うつ病の人が社会復帰に向けてできる8つのこと 4つの注意点や再発防止策5選を解説
こんにちは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジの寺田淳平です。
うつ病のあなたは、社会復帰を考えているものの、以下のようにお悩みではありませんか?
- 社会復帰に向けて何から始めてよいかわからない
- うつ病から社会復帰するときの基本的な流れは?
- 社会復帰をしてもうつ病が再発しないか気になる
この記事では、特に就労の観点から、うつ病の人が社会復帰をするまでの段階を4つに分けて、注意点、再発防止策、受けられるサポートなどを徹底解説します。
うつ病からの社会復帰についてお悩みの方は、ぜひ一度、読んでみてください。
目次
はじめに:うつ病からの「社会復帰」は、「元の職場に戻ること」とは限らない
まず最初にお伝えしたいのは、うつ病からの社会復帰とは、「休職後に、元の職場に戻る」だけに限らない、ということです。
退職を経て転職、障害者雇用枠への切り替え、(一時的な)パート・アルバイトとしての勤務など、その内容は様々です(就労以外の観点も含めるなら、大学などに入って学び直すというルートもあります)。
もしかしたらあなたは、「なんとしても元の職場に戻らなくては」とお考えかもしれません。
ですが、そうした考え方にこだわらずに、あなたにとって無理のない働き方を柔軟に模索することが、社会復帰を検討する上では大切になります。
つらくならない範囲で構いませんので、治療を進めながら「あなたにとっての社会復帰をどこに設定するか」を少しずつ考えていきましょう。
また、後で述べるように、社会復帰後にうつ病が再発することは避けたいところです。
そのため、社会復帰を考える上では「復帰後のこと」も考えることが重要だということは、心に留めておいてください。
うつ病の人が社会復帰に向けてできる8つのこと
この章では、うつ病の人が社会復帰に向けてできることを8つ紹介します。
前提として大切なのは、通院や服薬を欠かさないということです。
特に、薬を処方されている場合には、自己判断での断薬はしないようにしましょう。
自己判断で断薬すると、うつ病の症状がぶり返す可能性があります。
社会復帰に向けての準備は、かかりつけ医と相談しながら進めていくことが大切です。
上記の点に留意しながら、以下に解説する方策を実践していってください。(参考:佐藤隆『職場のメンタルヘルス実践ガイド』、川上憲人『基礎からはじめる職場のメンタルヘルス』)
①定期的なカウンセリングを受ける
1つ目は、「定期的なカウンセリングを受ける」です。
病院・医師の診断と薬の服用も重要ですが、臨床心理士などによる定期的なカウンセリングも、うつ病の再発のために大きな効果があります。
カウンセリングでは、健康面の悩みだけでなく、仕事に関する悩みにも相談できます。また、アドバイスを得られます。
また、話をするうちに、自分でも気づかなかった「考え方の癖」を自覚することで、症状が改善されたり、業務改善のヒントが見つかったりするなど、様々なメリットが期待できます。
経過観察を続けることで、カウンセラーの側でもあなたの調子の波や傾向を指摘しやすくなりますので、うつ病にお悩みの方は、ぜひカウンセリングを受けてみてください。
②専門の支援機関に相談する
2つ目は、「専門の支援機関に相談する」です。
うつ病の人の支援を行っている専門機関は複数あります。
公的な機関や公的な認可を受けた機関で言えば、主に以下のものが挙げられるでしょう。
「精神保健福祉センター」では、診断が下りていなくても、憂うつ感や抑うつ症状があれば相談を受け付けています。
「地域障害者職業センター」「障害者就業・生活支援センター」では、特に仕事面での悩みをお持ちの方に対して、お勤め先との面談を含む支援を実施しています。
最後の「発達障害者支援センター」は、一見すると、うつ病とは無関係に思えるかもしれません。
しかし、発達障害の傾向のある人は、コミュニケーションがうまく取れないなど、社会生活上の困難から来るストレスが原因となって、うつ病などの「二次障害」を患うケースが少なくありません。
発達障害者支援センターでは、そういった方向けに電話相談などを受け付けていますので、発達障害が疑われる方は、問い合わせてみるとよいでしょう。
上記機関は、支援内容にもよりますが、いずれも基本的には無料でサポートを受けられます。
どの支援機関に相談すべきかわからない場合には、通常はお住まいの市区町村の障害福祉課が窓口になっていますので、そちらに問い合わせてみてください。
③就労移行支援を受ける
前項の「専門的な支援機関」とも関係しますが、特に転職を視野に入れている場合は、就労移行支援を受けることを考えてみましょう。
就労移行支援とは、うつ病や発達障害などの方々のための、就労に向けたサポートのことです。
実際の支援は、公的な認可を受けた「就労移行支援事業所」が行っています。
主な支援内容は、以下の5つです。
- 生活習慣改善のサポート
- メンタル面のケア
- 就労に関連するスキルの講習
- 実際の就職活動の支援
- 職場定着支援(事業所による)
就労移行支援では、直接的な就労のサポートだけでなく、生活面のサポートも受けられます。
また、③習得できるスキルについては、事業所の個性が出るところです。
事業所によって、基本的なスキル(ワード・エクセル・軽作業など)、専門的なスキル(ビジネスレベルの英会話、プログラミングなど)、各種資格の取得など、重視している方向性・分野が異なります。
⑤職場定着支援とは、転職で社会復帰をした方のための支援です。
その会社で長く働き続けるために、定期面談を行い、業務内容や業務量などについて、被支援者とその会社の間で調整します。
そのため、社会復帰後の労働環境などに不安がある方には、特にオススメです。
ちなみに、2017年に行われた障害者職業総合センターの調査によると、定着支援を受けた人たちの1年後の職場定着率が「66.4%」に対し、受けなかった人たちの職場定着率は「42.8%」と、「20%以上」もの差が出ています。(出典:障害者職業総合センター「障害者の就職状況等に関する調査研究」)
相談・見学は無料ですので、支援内容に興味を抱いた事業所に一度、詳細を問い合わせてみることをオススメします。
就労移行支援の詳細は、下記コラムにまとめています。よければご覧ください。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、うつ病や発達障害などの人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
④生活習慣を整える
4つ目は「生活習慣を整える」です。
うつ病に伴う疲労がある程度回復したら、まずは就寝と起床の時間を揃えましょう。
睡眠のリズムが安定してくると、生活習慣もおのずと安定します。
また、薬物治療を行っている方は、飲酒やカフェインの摂取といった習慣にもご注意ください。
これらの嗜好品は、治療の妨げになるだけでなく、頭痛・不安の原因になると言われています。
また、一時的なストレス解消になったとしても、依存性があるとも言われていますので、控えることをオススメします。
⑤食生活を改善する
5つ目は「食生活を改善する」です。
国立精神・神経医療研究センター神経研究所の部長である功刀浩先生によれば、うつ病の改善においては「食生活などの生活指導」も大切だそうです。(参考:朝日新聞「生活習慣と関係が深いうつ病、予防につながる栄養素は……」
食べすぎによる肥満、ダイエットによる栄養不足など、食生活の乱れがうつ病の発症・悪化に関わっているというのです。
反対に、野菜、果物、大豆製品、きのこ類、緑茶など、ビタミンやミネラルを多く摂取する「バランスのとれた食事」を取ることがうつ病の改善に役立つと考えられます。
ぜひ、医師などとも相談しつつ、社会復帰に向けて食生活を改善してみてください。
⑥軽い運動をして体力をつける
6つ目は「軽い運動をして体力をつける」です。
うつ病になると、休養期間の長さにかかわらず、少し運動しただけでも、息切れや目眩がすることもあると思います。
社会復帰に耐えうる体力を取り戻しましょう。
新型コロナ禍の影響が残る2020年10月現在では、自宅でのリモートワークなども多いですが、毎日数時間の仕事を週何日もこなすには、最低限の体力が必要です。
「毎朝20分だけ散歩をする」「毎日20回のスクワットをする」など、あなたの無理のない範囲で構いません。
適度な運動をして、少しでも体力をつけるようにしましょう。
⑦身近な人との交流を増やす
7つ目は「身近な人との交流を増やす」です。
人と接する機会を増やすというのも、社会復帰に向けた準備として有効です。
うつ病が重いときは、誰かと会話するだけでも、すぐに疲れると思います。
特に対人不安の強い方は、「いまは人と接するなんてできない」と思うこともあるでしょう。
そもそも何を話してよいのか、という人もいるかと思います。
しかし、社会復帰をすれば、ある程度は人と接触する機会が生じます。
社会復帰してからいきなり心をすり減らすことがないように、少しでも人に慣れておく必要があるのです。
最初は、家族や信頼できる友人と会話する程度で大丈夫です。
実際に会うのが難しい場合は、メールやSNSを通じたやりとりから始めてみましょう。
あまり疲労を感じずに、リラックスして接することができるようになったら、人と会う機会を増やしていくのがベターです。
ただし、どんな場合でも、人と会うと心身が消耗する面はありますので、決して無理はしないでください。
⑧様々な仕事・幅広い働き方を調べる
最後は、「様々な仕事・幅広い働き方を調べる」です。
「うつ病になったら、軽作業や簡単な事務作業しかできない」 「仕事復帰をしたら、毎朝出社して、夕方・夜まで業務を行わなくてはならない」
うつ病から社会復帰をするにあたって、このように考えている方もいるかもしれません。
しかし、先述したように、社会復帰には様々なかたちがあります。
勤務先や勤務形態だけを考えても、大企業・中小企業・公的団体・士業・ベンチャー・フリーランスなどがあります。
「障害者枠・一般枠」「オープン就労・クローズ就労」の観点もあるでしょう。
これまでの経験にとらわれず、どんな仕事・働き方があるのかを調べることで、幅広い働き方・職種の中からあなたに合ったものが見つかります。
そして、あなた一人だけで考えるのではなく、先述した支援機関や転職エージェントなどに相談することで、「働き方探し」はスムーズに進むと思います。
うつ病の人が社会復帰するまでの4つの段階
この章では、うつ病の人が社会復帰するまでの段階を4つに分けて解説します。
すでに「リハビリ期」や「職場環境調整期」に入っているという方は、状況に応じて必要な部分のみ読んでいただいても構いません。(参考:吉野聡・宇佐見和哉の『「うつ」からの職場復帰のポイント[第2版]』)
段階①要治療期
要治療期は、まず治療に専念し、病状の安定化を優先させる時期です。
うつ病の症状が重い方は、薬を服用して眠ることだけで精一杯かもしれません。
しかし、要治療期には、できるだけ何も考えずに、ゆっくりと休むことが何よりも大切なのです。
ですので、医師の診断に従いながら、焦らずに、心身が回復するのを待ちましょう。
ちなみに、「処方された薬を服用することに抵抗がある」「医師の診断にどうしても納得できない」という場合は、セカンドオピニオンを求めて別の病院を受診するのも手段のひとつです。
ただし、一般論として、セカンドオピニオンでも治療の方針があまり変わらないようなら、多少納得できない面があったとしても、元の方針に従うことをオススメします。
また、代替医療や民間療法ではなく、「病院」の治療を受けるという点も重要です。
信頼できる病院・医者を見つけて、焦らず治療を進めるようにしましょう。
段階②リハビリ期
行動意欲が回復してくるリハビリ期には、休養で衰えた体力や認知機能のリハビリが目標になります。
次章でも詳しく述べるように、生活習慣の安定化や軽い運動に努めながら、ある程度の日課・目標を立てることが大切になります。
同時に、リハビリ期は、働いていないことへの後ろめたさや焦燥感が生じる時期とも言われています。
社会復帰を焦って無理をせず、「徐々に慣らしていく」「負荷は少しずつ掛けていく」ということを意識しましょう。
段階③職場環境調整期
職場環境調整期には、現実的な社会復帰に向けて、職場との労働環境の調整を進めることになります。
現職に復帰することになった場合、通常は上司や人事担当者と面談をすることになります。
面談では、休職に至った原因だけでなく、「どの業務が負担になったのか」「業務量はどのくらいがちょうどよいか」を念入りに聞かれるでしょう。
職場側には、あなたの精神障害の症状や程度について理解が得られるように、業務内容や業務量についてしっかりと回答するようにしてください。
同じお勤め先に復帰する場合でも、部署異動も視野に入るかもしれません。
就職活動を行って転職をすることになった場合も、新しい職場の仕事内容や業務量について、前もって話し合うようにしましょう。
応募先との「話し合い」について、以下補足します。
求人・雇用の中には、「障害者を対象とする求人・雇用枠」である「障害者枠」というものがあります(障害者枠ではない求人・雇用は、「一般枠」と言います)。
障害者枠の場合、働く上で病状に配慮がなされます。
障害者枠では、就職活動の段階で、より具体的に「どのような症状があるのか」「どういう業務であれば無理なくできるのか」などを話し合えると思います。
気になる場合は、障害者枠の求人を探してみましょう(一般的には、障害者手帳の所持が必要です)。
ただし、一般枠よりも給料が低い可能性があるので、探す際には待遇もきちんと確認するようにしましょう。
一般枠での就職活動の場合、うつ病である(だった)かどうかは、応募先に聞かれたら正直に答えるべきですが、聞かれない限りは自分から明かす必要はありません。
うつ病について明かさずに一般枠で就労することを、クローズ就労と言います。
クローズ就労では、周りからの偏見などを避けることができ、給料も一般枠待遇である一方で、うつ病(経験)への配慮は一般的には得られません。
うつ病(経験)について明かした上で、一般枠で就労することは、「オープン就労」と言います。
オープン就労では、就職活動の段階で応募先との調整がしやすく、給料が一般枠待遇である一方で、職場で「明確な制度」としてのサポートを受けられないこともあります(個別の対応などはあり得ます)。
どのような就職活動・就業を行うかについても、あなただけで抱え込まずに、後述する相談機関などを頼って検討していくことをオススメします。
元のお勤め先への復帰や転職活動が叶いましたら、ひとまずは「社会復帰」ができたと考えてよいでしょう。
段階④再発予防期
社会復帰後には、再発予防が重要です。
長き働き続けるためには、治療の継続や、計画的な休養などが必要です(後でも改めて解説します)。
他にも、お勤め先で実施されるストレスチェックでご自身の状態を確認したり、産業医による面談を受けたりするなど、予防のための手段はたくさんあります。
「社会復帰をしたからもう大丈夫」と思うのではなく、その後の生活も意識することが大切だということを心に留めておきましょう。
うつ病の人が社会復帰に向けて準備するときの4つの注意点
この章では、社会復帰までの段階について、前提となる注意点を4つご紹介します。
注意点①社会復帰をあまり焦らない
うつ病の人は、社会復帰をあまり焦らないようにしましょう。
うつ病の人の中には、休職中や無職の状態に後ろめたさを感じて、「早く復職しなければ」と焦る方が少なくありません。
しかし、その焦燥感は自分へのプレッシャーになって、うつ病の改善を妨げる可能性があるのです。
経済的な事情から「焦らざるを得ない」という方もいるでしょう。
そのような場合は、うつ病の人向けに経済的な支援を受けられる制度が複数ありますので、そちらを頼ることをオススメします。
うつ病の人が受けられる経済的な支援については、下記コラムに記しています。ご興味がありましたらご覧ください。
注意点②社会復帰までの期間を長めに見積もる
次に、社会復帰までの期間を長めに見積もりましょう。
うつ病は、再発が懸念される病気です。
それを踏まえて、治療では、病気になる前の認知・身体機能を取り戻した「寛解」と言われる状態が一つのゴールになります。
しかし、「寛解」の状態になるまでには、ある程度の時間が必要です。(参考:吉野聡・宇佐見和哉の『「うつ」からの職場復帰のポイント[第2版]』)
つまり、一時的に気分の落ち込みや憂うつ感がなくなったように感じても、「安定した」とは限らず、ある程度、様子を見る必要があるということです。
あなたを不安にさせるつもりはありませんが、「症状がなくなったので、すぐに社会復帰に取り掛かれる」と考えるて行動する(ことを目指す)と、すぐに再発してまた休職することになる…という事態に繋がる可能性もあります。
あなたの予想よりも治療に時間がかかる可能性がありますので、社会復帰までの期間を長めに見積もり、じっくりと症状改善に取り組むことをオススメします。
注意点③かかりつけ医の診断に耳を傾ける(寛解の診断を必ず得る)
2点目は、「かかりつけ医の診断に耳を傾ける」です。
あなたが「元気になったから大丈夫だ」と感じていても、医者の目から見ると「もう少し治療が必要だ」という場合があります。
また、社会復帰を検討する上では、必ず「医師からの寛解の診断を得る」ことが大切です。
特に現職への復帰を考えている場合、基本的には「専門医の診断書」が必要になりますので、かかりつけ医の診断を待つようにしましょう。
注意点④悩みを一人で抱え込まない
最後の注意点は、「悩みを一人で抱え込まない」ことです。
うつ病の人は、できるだけ周囲の人を頼るようにしましょう。
ここで言う「周囲の人」とは、医師だけでなく、信頼できる家族や友人、職場の同僚なども含みます。
周囲の人に悩みを打ち明けることで、ストレス軽減も期待できますので、できる範囲で「人に相談する」ようにしましょう。
また、うつ病の人が頼れる支援機関はたくさんあります。
いずれも、基本的には無料でサポートを受けられますので、こういった支援機関を利用することも検討してみましょう。
うつ病の人が社会復帰後にすべき再発防止策5選
最後に、この章では、うつ病の人が社会復帰後にすべき再発防止策を解説します。
再発防止のためには、治療の過程で培ってきた生活習慣などを、できるだけ維持することが重要です。
症状がなくなったからと言って、不規則な生活をしたり、羽目を外したりすると、うつ病がぶり返すリスクが上がります。
特に、睡眠や食事といった、生活の基礎になる習慣には留意するようにしましょう。
①治療を継続する
うつ病の再発を避けるためには、第一に「治療を継続する」ことが大切です。
定期的な通院や、処方された薬の服用は、きちんと続けるようにしましょう。
うつ病が改善して医師から「もう通院の必要はない」と言われて日常的な通院をやめた後でも、また調子が悪くなることがあったら、まずは「診察を受ける」ことを心に留めておいてください。
②計画的に休みを入れる
2つ目は「計画的に休みを入れる」です。
あなたは、「疲れ(うつ病の症状)を自覚したときにはもう身動きすらできず、仕事の当日に休暇申請をする」といったな経験をしたことがありませんか?
休みを申請した当日に、重要な会議や商談などが入っていると、その休みが精神的な負担や後ろめたさにつながります。
それに伴って、うつ病の症状がぶり返すきっかけになることがあるのです。
特に真面目で責任感の強い人などは、うつ病が改善した後でも、休むタイミングが分からずに、倒れ込むまで働いていることがあります。
そうならないために、限界が来る前に計画的に休みを取ることが大切です。
オススメなのは、あらかじめ月初に休む日を決めて、休暇申請をしておくことです。
前もって休暇を設定しておけば、仕事のスケジュールも設定しやすいため、精神的な負担や後ろめたさによる「つらさ」も軽減しやすくできるでしょう。
ぜひ、「前もって計画的に休みを取る」という姿勢を持つようにしてください。
③(残業など)無理はしない
3つ目は「(残業など)無理はしない」です。
一定以上の調子を保つためには、調子がよいときでも、「無理をしない」という心掛けが必要です。
特にうつ病の場合、症状が改善しても、調子のムラは残る場合があります。
そのため、まだ疲労が残っていても、日によっては「気分が乗っているからもっと残業しよう」「予定を詰めても乗り越えられる」と、無理をすることもあるかと思います。
しかし、そこで無理に予定を組むと、週の後半に体調を崩したり、休日に休んでも疲労が抜けなかったりと、どこかにひずみが生じるかもしれません。
普段から無理をせず、余裕を持つことを心掛けるようにしましょう。
④相談相手をつくる
4つ目は「相談相手をつくる」です。
うつ病の人は、相談相手を持つことで、気持ちが軽くなったり、サポートが得られたりと、様々なメリットが期待できます。
あなたに理解のある友人・同僚・上司などでもよいですし、カウンセラーなどでもよいでしょう。
ある程度の人員規模があるお勤め先の場合は、「産業医面談」もオススメです。
産業医とは、労働者の健康管理について助言や指導を行う医師のことです。
労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者が在籍する事業所に1人以上、3,000人超の事業所では2人以上の産業医が配置されています。
上記の条件を満たしていれば、あなたの職場にも産業医がいるはずですので、一度確認してみてください。
料金なども発生しません。場合によっては上司も同席の上で、業務に関する具体的な相談をすることも可能ですので、利用してみることをオススメします。(参考:厚生労働省※PDF「産業医について」)
⑤時短制度などを活用する
最後は「時短制度などを活用する」です。
うつ病を患った経験のある方は、「朝はつらいけど午後からなら出勤できる」「調子次第で勤務時間に融通を利かせたい」と感じることが度々あると思います。
その場合、時短制度などの人事制度をうまく活用することで、ある程度、負担を軽減することができます。
人事部門に制度の有無を確認し、制度の有無・あなたの利用可否・申請方法などを尋ねてみましょう。
大きく調子を崩す前に、勤務時間を調整することが、うつ病の再発防止のコツです。
まとめ:うつ病の人が社会復帰に向けてできることはたくさんあります
うつ病の人が社会復帰の準備を進める際の注意点、復帰までの段階とそれに向けてできること、再発防止策までを解説してきました。
繰り返しにはなりますが、大切なのは、うつ病の悩みを一人で抱え込まないことです。
うつ病になると、無力感に苛まれたり、孤独を感じたりすることが増えると思います。
しかし、これまでにも紹介してきたとおり、うつ病の人が社会復帰のためにできることはたくさんあります。頼りになる支援機関も複数あります。
身近な周囲の人や、専門の支援機関を頼りながら、社会復帰に向けて着実にステップを踏んでいきましょう。
このコラムが、社会復帰を目指すうつ病の方の助けになったなら幸いです。
うつ病の自分が社会復帰に向けて準備するとき注意点を知りたいです。
一般論として、次の4点が挙げられます。(1)社会復帰をあまり焦らない、(2)社会復帰までの期間を長めに見積もる、(3)かかりつけ医から寛解の診断を得る、(4)悩みを一人で抱え込まない。詳細はこちらをご覧ください。
うつ病の自分が社会復帰に向けてできることを知りたいです。
一般論として、次の8点が考えられます。(1)定期的なカウンセリングを受ける、(2)専門の支援機関に相談する、(3)就労移行支援を受ける、(4)生活習慣を整える、(5)食生活を改善する、(6)軽い運動をして体力をつける、(7)身近な人との交流を増やす、(8)様々な仕事・幅広い働き方を調べる。詳細はこちらをご覧ください。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
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翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
執筆寺田淳平
てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→