LD/SLD(限局性学習症/限局性学習障害)とは? 特性や診断基準を解説 | キズキビジネスカレッジ  

LD/SLD(限局性学習症/限局性学習障害)とは? 特性や診断基準を解説

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。

このコラムでは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)の知見に基づき、LD/SLDの概要などについて解説します。

ぜひご一読ください。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、LD/SLDのある人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
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神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

LD/SLDとは?

LD/SLD(限局性学習症/限局性学習障害、Learning Disorder/Specific Learning Disorder)とは、読む・書く・計算する・推論するなど、特定の学習行為のみに困難が生じる発達障害の一種のことです。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、山末英典・監修『ニュートン式 超図解 最強に面白い!! 精神の病気 発達障害編』、厚生労働省「学習障害(限局性学習症)」、小池敏英・監修『LDの子の読み書き支援がわかる本』、バーバラ・エシャム・文、マイク&カール・ゴードン・絵、品川裕香・訳『算数の天才なのに計算ができない男の子のはなし 算数障害を知ってますか?』

LD/SLDは症状別に、以下の3つの種類に分類されます。

  • 読字障害(ディスレクシア)
  • 書字表出障害(ディスグラフィア)
  • 算数障害(ディスカリキュリア)

LD/SLDのある人は、全ての学習行為に困難が生じるというわけではありません。

いずれかの学習行為、または複数の学習行為に困難が生じている人もいます。計算することのみが不得意、読むことと書くことが不得意などのように、人によって様々です。

また、いずれの学習行為においても、人によって得意なこと、不得意なことは異なってきます。

例えば、読字障害のある人のなかでも、スムーズな音読が不得意な人もいれば、音読はできてもその内容を理解することが難しいという人もいます。

このように、LD/SLDのある人は、学習する事柄が総合的に不得意というわけではなく、ごく一部の事柄に困難が生じるという点が大きな特徴です。

LD/SLDの種類

この章では、LD/SLDの種類について解説します。

種類①読字障害(ディスレクシア)

読字障害(ディスレクシア、Dyslexia)とは、目で見た文字や文章を読むことに困難が生じるLD/SLDのことです。

具体的には、以下のいずれかに困難が生じることをいいます。

  • 読みの正確さ
  • 読みの速度
  • 読解力

読字障害(ディスレクシア)の主な特性は、以下のとおりです。

なお、読字障害(ディスレクシア)のある人全てに、以下の特性が必ずあるとは限りません。また、以下の特性に当てはまる場合でも、必ず読字障害(ディスレクシア)であるというわけではありません。

読字障害(ディスレクシア)の特性
  • 文字がぼやけて見える
  • 文字が黒く塗りつぶされて見える
  • 「わ」と「ね」、「シ」と「ツ」など、形が似た文字を識別できない
  • 「っ」「ゃ」「ょ」などの小さい文字を認識できない
  • ひらがなやカタカナの1文字ずつは読めて理解していても、漢字を認識できない
  • 1文字ずつは読めて理解していても単語になると理解ができない
  • 文章を読んでいる途中で読んでいる場所がわからなくなる
  • 一部を飛ばして読む、適当に読むなど、文章をスムーズに読むことができない
  • 単語や文節の途中で区切って読むなど、不自然な読み方になる
  • 見た文字を音にして発声するのが苦手

種類②書字表出障害(ディスグラフィア)

書字表出障害(ディスグラフィア、Dysgraphia)とは、文字や文章を書くことに困難が生じるLD/SLDのことです。

具体的には、以下のいずれかに困難が生じることをいいます。

  • 字の綴りの正確さ
  • 文法・句読点の正確さ
  • 書字表出の明確さ・構成力

書字表出障害(ディスグラフィア)の主な特性は、以下のとおりです。

なお、書字表出障害(ディスグラフィア)のある人全てに、以下の特性が必ずあるとは限りません。また、以下の特性に当てはまる場合でも、必ず書字表出障害(ディスグラフィア)であるというわけではありません。

書字表出障害(ディスグラフィア)の特性
  • 文字を正しく書けない、または書き写せない
  • 左右が反転した鏡文字を書く
  • 雰囲気で存在しない文字を書く
  • 「わ」と「ね」、「シ」と「ツ」など、形が似た文字を書き間違える
  • 誤字脱字や誤った書き順などの間違いが多い
  • 板書ができない、または苦手
  • 漢字を覚えられない、または覚えるのが苦手
  • 文字の大きさや形がバラバラで、マス目や行からはみ出す

種類③算数障害(ディスカリキュリア)

算数障害(ディスカリキュリア、Dyscalculia)とは、計算すること、または数学的な推論をすることに困難が生じるLD/SLDのことです。

具体的には、以下のいずれかに困難が生じることをいいます。

  • 数字の概念の習得
  • 数値や演算記号の理解や習得
  • 計算の習得
  • 数学的な推論

算数障害(ディスカリキュリア)の主な特性は、以下のとおりです。

なお、算数障害(ディスカリキュリア)のある人全てに、以下の特性が必ずあるとは限りません。また、以下の特性に当てはまる場合でも、必ず算数障害(ディスカリキュリア)であるというわけではありません。

算数障害(ディスカリキュリア)の特性
  • 数字、記号の理解が苦手
  • 数の順番、または大小の理解が難しい
  • 繰り上げ、繰り下げがわからない
  • 暗算が難しい
  • 「+」「-」などの計算記号の認識ができない
  • 図形・グラフの読み取りが難しい

LD/SLDの診断基準

アメリカ精神医学会が定めた精神障害の診察基準『DSM-5』によると、LD/SLDの診断基準は以下のとおりです。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』

  • 学習や学業的技能の使用に困難があり、その困難を対象とした介入が提供されているにもかかわらず、下記の症状のうち少なくとも1つが存在し、少なくとも6カ月間持続していることで明らかになる
  • ①不的確または速度が遅く、努力を要する読字 (例:単語を間違ってまたはゆっくりとためらいがちに音読する、しばしば言葉を当てずっぽうに言う、言葉を発音することの困難さをもつ)
  • ②読んでいるものの意味を理解することの困難さ (例:文章を正確に読む場合があるが、読んでいるもののつながり、関係、意味するもの、またはより深い意味を理解していないかもしれない)
  • ③綴字の困難さ (例:母音や子音を付け加えたり、入れ忘れたり、置き換えたりするかもしれない)
  • ④書字表出の困難さ (例:文章の中で複数の文法または句読点の間違いをする、段落のまとめ方が下手、思考の書字表出に明確さがない)
  • ⑤数字の概念、数値、または計算を習得することの困難さ (例:数字、その大小、および関係の理解に乏しい、1桁の足し算を行うのに同級生がやるように数字的事実を思い浮かべるのではなく指を折って数える、算術計算の途中で迷ってしまい方法を変更するかもしれない)
  • ⑥数学的推論の困難さ (例:定量的問題を解くために、数学的概念、数学的事実、または数学的方法を適用することが非常に困難である)

発達障害グレーゾーンとは?

発達障害グレーゾーン

発達障害グレーゾーンとは、発達障害と同様の特性や傾向がいくつか認められるものの、診断基準を満たすほどではないため、発達障害と診断されるには至らない状態のことです。(参考:姫野桂『発達障害グレーゾーン』

発達障害グレーゾーンという言葉は、医学的に正式な診断名称ではありません。

ただし、発達障害の確定診断をつけることができない状態のことを発達障害グレーゾーンと表現しているだけであって、発達障害グレーゾーンとは症状が軽いことを意味するわけではありません。

発達障害グレーゾーンについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

発達障害の二次障害とは?

二次障害とは、主障害に起因して起こる副次的な障害のことです。ここで取り上げている発達障害の二次障害とは、発達障害や発達障害グレーゾーンの傾向・特性に伴って発生する精神障害やひきこもりなどの二次的な困難や問題のことを指します。(参考:齊藤万比古『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』、小栗正幸『発達障害児の思春期と二次障害予防のシナリオ』

発達障害の二次障害は、うつ病といった精神面に現れることもあれば、暴力などの行動面で現れることもあります。発達障害に関連して起こる二次的な問題の総称です。

なお、発達障害があると、必ず二次障害が発生するわけではありません。

発達障害や発達障害グレーゾーンの傾向・特性が原因で発生する以下のような困難や問題は、発達障害の二次障害に該当します。

  • 周囲とのコミュニケーションが上手く取れずに適応障害になる
  • うつ病や不安障害などの精神障害を発症する
  • ひきこもり状態になる

発達障害の二次障害については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

大人の発達障害とは?

大人の発達障害

大人の発達障害とは、医学的に正式な診断名称ではなく、明確な定義がない俗語のことです。(参考:林寧哲『これでわかる 大人の発達障害』、黒澤礼子『新版 大人の発達障害に気づいて・向き合う完全ガイド』

医学的に正式な診断名称ではないため、明確に定められた定義はありませんが、一般的には、幼少期の時点で診断を受けておらず、大人になってから発達障害の確定診断を受けた状態のことを指すようです。また、幼少期の時点で発達障害の確定診断を受けていた人が、大人になった状態のことを、大人の発達障害と表現することもあるようです。

発達障害は、生まれつきのものです。本来、発達障害の特徴は一般的に乳幼児から幼児期に現れます。大人と子どもで本質的には異なる部分はなく、現在の医学では、大人になっても継続するものとされています。

そのため、「大人になってから発達障害になる」「成長するにつれて発達障害になる」ということはありえません。また、「思春期から」「満〇歳から」「育ち方や親のしつけの影響から」など、成長してから、または環境によって後天的に発達障害になるということも基本的にはありません。

大人の発達障害については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

発達障害とは?

発達障害とは、脳の機能的な問題や働き方の違いにより、物事の捉え方や行動に違いが生じることで、日常生活および社会生活を送る上で支障が出る、生まれつきの脳機能障害のことです。(参考: American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、こころの情報サイト「発達障害(神経発達症)」、NHK福祉ポータル ハートネット「そもそも「発達障害」って?|大人の発達障害ってなんだろう? - 大人の発達障害」、宮尾益知・監修『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』、松本卓也、野間俊一・編著『メンタルヘルス時代の精神医学入門 ーこころの病の理解と支援ー』、福西勇夫・山末英典・監修『ニュートン式 超図解 最強に面白い!! 精神の病気 発達障害編』

発達障害は主に、以下の3つの診断名に分類されます。

  • ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)
  • ASD(自閉スペクトラム症/広汎性発達障害)
  • LD/SLD(限局性学習症/限局性学習障害)

同じ診断名でも、人によって多様な特性が現れるのが発達障害の特徴です。また、いずれかの発達障害のある人は、他の発達障害が併存している可能性もあります。

発達障害の概要や種類、原因、治療方法などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

まとめ:お悩みをあなただけで抱え込まないでください

LD/SLDについての相談先や特性はたくさんあります。

お悩みをあなただけで抱え込まず、ぜひ、支援機関を利用してください。

このコラムが、あなたの安心や次の一歩に繋がったなら幸いです。

よくある質問(1)

LD/SLDとはなんですか?

LD/SLD(限局性学習症/限局性学習障害、Learning Disorder/Specific Learning Disorder)とは、読む・書く・計算する・推論するなど、特定の学習行為のみに困難が生じる発達障害の一種のことです。

詳細については、こちらで解説しています。

よくある質問(2)

LD/SLDの種類を知りたいです。

以下が考えられます。

  • 読字障害(ディスレクシア)
  • 書字表出障害(ディスグラフィア)
  • 算数障害(ディスカリキュリア)

詳細については、こちらで解説しています。

監修志村哲祥

しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。 臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。

【著書など(一部)】
子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数

日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

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翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

監修角南百合子

すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→

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