発達障害の私が自立する一歩を踏み出すための物語 利用者体験談
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)利用者の不二麟太郎(仮名)です。
あなたは、発達障害があり、働き方などに関するお悩みを抱えているのではありませんか?
もしかしたら、大人になってから発達障害に気づき、戸惑いも抱えているのかもしれませんね。
そして、自立したいと思っているのでしょう。
私自身、大人になってから発達障害の診断を受けました。
診断を受けた当時は、これからどのような働き方をすればよいのだろうかとすごく悩みました。
この記事では、発達障害のある私が自立に向けて一歩を踏み出すまでに考えたことと、現在通っている就労移行支援事業所で取り組んでいることをお伝えします。
お悩みを抱えているあなたの「自立」に少しでも役に立てば幸いです。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、自立を目指す発達障害のある人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
発達障害の診断を受けるに至った経緯
まずは、私が発達障害の診断を受けるに至った経緯をお伝えします。
忙しいお店に異動して顕在化した発達障害の特性
私が発達障害の診断を受けたのは、大学卒業後、日本料理のお店で料理人として働いていた社会人2年目のときです。
働き始めた1年目のときに勤めていた日本料理のお店は、板前の店長と私の2人で切り盛りする小規模なお店でした。
そんなに忙しいお店ではなく、自分のペースで仕事ができるので、店長からも仕事ぶりを評価してもらえていました。
きっかけは、社会人2年目になり、規模が大きく集客数も多い本店に急遽異動することになったことでした。
本店は、それまでに働いていたお店に比べて料理のクオリティ・品数、従業員の数、お店の規模など、なにもかもが違いました。
それまでより仕事のスピード、頭の回転の速さ、仕事の優先順位づけについての重要性が高まりました。
それまで潜在的にはあっても気がつかなかった発達障害の特性が一気に顕在化して、社会生活に支障をきたすようになったのです。
仕事がつらくて逃亡、そして発達障害の診断
発達障害の特性と多忙によって、私は、以下のような状態になりました。
- 注文が重なるとパニックになってしまう
- 仕事の優先づけができない
- マルチタスクができない
私は、料理長から叱責されることが多くなりました。
状況を改善したい一心で、誰よりも早く出勤してその日の予約を書き出して頭に入れたり、休憩時間を取らずに夜営業の準備をしたのですが、臨機応変な対応は一向にできるようになりませんでした。
料理長から「お前どこかおかしいんじゃないか?」「本当に大学を卒業したのか?」などと言われる度に、自分でもどこかおかしいのかもしれないと感じるようになりました。
毎日の仕事がつらかった私は、インターネットで「仕事 臨機応変 対応 できない」などと検索しました。
すると、発達障害の記事を見つけ、その内容を読んだことで、「私もこれだ」と感じました。
さっそく発達障害の検査をしてくれる病院を探し、検査を受けました。
検査を受けた日から診断結果が出るまで2週間かかりました。
結果が出るまでの時期、仕事のストレスが限界に達していた私は不眠が続き、原因不明の嘔吐や体に蕁麻疹の症状が現れるようになっていました。
ある朝ついに、仕事に出勤しないで逃げ出していまい、両親が警察に捜索願を出す事態にまで発展してしまいました。
結局、仕事はそのまま辞めることになりました。
そして診断結果が出て、私の特性には、広汎性発達障害という診断名がつきました。
就労移行支援事業所を利用しようと思った理由〜再び自立するために〜
仕事を辞めてから、しばらく体を休めました。
ベッドの上で横になりながら考えたことは、「これからどうしようか」ということでした。
仕事を逃げ出して職場の人たちや家族に迷惑を掛けてしまったことがトラウマになり、すぐにまた就職活動をすることは考えられませんでした。
「働きたい、でもすぐには無理だ」という心境です。
そんなときに、主治医の先生から就労移行支援事業所について調べてみることを提案されました。
調べてみると、就労移行支援事業所とは、「精神障害や発達障害などのなんらかの障害がある人を対象に働くために必要な知識と能力を高めるサポートをしてくれる場所」であるとわかりました。
いつかは再び自立したいと思っていたので、就職するためのステップとして就労移行支援事業所を利用してみようと思いました。
さらに調べるうちに、私の家のすぐ近くにも就労移行支援事業所があることもわかり、見学に行ってみることにしました。
就労移行支援事業所の見学で感じたこと〜その多種多様な特色〜
まずは就労移行支援事業所がどんなところか一度確認するため、家から自転車で15分のところにある事業所に行ってみました。
そこは内装がとてもカラフルで、なんだかすごくワクワクしました。
その施設の特徴として、部屋に入退室するときの挨拶や分離礼(※先に挨拶を言い、そのあとでお辞儀する礼の仕方)の徹底など、事細かにルールが決められていたのが印象的でした。
また、就職活動を意識して、毎週火曜日にスーツを着用することを義務づけていることも、その事業所の特色の1つかもしれません。
私はその施設に体験入所してみました。
1週間の体験を終え、本当に入所しようか悩んでいると、スタッフさんから「他にもたくさんの就労移行支援事業所があるので、いろいろ体験してから決めた方がよい」というアドバイスをいただき、他の事業所も体験することにしました。
次に行ったのは、人気のある就労移行支援施設です。
その人気ぶりは、枠が開いて通所できるようになるまでに3か月かかるというほどでした。
その施設は、主に都内に展開しています。
発達障害に特化したプログラムを行っており、実際に「会社で働くこと」を想定した訓練が多いと感じました。
150社を超える企業と連携しており、利用者がその事業所独自の求人を利用できることが人気の理由かもしれないと感じました。
その次に体験した就労移行支援所は、とにかく自己理解のプログラムに力をいれていました。
見学にいった際に、講師の人がホワイトボードの前に立ち、まるで本当の学校のような講義が行われていたことが印象的でした。
3つの就労移行支援事業所の体験を通じて感じたことは、それぞれの事業所によって、取り組んでいることも雰囲気も年齢層も多種多様だということです。
また、同じ運営元の就労移行支援事業所でも、事業所の場所が池袋なの新宿なのか場所によって、雰囲気が大きく異なっていると感じました。
そのため、さらにいくつかの事業所を体験した上で、自分にあったところを選択する必要があると感じ、もう少し見学してみようと思いました。
自分に合った就労支援事業所との出会い〜専門スキルに特化し、離職期間をポジティブな時間に変える~
私が4つ目に体験したのが、専門スキルに特化した就労移行支援所でした。
この支援所との出会いをお伝えします。
私は、発達障害の診断を受けてから、発達障害に関する情報をTwitterで集め始めました。
そしてあるとき、都内のカフェで「発達障害を語る会」という会が開催されることを知りました。
そのとき参加者を募集していた回のテーマは、「発達障害×就労」でした。
次の働き方を模索していた私は強烈に興味を惹かれ、おそるおそる会に参加してみることにしました。
実際に会に参加すると、発達障害当事者である女性が、専門スキルに特化した就労移行支援事業所の紹介をしていました。
その就労移行支援所が、現在私が通うキズキビジネスカレッジ(KBC)というところだったのです。
キズキビジネスカレッジ(KBC)では、会計、プログラミング、英語、マーケティングなどの専門的な講師陣の授業が受けられるとのことでした。
「うつや発達障害による離職期間をポジティブな時間に変える」という事業所の理念と、その女性の熱意に魅了されました。
開設まもない事業所でしたが、「ここに通いたい」と強く思い、体験をした上で通うことに決めました。
私が自立に向けて就労移行支援事業所で取り組んでいたこと
次に、キズキビジネスカレッジ(KBC)に通う前後の、私の心境、実際に行っていることなどについてお伝えします。
見つけた将来の夢~ピアサポートを行いたい~
ちょっと話が前後します。
キズキビジネスカレッジ(KBC)に通い始める直前、次の働き方を考えながら、発達障害の特性がありながら起業した安田祐輔さんの著書『暗闇でも走る』をなんとなく読みました。
さらに、その本の中で紹介されていた、株式会社マザーハウス代表取締役兼チーフデザイナーの山口絵理子さんの著書『裸でも生きる~25歳女性起業家の号泣戦記~』も読みました。
どちらの書籍についても、「社会や人のためにこんなにもがんばっている人がいるのか」と感銘を受けました。
そして「自分も社会の役に立ちたい」という漠然とした気持ちがふつふつと湧いて、「発達障害の診断を受けた自分だからこそできることは何か」を考えるようになりした。
考えるうちに、それは、「当事者として、同じように発達障害の特性で悩んでいる人をサポートする仕事だ」と思いました。
それはピアサポートと呼ばれる仕組みで、一般に、「同じような立場の人によるサポート」といった意味で用いられる言葉です。
ピアサポートの仕事を行えるように、私はキズキビジネスカレッジ(KBC)に入所しました。
自分の特性を知ることの重要性
発達障害に関連して離職した人がもう一度社会復帰するにあたって、本当に重要なことは何でしょうか。
それは、自分の特性を知り、なぜ前の仕事が続かなかったのか、どのような対策をすれば発達障害の特性をカバーすることができるのかを知ることだと思います。
なぜなら、自分の特性を知らなければ、適切なサポートを企業側に求めることはできないからです。
特性に対する対策を知らなければ、社会復帰できたとしても、前回の職場と同じ失敗を繰り返してしまう可能性も高いでしょう。
キズキビジネスカレッジ(KBC)では、「自己理解講座」という、文字どおり自分の特性について理解するための講義が週2回あります。
その講義で、私は、「聴覚から入ってくる情報を処理することが苦手だ」という特性があることがわかりました。
さらに情報が複雑になればなるほど頭の中でパニックになってしまう傾向に気が付きました。
「聴覚から入ってくる情報の処理が苦手だ」ということの気づきは、私が料理人として働いていたときの、「オーダーが重なるとよくパニックになってしまっていた話」と合致します。
これは私の発達障害の特性の一つであり、「自分一人の努力」では対処しきれないことがあったのかもしれないと、不甲斐なかった料理人時代の自分を許容することができるようになりました。
苦手だった電話対応に対して電話対応シートを作ることや相手の言った言葉を復唱し自分のペースに巻き込むというやり方で対策を立てることができました。
自分の苦手を知り、苦手なことへの対応策を練ることができたことは、社会復帰する上での心の安心につながりました。
スキル向上に向けて
現在の私は、キズキビジネスカレッジ(KBC)に通い、障害を抱えている人に対してピアサポートで寄り添える支援員を目指して、日々スキル向上に努めています。
どんなに頭がよくても、どんなに偏差値が高い大学を出ている人でも、当事者や似た経験をした人でなければ、本当の意味でのつらさや大変さはわからないと思います。
「似た体験をしている」という経験は、障害を抱えて困っている人に対して、より一層寄り添ったサポートができると考えました。
ピアサポートの支援員という仕事は、発達障害という今まで自分がマイナスに考えていた特性をプラス変えることができると思いました。
具体的に自分にどんな支援ができるのか、今の時点では模索中です。
まずは、いろいろな業務に通じるWord、Excel、PowerPointなどのパソコンスキルを向上させています。
実際に就労移行事業所のスタッフは一人一台パソコンを持っていて、利用者の活動を報告書にまとめたり、講座の資料をPowerPointで作ったりなどパソコンスキルが求められる仕事がとても多いです。
また一口に障害者といっても、十人十色な困りごとに対して一人一人違った支援が必要だと実感しています。
いろんな人に寄り添ったサポートができるように、元ひきこもりの人が書いた本や元不登校の人が書いた本など、生きづらさを感じていた人が書いた本を積極的に読むようにしています。
最近はVRを使っていろいろな障害がある人の世界を実際に体験できるということも知りました。
こうしたツールや体験を通じて、様々な障害のある人の気持ちが理解できるようになりたいと思っています。
まとめ
私は、発達障害の診断を受けてから次の働き方について考えていたときに、発達障害で経済的に自立している人の体験談をよくネットで探していました。
この記事は、当時の私と同じように、「発達障害に関連して離職して、これから先どうすればいいのかわからない」と困っている人たちの参考になればと思って書きました。
発達障害のある人が自立するためには、一人だけでチャレンジする必要はありません。
先述のとおり、現在は、様々なタイプの就労移行支援事業所があります。
あなたの特性や、あなたの考える自立に合う居場所もきっとあります。
まずは、お近くの就労移行支援事業所を探して見学や相談に行き、自分に合うところを見つけましょう。
将来的なあなたの自立を、心から祈っています。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
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