うつ病の初期症状とは? うつ病のある人がとる行動を解説 | キズキビジネスカレッジ  

うつ病の初期症状とは? うつ病のある人がとる行動を解説

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。

仕事をしているときにふと、「これはうつ病かもしれない」と感じることがありませんか?

あなたも、以下のようにうつ病かどうかの区別がつかずに悩むことはないでしょうか?

  • 仕事をしていたら憂鬱になることくらいあるはず…
  • 仕事で落ち込んでもまだ病院に行くほどじゃない…
  • 気が滅入るのは確かだけど、うつ病かどうかわからない…

このコラムでは、うつ病のある人が仕事中にとる行動や日常生活で見られるうつ病のサイン・初期症状、仕事でうつ病の初期症状が出たときにすべき対応などについて解説します。あわせて、うつ病の初期症状に関する事例やうつ病のある人が利用できる支援機関を紹介します。

ご本人はもちろん、「あの人はうつ病になりかけているかもしれない」と思っているご家族などの周囲の人や同僚などの職場の人の参考にもなるかと思います。

ただし、あくまでも参考です。

このコラムを読んで「うつ病かもしれない」と思い当たったときは、本当にうつ病かどうか、ケアや治療をどうするかについては、医療機関に相談しましょう。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、うつ病の初期症状のある人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

日常生活で見られるうつ病のサイン・初期症状13点

うつ病は、放置していると徐々に悪化し重症化していきます。

そのため、うつ病は初期症状が出たタイミングで気づき、早急に対処する必要があるのです。

この章では、日常生活で見られるうつ病の初期症状を、身体面・精神面・行動面に分けて解説します。

初期症状①身体面にあらわれるうつ病の初期症状7点

身体面にあらわれるうつ病の初期症状として、以下の7つが挙げられます。

  • 睡眠障害:寝付けない、何度も目が覚める
  • 慢性疲労:だるい、身体が重い
  • めまいや動悸:目が回る、呼吸が苦しい
  • 食欲の減退:ご飯を食べる気が起きない
  • 性欲の減退:性的なものへの興味が減る
  • 身体の痛み:原因不明の頭痛や腹痛がある

以上の4つに共通するのは、「慢性的に続く」という点です。

たとえば、疲労の場合、通常は休養を取れば解消されるはずです。頭痛や腹痛も一過性の場合が多いでしょう。

しかし、うつ病の場合、波はあるものの症状が長く続きます。

とはいえ、うつ病以外の疾患による症状の可能性もあるため、身体の痛みなどを感じた際にはまず内科を受診するようにしましょう。

内科を受診して、特に原因が見つからなかったり自律神経失調症などと判断されたり、ストレスの影響であると明言されたりしたら、うつ病を疑ってみてください。

ちなみに、筆者の友人が仕事をしながら「うつ病かもしれない」と思ったときは、睡眠障害や慢性疲労などを初期症状として感じていたそうです。

何度か内科へ通院はしましたが、いつも自律神経失調症としか診断されなかったため、心療内科を訪れたところ、はじめてうつ病という診断を下されたと言います。

以上の初期症状をもとに、内科などに行っても解決しない場合は、心療内科などにセカンドオピニオンを求めてみるといいでしょう。

初期症状②精神面にあらわれるうつ病の初期症状3点

精神面で見られるうつ病の初期症状として、以下の3つが挙げられます。

  • 気分が沈む:憂鬱で気が晴れない
  • 思考力・集中力の減退:判断力が落ちる、思考がまとまらない
  • 意欲の低下:何もする気になれない

以上の中でも特に注意してほしいのは、3番目の「意欲の低下」です。

うつ病になると、それまで楽しめていた趣味や他人に対する関心をすっかり失う場合があります。

これは、普段から趣味がなかったり、あまり行動的でなかったりするタイプの人には気づきにくい点です。

人によっては「疲れているだけだろう」とか「忙しいから興味を持てないだけだろう」と思って見逃がすこともあります。

感情や欲求だけでなく意欲も減退していないか、自分の心に注意して観察してみましょう。

今まで週末にやっていた何かの遊びや趣味、活動を最近できていない、する気になれない、という時は要注意です。

初期症状③行動面にあらわれるうつ病の初期症状3点

行動面に見られるうつ病の初期症状として、以下の3つが挙げられます。

  • ボーっとすることが増えた
  • 時間を守れなくなった
  • 人との接触を避けるようになった

以上の3点は、自分ひとりではなかなか気づきにくいかもしれません。

特に1番目と2番目のサインは、周囲の人がうつ病の初期症状を疑いはじめたときにまず挙げられる症状です。ちなみに、筆者のうつ病経験のある友人は、時間の感覚が狂ったと言っていました。

「ボーっとすることが増えた」せいもあるかもしれませんが、気がつくとあっという間に締め切りや約束の時間になって、慌てて支度を始めるといった感覚です。

結果として遅刻が増えるという現象で自覚されます。

うつ病を疑いはじめたときは、以上のような傾向が最近ないかを身近な人に尋ねてみるといいでしょう。

うつ病のある人が仕事中にとる行動9選

日常生活に限らず、うつ病のある人は仕事中でも特定の行動が現れることがあります。「うつ病かも?」と感じている場合は、チェックしてみましょう。

この章では、うつ病のある人が仕事中にとる行動を解説します。(参考:坪井康次・監修『患者のための最新医学 うつ病 改訂版』

行動①物忘れやケアレスミスが多くなる

うつ病になると、これまで問題なく仕事ができていた人でも、物忘れやケアレスミスが増えます。

理由としては、あまり寝れなかったりだるさが続いたりするといった疲労の症状によるものや、神経伝達物質の働きが悪くなり脳の機能が低下してしまうといった生理学的なものがあると言われています。

具体的に見られる行動として、以下のような行動が挙げられます。

  • 大事な約束をすっぽかす
  • 文面の誤字脱字が多くなる

最近になって注意されることが増えてきたと感じたら、注意しましょう。

行動②同僚との会話を避けるようになる

うつ病になると、他人との会話を避けるようになります。なぜなら、憂鬱だったり意欲が低下したりすることで、他人と会話する気力が残っていないからです。

たとえば、以下のような傾向が見られはじめたら、うつ病の初期症状である可能性があります。

  • 会議で発言しないことが増えた
  • 食事や飲み会の誘いを断ることが増えた

周りとのコミュニケーションが減っていないか、避けていないか、今一度気にかけてみましょう。

行動③遅刻や欠勤が増える

遅刻や欠勤が増えるのも、うつ病の初期症状のひとつです。特に、今まで遅刻や欠勤をしたことが少なかったなら、気をつけて見るべき行動の変化と言えます。

遅刻や欠勤をしようと思ってしているわけではなく、ボーっとすることが増えたり時間の感覚が狂ったりすることが原因で、いつの間にか時間が過ぎている状態です。

意外に初期症状が出ていることに気づけない場合も多いため、今一度自身の出勤履歴を確認してみてはいかがでしょうか?

行動④離席が増える

うつ病のある人は人が多くいるような場所だと不安から落ち着かなくなり、離席も増えます。

大勢の社員が同じフロアで仕事をしている空間がストレスだと感じ、休憩時間ではなくても席を離れるのです。

また、注意力や集中力が低下しているため、仕事に打ち込めず、頻繁にリフレッシュするために席を離れる場合もあります。

席を離れている時間が増えたと感じる場合は、気に留めておきましょう。

行動⑤机上が散らかりはじめる

机の上が散らかり始めたら、それはうつ病の初期症状かもしれません。注意力が散漫になっているため、整理整頓ができなくなります。

たとえば、以下のような状態だと、整理整頓ができていないと言えるでしょう。

  • 机の上に資料が山積みになっている
  • 探し物がなかなか見つからなかったりする

あなたのデスクが整理整頓されているか一度、確認してみてください。

行動⑥電話の受け答えが緩慢になり沈黙が増える

他人との会話を避けることの延長線で、うつ病になると電話対応にも変化が出てきます。

気分の落ち込みや注意力の低下によって、受け答えが緩慢になったり沈黙が増えたりするのです。

具体的には「はぁ…」「そうですね…」のような返事が増えたり、「聞こえてますか?」と言われる機会が増えたりすることなどが挙げられます。

このような症状が出ている場合は、うつ病を疑った方がいいでしょう。

行動⑦眠気が強く日中でも朦朧としている

人によっては、うつ病になることによって強い眠気が出るケースがあります。

理由としては夜によく眠れないことにより日中でも眠くなってしまう場合や、うつの症状として「過眠」が生じてしまう場合、ストレスから逃れようと防衛として眠気が生じる場合などがあります。

以下のような行為が思い当たる場合は、うつ病からくる眠気の可能性があります。

  • パソコンを操作しながらうたた寝する
  • 会議中に居眠りする

夜にある程度寝ても日中に眠くなる場合もあります。留意しておいてください。

行動⑧自分を責めるような発言が増える

うつ病になると物事の捉え方が否定的になるため、自分に自信がなくなり、自分を責めるような発言が増える場合があります。

「私なんていなくてもいい」「ほかの人がやればよかったんだ」などの発言が増えてきたら、要注意です。

当事者は自分を責めている認識がない場合もあります。周りに自分の発言が変わってきていないか聞いてみるのもいいでしょう。

行動⑨話し方に抑揚がなくなり声が小さくなる

気持ちが落ち込むのは、うつ病の代表的な症状のひとつです。

そのため、「話し方に抑揚がなく覇気がない」「声が小さくて聞き取れない」などと言われることが増えたら、うつ病の初期症状を疑いましょう。

たいていの場合は、自分でも気づかぬうちにこのような状態になっています。周りの反応を注意深く見てみましょう。

仕事でうつ病の初期症状が出たときにすべき7つの対応

うつ病の初期症状は無視してはいけません。

この章では、仕事でうつ病の初期症状が出たときにすべき対応について解説します。

対応①職場に相談する

まずは、職場に相談するのがオススメです。うつ病の初期症状が出ていることや原因と思われることを話してみましょう。

原因が仕事環境によるものであれば、職場に相談すると、仕事の量や人間関係などに関して対処してくれる可能性があります。

職場に相談窓口があればそこへ連絡し、なければ、まず直属の上司に相談してみるのがいいでしょう。

対応②産業医面談を実施する

労働者が希望した場合には、産業医の面談を受けることが可能です。

産業医とは、労働者の健康管理に関して、専門的な立場から助言や指導を行う医師のことです。

労働安全衛生法では、常時50人以上の労働者を使用する事業所に1人以上、3000人超の事業所では2人以上の産業医を選任しなければならないことが定められています。(参考:厚生労働省「産業医について」

以上の条件を満たしていれば、あなたが勤めている職場にも産業医がいるはずです。一度確認してみるといいでしょう。

面談の結果次第では、人事や給与査定に影響が出るのではないかと心配されるかもしれませんが、産業医は中立的な立場から面談を行い、医師としての守秘義務もあるため、会社に開示しないでほしいと伝えた内容の秘密も守られます。

もし、企業側から説明を求められても、守秘義務の観点から共有していいかを原則ご本人に確認することになります。

料金等も発生しません。メンタルに不調を感じるなら、産業医面談を実施するのもひとつの手段です。

対応③職場外の相談窓口に相談する

以下のような理由で、職場に相談しづらい人もいるでしょう。

  • 何を言われるかわからない
  • 信用できる人がいない

そんな場合は、職場外の相談窓口を利用するのがオススメです。

たとえば、厚生労働省が委託している「こころの耳」では、仕事に関する相談やこころの健康に関する相談など、さまざまなケース別で相談窓口を紹介しています。

国が設置している機関であれば安心でしょう。勤務先に相談できないときはこちらを利用してみてください。

参考

こころの耳「相談窓口案内」

対応④医療機関に相談する

医療機関に相談することも大切です。

うつ病の初期症状を自覚した場合や職場に相談先がない場合、職場との提携の対応が自分に合っていないと思う場合、病院に行かずに症状が悪化したと感じた場合などには、ためらわずに医療機関に相談しましょう。

うつ病になると、思考力と判断力が鈍ります。

ご自身ではまだ大丈夫だと思っていても、専門家の目から見るとすぐに治療・療養した方がいいと判断される場合があります。

診断を受けた段階で服薬や休職を提案されたときには、素直に受け入れてみてください。

医師の診断にどうしても納得できなかったり、処方された治療薬を服用することに抵抗があったりする場合は、セカンドオピニオンを求めて別の病院へ行くのもひとつの手です。

当初の医師と違う方針を示された場合には、あなたが安心して治療を進められそうな方に従ってください。

ただし一般論として、セカンドオピニオンでも治療の方針があまり変わらないようなら、多少納得できないところがあっても、当初の方針に従うことをオススメします。

また、代替医療や民間療法ではなく医療機関の治療を受けることも重要です。

相談を検討している機関が正式な医療機関かどうかを確認してから利用するようにしましょう。

対応⑤休職を検討する

職場に相談しても状況が改善されなかったり、医師から休職を提案されたときは、休職を検討してみましょう。

心に余裕がないことが原因でうつ病の初期症状が出ていた場合は、一旦休職して仕事から距離を置くことで改善するケースがあります。

休職する際は、家族へ連絡したり経済面が大丈夫かを確認したりしましょう。

うつ病のある人が休職する際の確認事項については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

対応⑥退職を検討する

うつ病の原因が職場にあって改善の兆しが見えない場合、または復職してすぐにうつ病が再発した場合は、退職を検討するのもひとつの対応です。

パワハラやセクハラ、残業の常態化など原因の根本が職場にある場合は、何度復職してもうつ病は治りません。

しかし、退職は大きな決断になるため、慎重になりましょう。

特に、うつ病を発症している場合、思考力や判断力が低下しているため、退職などのライフイベントに関わる重大な判断はしないことが望ましいとされています。判断を先延ばしにできるのであれば、なるべく先延ばしにしましょう。

うつ病での退職前にすべきことについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

また、うつ病で退職する場合、失業保険を受け取れる可能性があります。

うつ病のある人が失業保険を受給する方法については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

対応⑦転職を検討する

職場が原因でうつ病を発症したが働くことは辞めたくない場合は、転職を検討することも選択肢の一つです。

職場環境が改善したところ、うつ病の初期症状が治まったケースもあります。

うつ病の転職のポイントについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

「うつ病のある人が転職なんてできるの…?」と思われる方もいるかも知れません。そう思った方は、以下のコラムを読んでみてください。うつ病は転職に不利とは限らないことがわかるはずです。

また、40代になってうつ病を発症し、転職を考えている方もいるでしょう。年を重ねてからの転職は不安ですよね。

そんな方は、以下のコラムを読んでみてください。40代での転職のポイントを紹介しています。

うつ病の初期症状が見られたときにできるセルフケア7選

うつ病に限らず、病気のときは適切に医療機関を利用することが大切です。

その上で、うつ病の症状が重症化しないようにできるセルフケアはあります。

この章では、うつ病の初期症状が見られたときにできるセルフケアについて解説します。

セルフケア①生活リズムを整える

うつ病を予防するために最初にしておきたいことは、生活リズムを整えることです。

不眠などの症状が出るとつい二度寝をしたり、夜更かしをしたりして、生活リズムが乱れてしまいます。日中も眠気を感じることが増えるでしょう。

しかし、それによって生活リズムが崩れると、意識が朦朧とした中で仕事をしなくてはならないため、ストレスが倍増します。

睡眠不足を感じた際は、夜間の睡眠を大切にし、短時間の仮眠をとることなどで対処をしましょう。

休むことは大切ですが、「休日は不規則に過ごす」のではなく、休日であってもできるだけ平日と同じ生活リズムを保つようにしてください。

夜更かしをせず、また、必要以上の早起きもせず、毎日規則正しく睡眠時間を確保することを心がけましょう。うまく寝つけない場合には、積極的に医師に相談をしましょう。

セルフケア②散歩や軽い運動をする

2つ目のセルフケアは、散歩や軽い運動をすることです。

運動をすることで、脳の血流が増え、脳神経の回復を促す物質のBDNFや、不安や恐怖感といったうつ病の初期症状を抑える精神伝達物質セロトニンも分泌されるという科学的な根拠があります。(参考: The New York Times「Phys Ed: Why Exercise Makes You Less Anxious」

セロトニンには、精神を落ちつかせるだけでなく、痛みをやわらげる効果もあります。

特に日光を浴びながら身体を動かせば目も覚めて、生活リズムも整ってくるでしょう。

具体的な運動メニューとしては以下の3つがオススメです。

  • 近所を散歩する
  • 縄跳び
  • スクワット

以上を行うことで、血流がよくなり、頭が冴えてくるというメリットも期待できます。

不安や緊張などが強い時には、ぜひ散歩や軽い運動を取り入れてみてください。

セルフケア③身近な友達や家族に悩みを話す

セルフケアの3点目は、「身近な友達や家族に悩みを話す」です。

うつ病の初期症状のひとつとしてこちらでも解説しましたが、人と話すのが面倒になるというものがありました。

その状態を維持していると、コミュニケーションがますます苦手になり、人と話しづらくなるという悪循環に陥るおそれがあります。

とはいえ、初対面の人といきなり話をするというのは難しいものです。

そこで、仲のいい身近な友達や家族に悩みを打ち明けて相談に乗ってもらうといいでしょう。

信頼できる人に話してみることで、自分の感情や考えを俯瞰的に見られるようになります。

悩みの解決法が具体的に見つかったり、話すだけで気が楽になったり、悩みが大したことではないと気づいたりして、初期症状が緩和される場合があるのです。

また、声を出すことで、身体があたたまると同時に自然と呼吸が深くなってくるので、心を落ちつけられるという効果があります。

ひとりで抱え込まずに、身近な友人や家族にご自身の状態について相談してみてください。

もし、身近な人に話すことに抵抗がある場合はカウンセリングなどを使ってみるのも1つの手です。

セルフケア④日光浴をする

日光浴をするというのも、セルフケアとして有効な手段です。意識的に日光を浴びる時間を増やすようにしましょう。

例えば、近年話題にのぼるうつ病の一種として、冬季うつと呼ばれるものがあります。

冬季うつは季節性情動障害(SAD)の一種で、秋から冬にかけて抑うつ状態が続くのが特徴です。

要因としては、体内時計が狂う概日リズム障害のような状態が生じたりすることや、根底にある問題として、季節変化に伴う日照時間の減少で、セロトニンの分泌が低下することが考えられています。

この冬季うつ対策としては、日光浴のような光療法が有効と考えられています。

特に女性は男性の3倍近くかかりやすいと言われていますので、日に当たる時間が少なくなっていないか注意が必要です。(参考:Royal College of Psychiatrists「季節性感情障害(SAD)」

セルフケア⑤お風呂に浸かる時間を増やす

5点目は、「お風呂に浸かる時間を増やす」というものです。

湯船に浸かって体温を上げることで、不安や恐怖心を和らげることができます。

また、血流が良くなり酸素が頭をめぐるようになることで、うつ病の初期症状として見られがちな「ボーっとする」感覚を軽減する効果もあります。

セルフケア⑥一日にあったことを紙に書きだす

うつ病の初期症状で悩んでいる人は、その日にあったことをぜひ紙に書きだしてみてください。

こちらでも紹介しましたが、うつ病になる人は、自分が具体的に何にストレスを感じているのかを理解していないことがあります。

ストレス源がわかっていれば対処が可能ですが、それが認識できていないために行き詰まることが起こり得ます。

一日にあったことを紙に書きだすことで、自分が何にストレスを感じたのかを把握できるようになります。

医療機関からも治療の一環として日記を書くことを勧められることがあり、一日の出来事を紙に書きだすことは、うつ病対策として有効な手段のひとつです。

抑うつ感にお悩みの場合は、その日に起こった出来事や思ったことを紙に書きだして頭の中を整理してみるとよいでしょう。

セルフケア⑦ストレス源から離れる

疲れているときは、「ストレス源から離れる」ことが大切です。

うつ病の初期症状を感じている人は、自責感もあいまって「問題と向き合わないと」と気負うことがあります。

しかし、常に自分を追い込んでいると、どうしても心身ともに疲れてくる場面が出てくるものです。

そうした事態を避けるためにも、ストレス源から距離を置くという選択肢を持っておくといいでしょう。

具体的な方法のひとつに、有給休暇を繋げて休養をとることが挙げられます。

まとまった休暇が取れないようであれば、煩わしさを感じる人間関係から少し距離を取ってみるだけでもかまいません。

本当に疲れ切る前に、ストレス源から離れる方法はないかを考えてみましょう。

うつ病の初期症状に関する2つの事例

風邪であれば、初期症状としてのどの痛みや鼻づまりが出てきても、「これくらいなら大丈夫か」と放っておくうちに治ることもあるでしょう。

しかし、うつ病の初期症状が疑われるときには、無視してはいけません。適切な治療を受ける必要があります。

また、受診することで、「うつ病ではないけれど、別の病気や障害があった」ということに気づける場合もあります。

この章では、うつ病の初期症状に関する2つの事例を紹介します。

事例①初期症状を見過ごしたことで重篤化したケース

事例の1つ目は、初期症状を見過ごしたことでうつ病が重篤化した、Aさんのケースです。

Aさんがうつ病になったのは、オーバーワーク(過労)の結果でした。

初期症状として、書類整理ができなくなったり、電話応答時にうまく言葉が出てこなかったり、という現象があらわれていました。

ですが、「忙しくて疲れているのだろう」「通常の疲労の範囲だろう」と判断して、まとまった休みをとることもなく仕事を続けていたのです。

しかしあるときに、朝起きると身体を動かすことができないほどに疲れ切っていることに気づきました。

少し休暇を取ったのですが、この段階までくると、休みを取った後ですら意欲が枯渇して、掃除洗濯といった日常生活にまで支障をきたすようになっていました。

もはや、トイレや入浴すら面倒になるほどです。結果として、1年近くの休職を余儀なくされました。

仕事などの社会生活に支障をきたしはじめる前の段階で対処しないと、Aさんのように日常生活にも問題が起きて回復までに時間がかかる場合があります。

逆に言うと、うつ病は初期症状が見られた時点で早めに対処することで、回復も早めになります。

事例②うつ病の初期症状ではなく発達障害だったケース

例の2つ目として紹介したいのが、うつ病の初期症状だと思っていたら実は発達障害だったというBさんのケースです。

ADHD(注意欠如・多動性障害)の症状の代表例として以下のようなものがあります。(参考:田中康雄『大人のAD/HD』

  • 忘れ物やミスが多い
  • 時間が守れずに遅刻する
  • 整理整頓が苦手で物をなくしやすい

うつ病の初期症状に似たものがあると、わかるかと思います。

Bさんは、ミスや紛失、遅刻などがあまりにも続くためうつ病を疑って病院に行きましたが、その際に受けた診断結果ではじめて自分がADHD(注意欠如・多動性障害)だということに気づいたのです。

その人はご自身の障害を理解した上で仕事の進め方を工夫したり、同僚にADHD(注意欠如・多動性障害)を開示することで配慮を受けたりすることで、問題解決に至りました。

以上のように、うつ病の初期症状だと思っていたら、実は発達障害の性質のひとつだったというケースもあるのです。

自己判断で「自分はうつ病になりかかっている」と決めつけて対応せず、適切に医療機関を頼ったことで「自分に合った対応」が見つかりました。

仕事に関連してうつ病を発症した場合の治療方法3選

この章では、仕事に関連してうつ病を発症した場合の治療方法を紹介します。

仕事に関連しないうつ病でも、共通する部分はあるため、ぜひ参考にしてみてください。(参考:こころの耳「Q4:うつ状態の診断で休職中の社員の治療方針を知りたい」

治療方法①休養

休養は基本的な治療法ですが、実は最も重要です。

休養はうつ病の治療に限らず、たいていの体調不良・病気において自然治癒力を最大限に発揮してくれます。

休養の方法としては、主に「完全に仕事をストップして休む方法」と「働きながら休む方法」の2つです。

「完全に仕事をストップして休む方法」では、休職や退職をして、完全に仕事と離れた状態で体と心を休めます。

「働きながら休む方法」では、残業を減らしたり出勤日数・時間を減らしたりすることで、休養する時間を増やしていきます。

あなた自身と職場の状況や医師の判断などを踏まえて、どのように休養するかを検討しましょう。

治療方法②薬物療法

薬物療法は、文字通り、薬を服用してうつ病の改善を目指すものです。

うつ状態には抗うつ薬、生活習慣を改善しても治らない不眠症状には睡眠導入剤といったように、症状や状態に合わせた薬を服用します。

薬の服用を不安に思う場合は、担当の医師に伝えてみてください。

なぜその薬が必要なのか、あなたが納得して安心するまで教えてくれるはずです。

治療方法③相談や精神・心理療法

相談や精神・心理療法は、内側の意識から変えていく治療法です。

医師やカウンセラーとの対話を繰り返しながら、ストレスに対しての捉え方や気分が落ち込んだときの考え方などを見直していきます。

自らの考え方のクセやパターンを知り、変えることができれば、再発防止にもつながります。

ゆっくり確実に治していきたい場合には、相談や精神・心理療法もひとつの手です。

うつ病のある人が社会復帰するときの3つのポイント

うつ病のある人が社会復帰を考える際、「早く戻らなきゃ」とあせるケースがあります。

しかし、とりあえず戻っても、またうつ病を発症しては意味がありません。

この章では、うつ病のある人が社会復帰するときの3つのポイントを解説します。

ポイント①ストレスの原因が何かを把握する

うつ病になるということは何らかのストレスがあるということです。

うつ病を再発させないために、ストレスの原因が何かを把握しましょう。

厚生労働省の調査によると、仕事のストレスの原因の第1位は「仕事の量」です。そこから、「仕事の失敗、責任の発生等」「仕事の質」と続いています。(参考:厚生労働省「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」

何がストレスなのかを把握できれば、元の職場に戻るにしろ、新しい職場へ行くにしろ対策が取れるようになります。

例えば、仕事の量が主なストレスの原因になっているのであれば、減らしてもらえるように交渉したり、元から仕事量が少ない職場を探したりできますよね。

うつ病を再発させないためにも、ストレスの原因を把握することは重要なのです。

とはいえ、うつ病は仕事とは関係ないストレスで発症することもありますし、明確な原因がわからない場合もあります。

あくまで、ストレスの原因が何かを把握できるとうつ病が悪化しづらくなるということであり、原因がわからないとダメなわけではありません。

社会復帰のポイントのひとつとして知っておきましょう。

ポイント②社会復帰=元の勤務先へ戻ることではない

うつ病からの社会復帰とは、「休職後に元の職場へ戻る」だけに限りません。

その内容は様々です。就労以外の観点も含めるなら、大学などに入って学び直すというルートもあります。

うつ病からの社会復帰の例
  • 退職を経て転職
  • 障害者雇用での就労
  • (一時的な)パート・アルバイトとしての勤務

もしかしたらあなたは、「なんとしても元の職場に戻らなくては」とお考えかもしれません。

ですが、そうした考え方にこだわらずに、あなたにとって無理のない働き方を柔軟に模索することが、社会復帰を検討する上では大切になります。

つらくならない範囲で構いません。治療を進めながら「あなたにとっての社会復帰をどこに設定するか」を少しずつ考えていきましょう。

社会復帰を考える上では「復帰後のこと」も考えることが重要だということは、心に留めておいてください。

うつ病のある人のアルバイトについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

ポイント③社会復帰を急がない

うつ病のある人は、社会復帰をあまり急がないようにしましょう。

うつ病のある人の中には、休職中や無職の状態に後ろめたさを感じて、「早く復職しなければ」と焦る人が少なくありません。

しかし、その焦燥感は自分へのプレッシャーになって、うつ病の改善を妨げる可能性があるのです。

実際にうつ病の再発率は約60%もあるため、社会復帰に関しては慎重に考えるべきと言えます。(参考:こころの耳「職場復帰のガイダンス 働く方へ」

ただ、経済的な事情から「焦らざるを得ない」という方もいるでしょう。

そのような場合は、うつ病のある人向けに経済的な支援を受けられる制度が複数ありますので、そちらを利用することをオススメします。

うつ病のある人が受けられる経済的な支援については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

うつ病とは?

うつ病とは、気分の落ち込みや憂うつ感、さまざまな意欲の低下などの精神的症状と、不眠、食欲の低下、疲労感などの身体的症状が一定期間持続することで、日常生活に大きな支障が生じる精神障害・気分障害のことです。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、厚生労働省「1 うつ病とは:」、厚生労働省「うつ病に関してまとめたページ」、、厚生労働省「うつ病」、国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「うつ病」、株式会社メディカルノート「うつ病について」、MSDマニュアルプロフェッショナル版「抑うつ症候群」

また、脳の機能が低下している状態、脳のエネルギーが欠乏した状態を指し、脳の中で神経細胞間のさまざまな情報の伝達を担うセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなどの神経伝達物質のバランスの乱れや、感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じているものと考えられています。

うつ病の概要や症状、治療方法などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

まとめ:うつ病は初期症状の段階で対処しましょう

うつ病は、初期症状を自覚しはじめた段階で対処することが大切です。

自分がうつ病になっていることを認めたくないと思う気持ちもあるかもしれません。しかし、やせ我慢を続けていると無理がたたって起きあがることすらできなくなる場合があるのです。

初期症状の段階でセルフケアをしたり、医療機関で診察を受けたり、周囲の人に頼ったりすることができれば、あらかじめ対策できます。安心してください。

このコラムが、仕事の場でうつ病の初期症状に悩んでいるあなたの助けになれば幸いです。

よくある質問(1)

うつ病による身体面の初期症状を教えてください。

以下が考えられます。

  • 睡眠障害:寝付けない、何度も目が覚める
  • 慢性疲労:だるい、身体が重い
  • めまいや動悸:目が回る、呼吸が苦しい
  • 食欲の減退:ご飯を食べる気が起きない
  • 性欲の減退:性的なものへの興味が減る
  • 身体の痛み:原因不明の頭痛や腹痛がある

詳細については、こちらで解説しています。

よくある質問(2)

うつ病のある人が仕事中にとる行動を教えてください。

以下が考えられます。

  • 物忘れやケアレスミスが多くなる
  • 同僚との会話を避けるようになる
  • 遅刻や欠勤が増える
  • 離席が増える
  • 机上が散らかりはじめる
  • 電話の受け答えが緩慢になり沈黙が増える
  • 眠気が強く日中でも朦朧としている
  • 自分を責めるような発言が増える
  • 話し方に抑揚がなくなり声が小さくなる

詳細については、こちらで解説しています。

監修志村哲祥

しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。 臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。

【著書など(一部)】
子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数

日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

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翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

監修角南百合子

すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→

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