うつ病から復職する方法 復職に向けた準備を解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
うつ病で休職しているあなたは、復職したい思いと共に、以下のような不安を抱えていませんか?
- うつ病で休んでいるけれど、そろそろ復職したい
- 復職のために具体的に何をすれば良いのだろう
- 復職後にうつ病が再発するのではないか
うつ病で一定期間職場から離れている場合「復職するのが不安」「職場復帰が怖い」と感じるのは当然のことです。
このコラムでは、うつ病のある人が復職する際の目安や復職に向けた準備、復職する際の対応、復職直後の悩みごとと対処法について解説します。
いずれも、うつ病のある人が再就職する場合でも参考になるはずです。
また、うつ病のある本人に向けた内容ではありますが、「うつ病で休職中の人のご家族」「うつ病からの復職者のいる職場の人」にも役立つ情報となっています。
ぜひ最後までお読みください。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、復職を検討しているうつ病のある人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
うつ病から復職までの流れ
うつ病を発症して休職し、その後復帰するまでの一般的な流れ・プロセスは以下のとおりです。
- ①うつ病の発症
- ②医療機関の受診
- ③診断書提出
- ④休職して心身を休める
- ⑤回復を自覚し、復職を検討する
- ⑥主治医の許可を得て復職準備スタート
- ⑦復職準備
- ⑧復職
復職への不安を解消していくために大切なのは、「今後の見通しを持つこと」です。
「休んでも、きちんと回復すればまた働けるんだ」とわかれば、安心材料になります。
うつ病を発症した場合の休職から復職までのプロセスを知り、不安を払拭しましょう。
うつ病による休職については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
うつ病から復職する際の3つの目安
復職に向けて動きだす前に、まずはうつ病から回復しているかを確認することが大切です。
ご自身の回復状況を見極めた上で準備ができると、「復職からの再発・再休職」を避けやすくなるでしょう。
とは言え、具体的に何をもとに判断すればいいのかは難しいですよね。
この章では、うつ病から復職準備に入っていいかを確認する際の目安を解説します。
なお、大前提として、自己判断で通院や服薬を中断するのはやめましょう。
自分では回復したと思っていても、専門家の目から見れば加療が必要な場合があるので注意してください。
ポイント①生活リズムが安定してきたかどうか
最初に確認すべきことは、「生活リズムが安定してきたかどうか」です。
うつ病の回復期に入ってくると、基礎的な生活リズムが安定してくるようになります。
徐々に日中の眠気や倦怠感が収まってきて、以前よりも行動力が湧いてきたことを実感できるでしょう。
ただし、調子が上向いてきたからといって行動しすぎるとその後動けなくなったり、落ち込んだりする場合もあるため注意してください。
主治医とこまめに生活状況を共有しながら、生活リズムが安定してきたかどうかを見極めましょう。
ポイント②以前よりも気が楽になってきたかどうか
2つ目の目安は、「以前よりも気が楽になってきたかどうか」です。
具体的には以下のような考え方や精神状態を保てる状態になったかどうか、と考えてください。
- 「うつ病の自分は取り返しがつかない」などと深刻視しなくなった
- 「うつ病は特別なことではない」と気楽に考えられるようになった
- 「元気になったら何をはじめよう」と回復後のことを自然と考えるようになった
うつ病のある人は、「何をやってもダメ」「何もしたくない」と思いがちです。
しかし、回復するにつれて、「元気になったらこれをしたい」という前向きな行動意欲が強まってきます。
回復してきたかどうかを判断する基準として、上記の意味で「気が楽になってきたかどうか」を考えてみましょう。
ポイント③主治医から復職に向けて動く許可が得られているかどうか
3つ目の目安は、主治医から復職に向けて動く許可が得られているかどうかです。
自分の調子は自分がよくわかっていると思うかもしれません。ですが、そういった考えがなかなか通用しないのがうつ病の難しいところです。
自分が大丈夫だと思っていても、実際はもうすこし加療が必要だというケースが往々にしてあります。
うつ病から復職を考えている人は、必ず主治医の判断を仰ぐようにしましょう。
うつ病のある人が復職に向けた準備10選
調子も安定してきて主治医からも肯定的な意見を得られたら、具体的な復職準備に入っていきます。
この章では、うつ病のある人が復職に向けた準備を解説します。
ピックアップしたものは、復職を支援している日本うつ病リワーク協会の復職支援プログラムがもとになっています。また、筆者が実践して効果を感じたものが多く含まれています。(参考:秋山剛・監修『うつ病の人の職場復帰を成功させる本』)
なお、「このプロセスを踏まないと絶対に復職できない」というわけではありません。ご安心ください。
人によってはハードに思うものがあるかもしれません。
つらくなったら主治医と相談しつつ、休み休み進めていきましょう。
最優先すべきはあなたの健康だということを忘れずにいてください。
準備①就労時と同じ生活リズムを定着させる
まずは「就労時と同じ生活リズムを再現・定着させること」からはじめましょう。
これは、起床・就寝といった基礎的な生活リズムを保つことから一歩進んで、午前と午後に簡単な作業をすることを指します。
つまり、自分が就業しているときの生活リズムを再現して、無理なく生活を送れるかどうかを確認してみてください。
ただし、日中に行う作業は疲れにくい簡単なものにしましょう。
実際に筆者が行っていたおすすめは以下のものです。
- 読書をする
- 料理をつくる
- 軽い散歩に出かける
- 部屋の掃除や整理整頓をする
- 文章の書き取りや音読をする
- 四則演算の簡単な計算問題を解く
疲れを感じたら作業をやめて休みましょう。
無理のない範囲で行動し、徐々に慣らしていくことが肝要です。
少しずつで大丈夫なので、働いているときの生活リズムを定着させていきましょう。
準備②どこかへ通う習慣をつける
次のステップとしてオススメしたいのが、どこかへ通う習慣をつけることです。
場所はどこでも構いません。
近所の図書館や公園まで行くといった簡単なものでも、十分に効果があります。
筆者の場合は、「毎朝9時に近所のカフェにモーニングを食べに行く」というのを実践していました。
通う習慣をつけることは生活リズムの定着にも有効です。
特に朝、外に出て陽の光を浴びることで、就寝と起床の時間が安定しやすくなります。
また体力に余裕のある人は、通う場所として復職支援を行っている就労移行支援事業所の活用も検討してみましょう。
通う習慣に加えて、主治医とはまた別の観点から相談に乗ってもらうことができます。
生活リズムが定着してきた人はぜひ、どこかへ通う習慣を身につけてください。
準備③軽い運動をして体力をつける
復職前には、軽い運動をして体力をつけることが重要になります。
うつ病があると、気力だけでなく体力も低下しています。
人によっては、不安から来る動悸がもとですぐに息切れするのではないでしょうか?
体力が落ちた状態で復職すると、数週間は身体がもっても、日が経つに連れて休みがちになる可能性があります。
体力が続かないという理由で、うつ病からの復職後10日を待たずにまた休みに入るケースもあります。
軽い運動の具体例として筆者が実践したことを以下に挙げます。
- 20分程度のジョギング
- 10分程度の縄跳び
- 1時間近い長距離の散歩
もちろんすべてを1日で行うのではなく、その日の調子や気分でどの運動をするかを考えて取り入れてみてください。
別の疾患によって運動が難しい場合は、主治医に体力をつけたいことを伝えて相談しましょう。
準備④人と接する機会を増やしていく
人と接する機会を増やすことも、復職前の準備として大切なプロセスです。
うつ病のときは、誰かと会話するだけで疲れますよね。
特に対人不安の強い人は、調子が戻るまでは一人にしてほしいと思うこともあるでしょう。
「そもそも何を話していいかも思いつかない」という人もいるかと思います。
しかし職場復帰をすると、ある程度人と接する機会が生じます。
そのたびに心をすり減らさないよう、少しでも人に慣れることが大切です。
最初は、家族や信頼できる友人と会話する程度でOKです。実際に会うのが難しい場合は、メールやSNSのやりとりからはじめましょう。
あまり疲労を感じずに自然体で接することができるようになったら、顔を合わせる機会を増やしてみてください。
何を話していいかわからないという人には、一緒に映画を見に行くのがオススメです。行動をともにしつつ、会話の機会が多くならずに済みます。
鑑賞後は映画の話ができるので、話題が思いつかないという不安を軽減できるはずです。
ただし、人と会うのはとても体力を使うことです。決して無理はしないようにしましょう。
準備⑤主治医と相談して復職の許可を得る
運動や人と接することにも慣れ、日常生活が問題なく送れるようになってきたら、復職に向けて主治医と相談を開始しましょう。
うつ病からの復職に大切なのは、「自分が大丈夫だと思えること」だけでは不十分です。
主治医はこれまでの経過や治療の見通しを総合的に判断した上で「復職できる状態である」と判断します。
自己判断で「もうよくなったので復職する」と決めることのないようにしましょう。
なお、主治医の方針にどうしても納得できなかったり、処方された薬でよくなっている実感が持てなかったりする場合は、セカンドオピニオンを求めて別の医師に診てもらうのもひとつの手です。
主治医と違う方針を示されるようであれば、自分に合いそうな方に従ってください。
ただし一般論として、セカンドオピニオンでも治療の方針があまり変わらないようなら、多少納得できないところがあっても、いまの方針に従うことをオススメします。
また、代替医療や民間療法ではなく、医療機関の治療を受けるという点も重要です。
成果がすぐに出ないからといって、医療機関ではないところへ治療を求めるのは避けましょう。
復職準備に入る前に、医療機関の医師から肯定的な意見を得られるかを確認してみてください。
準備⑥職場の上司や同僚に復職の意思を伝える
主治医から復職の許可が降りたら、次のステップは職場への相談です。
実際に復職させるかどうかを決めるのは主治医ではなく、あくまで職場です。
復職命令は、それ自体が人事権の行使とみなされます。
「復職可能」の診断書が下りたあとは、産業医の意見やあなたの意思・状態を踏まえ職場が復職の最終判断を行うこととなります。
職場から正式に「復職可」の判断が下りたら、職場復帰に向けて本格的に動き出しましょう。
準備⑦復職後の仕事の進め方を考えてみる
この段階まで来たら、今度は復職後の仕事の進め方を具体的に考えてみましょう。
特に「うつ病と仕事」に関係がある場合、仕事を休む前のことを思いだすのはつらいことかもしれません。
しかし順調に回復していれば「なぜ働くのがつらくなったのか」「何が問題だったのか」を冷静に考えられるようになっているはずです。
筆者自身は、次のような方法を行いました。
- 自分のやっていた仕事を洗い出して、具体的にどの業務がストレスになっていたのかを考え直す
- その業務がストレスにならないためにはどういう仕事の進め方をすればよかったのかを検討する
このときに大切なのは、復職してからの業務まで考えることです。
場合によっては、上司との面談で「この業務は負荷が大きいから担当を外してほしい」といったことを伝える必要があります。
復職後、多少ブランクのある状態で働いたときに問題なくこなせそうかどうかを考えておくことが肝要です。
また、復職後の仕事の進め方を考える上では、できるだけ主治医やカウンセラーなどの第三者に相談するようにしましょう。
主治医からアドバイスをもらえない場合は、先述した復職支援を行っている就労移行支援事業所などの職員に相談するのもひとつの手です。
あなたがうつ病になっているということを理解した上で、仕事の進め方や実践できそうな工夫を一緒に考えてくれるはずです。
周囲の人を頼りながら、復職後の仕事の進め方について考えてみましょう。
準備⑧復職後の業務について、上司などの職場の人と面談して調整する
復職前の最後のプロセスとして、上司や人事を担当する部署の担当者などの職場の人との面談があります。
面談は、主治医から「復職しても問題ない」という許可をもらってから行うようにしてください。
実際に復職することになった場合、一般的には医師の診断書が必要になります。
上司や人事を担当する部署の担当者などの職場の人と面談する際には、以下の点に注意して調整を進めましょう。
- 具体的にいつから復職するか
- どういった業務ならできそうか
- どの程度の業務量ならこなせそうか
- 現在の職場の状況はどうか(繁忙期などではないか)
- 職場の同僚にはどういう伝え方、接し方を望むか
特に、どの程度の業務あるいは業務量ならこなせるかということをきちんと伝えましょう
この段階ですりあわせができていると、復職してからの職場定着がしやすくなります。
前項の「復職後の仕事の進め方を考えてみる」というプロセスがここで活きてくるはずです。
また現在の職場の状況を知っておくのも重要です。
忙しい時期に復職すると、ピリピリとした職場の空気を感じて、ストレスになることもあります。
可能であれば、職場に余裕がある時期に復職するのがオススメです。
そして、復職日は翌日が休みの日にするとよいでしょう。
いきなり連勤すると体力が尽きかねないので、月曜日からの勤務は避けるのがベターです。
必要であれば何度も上司と面談して、復職後の仕事の仕方について意思疎通を進めてください。
準備⑨「試し出勤」などの無理のない働き方を検討する
スムーズな復職のためにおすすめなのが、「試し出勤」です。
「リハビリ出勤」「模擬出勤」「通勤訓練」「復職訓練」とも呼ばれます。
これはうつ病の方が復職可能かどうかを判断するために行うものです。
主治医が可能と判断することはもちろん必要となります。
具体的な内容は以下のようなものです。
- 少ない出勤時間・出勤日数から始め、徐々に増やす
- 体調を見ながら、職場の雰囲気に少しずつ慣れていく
ただし、「試し出勤」はあくまでリハビリの一環です。実際に就労を行うわけではありません。また、実施の有無や方法は企業によって異なります。
また、完全な復職とは異なるということに気をつけてください。
「このまま、早く復職しなくては」と無理をするとうつ病が悪化する心配もあります。体調を注意深く観察しながら行いましょう。
加えて、試し出勤中は基本的に無給であることも押さえておきましょう。
準備⑩復職後のメンタルケアについて学ぶ
復職後に元気で働き続けるためには、復職前からメンタルケアについて学んでおくことが大切です。
復帰直後は通勤し職場にいるだけで、ものすごく疲れます。
また職場に慣れるために、休職前の業務ではなく雑用や簡単な作業を割り振られることも少なくありません。そうなると、かえって肩身が狭い思いをする人もいます。
比較的余裕がある復職前のうちに主治医と相談し、自分なりのメンタルケアの方法を見つけておくことが大事なのです。
具体的には、次のような方法がおすすめです。(参考:厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」)
- うつ病から社会復帰した人の書いたものを読み、自分の場合をイメージする
- しんどいときのサインを知っておく(食欲が落ちる、イライラしやすくなるなど)
- 疲れた時の方法をいくつか用意しておく
- つらい時の相談先を複数用意しておく
うつ病から復職する際の6つの対応
こちらで解説した復職に向けた準備を順調に進められれば、いよいよ本格的な復職です。
この章では、うつ病から復職する際の対応を解説します。
対応①無理せず徐々に慣れていく意識を持つ
復職直後に持っていてほしい考え方は、「自分の身体を徐々に慣らしていく」です。
復職してすぐは負荷が掛かりやすく、体調に波もあるため、相当につらく感じられることがあるかもしれません。
しかし、そのストレスは出勤日数が増えていくことで軽減されていくものです。
復職前に行なった運動や、人と接する機会を増やしていったときの過程を思いだしてください。
仕事に慣れていくのもそれと同じで、徐々に身体と頭が就労後のリズムに慣れてくるものです。
復職直後にひどく疲れても、1日目、2日目と経過していくうちに楽になってくるということを忘れずにいましょう。
>何よりも大切なのが、無理はしないという意識を持つことです。
復職直後は消耗が激しくなるため、可能な業務量と業務時間を少なめに見積もるようにしましょう。
職場に戻ると、つい復職前の感覚を取り戻そうとして焦る場合があります。
特に休職期間が短いほど、自分はすぐに元の業務スピードに追いつけると思って、ペース配分を間違えがちです。
また職場定着が進んで働くことに慣れると、あなただけでなく周囲の同僚まで前と同じように働けるのだと思い、仕事を振ってくるようになります。
対応②適度に休みながら取り組む
就労のリズムに慣れていないうちは、業務量と業務時間を「これくらいならできるだろう」という自分の予想より少なめに見積もることを意識しましょう。
自分の業務遂行力を多めに見積もると、予想よりも仕事が難航した場合に、落ち込みにつながります。
また、復職直後は、休む時間をきちんと取るようにしましょう。
職場によっては、復職した後に飲み会などのつき合いが発生するかと思います。
復職できたことで気分が舞いあがり、アフター5もどこかへ遊びに出るなど活発になるかもしれません。
しかし、復職直後はあなたが思っている以上に疲労が蓄積しやすい状態にあります。」
仕事が終わったらできるだけ早めに帰宅し、身体を休めるように心がけましょう。
また、就業中であっても、気分が優れなかったり、疲れを感じたりしたときには、上司に伝えて休憩を取るようにしてください。
大切なのは、職場に通い続けることです。
最初は仕事のよしあしはあまり気にせずに、適度な休憩をはさみながら業務に取り組むようにしましょう。
対応③自分の状態について上司や同僚に正しく理解してもらう
3つ目に大切なのは、「周囲に自分の状態を正しく理解してもらうということ」です。
復職前に上司と調整を進めていても、いざ復職してみたら想像とは違っていた部分が必ず出てくるはずです。
そんなときにひとりで悩みを抱え込むと、場合によっては職場定着が遅れるかもしれません。
復職直後は、職場の同僚もあなたの調子を気にかけているものです。
いまはどんな状態なのかを理解することで安心して仕事を割り振るためにも、あなたに話してもらえるのを待っている人がいるかもしれません。
自分の現在の状態について、できるかぎり所属長や同僚に相談するようにしましょう。
必要と感じた場合には、配置転換や時短勤務を要請する勇気も必要です。
対応④しんどいときに相談できる人間関係を築く
4つ目は、「しんどいときに相談できる人間関係を築いておく」ことです。
うつ病を再発させないためにも、日頃から気軽に話ができる相手を持っておきましょう。
まずは、家族や友人などの周囲の人、上司や同僚などの職場の人が考えられます。
実際にうつ病の状態を話すかは別として、相談相手になりうる存在がいるというだけで心に余裕ができます。
加えて、これまでの主治医やカウンセラー、復職時に活用していた就労移行支援事業所など、専門的な視点からのアドバイスを得られる場所も持つようにしてください。
数は多くなくてよいので、しんどい時に安心して話せる人間関係を築くようにしましょう。
対応⑤医療機関の利用を上手に続ける
復職後安定して働き続けるためには、「医療機関の利用を上手に続けること」がとても大事です。
まず、「通院や服薬を突然やめたりしないこと」を心がけましょう。
うつ病は、症状がおさまっている「寛解(かんかい)」を維持し、さらに一定期間の治療を継続することで「治癒」が見込める病気です。
復職して仕事に慣れてくると、「自分は元に戻った」と考えがちです。
うつ病になると、そこで無理をしてしまうと、思いがけないところで突然疲労を感じたり、再発したりすることがあります。
治癒を目指し、再燃を防ぐためにも、主治医やカウンセラーとの付き合いは継続するようにしましょう。
また、自己判断で薬の服用をやめたり減らしたりすることは避けてください。
主治医は治療の進行や回復度合いと、あなたの様子を見て、薬を出しています。
必要がなくなったように感じても、まずはきちんと相談しましょう。
最後に、忘れずにいてほしいことは、「弱ったときには医療機関を利用する」ことです。
復職したあとにまた気分が落ち込んだとき、うつ病の再発を認めたくないという気持ちが勝って、通院を避ける人がいます。
しかし、意固地になって診察を受けないでいると、うつ病の症状を悪化させて、回復に時間がかかるという事態を招きかねません。
弱っていると感じているときは、必ず医療機関を頼るようにしてください。
そのときは先述したように、代替医療や民間療法に頼るのではなく、専門の医療機関を訪れるようにしましょう。
対応⑥新しい仕事の可能性をつくっておく
うつ病を再発させないための方法として、新しい仕事の可能性をつくっておくというものがあります。
具体的には、スキルアップや副業をはじめてみるということが挙げられます。
新しい仕事の可能性をつくることで、万が一いまの職場がつらくなったときに別の道にスムーズに進めます。
実際に転職・独立をしなくても、「この職場にこだわらなくても大丈夫」という安心感を持つことができます。
その結果、自分を追い詰めずに済むというメリットが生まれます。
ただし、スキルアップや副業は、仕事に余裕がある時期におこなってください。
ダブルワークの忙しさが理由で調子を崩しては意味がありません。精神的に余裕を持つためにも、新しい可能性をつくっておきましょう。
うつ病からの復職直前の悩みごとと対処法
復職の準備が整い、「来週にはもう初出勤日を迎える」といった復職直前になると、様々な考えが頭を過ぎるかと思います。
この章では、うつ病からの復職直前の悩みごとと対処法を解説します。
Q1.職場にどんな顔でいけばいいかわからない
どんな顔をして出勤すればいいかわからないという人には、前もって職場に挨拶へ行くことをオススメします。
菓子折りなどかしこまった準備をする必要はありません。
目的はあなたの緊張をほぐすことです。そのため、ふらっと挨拶へいくだけでいいのです。
職場への顔出しというステップを踏むことで、復職日の前に抱え込みがちな不安を解消できます。
実際に筆者は復職直前に職場を訪問したことで、初出勤のときに緊張しすぎることなく業務へ移行することができました。
職場への顔出しをせずに出勤すると、場合によっては事務的な会話から入ることになるため、打ち解けた雰囲気をつくるのが難しくなります。
緊張するのはあなただけではありません。一緒に仕事をする同僚も同じです。
互いに心の準備をするためにも、挨拶へ行く日を上司に相談し、周知してもらった上で、職場を訪問するとよいでしょう。
ただし、直前になって気分が悪くなった人は、決して無理をしないようにしてください。うつ病が快方に向かっているときでも、不意に調子を崩すことがないわけではありません。
症状を主治医に相談した上で、職場へ挨拶に行けるかどうかを判断しましょう。
Q2.復職後のことを考えすぎて不安になる
復職後のことを考えすぎて不安になる場合は、「ひとまず1週間を乗り切る」と短期的な目標設定をするようにしましょう。
先のことは仕事に慣れてから休み休み考えればいいことです。
日が経つにつれて、だんだん働くことにも慣れてきます。気づかないうちに、うつ病がすっかり治ってしまったということもあるかもしれません。
そうすればまた、状況は変わってきます。
復職というのは、それだけでもとても大きな前進ですから、それを1週間続けただけでも、あなたは以前より強くなっているはずです。
自信を持ってください。不安を感じる場合は、まず目先の目標を設定して、遂行することだけを考えましょう。
Q3.直前になって気がふさいだ
直前になって気がふさいだときは、睡眠時間を増やすのが有効です。
筆者自身、復職直前にどうしてもネガティブなことを考えがちなときにたくさん眠ることで、考えすぎを防止することができました。
何も考えずにとりあえず出勤してみる、という程度の気楽さでちょうどいいのです。
復職日に周囲がどんな反応をするかなど気になるかもしれませんが、人の考えることは自分ではコントロールできません。
気にしても仕方のないことが気になるときは、とにかくたくさん眠って当日を迎えましょう。
そして、復職日になっても気分が優れない場合は、上司に連絡して復職を遅らせる決断をくだすことも必要です。
復職したことでまた健康を害しては元も子もありません。無理だけはしないでください。復職が遅れたとしても、一度は職場復帰の直前までいったという経験は確実にプラスになります。
復職直前にどうしても気が塞ぐときは、素直に復職日を延期するようにしましょう。
「うつ病からの復職が怖い」という人が職場復帰するためのサポート「リワーク」
「うつ病から回復してきて復職への準備が整ったけれど、職場が怖い……」。そんな気持ちになるのは当然のことです。
うつ病など精神疾患から回復した方が復職に向けてトレーニングすることを「リワーク」といいます。
この章では、リワークについて解説します。
リワークの詳細については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
プログラム①地域障害者職業センターで実施されているリワークプログラム
地域障害者職業センターとは、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が設置する施設のことです。障害のある人の就業を支援する目的で運営されています。
都道府県に最低でも1ヶ所は設置することが義務付けられています。詳しくは、お住まいの自治体を調べてみてください。ただし、公務員は利用対象外です。
地域障害者職業センターでは、リワークプログラムを提供している場合が多いです。
一般的には以下のような内容を12〜16週間かけて行います。
- 作業支援
- アサーショントレーニング
- リラクゼーション等の講習
無料で受けることができるのも大きなメリットです。(参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センターの精神障害者職場復帰支援(リワーク支援)について」)
プログラム②医療機関で実施されているリワークプログラム
メンタルクリニックなどの医療機関でも、リワークプログラムを受けられる場合があります。
復職前のトレーニングはもちろんのこと、復職後のフォローアップやピアサポートが用意されている場合もあります。
興味が湧いたらまずは主治医に尋ねてみましょう。
かかりつけのクリニックで対応が難しい場合は、こちらのサイトでリワークプログラムを提供している施設を検索できます。
一般社団法人 日本うつ病リワーク協会「リワーク施設一覧」
プログラム③企業で実施されているリワーク
厚生労働省は、「職場復帰支援プラン」を策定することを企業に対し求めています。(参考:厚生労働省「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」)
こちらのプランでは、以下について検討することになっています。
- 職場復帰日
- 管理監督者による就業上の配慮
- 人事労務管理上の対応(配置転換や異動の必要性など)
- 産業医等による医学的見地からみた意見
- フォローアップ
独自に医療機関や専門部署をもっている企業や役所では、職場復帰訓練を行います。
固有の施設がない場合は外部機関と連携してリワークを進めていきます。
プログラム④就労移行支援事業所で実施されているプログラム
リワークが復職を目的としたものであることに対し、就労移行支援事業所で提供されるサービスは就労をめざしたものが一般的です。
しかし、就労移行支援事業所内でもリワークやそれに近いプログラムを提供しているところがあります。
- 復職計画の策定
- 日常生活習慣の見直し
- 仕事に必要なスキルの習得
- 病院・企業との連携サポート
以上のようなサポートが受けられる場合があるので、興味のある方は調べてみましょう。
しかし気をつけたいのは、就労移行支援事業所ではメンタルケアはできないということです。
回復期に自己判断は禁物です。主治医との相談のもと進めていくようにしましょう。
補足:キズキビジネスカレッジ(KBC)では、包括的なサポートが受けられます
このコラムの運営元であるキズキビジネスカレッジ(KBC)は、専門スキルの習得と多様な進路への就職を支援する就労移行支援事業所です。
メンタルに関する個別相談や睡眠リズム改善のための支援など包括的なサポートを受けることができるので、不安なく次のステップに進むことができます。
- うつ病から回復しつつあるものの、復職が怖い
- 元の職場への復帰に加え、転職も検討したい
そう考えている人は、キズキビジネスカレッジ(KBC)の無料相談を試してみてはいかがでしょうか。
相談予約はLINEまたはインターネットで手軽に行うことができます。
うつ病とは?
うつ病とは、気分の落ち込みや憂うつ感、さまざまな意欲の低下などの精神的症状と、不眠、食欲の低下、疲労感などの身体的症状が一定期間持続することで、日常生活に大きな支障が生じる精神障害・気分障害のことです。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、厚生労働省「1 うつ病とは:」、厚生労働省「うつ病に関してまとめたページ」、、厚生労働省「うつ病」、国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「うつ病」、株式会社メディカルノート「うつ病について」、MSDマニュアルプロフェッショナル版「抑うつ症候群」)
また、脳の機能が低下している状態、脳のエネルギーが欠乏した状態を指し、脳の中で神経細胞間のさまざまな情報の伝達を担うセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなどの神経伝達物質のバランスの乱れや、感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じているものと考えられています。
うつ病の概要や症状、治療方法などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
まとめ:無理せず、一歩ずつ準備していきましょう
復職自体はゴールではありません。復職後も働きつづけることを見据えた準備が大切です。
うつ病から復職する場合は、復職後までを見据えた準備をしていきましょう。
復職後のうつ病の再発防止は大きな課題です。
休職を繰り返さないためにも、気分が落ち込んだときに有効な行動や、うつ病からのリハビリ法も心がけるようにしましょう。
ただし、あなた一人だけでがんばる必要はありません。
主治医を適切に頼りつつ、家族や友人、職場の人などへも自分のことを相談しましょう。
また、うつ病からの復職は同じ会社・同じ部署だけに限らず、転職という可能性も考えられます。
転職を考える際には、第一に主治医のアドバイスに従いつつ、就労移行支援事業所など、うつ病のある人に理解のある支援機関を利用することをオススメします。
就職後の職場定着までサポートしてくれるところもあります。有効に活用してください。
このコラムが、うつ病からの復職を目指すあなたの一助となったなら幸いです。
うつ病から復職する際のポイントを教えてください。
うつ病がら復職をする際に何を準備すればよいですか?
以下が考えられます。
- 就労時と同じ生活リズムを定着させる
- どこかへ通う習慣をつける
- 軽い運動をして体力をつける
- 人と接する機会を増やしていく
- 主治医と相談して復職の許可を得る
- 職場の上司や同僚に復職の意思を伝える
- 復職後の仕事の進め方を考えてみる
- 復職後の業務について、上司などの職場の人と面談して調整する
- 「試し出勤」などの無理のない働き方を検討する
- 復職後のメンタルケアについて学ぶ
詳細については、こちらで解説しています。
監修志村哲祥
しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。
臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。
【著書など(一部)】
『子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数
日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
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翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
監修角南百合子
すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→