発達障害のある人に向いてる働き方 ADHD・ASD・LD/SLDごとに解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)利用者の好崎順子(仮名)です。
発達障害のあるあなたは、働き方についてお悩みではないでしょうか?
発達障害という言葉も、最近はテレビやニュースでも耳にすることも増え、以前よりは受け入れられるようになってきたように思います。
しかし、当事者の立場で考えると、発達障害の特性は仕事上の苦労や不安、悩みにつながることが多くあります。
- 今の仕事が合っているのか分からない
- もっと、向いてる仕事があるんじゃないか?
このコラムでは、発達障害のある人に向いてる働き方、向いてない働き方について解説します。
ご自身の発達障害の特性を理解し、自分に合った仕事に就くことで、あなた本来の能力を発揮していきましょう。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、発達障害のある人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
発達障害のある人に向いてる働き方:種類別に解説
この章では、発達障害のある人に向いてる働き方について種類別に解説します。
ただし、発達障害の特性は、人によって異なります。また、それぞれの職場や業務内容によって向き・不向きは異なります。
この章で解説する働き方は、一般的に発達障害の特性を活かせる可能性が高い働き方であり、あなたの特性とは合致しないかもしれません。
性格や経験による個人差もあるため、あくまで参考として、あなた自身に向いてるかどうかを検討してみてください。
まずは、発達障害のある人にも向いてる働き方があることを確認し、その上で、専門家や支援機関などと、あなたに向いてる仕事について相談しましょう。
働き方①ADHDの特性と向いてる働き方
ADHDのある人が得意なことや不得意なことは、以下のとおりです。(参考:政府広報オンライン「大人になって気づく発達障害 ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を!」)
- 発想力や独創性に優れている
- アイデアがたくさん浮かぶ
- 好奇心が強く、行動力や決断力がある
- 興味のあることには抜群の集中力を発揮する
- 忘れ物や失くし物が多い
- 注意散漫でのケアレスミスが多い
- 整理整頓や、スケジュール管理、タスク管理が苦手
- じっとしていられず落ち着きがない
- 思いついたら考える前に実行する
- 気が散りやすい
- 興味のあることは集中し過ぎて過集中になる
- 段取りを考えながら並行作業をすることが苦手
ADHDのある人の場合、発想力や独創性に優れている点や、アイディアがたくさん浮かぶ点、好奇心が強く行動力や決断力がある点を強みとして持っています。
そのため、仕事中一か所に留まることが少ない、自由な発想を活かせる仕事やスピード感が必要な働き方が向いてると言われています。
また、興味のある分野に高い集中力を発揮できるという特性があります。専門的な知識が必要な仕事であっても、興味があれば好奇心と行動力をもって取り組むことができるでしょう。
集中力を持続しやすい静かで刺激の少ない環境や、柔軟な勤務時間やテレワークの制度がある職場が向いてるでしょう。
働き方②ASDの特性と向いてる働き方
ASDのある人が得意なことや不得意なことは、以下のとおりです。(参考:政府広報オンライン「大人になって気づく発達障害 ひとりで悩まず専門相談窓口に相談を!」)
- 特定領域の記憶力が優れている
- 一つのことをコツコツと集中して行うことができる
- ルールを守る真面目さや細やかさがある
- 特定のことに強い関心を持ち、こだわりが強い
- 他者とコミュニケーションを取るのが苦手
- 他者に対する興味が薄い
- 相手の気持ちや状況を理解することが苦手
- 感覚過敏でストレスを感じやすい
ASDのある人は、大人数と接することや行動など共同作業を必要とする働き方が苦手な傾向にあるといわれています。
一方で、一つのことをコツコツと行う集中力があるため、マルチタスクの無いマニュアル通りに進められる働き方や定型作業が中心で淡々と仕事を進めやすい働き方が向いてる可能性があります。
ASDのある人は、関心分野を活かせる働き方であれば、抜群の集中力を発揮します。ただし、こだわりが強いためマイペースにできるということが大切です。専門性やこだわり、視覚処理能力を活かせる働き方であれば向いてるでしょう。
ASDの特性として、感覚が過敏であることや先が予測できない状況に不安を感じることがあるため、人の出入りが激しくない職場やスケジュール変更が少ない職場が向いてると言われます。
以上の特徴がある働き方であれば、ASDのある人に向いてる可能性が高くなります。
働き方③LD/SLDの特性と向いてる働き方
LD/SLDのある人が特性による困難をなるべく軽減して仕事をするためには、以下のような職場環境がオススメです。
- 技能の一部に困難があることを理解してもらえる職場
- 困難な部分の補助をするツールを活用できる職場
困難な部分の補助をするツールの活用方法として、以下のような例があります。
- マニュアルを自分で読む代わりに音声読み上げ機能を使う
- メモを書き取る代わりにスマートフォンの音声入力を活用する
- 売上の計算をする場合にスマホやパソコンの電卓機能を使う
また補助をするツールが無い場合、以下の対応を取ってもらえないか、職場に確認してみましょう。
- 上司に仕事の依頼を早めに伝えてもらうようお願いする
- 極端に苦手な仕事は他の人に手伝ってもらう
- 余裕のあるスケジュールにしてもらうようにする
- 口頭で理解できない場合は実際にやって見せてもらう
ご自身の工夫や職場の配慮によって取り除くことができれば、あなたの望む働き方ができる可能性は高まるでしょう。
発達障害のある人に向いてない働き方:種類別に解説
この章では、発達障害のある人に向いてない働き方について種類別に解説します。
こちらと同様に、実際のあなたの特性や実際の職場によっては、絶対に向いてないというわけではありません。
実際のあなたに向いてるかどうかは、専門家や支援機関などに相談しながら確認していきましょう。
働き方①ADHDのある人に向いてない働き方
ADHDのある人には、計画的に行動したり、同じ場所に留まり細かな作業をする働き方は向いてません。
ADHDのある人は、また、じっとしていられず落ち着きがなく、気が散りやすかったり、集中し過ぎて過集中になったりする傾向があります。加えて、計画を立てたり、計画的に行動することが苦手で、思いついたら深く考える前に実行することもあります。
例えば、秘書であればスケジュールの管理が必要になります。また、経理事務は、計算を間違えてはならず、数字上の完璧さが求められます。総務も、社内の細かな業務をこなす必要があります。
このように、計画的に行動し、同じ場所に留まり細やかな作業が求められる働き方などは避けたほうがよいでしょう。
スケジュール管理や並行作業が苦手なADHDのある人は、作業のリスト化や自分専用の仕事のマニュアルを作るといった工夫が大切になります。
働き方②ASDのある人に向いてない働き方
ASDのある人は、その内心を的確に推測しつつ人とコミュニケーションをとったり、複数のことを同時進行させたりすることが苦手といわれています。
例えば、営業職であれば、複数の企業やそれぞれの担当者とコミュニケーションをとりながら商談を進める必要があります。また、接客業であれば複数のお客さんとの対応をこなさなければなりません。
人とのコミュニケーションが多い働き方や、複数の仕事を同時に進める必要性がある働き方はあまり向いてないでしょう。
働き方③LD/SLDのある人に向いてない働き方
LD/SLDのある人に向いてない働き方として、以下のようなものがあります。
- 文字や文章を読むのが苦手なLD/SLDのある人が、膨大なマニュアルを使用する仕事をする
- 字を書いたり文章を書いたりするのが苦手なLD/SLDのある人が、手書きの必要な書類作成の仕事をする
以上のような働き方は、ご自身の負担が重くなるため、注意しておく必要があるでしょう。
ただし、困難を感じる部分は一部であるため、補助ツールの利用や職場の理解があれば、向いてない働き方は特にないと言われています。
自分の特性の度合いを見極め、補助ツールで補えるかどうか、職場の理解を得られるかどうかなどを確認することが大切です。
発達障害のある人に向いてる仕事
発達障害のある人は、得意なことと苦手なことがハッキリと分かれているケースがあります。長く働くなら、自分の特性を理解して、向いてる仕事を選択できると良いでしょう。
なお、その適性は人によって異なります。同じ仕事であっても、向いてるかどうかは、実際のあなたの特性や実際の職場の環境、マニュアル、サポート体制などによって異なります。
実際のあなたに向いてる仕事は、支援機関に相談する中で、具体的に見つかっていくはずです。働きたい仕事がある場合、解説する仕事を参考にしつつ、ご自身で調べてみたり、専門家や支援機関に相談したり、実際の求人元に問い合わせたりしてみましょう。(参考:星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち〈職場編〉』、木津谷岳『これからの発達障害者「雇用」』、本田秀夫『自閉症スペクトラム』、ダイヤモンド・オンライン「発達障害のある人に向く職業、向かない職業は何か」、発達障害ナビポータル「自分に向いている職業・職種が知りたい」、発達障害ナビポータル「職場開拓」)
ADHDのある人に向いている仕事は、以下のとおりです。
- 発想力や独創性、行動力、好奇心を活かせる仕事
- 一か所に留まることが少ない仕事
- 関心分野と職種の専門性が合致した仕事
ASDのある人に向いている仕事は、以下のとおりです。
- 決まった作業手順があり、それに集中して取り組める仕事
- 定型作業が中心で淡々と進めやすい仕事
- 専門性やこだわり、視覚処理能力を活かせる仕事
LD/SLDのある人の場合、苦手部分をスマホやタブレットなど補助道具をうまく活用したら、特に支障なく仕事できるケースも多くあります。その上で、オススメの職場環境は以下のとおりです。
- 技能の一部に困難があることを理解してもらえる職場
- 困難な部分の補助をするツールを活用できる職場
発達障害のある人に向いている仕事については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
発達障害のある人が仕事を探す際のポイント
発達障害のある人が仕事を探す際のポイントは、以下のとおりです。
- 長く働き続けられそうか
- 障害の特性に理解があるか
- 福利厚生制度が整備されているか
- 働き方が柔軟か
- 就労条件があっているか
- 職場環境があっているか
- 興味のある仕事か
発達障害のある人が仕事を探す際のポイントについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
発達障害とは?
発達障害とは、脳の機能的な問題や働き方の違いにより、物事の捉え方や行動に違いが生じることで、日常生活および社会生活を送る上で支障が出る、生まれつきの脳機能障害のことです。(参考: American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、こころの情報サイト「発達障害(神経発達症)」、NHK福祉ポータル ハートネット「そもそも「発達障害」って?|大人の発達障害ってなんだろう? - 大人の発達障害」、宮尾益知・監修『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』、松本卓也、野間俊一・編著『メンタルヘルス時代の精神医学入門 ーこころの病の理解と支援ー』、福西勇夫・山末英典・監修『ニュートン式 超図解 最強に面白い!! 精神の病気 発達障害編』)
発達障害は主に、以下の3つの診断名に分類されます。
- ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)
- ASD(自閉スペクトラム症/広汎性発達障害)
- LD/SLD(限局性学習症/限局性学習障害)
同じ診断名でも、人によって多様な特性が現れるのが発達障害の特徴です。また、いずれかの発達障害のある人は、他の発達障害が併存している可能性もあります。
発達障害の概要や種類、原因、治療方法などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
まとめ:自分らしさを大切にするために
筆者自身、2年前にADHDとの診断を受けてから、今も自分の特性と向き合い続けています。
自分と向き合う時間は、前に踏み出すための時間でもあると思います。
まずはご自身の発達障害の特性を知ることから始めて、新たな一歩を踏み出していきましょう。
キズキビジネスカレッジ(KBC)では、その人の適正を分析しながら、一人ひとりに合わせた就労のサポートを行っています。
あなたは一人ではありません。まずはご自身のことを知り、自分に合った働き方を見つけていきましょう。
ADHDのある人に向いている働き方を教えてください。
ADHDのある人は、仕事中一か所に留まることが少ない、自由な発想を活かせる仕事やスピード感が必要な働き方が向いてると言われています。
詳細については、こちらで解説しています。
ASDのある人に向いている働き方を教えてください。
ASDのある人は、専門性やこだわり、視覚処理能力を活かせる働き方であれば向いてるでしょう。
詳細については、こちらで解説しています。
LD/SLDのある人に向いている働き方を教えてください。
LD/SLDのある人の場合、ご自身の工夫や職場の配慮によって取り除くことができれば、あなたの望む働き方ができる可能性は高まるでしょう。
詳細については、こちらで解説しています。
監修志村哲祥
しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。
臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。
【著書など(一部)】
『子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数
日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
監修角南百合子
すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→