ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは? 発達障害のある人に役立つSSTの進め方や具体例を体験談とともに解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
発達障害のあるあなたは、以下のようにお考えではないでしょうか?
- 発達障害が原因で、以前から対人関係が上手くいかず悩んでいる...
- ソーシャルスキルトレーニング(SST)というものがあると聞いたが、どんな効果があるのか知りたい
この記事では、ソーシャルスキルトレーニング(SST)の概要やメリットとデメリット・注意点、進め方、具体例、受けられる施設、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けた発達障害のある人の体験談を紹介します。
お悩みのあなたが、ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは何かを知ることができ、受講の判断もできると存じます。
この記事は、主には「発達障害のある、成人の本人」を対象に執筆しています。
ただし、発達障害の子を持つ保護者や、発達障害の同僚がいる人がご覧になっても参考になると思います。
- 「大人の発達障害 仕事・生活の困ったによりそう本」【監修】太田晴久
- 「大人の発達障害[ASD・ADHD]シーン別解決ブック」【著】司馬理英子
- 「発達障害の子をサポートするソーシャルスキルトレーニング実例集」【監修】腰川一恵、山口麻由美
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、ソーシャルスキルトレーニング(SST)の利用を検討している人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは?
まず、ソーシャルスキルとは、社会の中で他人と関わる際に必要となるスキルです。
- 言葉のスキル
- 気持ちのスキル
- 行動のスキル
- 自己認知のスキル
そしてソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、「ソーシャルスキルを、模倣学習、教示、体験を繰り返しながら学ぶこと」を意味します。
具体的には、複数の参加者がゲームを行ったり、参加者同士でフィードバック(振り返り、感想の述べ合い)を行ったりします(後で説明します)。
発達障害のある人がソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けるメリットとデメリット
発達障害のある人がソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けるメリットは、次のとおりです。
- どのような場面で、どのような言動を取ったらよいかを具体的に学び、成功体験を積み重なることで人との関わりに自信が持てるようになる
ソーシャルスキルトレーニング(SST)にはデメリットはありません。ただし、実際にソーシャルスキルトレーニング(SST)を受ける際には注意点があります。
- ソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けた結果を他の参加者にフィードバック(振り返り、感想の述べ合い)をするときには、叱責に聞こえないようにする。
- 自分はそのつもりはなくても、相手は叱責されたように受け止めることもある
この注意点を学ぶこともソーシャルスキルトレーニング(SST)の一つかもしれません。
重要なのは、参加者同士が成功体験を積み重ねることです。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)の進め方
ソーシャルスキルトレーニング(SST)の一般的な進め方を説明します。
進め方①行動分析
特性に関連して、あなたに必要なソーシャルスキルが何かを、支援員とともに見つけます。
例えば、「ケアレスミスが多い」「コミュニケーションが上手くできない」といった行動の一連の出来事を「どのような時に(条件)」「何をして(行動)」「どうなったか(結果)」の3つに分けて考え、行動パターンを導き出します。
その行動パターンから、できること・できないことを把握します。
進め方②教示
支援員が、あなたに必要なソーシャルスキルトレーニング(SST)を「どうしてそれをやるのか」「いつ、どのようにやるのか」を絵や言葉を利用して説明します。
進め方③モデリング
ソーシャルスキルについて、実際に手本を示します。
支援員のみならず、利用者が行うこともあります。
また、よい例だけではなく、悪い例も示します。
進め方④リハーサル
教示やモデリングで示されたことを繰り返し練習します。
進め方⑤フィードバック
リハーサルの内容を支援員、利用者に良い点、改善点を評価してもらいます。
進め方⑥般化
日常の必要な場面で、適切なソーシャルスキルを使えるようにします。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)の具体例
ソーシャルスキルトレーニング(SST)は大きく分けてゲーム、ロールプレイ、日常生活で般化の3つがあります。
具体例を下記に説明します。
なお、ゲームに関しては、「ソーシャルスキルトレーニング(SST)のために作られたもの」ではありません。
ですが、楽しく遊べてソーシャルスキルトレーニング(SST)の効果があります。
ゲーム①ボブジテン
スタートプレイヤーがお題カードの山札からカードをめくり、「カタカナ語」を一切使わずにそのお題のことを説明するゲームです。
公式サイトはこちらです。
(1)このソーシャルスキルトレーニング(SST)が必要な人の例
説明が苦手で、「言っていることがわからない」などと言われることが多い。
(2)このソーシャルスキルトレーニング(SST)の効果
相手に理解できるような説明の方法が身につきます。
ゲーム②はぁって言うゲーム
お題カードに書かれた様々な表現を演じて、それを当ててもらうことを目指すコミュニケーションゲームです。
公式サイトはこちらです。
(1)このソーシャルスキルトレーニング(SST)が必要な人の例
「空気が読めない」と言われることが多い。
(2)このソーシャルスキルトレーニング(SST)の効果
観察力を身に付け、空気が読めるようになります。
ロールプレイ①報告・連絡・相談
ビジネスの基本スキルである報告・連絡・相談のスキルを学びます。
(1)このソーシャルスキルトレーニング(SST)が必要な人の例
報告・連絡・相談が上手くできず、「なんでもっと早く言わなかったの?」などと注意されることが多い。
(2)このソーシャルスキルトレーニング(SST)の効果
報告・連絡・相談の相手、タイミング、方法を習得することで、周囲に迷惑をかけないように業務が進められるようになります。
ロールプレイ②断る
先輩から残業を頼まれた場合、興味のない事に誘われた場合等に上手に断る方法を学びます。
(1)このソーシャルスキルトレーニング(SST)が必要な人の例
頼まれると断れず、業務が自分の許容量を超えて、結果としてできずに周囲に迷惑をかけ、自分も落ち込むことが多い。
(2)このソーシャルスキルトレーニング(SST)の効果
相手に不快な思いをさせない断り方を習得し、業務は自分の許容量を超えずに済み、相手にも快く別の方法を考えてもらえるようになります。
日常生活で般化
ソーシャルスキルトレーニング(SST)は、トレーニングの時間帯以外でも可能です。
トレーニングで身に付けたスキルを日常生活で練習します。
例えば、家族や友人に今日の出来事を簡潔に話して、上司への報告のトレーニングとするといったことも般化になります。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けられる施設
ソーシャルスキルトレーニング(SST)は様々な施設で受けることができます。
下記に、主な例を紹介します。
- 精神科のデイケア
- 就労移行支援事業所
- 就労継続支援A型事業所・B型事業所
- 若者地域サポートステーション
- 地域活動支援センター
- 障害者就業・生活支援センター
就労移行支援の詳細は、下記のコラムをご覧ください。
また、未成年の場合、下記で受けられます。
- 幼稚園や保育所、認定こども園(巡回相談員として専門家が訪問)
- 小学校や中学校(カウンセラーの訪問)
- 大学の研究機関や療育施設
いずれも全国に存在する施設です。
ご自宅・お勤め先などの最寄りの施設にお問い合わせください。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けた発達障害のある人の体験談
実際にソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けた発達障害のある人にアンケートにご協力いただき、前向きな回答を多々いただきました。
結果の一部を下記に記載します。
就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジの利用者の声です。
受講したソーシャルスキルトレーニング(SST)は主に「ビジネスシーン失敗回避術」という、「発達障害の人がビジネスの場でしがちな失敗をしないための、場面別の対応を学ぶ」内容です。
体験談①Aさん(20代)
(1)特性
ASD
(2)ソーシャルスキルトレーニング(SST)受講前の傾向
「空気を読む」ことが理解できず、自分は「コミュニケーション能力が低い」と悩んでいた。
(3)ソーシャルスキルトレーニング(SST)受講した効果
「空気を読む」ことが理解でき、他人を怒らせることがなくなり、コミュニケーションが楽になった。
体験談②Bさん(30代)
(1)特性
ASD
(2)ソーシャルスキルトレーニング(SST)受講前の傾向
ビジネスマナーは何が正しいのか理解できず、どんな場面で失敗が発生するかわからず、不安だった。
(3)ソーシャルスキルトレーニング(SST)受講した効果
場面別に対応例を数パターン学べた。
体験談③Cさん(20代)
(1)特性
ASD、ADHD
(2)ソーシャルスキルトレーニング(SST)受講前の傾向
やるべきことに優先順位をつけられない
(3)ソーシャルスキルトレーニング(SST)受講した効果
状況に合う内容や行動を自己選択できるコツを学ぶことができた。
筆者のソーシャルスキルトレーニング(SST)体験談
実は筆者は発達障害(ADHD)のグレーゾーンです。
体調不良で会社を退職後、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジに通い、ソーシャルスキルトレーニング(SST)の講座「ビジネスシーン失敗回避術」を受講しました。
以前は、「空気が読めない」「あの場であのような発言はだめ」などと言われたことがありました。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)の講座を受講することにより、NG例や、模範例をディスカッション、ロールプレイングを通じて学ぶことができるので、気軽に対人関係を向上させることができます。
あくまでも「練習」なので、失敗を恐れる必要もありません。
筆者は、数回受講することにより、講師からも助言を求められるようになり、対人能力の向上を実感しました。
改めて、発達障害とは?
最後に改めて、発達障害について、ごくカンタンに解説します。
すでにご存知かもしれませんが、これまでに紹介した内容の理解も深まると思いますので、ぜひご覧ください。
①発達障害の概要
発達障害とは、「生まれつきの、脳の機能の発達に関する障害」のことです。
対人関係や注意力などの発達がゆっくりしている一方で、学力には問題がなく、優れた面があることもあるなどの状態です。
大人になるまで発達障害であることに気づかないこともあります。
学生のときまでは、親や教師のサポートによって、特性に伴う困難が表面に出ないことがあるのです。
社会人になって周囲の環境が変わり、困難に初めて直面して「自分は発達障害かも」と気づく人は少なくありません。
発達障害にはいくつかの種類があります。
一口で発達障害と言っても、特性は種類によって、また個人によって異なります。
そして、ソーシャルスキルトレーニング(SST)は、特性ごとに利用するべき内容が異なります。
②ASD
ASDの場合、人との関わり方が独特で、コミュニケーションが苦手です。
- 相互的なやりとりが苦手で、一方的に話し続けたり、相手の話しを聞くだけになったりします。
- 臨機応変に対応することが苦手で、想定外のことが起こるとパニックになったりします。
③ADHD
ADHDの場合、下記の2つのタイプがあります。
- 【不注意】ケアレスミス、忘れ物が頻発する
- 【多動・衝動性】落ち着かず、イライラしやすい
④LD
LDの場合、全般的な知的水準は標準的であるにも関わらず、読み書きや計算ができないという特性があります。
- 読字障害…文字を読みづらい
- 書字表出障害…文字を書きづらい
- 算数障害…計算が苦手
まとめ:あなたのソーシャルスキルを変えていく一助となったなら
これまでのことをまとめます。
- SSTは他人と関わる際に必要となるスキルのトレーニング
- SSTは人との関わりに自信が持てるようになるのがメリット
- 発達障害は脳の機能の発達に強弱ができてしまう症状
- 発達障害の主な3種類として、ASD、ADHD、LDがある
- SSTは、行動分析→教示→モデリング→リハーサル→フィードバック→般化の順で行う
- SSTの具体例はゲームとロールプレイと日常生活
- SSTは、様々な施設で受けられる
発達障害に関係して社会生活に困難があったり生きづらさを覚えたりしている人は、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を利用することで、より生きやすくなっていきます。
ぜひ、ソーシャルスキルトレーニング(SST)を受けられる場所を積極的に探してみてください。
この記事が、あなたのソーシャルスキルを変えていく一助となったなら幸いです。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→
ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、どのようなもののことですか。
まず、ソーシャルスキルとは、「社会の中で他人と関わる際に必要となるスキル」のことです(言葉のスキル、行動のスキルなど)。
そして、ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、「ソーシャルスキルを、模倣学習、教示、体験を繰り返しながら学ぶこと」を意味します。詳細はこちらをご覧ください。
ソーシャルスキルトレーニング(SST)には、具体的にどのようなものがありますか。
まず、大きく分けて「ゲーム」「ロールプレイ」「日常生活で般化」の3つがあります。具体例として、次のようなものがあります。
- ゲーム①ボブジテン
- ゲーム②はぁって言うゲーム
- ロールプレイ①報告・連絡・相談
- ロールプレイ②断る
- 日常生活で般化
詳細はこちらをご覧ください。