うつ病からの再就職を成功させる5つのコツ 準備すべき7つのことや4つの流れもあわせて解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
うつ病で、再就職をご検討中のあなたは、以下のようなお悩みをお持ちではありませんか?
- 経歴にブランクがあるか大丈夫か?
- うつ病になってからの再就職は難しいのではないか?
うつ病の人は治療も進めなくてはならないため、一般的なケースに比べて、再就職に時間がかかる可能性はあります。
しかし、ポイントを押さえて適切に準備を進めれば、あなたに合った職場に就職することは充分可能です。
このコラムでは、うつ病の人に向けて、再就職までの流れと、就職活動に向けてすべき準備、頼れる支援者について解説します。あわせて、面接でうつ病のことを伝えるべきかといったよくある疑問への答えや、再就職を成功させるコツについてもお伝えします。
あなたに合った支援者に相談しながら再就職を目指していただければと思います。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、再就職を検討しているうつ病のある人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
「うつ病からの再就職を焦りすぎないこと」が大切
うつ病から再就職する上でまず大切なことは、「再就職を焦りすぎないこと」です。再就職への焦りがプレッシャーや心身へのストレスになり、うつ病の症状を悪化させる可能性があります。
病状が悪化すると再就職までの道が遠くなります。
再就職が決まっても、疲れのために職場定着がスムーズに進まないなど、最終的にはよい結果に繋がらない恐れがあります。
また、焦燥感ゆえに、ご自身に合わない職場であっても、「採用してもらえるならここに決めてしまおう」と、就職先を決める方もいらっしゃいます。
新しい就職先の環境や条件が合わない場合、うつ病が再発して、ふたたび休職・退職というコースをたどることにもつながります。
したがって、「再就職を焦りすぎないこと」は、重要なポイントなのです。
ぜひ、就職活動の期間を長めに見積もって、じっくりと職場探しに取り組んでください。
その際には、お一人で取り組むのではなく、「積極的に支援者を頼ること」も大切です。かかりつけ医や、後述する専門機関の支援員などの意見にも耳を傾けましょう。
焦って一人で悩みを抱え込んだりせず、周囲の助力を得ながら就職活動を進めることが、再就職を成功させるカギになります。
うつ病からの再就職を成功させる5つのコツ
ここからは具体的に、うつ病の人が再就職を成功させるコツを5つ紹介します。
前提として大切なのは、これまでにも述べたように、「再就職を焦りすぎないこと」と、「積極的に支援者を頼ること」です。
うつ病の症状が悪化したら、せっかく再就職をしても、働き続けることが難しくなります。
医師や支援者とともにうつ病の経過に気を配りながら、無理のない範囲で就職活動を進めましょう。
その点を意識しながら、以下のコツを実践していってください。
コツ①自分にあった雇用枠を選ぶ
先述したように、「一般枠と障害者枠のどちらを選ぶか」は、うつ病の人の再就職を考える上で、重要なポイントのひとつです。
ご自身のうつ病のことを外部の人になかなか話せないことで、我慢して一般枠を志望する方も中にはいらっしゃいます。
一般枠で、うつ病を秘匿して働くことが後ろめたさや「隠し続けなくてはならない」というプレッシャーに繋がり、調子を崩すという結果を招くこともあります。
反対に、障害者枠で周囲の人から配慮を受けるよりは、一般枠で周りと同じように働ける方が気が楽だという人もいるでしょう。
また、一般枠の方が給与や待遇の面で安心感を持って生活できるから、精神的な安定に繋がりやすいと考える人もいるはずです。
このように、あなたの性格や「仕事に何を求めるか」などによって、どの雇用枠が適切かは異なります。
詳しい支援者などからアドバイスを得ながら、「あなたに合った雇用枠」を選ぶことが、再就職を成功させるための第一歩になると考えてください。
「障害者枠・一般枠」の詳細については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
コツ②さまざまな業種や働き方から無理なく働ける仕事を選ぶ
2点目は、「さまざまな業種や働き方から無理なく働ける仕事を選ぶ」です。
再就職にあたって、以下のように考えている方もいるかもしれません。
- うつ病になったら、軽作業や簡単な事務作業しかできない
- 再就職をしたら、毎朝出社して、夕方・夜まで業務を行わなくてはならない
しかし、勤務先や勤務形態だけを考えても、大企業・中小企業・公的団体・士業・ベンチャー・フリーランスなど、さまざまな就職先(働き方)があります。
先述の「障害者枠・一般枠」という観点もあるでしょう。
特定の職業や働き方にこだわりすぎず、さまざまな仕事を調べることで、あなたが無理なくできる仕事が見つかりやすくなります。
コツ③正規雇用以外での再就職も視野に入れる
「絶対に正規雇用で働く」と気負わずに、まずはアルバイトなどから始めて、就労自体に慣れていくというのも効果的です。
アルバイトを通じて、自分の向き不向き・得意不得意・好き嫌いなどが改めてわかることもあります。
また、お勤め先によっては、アルバイトなどの非正規雇用で働いた後、正規雇用へ変更できる場合もあります。
長期的な収入・生活・今後のプランなども検討しつつ、あなたに合った働き方を模索するというする意味でも、非正規での再就職も選択肢として持っておくことをオススメします。
コツ④長く働き続けられるかという視点で選ぶ
4点目のコツは「長く働き続けられるかという視点で選ぶ」です。
再就職が決まっても、残業が多かったり、社会保険制度が整っていなかったりすれば、また症状がぶりかえして、休職・退職に至ることもあります。
それゆえ、「長く働き続けられる職場かどうか」という視点を持つことが大切です。
具体的には、以下の2点をチェックすることをオススメします。
- 人事制度が整っているかどうか
- 勤務形態を柔軟に変えられるかどうか
休職制度や残務規定など、人事制度が整っている職場であれば、従業員への配慮も行き届いていることが多いため、比較的働きやすいはずです。
また、うつ病の人は、その時々にあわせて在宅勤務や時短勤務に切り替えられると、調子を大きく崩すことなく、長く働けると考えられます。
業種によっては、柔軟な勤務制度まで求めることは難しいかもしれませんが、ぜひ以上の2点を意識して、「長く働き続けられる職場かどうか」を考えてみてください。
コツ⑤支援者と正直に話す
最後のコツは「支援者と正直に話す」です。
就労移行支援事業所などの支援者は、「うつ病と就労に関する専門的な知見」と、「あなた個人の特性」を踏まえた支援を行います。
うち、「あなた個人の特性」については、あなた自身のことを、あなた自身が正直にお話しすることで、支援者に伝わります。
「自分のことを話すのは苦手」「過去のことを話すのは恥ずかしい」と思うかもしれませんが、自身のことを正直にお伝えするようにしましょう。
いきなり全てを話さなくても、少しずつでも大丈夫です。
そうすることで、あなたの希望に沿った支援を受けていけるようになります。
「どう話したらいいのかわからない」というときは、そのように正直に伝えましょう。
相手は「話を聞くプロ」ですので、あなたに合わせて聞き方なども変えていきます。
その上で、相手も人間ですし、支援者ごとの理念などもありますので、あなたとは相性が合わないことも考えられます。
そんなときも、「自分のことを理解されない」と落ち込まず、自分に合いそうな次の支援者を探していきましょう。
特に後述する就労移行支援施設については、最初から気になるところを複数ピックアップしておき、可能な範囲でそれぞれへの相談・見学を行う、という方法も可能です。
うつ病の人が再就職に向けてできる7つの準備
この章では、うつ病の人が再就職に向けてできることを、7つの準備を紹介します。
改めて強調させていただきますが、大切なのは、悩みを一人で抱え込まないことです。
かかりつけ医や専門家に相談することで、有効な解決策が見つかりやすくなります。
また、気持ちの面でも楽になるというメリットが期待できますので、できるだけ支援者を頼るようにしましょう。(参考:佐藤隆『職場のメンタルヘルス実践ガイド』、川上憲人『基礎からはじめる職場のメンタルヘルス』、吉野聡・宇佐見和哉『「うつ」からの職場復帰のポイント[第2版]』)
準備①治療を進めて「寛解」の診断を得る
まずは、うつ病の治療を進めて、「寛解(かんかい)」の診断を得ることを目指しましょう。
寛解とは、うつ病になる前の認知・身体機能を取り戻した状態を指します。
寛解は、再就職を本格的に目指す際の、一つの目安です。
しかし、寛解の診断を得るまでには、ある程度の時間が必要になります。
一時的に気分の落ち込みや憂うつ感がなくなったように感じても、「安定した」とは限らず、ある程度、様子を見て判断する必要があるからです。
通院や服薬を欠かさずに、医師の診断を仰ぐようにしましょう。
準備②専門の支援機関に相談する
2つ目は、「専門の支援機関に相談する」です。
うつ病の人の支援を行っている専門機関はたくさんあり、
公的な機関や、公的な認可を受けた機関で言えば、主に以下のものが挙げられます。
- 就労移行支援事業所
- 精神保健福祉センター
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
- 発達障害者支援センター(発達障害の特性が見られる場合のみ)
①就労移行支援事業所
障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(通称:障害者総合支援法)に基づき、うつ病などの精神疾患や発達障害のある人が就職できるよう、包括的かつ継続的な支援を行っている支援所です。
就労移行支援事業所の詳細については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
- 厚生労働省「就労移行支援事業」
②精神保健福祉センター
うつ病の診断が下りていなくても、憂うつ感や抑うつ症状があれば相談を受け付けています(全国の一覧はこちら)。
③地域障害者職業センター
特に仕事面での悩みのある人に対して、職業相談などを受け付けている支援センターです(全国一覧はこちら)。
④障害者就業・生活支援センター
特に仕事面での悩みのある人に対して、職業相談などを受け付けている支援センターです(全国一覧はこちら)。
⑤発達障害者支援センター
一見すると、うつ病とは無関係に思えるかもしれません。
しかし、発達障害の傾向のある人は、コミュニケーションがうまく取れないなど、社会生活上の困難から生じるストレスが原因となって、うつ病などの「二次障害」を患うケースが少なくないのです。
発達障害者支援センターでは、そういった方向けに電話相談などを受け付けていますので、発達障害が疑われる方は、問い合わせてみるとよいでしょう(全国の一覧はこちら)。
就労移行支援以外は、基本的には無料でサポートを受けられます。
お近くの施設を探して、気になるところに問い合わせてみましょう。
どの支援機関に相談すべきかわからない場合には、お住まいの市区町村の、障害福祉を担当する部署が窓口になっていますので、そちらに問い合わせてみてください。
準備③就労移行支援を受ける
うつ病からの再就職については、特に「就労移行支援を受ける」ことをオススメします。
前にも述べたように、就労移行支援事業所では、公的な認可を受けたさまざまな事業所が、病気や障害のある人の就労のためのサポートを行っています。
主な支援内容は、以下の5つです。
- 生活習慣改善のサポート
- メンタル面のケア
- 就労に関連するスキルの講習
- 実際の就職活動の支援
- 職場定着支援(事業所による)
就労移行支援では、直接的な再就職に向けた支援だけでなく、①生活習慣改善のサポート・②メンタル面のケアも一緒に受けられます。
例えば、私たちキズキビジネスカレッジでは、個別相談で心理学的なアプローチを通して自己理解を深めることや、セルフマネジメントができるようなサポートをしています。
また、③就労に関連するスキルの講習は、とりわけ事業所の個性が出るところです。
事業所によって、基本的なスキル(ワード・エクセル・軽作業など)、専門的なスキル(ビジネスレベルの英会話、プログラミングなど)、各種資格の取得など、重視している方向性・分野が異なります。
④実際の就職活動の支援では、履歴書の書き方、面接の受け答え、あなたに向いた職種探し、インターン先の紹介、一般枠・障害枠の選択などについて、具体的なサポートを受けられます。
⑤職場定着支援では、再就職後のお勤め先にスムーズに順応できるように、さまざまなサポートを行います。
具体的には、支援員が定期面談を行い、業務内容や業務量などについて、被支援者とお勤め先の間で調整します。
そのため、再就職後の環境適応に不安がある方には、特にオススメです。
ちなみに、2017年に行われた障害者職業総合センターの調査によると、定着支援を受けた人たちの1年後の職場定着率が「73.2%」に対し、受けなかった人たちの職場定着率は「52.6%」と、「20%以上」もの差が出ています。(出典:障害者職業総合センター「障害者の就職状況等に関する調査研究」)
相談・見学は無料ですので、支援内容に興味を抱いた事業所が見つかったら、詳細を問い合わせてみてください。
就労移行支援事業所の詳細については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
- 厚生労働省「就労移行支援事業」
準備④生活習慣を整える
4つ目は「生活習慣を整える」です。
再就職を目指す方は、まずは就寝と起床の時間を揃えて、生活習慣を整えましょう。
睡眠のリズムが安定してくると、生活習慣もおのずと安定します。
また、飲酒やカフェインの摂取にも、ご注意ください。
これらの嗜好品は、治療の妨げになるだけでなく、頭痛・不安の原因になると言われています。
一時的なストレス解消になったとしても、依存性があるとも言われていますので、控えることをオススメします。
準備⑤食生活の改善に取り組む
5つ目は「食生活の改善に取り組む」です。
国立精神・神経医療研究センター神経研究所の部長である功刀浩先生によれば、うつ病の改善においては「食生活などの生活指導」も大切だそうです。(参考:朝日新聞「生活習慣と関係が深いうつ病、予防につながる栄養素は……」)
食べすぎによる肥満、ダイエットによる栄養不足など、食生活の乱れがうつ病の発症・再発に関わっているというのです。
反対に、野菜、果物、大豆製品、きのこ類、緑茶など、ビタミンやミネラルを多く摂取する「バランスのとれた食事」を取ることがうつ病の改善に役立つと考えられます。
医師などとも相談しつつ、再就職に向けて、食生活の改善に取り組みましょう。
準備⑥軽い運動をして体力をつける
6つ目は「軽い運動をして体力をつける」です。
うつ病になると、休養期間の長さにかかわらず、少し運動しただけでも、息切れや目眩がすることもあると思います。
新型コロナ禍の影響が残る2020年11月現在では、自宅でのリモートワークなども多いですが、再就職後に毎日数時間の仕事を週何日もこなすには、最低限の体力が必要です。
まずは、就職活動や就労に耐えうる体力を取り戻しましょう。
「毎朝20分だけ散歩をする」「毎日20回のスクワットをする」など、あなたの無理のない範囲で構いません。
適度な運動をして、少しずつ体力をつけることを心掛けてください。
準備⑦身近な人との交流を増やす
最後は「身近な人との交流を増やす」です。
人と接する機会を増やすというのも、再就職に向けた準備として効果的です。
うつ病の症状が重いときは、誰かと会話するのも億劫かもしれません。
とりわけ対人不安が強い場合、「人と話すのも辛い」と感じることもあるでしょう。
しかし、就職活動でも、再就職後でも、ある程度は人と接する機会が生じます。
少しでも、人に慣れておく必要があるのです。
最初は、家族や信頼できる友人と会話する程度で大丈夫です。
対面で会うのが難しい場合は、メールやSNSを通じたやりとりから始めてみましょう。
あまり疲労を感じずに、リラックスして接することができるようになったら、人と会う機会を増やしていくのがベターです。
ただし、どんな場合でも、人と会うと心身が消耗する面はありますので、決して無理はしないでください。
うつ病の人が再就職するまでの4つの流れ
この章では、うつ病の人が再就職するまでの流れを、以下の4つに分けて見ていきます。
すでに「リハビリ期」や「就職活動期」に入っているという方は、状況に応じて必要な部分のみ読んでいただいても構いません。(参考:吉野聡・宇佐見和哉『「うつ」からの職場復帰のポイント[第2版]』)
①要治療期
要治療期は、まず治療に専念し、病状の安定化を優先させる時期です。
うつ病の症状が重い方は、日中も眠くなりやすく、薬を飲んで横になるだけで精一杯かもしれません。
しかし、要治療期には、できるだけ何も考えずに、休養に専念することが何よりも大切です。
医師の診断に従いながら、焦らずに、心身の回復を待ちましょう。
なお、「処方された薬を服用することに抵抗がある」「医師の診断にどうしても納得できない」という場合は、セカンドオピニオンを求めて別の病院を受診するのも手段のひとつです。
ただし、一般論として、セカンドオピニオンでも治療の方針があまり変わらないようなら、多少納得できない面があったとしても、元の方針に従うことをオススメします。
また、正しい治療を受けるため、代替医療や民間療法ではなく、「病院」の治療を受けるという点も重要です。
信頼できる病院・医者を見つけて、焦らず治療を進めるようにしましょう。
②リハビリ期
行動意欲が戻ってくるリハビリ期は、衰えた体力や思考力の回復が目標になります。
次章でも述べるように、生活習慣の安定化や軽い運動に努めながら、ある程度の日課を立てることが大切です。
同時に、リハビリ期は、働いていないことへの後ろめたさや、焦燥感が生じる時期とも言われています。
再就職に向けて気がはやるのもわかりますが、「徐々に慣らしていく」「負荷は少しずつ掛けていく」という意識を保ちましょう。
③就職活動期
就職活動期に入ると、いよいよ現実的な再就職を目指して、履歴書を作成したり、面接を受けたりすることになります。
求人・雇用の中には、「障害者を対象とする求人・雇用枠」である「障害者枠」というものがあります(障害者枠ではない求人・雇用は、「一般枠」と言います)。
特にうつ病からの再就職については、一般枠と障害者枠のどちらを選ぶこともできます。
障害者枠の場合、働く上で病状に配慮がなされます。
障害者枠では、就職活動の段階で、より具体的に「どのような症状があるのか」「どういう業務であれば無理なくできるのか」などをじっくり話し合うことが重要です。
気になる方は、障害者枠の求人を探してみましょう(一般的には、障害者手帳の所持が必要です)。
ただし、一般枠よりも給料が低い可能性があるので、探す際には待遇もきちんと確認するようにしましょう。
一般枠での就職活動の場合、うつ病である(だった)かどうかは、応募先に聞かれたら正直に答えるべきですが、聞かれない限りは自分から明かす必要はありません。
うつ病について明かさずに一般枠で就労することを、「クローズ就労」と言います。
クローズ就労では、周りからの偏見などを避けることができ、給料も一般枠待遇である一方で、通常はうつ病(経験)への配慮を得られません。
対して、うつ病(経験)を明かして一般枠で就労することを、「オープン就労」と言います。
オープン就労では、就職活動の段階で応募先との調整がしやすく、給料が一般枠待遇である一方で、職場で「明確な制度」としてのサポートを受けられないこともあります(個別の対応などはあり得ます)。
どのような条件で就職活動・就労を行うかについても、あなただけで抱え込まずに、後述する相談機関などを頼って検討していくことをオススメします。
それぞれの詳細については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
④再発予防期
再就職後には、再発予防が重要です。
長く働き続けるためには、治療の継続、計画的な休養、残業を避けるといった心掛けが必要になります。
他にも、お勤め先で実施されるストレスチェックでご自身の状態を確認したり、産業医による面談を受けたりするなど、うつ病の予防手段は多種多様です。
「再就職できたから安心だ」で終わるのではなく、できるだけその後の再発予防まで考慮に入れて、就職活動を進めるようにしましょう。
うつ病の人に向いている仕事・働き方
それでは、「うつ病の人に向いているとされる仕事や働き方」はあるのでしょうか?
うつ病の症状を考えると、以下の4つの特徴に焦点を当てた仕事・働き方が、向いていると言えるかもしれません。
①業務にムラのない定型的な仕事
規程の帳票類を処理する事務職や経理職が向いていると考えられます。
②マイペースにできる仕事
研究職や開発職などが比較的オススメです。
③在宅勤務が可能な仕事
フリーランスでできるお仕事も向いています。具体的には、エンジニアなど、遠隔で文字のみのやり取りなどで済むものですと、負担も少ないはずです。実際、うつ病などの発症をきっかけにフリーランスの仕事に転向する人は、最近では珍しくないようです。
④その日の業務量や業務時間を柔軟に変えられる働き方
フリーランス以外にも、業務時間等を柔軟に変えられるフレックス制などは、その日の体調や気分にあわせて仕事ができますので、向いているでしょう。
うつ病で再就職を検討中の人が抱きやすい4つの悩みQ&A
最後に、この章では、再就職を検討中の人が抱きやすい悩み・不安について、解消の一助となる回答をお伝えします。
Q1.面接や履歴書の中でうつ病のことに触れなくて大丈夫?
「クローズ就労」を望んでいる場合には、自ら積極的にうつ病(経験)を明かす必要はありません。
ただし、相手から質問されたときは、正直に答えなかったり、病歴を詐称したりすることは避けるようにしましょう。
法律的には「本当のことを言わなかった」ことを処罰されることはありません。しかし、職場によっては、採用後に虚偽の申告が発覚すると解雇につながる可能性もあるかもしれません。
なお、クローズ就労における面接での受け応えには、各支援機関にノウハウやコツが蓄積されています。
就労移行支援事業所など、支援機関に相談することで、クローズ就労を行うかどうかも含めて、全体的な方針や応募先ごとの面接の回答作成がスムーズに進みます。
クローズ就労の詳細については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
Q2.再就職の前にじっくり治療したいけれど、お金がない
うつ病の人が受けられる経済的な支援は、多様にあります。
代表的なもので言えば、特定の疾患をお持ちで、継続的な通院が必要な方を対象とする、「自立医療支援制度」が挙げられます。
自立支援医療制度を利用すれば、通常、医療保険による医療費の自己負担額が「3割」のところを、原則「1割」まで軽減することができます。(出典:厚生労働省「自立支援医療」)
また、うつ病に限らなくとも、退職されて間もない方であれば、ハローワークで「失業手当」の申請をすることで、一定期間、給付金を受給することが可能です。(参考:厚生労働省「自立支援医療制度」、ハローワークインターネットサービス「雇用保険手続きのご案内」)
うつ病の人の経済的な支援の詳細については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
Q3.再就職したらうつ病が再発するのではないかと心配しています
「再就職したら、うつ病が再発するのではないか」と不安を感じる方は確かに多いです。
しかし、以下のような予防措置を講じることで、うつ病の再発の可能性を、ある程度低減することができます。
- 有給休暇を定期的に取るよう心掛ける
- 食生活の乱れに注意する
- 自分なりのリラックス法を身につける
もちろん、これまで解説してきたように「自分にあった雇用枠を選ぶ」「勤務形態の柔軟な就職先を探す」などを意識した就職活動も、再就職後のうつ病の再発を防ぐのに有効です。
再発予防の詳細については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
Q4.再就職に関連する漠然とした不安が消えません
「再就職に関連する漠然とした不安が消えない」という方は、まずは体調管理に専念しましょう。
具体的には、睡眠時間をよく取ったり、ストレッチなどをしてリラックスできる時間を増やしたりすることが大切です。
無理に緊張を取ろうとするのではなく、整えやすいところから手を入れていきましょう。
また、不安感を一人で抱え込まずに、ぜひ医師や支援者に打ち明けるようにしてください。
不安解消のための具体的な解決策が見つかることもありますし、話すだけで気持ちが楽になることもあります。
そして、就職活動中に調子を崩したという場合も、あまり気落ちしないことが肝要です。
一度、就職に取り組もうとしたという事実は、あなたの自信に繋がるはずです。
次の機会に活かせることがたくさんありますので、周囲の支援者を頼りながら、休養後に改めて就職活動に取り組んでみてください。
まとめ:うつ病の人は再就職に向けて、焦らずに準備を進めましょう
うつ病の人が再就職するまでの流れから、再就職に向けてできること、頼れる支援機関などを解説してきましたが、具体的なイメージが湧いてきたでしょうか?
繰り返しにはなりますが、うつ病の人が就職活動をする際には、医師や専門機関の支援者を頼ることが大切です。
一般的な就職活動とは異なり、うつ病の人は、雇用枠の検討など、考慮すべき要素が多々あります。
それらを判断する際には、詳しい人の意見を聴きながら、慎重に検討をすることが大切です。
ぜひ、焦らずに、あなたに合った再就職先を見つけてください。
このコラムが、再就職を検討中のうつ病の人の助けになれば幸いです。
うつ病の自分にできる、再就職に向けた準備を知りたいです。
一般論として、次の7点が挙げられます。(1)治療を進めて「寛解」の診断を得る、(2)専門の支援機関に相談する、(3)就労移行支援を受ける、(4)生活習慣を整える、(5)食生活の改善に取り組む、(6)軽い運動をして体力をつける、(7)身近な人との交流を増やす。詳細はこちらをご覧ください。
うつ病の自分が再就職するのは難しい(できない)でしょうか。
一般論として、次のポイントを押さえれば成功が近づきます。(1)自分にあった雇用枠を選ぶ、(2)さまざまな業種や働き方から無理なく働ける仕事を選ぶ、(3)正規雇用以外での再就職も視野に入れる、(4)長く働き続けられるかという視点で選ぶ、(5)支援者と正直に話す。詳細はこちらをご覧ください。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→