発達障害を抱えるニートの人が就職に向けてできる6つのこと|支援機関も紹介 | キズキビジネスカレッジ  

発達障害を抱えるニートの人が就職に向けてできる6つのこと|支援機関も紹介

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)の寺田淳平です。

発達障害があり、ニート状態のあなたは、「現状を変えたい」と考えてはいるものの、以下のようなお悩みや疑問を抱えてはいませんか?

  • 発達障害だとニートや引きこもりになりやすいというのは本当?
  • 発達障害でニートの状態から就職はできるのか
  • ニートである自分が就職に向けてできることは?

上記のような疑問をお持ちの方は少なくないかと思います。

そこで今回は、発達障害に悩みつつ、ニートである状況を脱したいという方へ、就職に向けてできることを解説いたします

発達障害とニートの関係の他に、就職に向けて頼りたい支援機関、就職活動のポイントまで解説しますので、「ニートを脱したい」とお思いの方は読んでみてください。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、ニート状態にある発達障害のある人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

ニートとは?

ニートとは?

まずは、ニートの概要をご紹介します。

ニートとは、"Not in Education,Employment or Training"の頭文字をとったイギリスの造語で、直訳すると「就学、就業、職業訓練のいずれもしていない人」という意味です。

現代の日本では、現実的・一般的には、「学生ではなく、家業・家事手伝いもしていない若年無業者」という意味合いで使われているようです

また、日本では、厚生労働省による以下のような公的な定義もあります。

総務省が行っている労働力調査における、15~34歳で、非労働力人口のうち家事も通学もしていない方

出典:厚生労働省「よくあるご質問について

厚生労働省の定義によるニートと呼ばれる状態にある人の数は、2018年度では約53万人とされています。

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発達障害だとニート・引きこもり・うつ病になりやすい?

発達障害だとニート・引きこもり・うつ病になりやすい?

発達障害に伴ってよく聞かれる質問に、「ニート・引きこもり・うつ病になりやすいのか」というものがあります。

発達障害だからといって、必ずしもニートや引きこもりになるとは限りません。

しかし、「発達障害でない人に比べるとなりやすい」というデータもあります

2019年10月に名古屋市で開かれた「発達障害と引きこもり」に関するシンポジウムでは、登壇者である精神保健福祉士の先生から、引きこもり外来受診者の「約32.8%」(67人中22人)が、発達障害であったというデータが発表されました。

また、2019年1月~2月にかけて、毎日新聞社が「発達障害当事協会」を通じて行った調査では、発達障害者の「約45.5%」(862人中393人)がうつ病を発症しているという結果が出ています。

それぞれの厳密な母数は不明なため、断言はできませんが、現実的に、社会全体の1/3~半数が発達障害であるとは考えられません。

よって、発達障害者の人が「なりやすい」という推測は成り立つかと思います。

パターン①発達特性の関係でうまくいかないことがあった

どのような原因・きっかけで「ニート・引きこもり・うつ病」になるのでしょうか?

では、発達障害の人は、どのような原因・きっかけで「ニート・引きこもり・うつ病」になるのでしょうか?

原因・きっかけは人それぞれですが、大まかには2つのパターンがあると考えられます。

1つ目は、発達障害の特性上、コミュニケーションが苦手だったり、特定の仕事がうまくいかなかったりして、就職できなかったり、できたとしても仕事が続かなかったり、というパターンです

発達障害の人には、先述したASDに見られる「コミュニケーションの特性」や、ASD・ADHDに見られる「こだわり・凹凸の強さ」など、いくつかの特性があります。

しかし、正確なコミュニケーションや、多様な処理を求められる職場では、こうした特性が裏目に出て、空回りすることが少なくありません。

ミスや勘違いが続くことで、人付き合い全般に苦手意識が付いたり、「仕事自体が向いていない」と思ったりした結果、仕事と距離を置くようになり、引きこもりやニートに移行するケースがあるのです。

パターン②発達障害に伴う二次障害があった

発達障害に伴う「二次障害」を発症しているため

2つ目として、発達障害に伴う「二次障害」を発症しているため、「そもそも心身が働ける状態にない」というパターンがあります

二次障害とは、発達障害の特性による社会生活の困難やストレスが重なることで発症する、うつ病などの精神疾患を主に言います。

発達障害がある人は、学童期からクラスメイトとの関係がうまくいかなかったり、勉強が思うように進まなかったりして、ストレスを抱えやすいと言われています。

そのため、就職以前の段階で、自信喪失や精神疾患のせいで、そもそも心身が働ける状態にない場合があるのです

もちろん、紹介した2つのパターンを複合した、「発達障害の特性で仕事がうまく進まずに二次障害を発症する」というケースもあるでしょう。

とはいえ、先述したように、発達障害を抱える人全員が「ニート・引きこもり・うつ病」になるというわけではありません。

後述しますが、支援機関を適切に利用しながらケアをしていくことで、そうした状態を回避・脱却することは充分可能ですので、ご安心ください。(参考:齊藤万比古『発達障害が引き起こす二次障害へのケアとサポート』)

発達障害をお持ちのニートの人が就職に向けてできる6つのこと

ここからは具体的に、発達障害をお持ちのニートの状態にある人が、就職に向けてできることを紹介します。

前にも述べましたが、前提として大切なのは、医師や専門機関を頼ることです。

ストレスを避けるためにも、一人で抱え込まずに、できるだけ専門家の方に相談してみましょう。

その点に留意しながら、以下のポイントを実践してみてください。

①二次障害がある場合は治療する

二次障害がある場合は治療する

1点目は「二次障害がある場合は治療する」です。

まだ「発達障害を疑っている」段階の方も含めて、自身の心身の状態について、まずは心療内科や精神科で専門医の診断を受けてください

特に、就職に限らず意欲が湧かなかったり、すぐに疲れたりする場合は、それ自体が二次障害としての「抑うつ(よくうつ)」である可能性があります。

医師の診断にもよりますが、程度によっては、就職活動以前に、まずは治療を優先する必要があるかもしれません。

「自分は(発達障害で、)二次障害があるかもしれない」という心当たりのある方は、まずは専門医のもとを尋ねましょう。

「病院へ行くのは抵抗がある」という場合は、後で説明する「発達障害者支援センター」などに相談するのもよいでしょう

②就労支援機関に相談する

就労支援機関に相談する

2点目は「就労支援機関に相談する」です。

公・民を問わず、発達障害を抱える方の就労をお手伝いしている機関はたくさんあります。

もちろん、お仕事に就いていないニートの状態にある人でも、支援を受けることは可能です。

具体的な支援機関の種類については次の章で解説しますが、機関によっては、履歴書の書き方の指導といった、就職活動に直に結びつく支援の他に、日常生活のポイントや自己管理のコツなどを得られるところもあります

基本的には、発達障害に理解のある支援員が対応しますので、お悩みの方は支援機関に相談してみてください。

なお、私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)も、就労支援機関のひとつです。

③自分の特性を理解する

自分の特性を理解する

3点目は「自分の特性を理解する」です。

発達障害のある人は、特性による向き・不向きや、得意・不得意が顕著に現れる傾向にあります。

中でも、「できないこと」については、そもそも発達障害が脳の機能の偏りから生じていることもあり、努力や工夫だけでは、どうしてもカバーできない面があります

そのため、まずはあなた自身が、特性に対する自己理解を深めることが大切です。

また、「できないこと」だけでなく、「できること」や「こだわり」を活かすといった視点を持つことも、就職を考える上では特に重要です

発達障害の専門家として著名な福島学院大学大学院教授の星野仁彦先生は、ASDやADHDの人の職人的な「こだわり」が仕事に活かされることで、発達障害の人でも素晴らしい業績が残せることがあると指摘しています。

ぜひ「できないこと」だけなく、「できること」や「こだわり」といった特性を活かせないかというところまで考えてみてください。(参考:星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち』)

④生活習慣を整える

生活習慣を整える

4点目は「生活習慣を整える」です。

発達障害を抱える人の中には、特定分野や関心のあることに強い集中力を発揮する「過集中」の傾向を持つ人が少なくありません。

過集中の状態に入ると、時間も気にせずに作業に没頭するため、気が付くと徹夜になり、生活リズムが乱れる場合があります

特に、ニートの状態にある人は、時間に余裕があることで昼夜逆転するなど、生活習慣が安定しづらいということは言えるかと思います。

しかし、就職活動の選考・面接は、基本的には昼間に行われますし、実際に就職したら日中の活動時間が多くなるでしょう。

そのため、日中のパフォーマンスを上げるためにも、まずは「生活習慣を整える」ように意識することが大切です

⑤職業訓練を受ける

職業訓練を受ける

5点目は「職業訓練を受ける」です。

ニートの状態になったことで、職歴にブランクができている方などは、いきなり就職活動をして働くことに抵抗がある方もいるかもしれません。

また、そもそも「自分のビジネススキルや職業技能に自信が持てなくてニートになった」という方もいるでしょう。

そういった方は、まずは職業訓練を受けるところから始めてみてはいかがでしょうか。

後述する「就労移行支援事業所」のように、最低0円から、ビジネスマナー講習や、簿記・会計など、専門スキルを身につけるための講習を受けられる支援機関があります

職業訓練は、一回限りではなく、継続的に行われるものもたくさんあります。

定期的に通えば、生活リズムを整えられるというメリットもあるため、「ニートで自信が持てない」という方には、職業訓練をオススメします

どんな職業訓練施設があるかは、支援機関と合わせて、後でご紹介します。

⑥当事者会や相談会などに参加する

当事者会や相談会などに参加する

最後は「当事者会や相談会などに参加する」です。

近年、支援機関やSNSなどで出会った発達障害の当事者同士が、自助グループを結成したり、地域の当事者会・相談会を開催したりして、活動することが増えてきています。

一例として、2019年7月には、東京都の発達障害者会が「東京都発達障害当事者会ネット」という連携組織を発足したことでも話題になりました。

こういった当事者会や相談会では、様々な背景を持つ発達障害の当事者が集まるため、同じようなニートの状態にある人と、情報共有できる機会も持てるかもしれません

ただし、当事者会は、特性や症状などに分け隔てなく、「発達障害」として一括りにされている場合があります。

そういった場合、当事者会の中に進行役などがいないと、「なかなか意見が合わない」「コミュニケーションがスムーズに進まない」といったこともあるそうです。

もし参加される場合は、事前に「何を目的にした会なのか」「その会にはどのような特性を持った人が多く集まるのか」など、事前にしっかりと確認した上で、参加されることをオススメします

発達障害をお持ちのニートの人が利用できる支援機関5選

この章では、発達障害をお持ちのニートの状態にある人が利用できる支援機関を、5つ紹介します。

いずれの支援機関も、発達障害の人の日常的な相談だけでなく、就労関係の相談にも乗れる点に特長があります。

どの支援機関に通うのが適当かわからないという方は、お住まいの市区町村の自治体の障害福祉担当課などに問い合わせてみるとよいでしょう。

①就労移行支援事業所

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所では、病気や障害と向き合いながら一般企業への就職を目指す方向けに、障害者総合支援法に基づいて行われる障害福祉サービスを提供しています(参考:厚生労働省『就労移行支援事業』)

就労移行支援事業の対象となるのは、以下の条件を満たす方です。

  • 原則18歳から65歳未満であること
  • 一般企業への就職または仕事での独立を希望していること
  • 精神障害、発達障害、身体障害、知的障害や難病を抱えていること

障害者手帳は必須ではなく、専門医による診断書があればサービスを受けることができます。

具体的な支援内容は事業所によって異なりますが、あなたの障害特性に合わせた「個別支援計画」に基づいて、職業相談からメンタル面の相談、コミュニケーションの訓練や専門スキルの習得、インターン先から就職先の紹介までと、幅広いサポートを行っています

また、事業所によっては、就職後の職場定着を援助する、「就労定着支援」をあわせて実施しているところもあります。

就労定着支援では、一般的な定期面談の他に、就職先での業務内容や業務量の調整といった、職場で長く働き続けるためのサポートが受けられますので、「仕事が続かなくてニートになった」という方には特にオススメです。

実際、障害者職業総合支援センターの調査研究によれば、職場定着支援を受けた人とそうでない人で、1年後の職場定着率に「20%」近い差が出ています。(参考:障害者職業総合支援センター『障害者の就業状況等に関する調査研究』)

相談は無料ですので、支援内容に興味を抱いた事業所に一度、詳細を問い合わせた上で、無料相談・見学を行うことをオススメします。

②ハローワーク

ハローワーク

お住いの市区町村に設置されたハローワークでも、発達障害を抱える人向けに就労支援を行っています。(参考:厚生労働省※PDF『ハローワークにおける障害者の就労支援』)

ニートの状態であっても、ハローワークで障害者としての求職登録を行えば、専門の相談員から、それぞれの障害特性や希望職種に応じた職業相談や職業紹介、職場適応指導を受けることが可能です

また、求人者と求職者が一堂に会する「就職面接会」や、事業主と3カ月の有期雇用契約を締結して働く「障害者トライアル雇用」を実施している点も特徴的です。

その他にも、公共職業訓練への斡旋や、ジョブコーチ支援、その他の支援機関との提携など、サービスの範囲は多岐に渡ります。

なお、支援を受ける際には、障害者手帳の有無は問いませんが、診断書や医師の意見書などの提示が必要となる場合があります。

興味をお持ちの方は、ぜひ居住区のハローワークに問い合わせてみてください(全国の一覧はこちらです)。

③発達障害者支援センター

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、就労に限らず、発達障害の早期発見と早期支援を目的として、症状に悩む当事者や家族の生活をサポートする支援機関です(参考:国立障害者リハビリテーションセンター『発達障害者支援センター・一覧』)

確定診断が下りていなくても、発達障害の可能性がある方であれば、窓口での相談が可能です。

特に、精神保健福祉士や社会福祉士などが在籍している場合は、より「発達障害に特化したサポート」を受けられる点に特長があります。

具体的な支援内容は自治体ごとに異なりますが、就労支援事業としては、ハローワークなどの関連機関と連携した求人に関する情報提供や、就業先への障害特性に関するアドバイスなどを行っています

窓口は、各都道府県や指定の事業所に設置されていますので、支援をご希望の方はお近くの相談窓口を探してみるとよいでしょう(全国の一覧はこちらです)。

④障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターでは、就業及びそれに伴う日常生活上の支援が必要な障害のある人に対し、センター窓口での相談や職場・家庭訪問などを実施しています(参考:厚生労働省『障害者就業・生活支援センター』)

そのため、就職に関する相談だけでなく、「生活習慣を整えるための具体的な助言がほしい」など、日常生活のサポートも受けたいという方にオススメです。

厚生労働省の資料によると、2019年5月時点で334センターが設置されており、当事者の身近な地域において、就業面と生活面を一体に捉えた相談と支援を行っています。

障害者就業・生活支援センターの特徴は、就労だけでなく、金銭管理などの経済面や住居のことまで、多岐にわたって相談できる点にあります

興味のある方は、お近くの事業所にご相談ください(全国の一覧はこちらです)。

⑤職業能力開発訓練校など

職業能力開発訓練校など

一般の職業能力開発校や障害者職業能力開発校では、発達障害者を対象とした訓練コースを設置し、障害特性に配慮した技能訓練「ハロートレーニング(障害者訓練)」を実施しています(参考:厚生労働省『ハロートレーニング(障害者訓練)』)

運営主体は、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構や、民間の教育訓練機関など、様々ですが、いずれも職業訓練を中心とする就労支援です。

また、ハローワークが公益財団法人などと連携して、企業やNPO法人等に訓練を委託しているケースもあります。

訓練の内容は、実際の職場環境を活用した実践的なコースだけでなく、在宅でもできる「e-ラーニング」を用いたコースもありますので、実践訓練に抵抗があるというニートの方でも参加しやすいかと思います

それぞれのコースによって対象となる条件などが異なりますので、関心をお持ちの方は運営主体の相談窓口に詳細を確認してみてください。

発達障害をお持ちのニートの人が就職先を探すときのポイント3点

最後に、この章では発達障害をお持ちのニートの状態にある人が、就職先を探すときのポイントを解説します。

前にも述べましたが、就職活動を進める際には、医師や専門機関を適切に頼ることが大切です

特に、多くの発達障害の人の就労をサポートしてきた支援機関であれば、過去の事例を交えながら、あなたに合った就職先の見つけ方を教えてもらえるはずです。

ぜひ専門の支援員の方と相談しながら、以下のポイントを意識して就職活動をしてみてください。(参考:木津谷岳『これからの発達障害者「雇用」』)

ポイント①雇用枠を検討する

雇用枠を検討する

1点目は「雇用枠を検討する」です。

発達障害のある人は、「一般枠」の他に、障害のある人向けの「障害者枠」に応募することも可能です。

「障害者枠」とは、言葉の通り、(ある一定の)病気や障害を抱える人のための雇用制度で、職場や業務内容について、病気・障害に対する配慮がなされます

もし、ニートになる以前は「一般枠」で就労していたという方や、「障害者枠」の存在を知らなかったという方は、障害者手帳を取得して、「障害者枠」での就職を目指すのも一つの方法です。

障害者枠では、発達障害の特性に応じて、業務内容や業務量を調整してもらえるなど、特別な配慮を受けることが可能なため、一般枠に比べて働きやすくなるかと思います

ただし、配慮を受けている分、一般枠での雇用に比べて、給与や待遇、キャリア面での希望が叶いづらくなることもあります。

先述した就労移行支援事業所では、「どちらの雇用枠が向いているか」「障害者枠での転職時に気をつけるべき点はなにか」といった専門的な相談にも応じられる支援員がいるため、気になる方は尋ねてみるとよいでしょう。

ポイント②長く働き続けられるかという視点を持つ

長く働き続けられるかという視点を持つ

ポイントの2点目は「長く働き続けられるかという視点を持つ」ことです。

「一つの職場で長く働き続けること」は、「絶対的によいこと」とは限らないのですが、不本意な短期離職は避けたいところでしょう。

2018年4月の障害者雇用促進法の改正以来、発達障害を含む精神障害者が雇用義務の対象となり、法定雇用率も民間企業の場合で2.0%から2.2%と上昇傾向にあります。

しかし、雇用枠は増えているものの、発達障害の人の就労には「職場定着」という課題が残ると言われています

先に挙げた障害者職業総合センターの統計によると、就職から1年以内に離職する発達障害者の割合は、「約30%」にのぼります。

そのため、発達障害に限った話ではないのですが、「長く働き続けられるかで判断する」という視点が必要になってきます。

特に、「仕事が続かなくてニートになった」という人には、「長続きしそうか」という視点は重要になるでしょう

長く働き続けられる職場かどうかの目安として、以下の2点に注目してください。

  • 障害に関する研修制度が充実しているかどうか
  • 勤務形態は柔軟かどうか

配慮の行き届いている職場ほど、障害やメンタルヘルスへの対応をテーマにした研修を定期的に行っているものです。

こうした勤め先を選べば、一般枠での就労だったとしても、ある程度の配慮を受けられる可能性があります。

また、働く時間を柔軟に変えられるフレックス制や、短時間勤務制度などが整備されている職場であれば、体調不良で休みを取る必要が生じた際にも、スムーズに対応してもらえるため、比較的働きやすいでしょう

ポイント③アルバイトや非正規雇用も検討する

アルバイトや非正規雇用も検討する

最後のポイントは「アルバイトや非正規雇用も検討する」です。

ニートの状態にある方の中には、仕事のリズムに慣れていないため、正規雇用(フルタイムの雇用)からスタートするのが厳しいという方がいるかと思います。

そうした方は、「アルバイトや非正規雇用の就労から始める」という選択肢も考えてみてください。

アルバイトや非正規雇用の利点として、「正規雇用に比べて、採用されやすく、辞めやすく、興味のある仕事を掛け持ちしやすく、労働時間を調整しやすいこと」が挙げられます

興味のある業種で「試しに」働いてみることで、労働に慣れたり、あなたの得意・不得意、興味・関心が改めてわかったりすることもあるのです。

(将来的に)正規雇用を目指す場合でも、参考になることはあると思います。

なお、職場によっては、非正規枠で働くうちに実績が評価されて、正規雇用への転換を打診されることがあります。

また、仕事のペースに慣れてきたり、やりたい仕事が明確になってきたりしたら、新しい職場を求めて転職活動をするのもよいでしょう。

「アルバイトや非正規雇用でスモールスタートを切る」ことも視野に入れて就職活動に取り組んでみてください

改めて、発達障害とは?

ここまでは、発達障害に悩みつつ、ニートである状況を脱したいという方へ、就職に向けてできることを解説してきました。

この章では、改めて発達障害の概要を説明します。

発達障害とは、先天的な脳の機能の偏りによって、社会生活やコミュニケーションに困難が生じている状態のことです

2013年に刊行されたアメリカ精神医学会の定める診断基準「DSM-V」によると、主な発達障害として以下の3つを挙げることができます。

発達障害の特性の中には、程度は異なりますが、発達障害ではないの人にも見られるものがあります。

ある人が発達障害であるかどうかは、専門医だけが判断できます。

また、診断基準を満たすほど特性が強くないことから、確定診断は下りないものの、社会生活で困りごとを抱えている「グレーゾーン」と呼ばれる人もいます

まだ発達障害を「疑っている」段階の方は、以下の各発達障害の特性を参照しつつ、まずは専門医のもとで検査を受けることをオススメいたします。(参考: 村上由香『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に暮らすための本』)

発達障害は病気とは異なり、あくまで「目立ちやすい特性を持つ」というだけです。

日常生活などにおける「困難」は、過ごし方の工夫などで対策できますので、ご安心ください。

ADHD(注意欠陥・多動性障害)

ADHD(注意欠陥・多動性障害)

ADHDは、正式名称を注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)という、発達障害の一種です。

特性の程度や現れ方には個人差がありますが、ADHDには大きく分けて「不注意」と「多動・衝動性」の2つの特性が見られます

具体的な困難としては、以下が挙げられます。

不注意による困難
  • 忘れ物や記入漏れなどのミスが多い
  • 確認作業がうまくいかない
  • 整理整頓が苦手で物を失くすことが多い
多動・衝動性による困難
  • 気が散りやすく、貧乏ゆすりなど常に身体を動かしていないと落ちつかない
  • 他人の意見に耳を傾ける前に発言したり行動したりする
  • 優先順位をつけることが苦手で、場当たり的になりやすく、締切を守りづらい

ASD(自閉症スペクトラム障害)

ASD(自閉症スペクトラム障害)

ASD(Autism Spectrum Disorder、自閉症スペクトラム障害)とは、社会性・コミュニケーション・想像力の3つにおいて特性が目立つ発達障害です

具体的には、以下のような特性が目立ちやすいと言われています。

社会性における特性
  • 場の状況や上下関係に気が回りづらく、TPOに合わせた行動が難しい
  • 話を聞いていないと誤解されやすい
コミュニケーションにおける特性
  • 質問の意図、身振り、比喩、冗談などを理解しづらい
  • 報告、連絡、相談がうまくできない
想像力における特性
  • 決まった順序に強いこだわりを見せる
  • 予定が変わるとパニックになりやすい
  • 暗黙のルールなど明示されてない決まりに疎い

その他にも、ASDには聴覚過敏などの「感覚過敏」を併せ持つ人が少なくありません。

LD(学習障害)

LD(学習障害)

LD(学習障害)とは、「読む・聞く・話す・書く・計算する・推論する」といった6つの能力の1つ以上に、習得や使用の困難がある発達障害です

文部科学省の定義によると、「学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない」という条件が付きます。

「読む・聞く・話す・書く・計算する・推論する」のうち、どれに困難を覚えるのかは、各々の特性により異なるため一概には言えません。

しかし、「特定の情報処理が難しい」という困難に共通点があります

例えば、読字障害の場合は「会議資料がうまく読めない」、聞く障害の場合は「プレゼンや打ちあわせの内容を聴き取りづらい」です。

このようなLDは、その他の発達障害に比べると、初等教育が始まる段階で症状を自覚しているケースが少なくありません。

まとめ:発達障害を抱えるニートの人でも就職は可能です

発達障害を抱えるニートの人でも就職は可能です

発達障害を抱えるニートの人に向けて、就職に向けてできること、頼れる支援機関、就職活動のときのポイントを解説しましたが、あなたが次のステップを踏みだすために役立ちそうな情報がありましたか?

繰り返しにはなりますが、発達障害の人が就労をする上では、医師や専門機関に協力を求めることが大切です

適切なアドバイスを受けながら、これまでに解説してきたことを実践すれば、就職に一歩ずつ近づけるはずです。

一人で抱え込まずに、日常生活の悩みでも構いませんので、ぜひ専門家に相談をすることから始めてみてください。

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

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翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

執筆寺田淳平

てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→

よくある質問(1)

発達障害でニートの自分が就職に向けてできることを知りたいです。

一般論としては、次の6点が考えられます。「二次障害がある場合は治療する」「就労支援機関に相談する」「自分の特性を理解する」「生活習慣を整える」「職業訓練を受ける」「当事者会や相談会などに参加する」。詳細はこちらをご覧ください。

よくある質問(2)

発達障害でニートの自分が利用できる支援機関を知りたいです。

代表的な例として、次の5点が挙げられます。「就労移行支援事業所」」「ハローワーク」「発達障害者支援センター」「障害者就業・生活支援センター」「職業能力開発訓練校など」。詳細はこちらをご覧ください。

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