さらに、社会保険の加入手続きや法人税の申告等も、基本的には自力でやらなければなりません。

近年では、インターネット環境の整備やクラウドサービスの浸透によって、フリーランスとして時間や場所を気にしない働き方も増えてきています。

行動力を活かせるADHDのある人向きの働き方とは言えるものの、収入の面や、マルチタスクになりやすいことには、注意しておいた方がよいでしょう。

ADHDある人に向いてない仕事3選

一般的に、ADHDのある人には、スケジュール管理を求められる仕事や正確性を求められる仕事は向いていないと言われています。

ADHDのある人には、以下のような仕事が向いてないと考えられます。

ADHDある人に向いてない仕事
  • 秘書
  • 経理
  • 総務

秘書のように細かなスケジュール調整が必要となる仕事は、時間感覚の実感が弱いADHDのある人には向いてないことがあります。

経理と総務は、細かな作業が必要となる事務職の代表例です。

経理職は淡々とした定型的な作業をこなすことが基本となる上に財務管理を行うため、ミスに厳しい職種です。

一方、総務は扱う業務内容が多岐にわたるため、一見するとADHDのある人の多動性を活かせるように思います。

しかし、マルチタスクをする必要があるので、ADHDのある人の場合は作業効率がガクンと落ちることがあるかもしれません。

また、いずれもデスクワークが主であり、行動力を活かせないという点もADHDのある人にはネックになってくるでしょう。

なお、以上の仕事は、あくまで一般論です。以上の仕事以外にも、同様の特徴がある仕事であれば、ADHDのある人に向いてない可能性が高いでしょう。

同じの仕事であっても、向いてないかどうかは、実際のあなたや実際の職場の環境、マニュアル、サポート体制などによって異なります。例えば、ADHDのある人が接客業で活躍する事例もあります。

実際のあなたに向いてる仕事は、支援機関に相談する中で、具体的に見つかっていくはずです。働きたい仕事がある場合、以上の仕事を参考にしつつ、ご自身で調べてみたり、専門家や支援機関に相談したり、実際の求人元に問い合わせたりしてみましょう。

ADHDのある人にオススメの仕事術5選

ADHDのある人が活躍しづらい業務の担当になった場合でも、仕事を続けることは充分に可能です。

その際には、ADHDの特性を補いつつ活かした仕組みづくりをすることが重要になってきます。

ミスをカバーする準備ができていれば、安心して仕事に取り組めますよね。

この章では、ADHDのある人にオススメの仕事術について解説します。

ご自身の特性に合わせて取り入れてみてください。

仕事術①整理整頓する時間をあらかじめ決めておく

仕事術①整理整頓する時間をあらかじめ決めておく

ADHDの人は、あらかじめ整理整頓をする時間を決めておきましょう。

ADHDの人は掃除が苦手なため、机の上を散らかったままにしがちです。

他の業務に気を取られるあまり、大切な書類をなくすということも起こり得ます。

こうした事態を避けるために、整理整頓だけをする時間を取るとよいでしょう。

これは物理的なレベルにとどまらず、思考のレベルにも応用できる仕事術です。

ADHDの人は優先順位を決めて行動することが得意ではありません。

大変な業務や緊急の業務をつい先延ばしにすることがあります。

そのため、どの業務を優先的にやるべきかなど「頭の中を整理整頓する」ということも、ADHDの人が仕事を進めていく上では大切なのです。

一日のうち短い時間でかまわないので、「整理整頓の時間」を取るようにしましょう。

仕事術②リスト化を徹底する

仕事術②リスト化を徹底する

仕事術の2つ目は、「リスト化の徹底」です。

これも整理整頓に似たものになりますが、見落としや忘れ物が多いADHDの人は、やるべきことを忘れることが多いです。

こうした抜け落ちは、タスクリストをつくることで回避できます。

するべき仕事を書きだして、任務が完了したら線を引いて消す習慣をつけるようにしましょう。

関連して、ADHDとマルチタスクの関係は、下記コラムに書いています。ご覧ください。

仕事術③自分だけのマニュアルをつくる

仕事術③自分だけのマニュアルをつくる

オススメしたい仕事術の3番目は、「自分だけのマニュアルをつくる」です。

仕事をしていると、前任者からの引き継ぎを受けるような場面もあるでしょう。

その際には、口頭説明だけでなくマニュアルも一緒に渡されるかもしれません。

しかし、それはあくまでも前任者にとって最適な作業手順であって、あなたにとって最適だとは限りません。

特にADHDの人は仕事の進め方にこだわりを持っている場合もあるため、自分が理解しやすい仕方で業務をまとめた方がよいでしょう。

加えて、ADHDの人は、一般的なマニュアルに注意書きのないところでもミスを避けるために自分なりにアレンジして追記する必要が出てきます。

新しく業務を引き継いだ際には、自分専用のマニュアルを作成するようにしましょう。

仕事術④メモ帳とペンを常に持ち歩き、活用する

仕事術④メモ帳とペンを常に持ち歩き、活用する

4つ目の仕事術は、「メモ帳とペンを常に持ち歩き、活用する」というものです。

ADHDのある人は、メモを取ろうと心掛けていても、肝心のメモ帳とペンを忘れるという場合があります。

そのため、持ち歩きに便利な「小さいサイズのメモ帳とペン」をスーツの胸ポケットに入れるなどして、常に携帯できる工夫をするとよいでしょう。

字を書くことが苦手であれば、スマホのメモの機能が便利です。

ADHDの人は、「何が大事な情報なのか」「何をメモしたらよいのか」がわからないことがよくあります。

書く内容(時間・締切・用件・場所など)を決めておいたり、メモのテンプレートを用意しておいたりすると便利です。

ADHDの人にとって、メモを取ることは特に有効です。

というのも、注意力が散漫になりがちなため、他の情報に気を取られて耳から入ってきた情報を記憶するのが困難だからです。

そのようなときにメモ帳があれば重宝します。

手を動かすことは、集中力を保つという意味でも効果的な手段のひとつです。

ぜひ日頃からメモ帳とペンを持ち歩いて、メモをつける習慣を身につけてください。

メモをつけるときには、「メモ帳をなくす」「メモが乱雑になり、後で見返した際に読めなくなる」といった点にも注意をしましょう。

仕事術⑤ゲーム要素を取り込んでみる

仕事術⑤ゲーム要素を取り込んでみる

最後にオススメしたいのが、「ゲーム要素を取り込んでみる」という工夫です。

医学博士である星野仁彦先生は、ADHDの人はゲームやネットなどにはまりやすく、寝るのも忘れてのめり込む傾向が顕著だと指摘しています。
(参考:星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち』)

これは同時に、ゲームやネットにはまりやすい傾向を利用できれば、仕事に対しても集中力を切らさずに取り組めるということを意味しています。

タイムアタック形式のようにどれだけ早く作業を終えられるか計測してみたり、一緒に仕事をしている同僚とどちらが多く契約を取れるかを競ってみるなど、仕事の中にゲーム性や勝負など楽しめる要因を作ってみるとよいでしょう。

ゲーム要素を取り入れることで、楽しみを見出し、興味を持ちづらい事柄であっても意欲的に取り組めるようになるはずです。

ADHDの特性の仕事上の強み・弱み

ADHDのある人に向いてる・向いてない仕事があるといわれるのは、ADHDの特性には、仕事上の強み・弱みになる部分があるからです。

この章では、ADHDの特性の仕事上の強み・弱みについて解説します。

紹介した以外の仕事を探す参考にもなると思います。ぜひご覧ください。

①ADHDの特性の仕事上の強み

ADHDのある人が就職する上で強みになる点として、以下の5つが挙げられます。(参考:榊原洋一、高山恵子『図解 よくわかる大人のADHD』)

ADHDの
  • 独創性に富んでいて発想力がある
  • 好奇心旺盛でチャレンジング
  • 感覚に優れていて周囲の環境に敏感
  • 興味のある分野であれば寝食も忘れて没頭できる
  • 決断力があってスピーディーに物事を判断できる

中でも、ADHDのある人の発想力や独創性が大きな強みになるという話は有名です。

福島学院大学大学院教授の星野仁彦氏は、ADHDのある人の独創性が「過集中」の傾向とあわさることで優れた成果をあげられると指摘しています。

「過集中」とは、自分の興味、関心の有無によって集中力と意欲が一気に高まるADHDのある人に典型的な特徴の一つです。(参考:星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち』)

ADHDのある人の好奇心や独創性は、強みにも弱みにもなる症状です。

過集中傾向とあわせてプラス方向に活用できれば、自分の才能や能力にあった職種で生き生きと仕事をすることができ、結果的に素晴らしい業績を残せる可能性があります。

②ADHDの特性の仕事上の弱み

ADHDのある人が就職する上で弱みになる点として、以下の5つが挙げられます。(参考:日本精神神経学会『今村明先生に「ADHD」を訊く』)

ADHDの弱み
  • 書類の記入漏れなどのミスをしやすい
  • 仕事の優先順位をつけるのが苦手で先延ばししがち
  • マルチタスクをしようとすると業務効率が落ちる
  • 机のうえを散らかしがちで、書類や物を失くす
  • 他人の意見を聞かずに応答したり行動する

以上の特徴はADHDのある人の職務上の困難としてよく挙げられるものです。これらをカバーするための工夫は、サポート団体などと一緒に考えていくことが可能です。

就職先を探すときには、こうした短所の影響が出来にくい仕事や弱みへの対策が立てやすい職場を選んでみるのも一つの手です。

ADHDのある人に合った仕事を見分けるためのチェックポイント2点

この章では、ADHDのある人に合った仕事を見分けるためのチェックポイントについて解説します。

適職を探す上で重要なのは、ADHDの特性の中でも、自分はどの特性があるのかを見極めることです。

ADHDの特性が原因で仕事がうまく進められずに転職を考えている人や、これから就職先を探そうとしている人は、ぜひ以下のタイプ別チェックポイントを参考にしてあなたに合った仕事を考えてみてください。

自分の特性がわかりにくいときや実際に仕事を探すときは、客観的に強みや弱みを判断してくれる人や支援機関に相談することをオススメします。

ポイント①不注意の傾向が強いADHDのある人:正確性を求められない仕事かどうか

不注意の傾向が強いADHDのある人:正確性を求められない仕事かどうか

不注意の傾向が強いADHDのある人は、正確性を求められないことを基準に仕事を考えるとよいでしょう。

このタイプの人は、見落としや物忘れをしやすいため、細かな事務作業や確認作業を必要とする仕事はあまり向いていません。

特に一つのミスが大きな損失に繋がるような仕事は避けた方がよいでしょう。

電車の車掌やバスの運転手のような仕事に就くと、ちょっとした不注意が大きな事故に繋がる可能性があるため特に注意が必要です。

反対に、豊かな発想力や独創性を活かせるクリエイティブな仕事だと才能を活かせる可能性があります。

不注意の傾向が強いADHDのある人は、正確さの代わりに企画力が試される仕事に就くと活躍できるでしょう。

ポイント②多動・衝動性の傾向が強いADHDのある人:じっとすることを求められない仕事かどうか

多動・衝動性の傾向が強いADHDのある人:じっとすることを求められない仕事かどうか

じっとしているのが苦手な多動・衝動性の傾向が強いADHDのある人は、「じっとしなくてもよいか」を軸に職種を選びましょう。

このタイプの人は、デスクワークよりも外回りが基本になる仕事や、出張が多い業種に就くと能力を活かせる可能性があります。

また、淡々とした日常の繰り返しが苦手な人もいます。

そのため、就労時間や業務内容が固定されている仕事は苦痛に感じることがあるかもしれません。

フレックス制やフリーランスに多い仕事に就くことで、成功しやすくなることもあるでしょう。

多動・衝動性の傾向が強いADHDのある人は、行動力を活かすことのできる、自由度の高い仕事に就くと活躍できるでしょう。

ADHDのある人が自分に合った仕事を探すためにできる対策4選

この章では、ADHDのある人が自分に合った仕事を探すためにできる対策について解説します。

ADHDのある人が利用できる支援機関はたくさんあります。また、無料で利用できるものもたくさんあります。

悩みを一人で抱え込まずに、支援機関に相談することをオススメします。

対策①医師やカウンセラーに相談する

対策①医師やカウンセラーに相談する

まずは、医師やカウンセラーに相談してみることが大切です。

特性に関する悩みならともかく、就労の悩みは医師に話すべきでないと思う人もいるかもしれません。

しかし、ADHDに伴って生じる悩みである以上、専門の医師はそういった相談も受け付けています。安心して悩みを打ち明けてみてください。

継続して診てもらっているかかりつけの医師であれば、あなたの特性や悩みに合ったアドバイスを得られるでしょう。

また、現在、医師の診断しか受けていないという人は、専門の臨床心理士・公認心理師などによるカウンセリングを受けるのも一つの手段です。

カウンセラーとあなたの特性や困っていることについて一緒に解決策を考えたり、職場に関する相談もできますので、お困りであれば、カウンセリングも視野に入れてみてください。

どういったカウンセラーを選んだらよいかわからなければ、日本臨床心理士会のウェブサイト「臨床心理士に出会うには」から検索が可能です。

対策②支援機関を利用する

2つ目は、支援機関を利用することです。

ADHDでお悩みの人が頼れる公的な支援機関として、以下が挙げられます。

発達障害者支援センターでは、確定診断が下りていなくても、ADHDの特性に伴う困難があれば相談を受け付けています。

また、地域障害者職業センター障害者就業・生活支援センターでは、就労に関するお悩みや職業相談を受け付けているので、特に仕事のことでお困りの人に向いているかもしれません。

いずれの支援機関も、基本的には無料でサービスを提供しています。

また、ADHDに特化していなくても、ハローワーク職業訓練校などで、専門的な職業訓練を受けながら、「どんな仕事が自分に合っているのか」を考えるのもよいでしょう。

どの支援機関を利用すべきかわからない場合には、お住まいの自治体の障害福祉を担当する部署・窓口に相談してみてください。

対策③就労移行支援事業所に通所する

「就労移行支援事業所」は、発達障害や病気がありで、一般企業への就職を目指す人に向け、就労移行支援を実施しています。
(私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)もその一つです)

職業相談だけでなく、メンタル面のケアや、専門的なスキルの講習、実際の就職活動の支援、インターン先の紹介など、包括的なサポートを行っている点に特徴があります。

運営主体は様々ですが、いずれも公的機関から認可を受けていますので安心してご利用いただけます。

事業所によっては、就職後の職場定着までサポートしているところもあります。

職場定着支援とは、あなたと職場の間に入って、仕事での悩みを調整したりするということなどです。

実際、障害者職業総合支援センターの調査研究によれば、職場定着支援を受けた人とそうでない人で、1年後の職場定着率に20%近い差が出ています。
(出典元:障害者職業総合支援センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」)

インターネットで「就労移行支援事業所 ○○市」などと検索すると、お近くの事業所が見つかると思います。

相談は無料ですので、支援内容に興味を抱いた事業所に、詳細を問い合わせてみることをオススメします。

就労移行支援事業所の詳細は、下記コラムをご覧ください。

対策④障害者雇用を検討する

4つ目は、障害者雇用を検討することです。

求人・雇用の中には、障害者雇用というものがあります。

障害者雇用とは、障害のある人を対象とした雇用枠のことです。障害の特徴や内容に合わせて安心して働けるようにするため、障害者雇用以外の雇用枠である一般雇用とは就労条件が異なります。

障害者雇用であれば、ADHDの特性や程度に応じて、職場から業務内容や業務量への配慮を得ながら働くことができます。

これまで一般雇用で働いてきた発達障害のある人は、障害者雇用で働くことで、これまでと同じ仕事であっても就労のつらさを軽減できるかもしれません。

一方で、障害者雇用は、一般雇用に比べると給与や昇進などのキャリア面において水準が低いこともよくある話です。

障害者雇用と一般雇用のどちらにするかは、あなたのADHDの特性や程度、経済状況、生活と仕事の優先順位などを総合的に考えて判断することが大切です。

雇用枠を考えるときにも、支援機関や就労移行支援事業所などに相談しながら検討することをオススメします。

障害者雇用については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

改めて、ADHDとは?

改めて、ADHDとは?

改めて、ADHDの概要を紹介します。既にご存知かもしれませんし、これまでに紹介した内容と重複する部分もありますが、全体的な理解が深まると思いますので、ご覧ください。
(参考:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、田中康雄『大人のAD/HD』、岩波明『大人のADHD:もっとも身近な発達障害』)

①ADHDの概要

①ADHDの概要

ADHDとは、「注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)」を意味する発達障害の一種です。

ADHDには多くの特性がありますが、その中でも下記の2点がよく見られるものとして挙げられます。

  • 不注意…忘れ物やケアレスミスが多く、確認作業を苦手とする
  • 多動・衝動性…気が散りやすく、貧乏ゆすりなど常に身体を動かしていないと落ちつかない

その他にもよく挙がる特性の現れ方として、「マルチタスクやスケジュール管理が苦手」といったものがあります。

②ADHDの診断は医師だけが可能

②ADHDの診断は医師だけが可能

「自分が(ある人が)発達障害(ADHD)かどうか」の診断は医師による問診や心理士が実施する心理検査を中心に行われます。逆に言うと、医師以外には「発達障害かどうか」の診断・判断はできません。

あなたが(ある人が)「発達障害かどうか」をハッキリさせたいのであれば病院を受診してみることをオススメします。

「診断を受けるのが不安」と思う人は、発達障害者のサポートを行う団体(各都道府県にある発達障害者支援センターなど)に「病院に行くべきかどうか」「診断をつけるメリットやデメリット」などを相談することができます。

③ADHDの医学的な診断基準

下記は、2013年にアメリカ精神医学会がまとめた『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』に挙げられているADHDの診断基準です。

次のような診断基準に当てはまればADHDの可能性があります(あくまで可能性です。「どの程度なら『当てはまる』と言えるか、他の病気や障害の可能性はないかなども含めて、「ある人がADHDかどうか」は、医師だけが判断できます)。

不注意
  • (a)学業、仕事、または他の活動中に、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする
    (例:細部を見過ごしたり、見逃してしまう、作業が不正確である)
  • (b)課題または遊びの活動中に、しばしば注意を持続することが困難である
    (例:講義、会話、または長時間の読書に集中し続けることが難しい)
  • (c)直接話しかけられたときに、しばしば聞いていないように見える
    (例:明らかな注意を逸らすものがない状況でさえ、心がどこか他所にあるように見える)
  • (d)しばしば指示に従えず、学業、用事、職場での義務をやり遂げることができない
    (例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる、また容易に脱線する)
  • (e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である
    (例:一連の課題を遂行することが難しい、資料や持ち物を整理しておくことが難しい、作業が乱雑でまとまりない、時間の管理が苦手、締め切りを守れない)
  • (f)精神的努力の持続を要する課題(例:学業や宿題、成人では報告書の作成、書類に漏れなく記入すること、長い文書を見直すこと)に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う
  • (g)課題や活動に使うようなもの(例:学校教材、鉛筆、本、道具、財布、鍵、書類、眼鏡、携帯電話)をしばしばなくしてしまう
  • (h)しばしば外的な刺激(成年後期および成人では無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう
  • (i)しばしば日々の活動(例:用事を足すこと、お使いをすること、青年後期および成人では、電話を折り返しかけること、お金の支払い、会合の約束を守ること)で忘れっぽい

上記の項目のうち、6つ以上の項目が少なくとも6か月以上続いている
症状のいくつかが2つ以上の環境(職場・家庭・学校など)で見られる
12歳以前から複数の症状が見られる。

多動性および衝動性
  • (a)しばしば手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする、またはいすの上でもじもじする
  • (b)席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる
    (例:教室、職場、その他の作業場所で、またはそこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所を離れる)
  • (c)不適切な状況でしばしば走り回ったり高い所へ登ったりする
    (注:成人では、落ち着かない感じのみに限られるかもしれない)
  • (d)静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない
  • (e)しばしば”じっとしていない”、またはまるで”エンジンで動かされているように”行動する
    (例:レストランや会議に長時間留まることができないかまたは不快に感じる;他の人には、落ち着かないとか、一緒にいることが困難と感じられるかもしれない)
  • (f)しばしばしゃべりすぎる
  • (g)しばしば質問が終わる前に出し抜いて答え始めてしまう
    (例:他の人達の言葉の続きを言ってしまう;会話で自分の番を待つことが困難である)
  • (h)しばしば自分の順番を待つことが困難である
    (例:列に並んでいるとき)
  • (i)しばしば他人を妨害し、邪魔する
    (例:会話、ゲーム、または活動に干渉する;相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない;青年または成人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りすることがあるかもしれない)

上記の項目のうち、6つ以上の項目が少なくとも6か月以上続いている
症状のいくつかが2つ以上の環境(職場・家庭・学校など)で見られる
12歳以前から複数の症状が見られる。

④ADHDの「治療」について

ADHDの特性に働きかける薬や対応などの治療は確立されてきています。

その例は、下記コラムをご覧ください。

⑤ADHDは、生まれつきのもの

⑤ADHDは、生まれつきのもの

ADHD(発達障害)は、生まれつきのものです。ADHDの特徴は幼少期から見られます。

そのため「成長してからADHDになる(成長につれてADHDになる)」ということはありません。

また、以前は「ADHDは、子ども特有のもの」と考えられていましたが、現在の医学では、「ADHDの症状は、大人になっても継続するもの」であるとされています。(ただし、多動・衝動性の特性は、一般的に成長するうちに薄れることも多く見られます)

このコラムでもご紹介してきたとおり、対策、相談先、特性を緩和する薬などもたくさんあります。苦労や困難が生じることもあるとは思いますが、必要以上に不安に感じる必要はありません。

⑥いわゆる「大人のADHD」とは

近年、「大人のADHD」という言葉が使われるようになってきました。

大人のADHDとは?
  • 幼少期からADHDの特性は持っていたものの、「大人になってからADHDだと気づいた状態」を指す俗語のことです。決して「大人になってからADHDになった」わけではありません。
    就職後に正確な処理・確認作業・管理業務を求められるようになったことで、困難に直面しADHDの特性があることに気付いたという人は少なくありません。

「大人のADHD」について詳しく知りたい人は下記コラムをご覧ください。

⑦いわゆる「グレーゾーン」とは

⑦いわゆる「グレーゾーン」とは

ADHDの傾向が確認されるものの、確定診断が下りるほどではないほどの状態・人のことを俗に「(ADHDの)グレーゾーン」と言います。

グレーゾーンの場合、確定診断がないことから利用できる公的なサービスが限定されることがあります。
(例:障害者手帳を取得できないため障害者手帳が必須なサービスを利用できない)

ただし、グレーゾーンの人でも「発達障害者支援センター」のようなサポート団体への相談は可能です。

確定診断があってもなくても、またADHDに関係してもしなくても「発達障害に関する悩み事」は専門的な知識を持つ人たちに相談した人が対策や解決策を見つけやすくなるでしょう。

⑧ADHD以外の発達障害

発達障害はその特徴によっていくつかのグループに分けられています。

ADHD以外の主な発達障害には、ASD(自閉症スペクトラム障害)、SLD(限局性学習障害)などがあります。

ADHD・ASD・SLDの複数が併存する人もいます。気になる人は下記コラムご覧ください。

まとめ:あなたの特性にあった仕事は、きっと見つかります

実際の就職活動で困った際には、一人で抱え込まないでください。

就労移行支援事業所などの支援機関に相談しながら、ご自身のADHDの傾向・特性や求人内容を分析しつつ行うことをオススメします。

このコラムがお役に立ったなら幸いです。

よくある質問①

ADHDの特性に向いてる仕事/職業(適職)には何がありますか?

例としては、デザイナー、アニメーター、イラストレーター、営業職、ジャーナリスト、カメラマン、起業家、プログラマー、エンジニア、研究者が挙げられます。詳細はこちらをご覧ください。

よくある質問②

ADHDの人が自分に向いてる仕事/職業(適職)を見つける方法はありますか?

就労移行支援事業所の利用が考えられます。就労移行支援の詳細は、下記コラムをご覧ください。

就労移行支援とは? 支援内容やメリット、利用までのステップを解説

監修志村哲祥

しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。 臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。

【著書など(一部)】
子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数

日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

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翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

監修角南百合子

すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい

執筆寺田淳平

てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→

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