就労移行支援 キズキビジネスカレッジ(KBC) 発達障害のある人の自立とは? 生活・仕事・お金の工夫と支援の活用法を解説

こんにちは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
- 自立したいけれど、何から始めればいいかわからない
- 周りと同じようにできず、不安になる
そんな悩みを抱えていませんか?
発達障害のある人にとっての自立は、すべてを1人でこなすことではありません。
自分に合った方法や支援を取り入れながら、安心して生活や仕事を続けられる状態を目指すことが大切です。
このコラムでは、発達障害のある人にとっての自立の考え方や、生活・社会・経済・職業の面でできる工夫について解説します。
あわせて、活用できる支援機関や制度・サービス、体験談、よくある質問を紹介します。
自分に合ったペースで生活を整え、無理のない形で自立に近づくためのヒントを、このコラムで一緒に確認していきましょう。
目次
発達障害のある人にとっての自立とは?
発達障害のある人にとっての自立は、人に頼らず何でも自分でこなすことではありません。
厚生労働省の資料では、自立について以下のように示されています。
「自己決定に基づいて主体的な生活を営むこと」「障害を持っていてもその能力を活用して社会活動に参加すること」(参考:厚生労働省「自立の概念等について」)
例えば、就労移行支援事業所を利用しながら働き方を整えたり、障害福祉サービスを活用しながら日常生活を安定させたりすることも、自己決定に基づいた主体的な生き方であり、自立の1つの形です。
だからこそ、自分の特性を理解したうえで使える支援を積極的に活用し、生活が破綻せずに回せる状態を維持することが、発達障害のある人にとって現実的な自立への近道なのです。
発達障害のある人が生活面で自立するための工夫
この章では、発達障害のある人が生活面で自立するための工夫について解説します。
工夫①お金の管理は自動化と見える化で乗り越える
1つ目の工夫は、お金の管理を自動化と見える化することです。
発達障害のある人の中には、支払いを忘れやすかったり、予定外の出費が重なりやすかったりする人がいます。
また、月全体のお金の流れを把握しにくく、気づかないうちに使いすぎることもあります。(参考:国立成育医療研究センター「発達障害ナビポータル」、厚生労働省「発達障害の理解」)
だからこそ、お金の管理は、無理に頑張ろうとするのではなく、仕組みで続けやすくすることが大切です。
具体的には以下の工夫がオススメです。
- 家賃・光熱費・通信費などの固定費は自動引き落としに設定する
- 家計簿アプリで収支をリアルタイムで見える化する
- 貯める口座と使う口座を分けて管理する
- 欲しいものは数日間リストに記録してから購入を判断する
意志力や記憶力に頼らず、仕組みそのものに管理を任せることで、発達障害の特性があっても無理なくお金の管理を続けられます。
工夫②家事・生活リズムは仕組みをつくって継続する
2つ目の工夫は、家事や生活リズムを仕組みで補うことです。
発達障害のある人の中には、家事の手順が多いと途中で止まりやすい人や、生活リズムが崩れると立て直しにくい人がいます。
また、音やにおい、肌ざわりなどの刺激が負担になり、日常生活に影響することもあります。(参考:国立成育医療研究センター「発達障害ナビポータル」、国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」、大阪府「相談窓口のための発達障がい者支援プログラム」)
そのため、家事や生活をその場のやる気で続けるのではなく、無理なく続けやすい形に整える工夫がオススメです。
家事や生活リズムを整える工夫は、以下のとおりです。
- 家事を小さな手順に分けて、チェックリストで見えるようにする
- 曜日ごとに家事を決めて、考える負担を減らす
- タイマーやアラームを使って、行動の切り替えを助ける
- 起床・食事・就寝の時間をできるだけそろえる
- できたこと・難しかったことを記録し、自分の生活パターンを知る
仕組みを先につくっておくと、体調や気分に左右されにくくなり、生活を整えやすくなります。
工夫③体調の変化に早めに気づき、二次障害を予防する
3つ目の工夫は、体調の変化に早めに気づき、二次障害を予防することです。
発達障害のある人は、日常生活の困りごとや働きづらさが重なることで、心や体に強い負担がかかることがあります。
その結果、気分の落ち込みや強い不安、睡眠の乱れなど、いわゆる「二次障害」につながることもあります。(参考:大阪府「相談窓口のための発達障がい者支援プログラム」、国立精神・神経医療研究センター「こころの情報サイト」、atGP「発達障害の人の自立とは?」)
二次障害は、本人が気づきにくいまま負担が重なりやすいため、早めに変化に気づき、相談することが大切です。
体調の変化に早めに気づく工夫は、以下のとおりです。
- 気分・睡眠・食欲などを日記やアプリで記録する
- 家族・友人・支援者など、信頼できる人と定期的に話す
- あらかじめ休む日を予定に入れて、無理が続かないようにする
- つらさが続くときは、早めに医療機関や支援機関に相談する
不調が大きくなる前に気づけるよう、自分の変化を見えるようにし、相談しやすい環境を整えておくことが大切です。
発達障害のある人が社会面で自立するための工夫
この章では、発達障害のある人が社会面で自立するための工夫について解説します。
工夫①コミュニケーションはルール化と事前準備で負担を減らす
1つ目の工夫は、コミュニケーションをルール化し、事前に準備することです。
発達障害のある人の中には、相手の意図を読み取りにくい人や、曖昧なやり取りに負担を感じやすい人がいます。
また、思ったことをすぐに口に出しやすかったり、連絡や約束を忘れやすかったりする人もいます。
こうした困りごとは、性格やマナーの問題ではなく、特性によって起こりやすいものです。(参考:内閣府「政府広報オンライン」)
そのため、場面ごとのやり取りをルール化し、事前に準備しておくことが役立ちます。
コミュニケーションの負担を減らす工夫は、以下のとおりです。
- 報告は結論から伝えるなど、よく使うやり取りをパターン化する
- 大事な用件は、話す前にメモで整理する
- 発言の前に今この話で合っているかと一度確認する
- 自分の特性や、配慮してほしいことを信頼できる相手に伝えておく
あらかじめルールと準備を整えておくと、場面ごとの負担が減り、コミュニケーションを続けやすくなります。
工夫②困ったときに頼れるキーパーソンを事前につくっておく
2つ目の工夫は、困ったときに相談できる相手や場所を、あらかじめ決めておくことが重要です。
発達障害のある人の中には、困りごとがあっても「誰に相談すればよいかわからない」「相談すること自体に負担を感じる」という人がいます。
そのため、必要な支援があっても利用しにくく、悩みを抱えたままになりやすいことがあります。(参考:厚生労働省「令和6年度 成人期の発達障害者等における支援ニーズの把握に関する調査報告書」)
こうした状況が続くと、生活や仕事の負担が大きくなりやすいため、相談できる環境を先に整えておくことが大切です。(参考:内閣府「政府広報オンライン」)
頼れるキーパーソンをつくる工夫は、以下のとおりです。
- 生活の相談は家族、仕事の相談は支援機関など、相談先を分けておく
- 支援機関には、困りごとが大きくなる前に一度相談しておく
- 自分の特性や困りごと、連絡先を自己紹介シートにまとめておく
- 相談窓口の連絡先を、スマホですぐ見られる場所に登録しておく
あらかじめ頼れる人や場所を決めておくと、困ったときに動きやすくなり、安心して生活しやすくなります。
発達障害のある人が経済・職業面で自立するための工夫
この章では、発達障害のある人が経済・職業面で自立するための工夫について解説します。
工夫①自己理解をもとに、自分に合う仕事と職場環境を選ぶ
1つ目の工夫は、自分の特性を整理したうえで、仕事の内容だけでなく職場環境も含めて選ぶことです。
発達障害のある人は、仕事内容そのものよりも、特性と職場環境が合わないことで働きづらさを感じる場合があります。
そのため、仕事を選ぶときは、何ができるかだけでなく、どのような環境なら力を発揮しやすいかを考えることが大切です。
自分に合う仕事を見つけるための自己理解を深めるときの視点は、以下のとおりです。
- 得意な作業・苦手な作業
- 職場で負担になりやすいこと(例:曖昧な指示、急な変更、音や人の多さ)
- あると助かる配慮(例:指示の文字化、相談先の明確化、作業場所の調整)
また、2024年4月からは民間事業主にも合理的配慮の提供が義務化されており、指示の文字化・ホワイトボード活用・指示系統の統一・パーテーション設置などが具体例として挙げられています。
自分の特性と必要な配慮を整理しておくと、仕事選びでミスマッチを減らしやすくなります。(参考:厚生労働省「発達障害のある方への職場における配慮事例のご紹介」、障害者職業総合センター「事業主が採用後に障害を把握した発達障害者の就労継続事例等に関する調査研究」 )
工夫②障害者雇用・一般雇用・就労継続支援の違いを知って選択肢を広げる
2つ目の工夫は、障害者雇用・一般雇用・就労系福祉サービスの違いを知り、自分に合った働き方を選ぶことです。
発達障害のある人が働き方を考えるときは、一般雇用だけに絞らず、配慮を受けながら働く方法や、就職に向けて準備する方法も含めて考えることが大切です。
自分の体調や働く準備の段階に合った選択肢を知っておくと、無理のない形で1歩を踏み出しやすくなります。(参考:厚生労働省 兵庫労働局「発達障害のある方のための就労支援講座」)
主な働き方の選択肢は、以下の3つです。
- 障害者雇用(オープン就労):配慮を受けやすい一方で、求人は限られやすい
- 一般雇用(クローズ就労):求人の幅は広い一方で、困りごとを相談しにくい場合がある
- 就労系福祉サービス:就職準備や体調に合わせた働き方を支える制度
就労系福祉サービスの主な選択肢は、以下のとおりです。(参考:厚生労働省「就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援A型・B型・就労定着支援」)
- 就労選択支援:就労アセスメントを通じて自分に合ったサービスを判断する
- 就労移行支援:一般就労に向けた訓練(標準利用期間24か月)
- 就労継続支援A型:雇用契約あり・最低賃金保証
- 就労継続支援B型:雇用契約なし・平均工賃月額は事業所により異なる
- 就労定着支援:就職後の定着フォロー(利用期間3年間)
例えば、一般就労を目指すなら就労移行支援、体調に不安があるなら就労継続支援B型などが選択肢になります。
どこから始めるか迷う場合は、ハローワークの障害者専門窓口や就労移行支援事業所、障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)に相談してみましょう。(参考:厚生労働省「就労選択支援について」)
今の自分の状態に合う選択肢から始めることが、長く働き続けるための第1歩です。
発達障害のある人が活用できる支援機関
この章では、発達障害のある人が活用できる支援機関を紹介します。
支援①就労移行支援事業所
1つ目の支援機関は、就労移行支援事業所です。
就労移行支援事業所とは、一般企業などへの就職を目指す病気や障害のある人に向けて、就職のサポートをする支援機関のことです。
体調管理の方法、職場でのコミュニケーションの基礎スキル、就職に必要な専門スキルなどを学ぶことができ、実際の就職活動でのアドバイス、就職後の職場定着支援も含む、総合的な就労支援を受けることが可能です。
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づいて行われる福祉サービスです。実際のサービスは、国の基準を満たしたさまざまな民間の就労移行支援事業所が行います。(参考:e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)
就労移行支援事業所は各地にあります。私たち、キズキビジネスカレッジ(KBC)もその1つです。それぞれ特徴が異なるため、気になるところがあれば問い合わせてみてください。
支援②自立訓練(生活訓練) 事業所
2つ目の支援機関は、自立訓練(生活訓練)事業所です。
自立訓練(生活訓練)事業所とは、精神科や心療内科への通院を前提とした障害者総合支援法に定められた指定障害福祉サービスのことです。
自立した生活を送れるように、日常生活で必要なさまざまな能力の維持・向上のための訓練を行います。(参考:厚生労働省「障害福祉サービスについて」)
厚生労働省によると、支援対象が「継続した通院により症状が安定している者等であって、地域生活を営む上で、生活能力の維持・向上などの支援が必要な者」となっています。
自立訓練(生活訓練)事業所のサービスは大きく分けて、以下の2つです。
- 生活訓練
- 機能訓練(身体障害のある人が支援対象)
主な支援内容は、入浴・食事・家事などの日常生活全般を送るための訓練や助言です。事業所によっては、基本的な生活が安定した後に、就労支援へとつないでくれるところもあります。
支援は、支援施設や障害福祉サービス事業所への通所、または支援員の自宅訪問によって行われます。
事業所によって通所・宿泊・訪問と支援形態が異なるため、自分の状況に合わせて選ぶことができます。利用期間は原則24か月です。(参考:厚生労働省「自立訓練(生活訓練)事業)
利用料金は前年度の収入状況によって異なり、生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯は0円で利用できます。収入がある場合でも月額最大37,200円の負担上限が設けられています。(参考:厚生労働省「障害者の利用者負担」)
支援③発達障害者支援センター
3つ目の支援機関は、発達障害者支援センターです。
発達障害者支援センターとは、発達障害の早期発見と早期支援を目的として、発達障害のある人とその家族などをサポートするための支援機関のことです。(参考:国立障害者リハビリセンター 発達障害情報・支援センター「発達障害支援センターとは」)
保健、医療、福祉、教育、労働など、さまざまな分野の関係機関と連携しながら、地域の支援ネットワークを構築し、多様な相談に応じて、指導や助言を行っています。また、求人に関する情報提供や就業先へのアドバイスなども行っています。
発達障害支援センターは、幼少期に発達障害の診断を受けた人だけでなく、大人になってから発達障害の診断を受けた人も支援の対象です。
また、医師から発達障害の診断を受けていない人でも支援を受けることが可能で、発達障害の可能性がある人からの電話相談なども受け付けています。
運営は都道府県や政令市が主体です。うち約75%は社会福祉法人・特定非営利活動法人などの民間法人が委託を受けて運営しています。(参考:発達障害者支援センター全国連絡協議会「発達障害者支援センターについて」)
各施設には、発達障害者支援センター運営事業実施要綱に基づき、最低3人の専任職員が配置されることになっています。
要綱には社会福祉士の配置が規定されていますが、センターによっては臨床心理士、言語聴覚士、精神保健福祉士、医師などの専門家も配置されているところもあります。
2025年9月時点で、全国に約100か所の施設があります。窓口は、各自治体や指定の事業所に設置されています。(参考:国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「発達障害者支援センター・一覧」)
支援④障害者就業・生活支援センター
4つ目の支援機関は、障害者就業・生活支援センターです。
障害者就業・生活支援センターとは、雇用・保健・福祉・教育などの関係機関と連携しながら、障害のある人の就業面と生活面を一体的に支援する機関です。
就職を目指す段階だけでなく、働き始めた後の定着支援まで相談できるのが特徴です。
障害のある人の就職活動の支援や求人の紹介、職場定着のためのサポートなどを行います。
就業面だけでなく、金銭管理などの経済面や生活面のことまで、日常および地域生活に関する支援も行っています。
生活習慣や金銭管理、健康管理などについても幅広く相談できるため、生活面のサポートも受けたい人にオススメです。
2026年4月1日時点で、全国に340箇所設置されています。(出典:厚生労働省「障害者就業・生活支援センターについて」)
発達障害のある人が活用できる支援制度
この章では、発達障害のある人が活用できる支援制度を紹介します。
支援制度①障害者手帳
障害者手帳とは、一定以上の障害のある人に交付される手帳のことです。
障害者手帳を所持することで、障害があることの証明が可能です。障害者手帳を所持する人は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)の対象として、さまざまな支援を受けられます。 (参考:厚生労働省 「障害者手帳について」 、e-Gov法令検索 「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」 )
取得の要否や手続きの方法は、お住まいの自治体の担当窓口か、主治医に相談するとよいでしょう。(参考:厚生労働省「障害者手帳」)
支援制度②成年後見制度
2つ目の制度・サービスは、成年後見制度です。
成年後見制度は、知的障害・精神障害・認知症などによって、1人での判断や契約手続きが難しくなった人を法的にサポートする制度です。
家庭裁判所の審判によって後見人等が選任され、財産管理や身上保護(医療・介護に関する手続き等)を代わりに行います。
発達障害のある人の場合、判断能力の程度に応じて補助・保佐・後見の3つの類型から適切なものが選ばれます。
相談窓口は、自治体の福祉担当課や、地域の権利擁護センター・社会福祉協議会です。(参考:厚生労働省「成年後見はやわかり」)
支援制度③日常生活自立支援事業
3つ目の制度・サービスは、日常生活自立支援事業です。
日常生活自立支援事業は、判断能力が十分でないために福祉サービスの利用や日常的なお金の管理が難しい人を、都道府県・指定都市の社会福祉協議会が支援する事業です。
成年後見制度とは異なり、本人が契約内容を理解できることが前提であるため、比較的軽度の状態でも利用しやすい特徴があります。
具体的な支援内容は、以下のとおりです。
- 福祉サービス利用援助(申請手続きの同行・助言など)
- 日常的金銭管理サービス(年金・公共料金・医療費の支払い手続きなど)
- 書類等の預かりサービス(年金証書・通帳・実印など)
定期的な訪問による生活変化の確認も行われるため、孤立しやすい状況にある人にとって特に有効です。
利用料は月平均約2回の支援で1回あたり約1,200円(実施主体により異なる)と、比較的低コストで利用できます。相談・申し込みは、お住まいの自治体の社会福祉協議会が窓口です。(参考:全国社会福祉協議会・地域福祉部「日常生活自立支援事業の概要と支援の現状」)
発達障害のある人が自立に向けた1歩を踏み出すまでの体験談
キズキビジネスカレッジ(KBC) に通所する不二氏(仮名)は、料理人として働いていたとき、注文が重なるとパニックになる、仕事の優先順位をつけにくい、複数の作業を同時に進めるのが難しいといった困りごとを抱えていました。
自分なりに努力を続けても働きづらさは改善せず、心身の負担が重なった末に退職しています。
その後、主治医に勧められて就労移行支援事業所を探し始め、複数の事業所を見学・体験したうえで、キズキビジネスカレッジ(KBC)への通所を決めました。
キズキビジネスカレッジ(KBC)の自己理解講座を通じて、聴覚から入る情報の処理が苦手、情報が複雑になるとパニックになりやすいといった自分の特性を言葉にできるようになったそうです。
不二氏は、自分の苦手を知り、対策を考えられたことが、社会復帰に向けた安心感につながったと話しています。
現在は、同じように生きづらさを抱える人を支えるピアサポートの支援員を目指し、キズキビジネスカレッジ(KBC)でPCスキルの習得に取り組んでいます。
不二氏の体験は、発達障害のある人が自立を目指すとき、支援を受けながら自分の特性に合う方法を見つけていく大切さを教えてくれます。
発達障害の自立に関するよくある質問
この章では、発達障害の自立に関するよくある質問を紹介します。
Q1.発達障害のある人は1人暮らしできますか?
発達障害のある人も1人暮らしは可能です。
ただし、生活スキルを少しずつ身につけながら、必要な支援を上手に活用することが大切です。(参考:厚生労働省「障害福祉サービスの内容」、厚生労働省「令和4年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)結果の概要」 )
活用できる主な支援としては、以下のものがあります。
- 自立訓練(生活訓練):家事や金銭管理などを練習できる
- 自立生活援助:1人暮らし開始後の訪問・相談支援を行う
- グループホーム:段階的に自立を目指せる
- 障害者就業・生活支援センター:仕事と生活をまとめて相談できる
Q2.障害者手帳がなくても支援は受けられますか?
手帳がなくても利用できる支援は多数あります。
発達障害のある人の中には、診断はあっても手帳を取得していない人や、診断・手帳の両方がないグレーゾーンの状態にある人も少なくありません。
厚生労働省の調査では、医師から発達障害と診断された人のうち約20.9%が手帳を持っていないことが確認されています。(参考:厚生労働省「令和4年生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)結果の概要」)
障害者手帳は障害者雇用への応募には原則として必要ですが、それ以外の支援サービスの多くは手帳なしでも利用可能です。(参考:厚生労働省「発達障害者の就労支援」、厚生労働省「障害福祉サービスの内容」 )
発達障害のある元利用者が自立する一歩を踏み出すまでの体験談
この章では、発達障害のある元利用者が自立する一歩を踏み出すまでの体験談を紹介します。
きっかけは異動〜働くなかで顕在化した発達障害の特性〜
私が発達障害の診断を受けたのは、大学卒業後、日本料理のお店で料理人として働いていた社会人2年目のときです。
社会人1年目に働いていた日本料理のお店は、板前の店長と私の2人で切り盛りする小規模なお店でした。
そんなに忙しいお店ではなく、自分のペースで仕事ができるので、店長からも仕事ぶりを評価してもらえていました。
そんな中、 社会人2年目になり、規模が大きく集客数も多い系列の本店に異動することになったんです。
本店は、それまでに働いていたお店に比べて、お店の規模や従業員の数、料理のクオリティや品数など、なにもかもが違いました。
それまでより仕事のスピードや頭の回転の速さ、仕事の優先順位づけについての重要性が高まったのです。
そこで、 それまで潜在的にはあっても気がつかなかった発達障害の特性が一気に顕在化しました。そして、社会生活に支障をきたすようになったのです。
仕事がつらくて逃亡〜発達障害の診断を受けるに至った経緯〜
発達障害の特性と多忙という環境要因によって、私は、以下のような状態になりました。
- 注文が重なるとパニックになる
- 仕事の優先付けができない
- マルチタスクができない
こうしたことが原因で私は、料理長から叱責されることが多くなりました。
状況を改善したい一心で、誰よりも早く出勤してその日の予約を書き出して頭に入れたり、休憩時間を取らずに夜営業の準備をしたりと、私なりに努力をしました。 それでも、臨機応変な対応は一向にできるようになりませんでした。
料理長から「お前どこかおかしいんじゃないか?」「本当に大学を卒業したのか?」などと厳しい言葉で叱責される度に、「自分でもどこかおかしいのかもしれない...」と感じるようになりました。
当時の私は不眠が続いたり、原因不明の嘔吐や蕁麻疹(じんましん)の症状が現れたりするようになっていました。いま思い返すと、発達障害による二次障害が出ていたんだと思います。
毎日の仕事がつらかった私は、インターネットで「仕事 臨機応変 対応 できない」などと検索しました。
すると、発達障害に関するページを見つけたのです。 その内容を読んだことで、「私もこれだ!」と感じました。
さっそく、私は病院で発達障害の検査を受けました。ですが、その結果が出るのを待たずして、仕事へのストレスが限界に。ある朝、私は出勤しないで仕事から逃亡しました。両親が警察に捜索願を出す事態にまで発展したのです。
結局、仕事はそのまま退職することになりました。
そして、退職後に検査結果が出ました。私の特性には、広汎性発達障害(現:ASD)という診断名がついたのです。
いつかは再び自立したい〜就労移行支援事業所を利用しようと思った理由〜
仕事を辞めてから、しばらく休養することにしました。
ベッドの上で横になりながら考えたことは、「これからどうしようか」ということでした。
当時の私は、「仕事を逃げ出して職場の人たちや家族に迷惑を掛けた」とトラウマになっていたため、すぐに就職活動をすることは考えられませんでした。「働きたい...でもすぐには無理だ...」という心境です。
そんなときに、 主治医から就労移行支援事業所の利用を提案されました。
調べてみると、就労移行支援事業所とは、精神障害や発達障害などのなんらかの病気・障害のある人を対象に、働くために必要な知識と能力を高めるサポートをしてくれる支援機関であることがわかりました。
「いつかは再び自立したい」と思っていた私は、就職するためのステップとして、就労移行支援事業所を利用してみようと思いました。
さらに調べるうちに、私の家のすぐ近くにも就労移行支援事業所があることもわかり、見学に行ってみることにしたのです。
いくつか体験した上で決めた方がいい〜複数の就労移行支援事業所の見学で感じたこと〜
まずは、就労移行支援事業所がどんなところか一度確認するため、家から自転車で15分程の距離にある就労移行支援事業所に行ってみました。
そこは内装がとてもカラフルで、なんだかすごくワクワクしました。
その就労移行支援事業所は、部屋に入退室するときの挨拶やの徹底など、事細かにルールが決められていたのが印象的でした。また、就職活動を意識して、毎週火曜日はスーツを着用することを義務づけている点も、その就労移行支援事業所の特色だったように思います。
私は、その就労移行支援事業所に体験入所してみました。
1週間の体験を終え、本当に入所しようか悩んでいると、スタッフさんは、「ほかにもたくさんの就労移行支援事業所があるから、いろいろ体験してから決めた方がいいですよ」と、アドバイスをくれました。
その言葉に勇気づけられて、私は、ほかの就労移行支援事業所も体験することにしました。
次に行ったのは、主に都内に展開している人気のある就労移行支援事業所です。その人気ぶりは、枠が開いて通所できるようになるまでに、3か月かかるほどでした。
その就労移行支援事業所は、発達障害に特化したプログラムを行っており、実際に会社で働くことを想定した訓練が多いような印象でした。また、150社を超える企業と連携しており、利用者がその就労移行支援事業所独自の求人を利用できる点が人気の理由だったように思います。
その次に体験した就労移行支援所は、とにかく自己理解のプログラムに力をいれていました。
講師がホワイトボードの前に立ち、まるで本当の学校のように講義を行っていた点が印象的でした。
3つの就労移行支援事業所の体験を通じて感じたことは、それぞれの事業所によって、取り組んでいることも雰囲気も年齢層も多種多様だということです。
また、同じ運営元であっても、個別の就労移行支援事業所によって、雰囲気が大きく異なっていると感じました。
「自分にあった就労移行支援事業所を見つけるためには、さらにいくつかの就労移行支援事業所を体験した上で決めた方がいいかもしれない」。そう考えた私は、もう少し、ほかの就労移行支援事業所を見学してみようと決めました。
おそるおそる参加した当事者会〜自分に合った就労支援事業所との出会い〜
ほかの就労移行支援事業所の見学を検討していたあるとき、都内のカフェで「発達障害を語る会」という発達障害のある人の当事者会が開催されることをSNSで知りました。
当時、参加者を募集していた回のテーマは、「発達障害×就労」。次の働き方を模索していた私は、強烈に興味を惹かれました。そして、おそるおそる会に参加してみることにしたのです。
実際にその会に参加すると、ほかに参加していた発達障害のある女性が、ある就労移行支援事業所の紹介をしていました。
その就労移行支援所こそが、現在私が通う キズキビジネスカレッジ(KBC) だったのです。
キズキビジネスカレッジ(KBC) では、会計、プログラミング、英語、マーケティングなどの専門スキルに特化した講義を受けられるとのことでした。
私は、「うつ病や発達障害による離職期間をポジティブな時間に変える」という キズキビジネスカレッジ(KBC) の理念と、その女性の熱弁に魅了されたことをよく覚えています。
当時は開設まもない就労移行支援所でしたが、「ここに通いたい!」と強く思い、体験入所をした上で通所することに決めました。
ピアサポートを仕事にしたい!~見つけた将来の夢~
キズキビジネスカレッジ(KBC) に通所することを決めてから入所するまでの期間、次の働き方を考えながら、発達障害の当事者でもある株式会社キズキ社長の安田祐輔氏の著書『暗闇でも走る』をなんとなく読みました。 (参考:安田祐輔 『暗闇でも走る』 )
さらに、その本の中で紹介されていた、株式会社マザーハウス代表取締役兼チーフデザイナーの山口絵理子氏の著書『裸でも生きる〜25歳女性起業家の号泣戦記〜』も読みました。 (参考:山口絵理子 『裸でも生きる ~25歳女性起業家の号泣戦記~』 )
どちらの書籍についても、 「社会や人のためにこんなにもがんばっている人がいるのか」と感銘を受けました。
そして「自分も社会の役に立ちたい」という漠然とした気持ちがふつふつと湧いて、「発達障害の診断を受けた自分だからこそできることは何か」を考えるようになりした。
考えるうちに、それは、「当事者として、同じように発達障害の特性で悩んでいる人をサポートする仕事だ」と思うようになったんです。
一般的に、同じ生きづらさを抱える人同士がお互いに支え合う活動のことをピアサポートと言います。
私は、「ピアサポートを自分の仕事にしたい!」と、明確な目標を持って、 キズキビジネスカレッジ(KBC) に入所しました。
自立する上で自分の特性を知る重要性〜就労移行支援事業所で取り組んでいること〜
発達障害の特性に関連して離職した人がもう一度社会復帰するにあたって、本当に重要なことは何でしょうか?
それは、 自分の発達障害の特性を知り、なぜ前の仕事が続かなかったのか、どのような対策をすれば発達障害の特性をカバーすることができるのかを知ることだと思います。
なぜなら、自分の発達障害の特性を知らなければ、その特性にあった対策をできない上、適切なサポートを職場に求めることができないからです。
自分の発達障害の特性を理解せずに社会復帰できたとしても、以前の職場と同じ失敗を繰り返す可能性が高いでしょう。
キズキビジネスカレッジ(KBC) では、「自己理解講座」という、文字通り、自分の特性について理解するための講義が開講されています。
その講義で、私は、「聴覚から入ってくる情報を処理することが苦手だ」という特性があることを理解しました。さらに、情報が複雑になればなるほど、頭の中でパニックになる傾向に気が付いたのです。
この発達障害の特性に関する気づきは、私が料理人として働いていたとき、オーダーが重なるとよくパニックになっていた経験と合致します。
これは私の発達障害の特性の一つであり、自分一人の努力では対処しきれないことがあったのかもしれないと、不甲斐なかった料理人時代の自分を許容することができるようになりました。
ほかにも、苦手だった電話対応に対して電話対応シートを作ることや、相手の言った言葉を復唱し自分のペースに巻き込むというやり方で対策を立てることができることを知りました。
自分の苦手を知り、苦手なことへの対応策を練ることができたことは、社会復帰する上での心の安心につながったように思います。
自分でできることを模索中〜スキル向上に向けて取り組んでいること〜
現在の私は、 キズキビジネスカレッジ(KBC) に通所しながら、病気・障害のある人に対して、ピアサポートで寄り添える支援員を目指して、日々スキル向上に努めています。
いまスキル向上に向けて取り組んでいることは、さまざまな業務に活かせるWord、Excel、PowerPointなどのPCスキルの向上です。
実際に就労移行事業所のスタッフさんを見ても、一人一台パソコンを持っていて、利用者の活動を報告書にまとめたり、講座の資料をPowerPointで作ったりと、PCスキルが求められる仕事がたくさんあることがわかります。
どんなに頭がいい人でも、どんなに偏差値が高い大学を出ている人でも、当事者や似た経験をした人でなければ、本当の意味でのつらさや大変さはわからないと、私は思っています。
似た体験をしているという経験は、自分の病気・障害で困っている人に対して、より一層寄り添ったサポートができると考えています。
ピアサポートの支援員という仕事は、発達障害という、今まで自分がマイナスに考えていた特性をプラス変えることができる仕事のはずです。
ただ、具体的に自分にどんな支援ができるのかは、今の時点では模索中です。
一口に障害のある人と言っても、十人十色な困りごとに対して、一人ひとり違った支援が必要だとも実感しています。
いろんな人に寄り添ったサポートができるように、元ひきこもりの人が書いた本や元不登校の人が書いた本など、生きづらさを感じていた人が書いた本を積極的に読むようにしています。
最近は、VRを使っていろいろな障害のある人の世界を実際に体験できるということも知りました。こうしたツールや体験を通じて、さまざまな障害のある人の気持ちが理解できるようになりたいと思っています。
発達障害とは?
発達障害とは、 脳の機能的な問題や働き方の違いにより、物事の捉え方や行動に違いが生じることで、日常生活および社会生活を送る上で支障が出る、生まれつきの脳機能障害のことです。 (参考: American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 、こころの情報サイト 「発達障害(神経発達症)」 、NHK福祉ポータル ハートネット 「そもそも「発達障害」って?|大人の発達障害ってなんだろう? - 大人の発達障害」 、宮尾益知・監修 『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』 、松本卓也、野間俊一・編著 『メンタルヘルス時代の精神医学入門 ーこころの病の理解と支援ー』 、福西勇夫・山末英典・監修 『ニュートン式 超図解 最強に面白い!! 精神の病気 発達障害編』 )
発達障害は主に、以下の3つの診断名に分類されます。
- ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)
- ASD(自閉スペクトラム症/広汎性発達障害)
- LD/SLD(限局性学習症/限局性学習障害)
同じ診断名でも、人によって多様な特性が現れるのが発達障害の特徴です。また、いずれかの発達障害のある人は、ほかの発達障害が併存している可能性もあります。
発達障害の概要や種類、原因、治療方法などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
まとめ:発達障害のある人の自立は、1人で抱え込まないことから始めよう
発達障害のある人の自立は、何もかも自分1人でできるようになることを目指すものではありません。
生活や仕事の中で困ったことがあれば、支援機関や制度・サービスをためらわずに活用することが、自立への大切な第1歩です。
本コラムで紹介したように、発達障害のある人を支える相談窓口や支援機関は全国に数多く存在します。
また、障害者手帳の有無にかかわらず利用できる制度・サービスも多く、「自分には支援を受ける資格がない」と思い込む必要はありません。
大切なのは、困りごとを1人で抱え込まず、まず誰かに相談してみることです。
信頼できる支援者やサービスとつながることで、自分らしい生活のかたちが少しずつ見えてくるはずです。あなたのペースで、着実に前へ進んでいきましょう。
よくある質問(1)
- 発達障害のある人が生活面で自立するための工夫について教えてください。
-
以下が考えられます。
- ①お金の管理は自動化と見える化で乗り越える
- ②家事・生活リズムは仕組みをつくって継続する
- ③体調の変化に早めに気づき、二次障害を予防する
詳細については、こちらで解説しています。
よくある質問(2)
- 発達障害のある人が活用できる支援制度はどのようなものがありますか。
監修志村哲祥
監修キズキ代表 安田祐輔
監修角南百合子
すなみ・ゆりこ。臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい。
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運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2026年9月現在、首都圏・関西に12校舎を展開しています。トップページはこちら→


