うつ病で休職する人の確認事項7選 休職の手続きを解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
うつ病による休職をお考えのあなたは、以下の点に不安をお持ちではありませんか?
- 休職前に確認しておくべきことがわからない
- うつ病で休職するときの具体的な手続きは?
- うつ病での休職期間の目安はどれくらい?
- 休職中はどう過ごすべきなんだろう?
以上は、実際にうつ病で1年近い休職を経験した筆者が当時抱いていた疑問です。
このコラムでは、うつ病で休職する人の確認事項や休職するときの手続き、休職中の過ごし方について解説します。また、うつ病で休職中の部下がいる人に向けて、うつ病で休職中の部下がいるときの対応も解説します。あわせて、うつ病による休職を経験した筆者の体験談を紹介します。
あわせて、休職を経験した筆者の体験談をご紹介します。
休職される人だけでなく、休職予定の部下や同僚を持つ人もぜひ読んでみてください。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、休職についてお悩みのうつ病のある人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
うつ病で休職する人の確認事項7選
この章では、うつ病で休職するときの確認事項について解説します。
休職に入る前に、前提として心に留めていただきたいことがあります。
それは、「あなた一人の判断で結論を出さずに、かかりつけの医師や専門家、支援機関の意見を聞きながら、慎重に決断する」ということです。
私も経験のあることですが、うつ病で精神的に疲れているときは、理性や判断力が鈍っています。
諸々のやり取りを飛ばして休みたくなる気持ちはわかりますが、できる限り周囲の人へ相談する姿勢は持つようにしましょう。
前提:休職とは?
休職とは、雇用契約を維持したまま労働を免除、または停止させる措置のことです。(参考:大阪府「33 休職と休業」、友常祐介・著、松崎一葉・監修『正しく知る会社「うつ」の治し方・接し方』)
休職の認定を受けるには、労務に服せない理由が示された文書の提出など、いくつかの条件を満たす必要があります。
しかし、これらの条件は職場によって異なります。
休職制度は法律ではなく、職場の定める就業規定に則って適用されるからです。
具体的な休職の条件としては、以下の3つがよく見られます。
- 持病や疾患など、私傷病を理由とする本人の申し出がある
- 欠勤が○日以上継続する
- 私傷病の場合、休養を求める医師の診断書がある
休職の要件を満たしている場合、本人の意思とは別に、職場が休職を命じることもあります。
適宜、職場の休職制度について人事部門に問い合わせるか、ご自身で就業規定を確認してみてください。
確認事項①専門医に相談する
休職前にはまず、専門医に相談するようにしましょう。
特に、うつ病のような症状があるだけで、実際に診断を受けていなかったり、「自分はうつ病かもしれない」と自己判断で済ませたりしている場合、メンタルクリニックを受診してください。
伝えられる範囲で構いません。仕事の状況や精神状態を伝え、通院を続けながら治療に専念しましょう。
また、休職する際は基本的に医師の診断書が必要です。
診断書の発行までには、初診から数ヶ月かかる場合もありますので、休職をご検討中の方はなるべく早く受診するようにしてください。
メンタルクリニックへ通うことに抵抗があるという方は、職場の産業医に相談するのもひとつの手段です。
産業医とは、労働者の健康管理について助言や指導を行う医師のことです。(参考:厚生労働省「産業医について」)
労働安全衛生法に基づき、常時50人以上の労働者が在籍する事業所に1人以上、3000人超の事業所では2人以上の産業医の配置が義務付けられています。
以上の条件を満たしていれば、あなたの職場にも産業医がいるはずです。
「産業医面談の内容次第では、人事考課に影響が出るのではないか」と心配される人もいらっしゃいますが、産業医は中立的な立場から助言を行います。
もし、職場が面談の結果を求めても、個人情報保護の観点から、詳細については共有してよいかを原則ご本人に確認することになります。また、産業医面談には料金なども発生しません。
休職をご検討の際は、まずはメンタルクリニックの医師、産業医などに相談するようにしてください。
確認事項②就労支援機関に相談する
2つ目は、就労支援機関に相談することです。
専門医の診断からうつ病であることが明らかになり、その原因があなたの仕事の進め方や体調管理の方法にある場合、就労支援機関に相談することで、適切なアドバイスや指導を受けられます。
また、近年ではうつの症状をきっかけにクリニックを受診したところ、発達障害であることが発覚したというケースも増えてきています。
就労支援機関の中には、発達障害のある人を専門にフォローしているところもあります。
職場とあなたの間に入って、業務量や勤務時間といった労務環境の調整をしているところもありますので、活用するとよいでしょう。
就労移行支援とは、一般企業などへの就職を目指す、病気や障害のある方向けに、障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)に基づいて行われる福祉サービスのことです。(参考:e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)
実際のサービスは、国の基準を満たした様々な民間の就労移行支援事業所が行います。
就労移行支援事業所では、体調管理の方法、職場でのコミュニケーションの基礎スキル、就職に必要な専門スキルなどを学ぶことができます。
さらには、実際の就職活動でのアドバイス、就職後の職場定着支援も含む、総合的な就労支援を受けることが可能です。
就労移行支援事業所は各地にあります。私たち、キズキビジネスカレッジ(KBC)もその一つです。それぞれ特徴が異なるため、気になるところがあれば問い合わせてみてください。
就労移行支援事業所については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
確認事項③就業規程の休職制度を確認する
確認事項の3つ目は、就業規程の休職制度を確認することです。
休職制度は職場の就業規程に定められています。まずは規程を確認しましょう。
その際に注目してほしい確認事項が2点あります。
- 休職中の給与支給の有無
- 休職可能な期間
以上の2点は、正規か非正規かなどの職位によって、条件が異なる場合があります。
職場によっては、職位次第で給与支給のないところもありますので、特に注意が必要でしょう。
仮に支給があっても、6か月までは満額、それ以降は50%をカットするなどの制限が設けられている職場も少なくありません。
また、休職可能な期間も、3カ月間から1年以上に渡るなど様々です。
確認する際には、ご自身で規程を読むだけでなく、人事担当者に詳しく確認を取りましょう。
確認事項④貯金などの経済面を確認する
4点目は「貯金などの経済面を確認する」です。
うつ病で休職するときに経済的な余裕がないと、それが焦燥感や不安につながって、治療に専念できない場合があるため、必ず確認するようにしましょう。
ここで言う経済面とは、給与支給の有無や傷病手当金、毎月かかる治療代などです。
こちらで解説しますが、人によっては労働災害による給付金も計算に入ってくるでしょう。
また、もし休職中に転職活動をすることになった場合、長期戦になることも見越して、貯蓄を見直すことも大切です。
ただし、「経済面で余裕がないと休職できない」ということではありません。
通常は傷病手当金を受けることができます。また、一時的な生活資金を借りるために、家族や友人など周囲の人以外にも、お住まいの自治体の障害福祉を担当する部署・窓口を利用する方法があります。
就業規程だけではなく、健康保険組合にも問い合わせてみるとよいでしょう。
優先すべきはあなたの心身の状態です。
うつ病は放っておいて回復するものではなく、適切な治療によって回復します。
経済的に十分な余裕が取れなくても、すぐに休職を取った方がよい場合があるということを忘れないようにしましょう。
うつ病への支援については、以下のコラムで解説します。ぜひご覧ください。
確認事項⑤家族に連絡・相談する
休職の前には「家族に連絡・相談する」ことも大切です。
実際に休職に入ると、休養のために、日中を家で過ごすことが増えてきます。
当然、ご家族は何があったのかを心配しますし、場合によっては状況を詳しく問われて、あなた自身が疲弊するという事態にもなりかねません。
こうした状況を避けるためにも、休職前はご家族に連絡・相談すると良いでしょう。
ただし、家族仲が悪いような場合は、医者や他の支援者などに「家族との関係をどうするか」を相談してから方針を決めるのも1つの手です。
確認事項⑥労災の申請が可能かを考える
うつ病になった明確な原因が職場にある場合は、「労災の申請が可能かを考える」こともできます。(参考:厚生労働省「労働災害が発生したとき」、労働問題弁護士ナビ「うつ病の労災が認められにくい理由と申請手続きの手順・流れを詳しく解説」、厚生労働省「精神障害の労災補償状況」)
労災とは、労働によって生じたケガや病気を指す「労働災害」の略称です。
労災を申請して認定されれば、労災保険による治療費などの補償を受けることができます。
ここで言う「うつ病になった明確な原因」とは、過度な長時間労働や、ハラスメントのことです。
昨今、職場でのハラスメントや長時間の残務がきっかけとなって、うつ病などの精神障害を発症する人が後を絶ちません。
また、過労死など、精神障害による労働災害の請求件数は2346件、支給決定件数は629件という結果が出ています。(参考:厚生労働省「令和5年版厚生労働白書」)
以上のデータはあくまでも労働災害として公に認められたものだけです。
一般論として、うつ病などの精神障害による労災認定は、非常に難しいと言われています。
というのも、うつ病の原因を特定することは難しく、「私生活を含む様々な要因が複合的に絡みあって発症するケース」が多いからです。
また、発病前の約6か月間に、業務による極度の心理的負荷が認められるなど、原因が職場にあることを明確化するための条件設定が厳しいというのが現状ですが、労災に該当するのではないかと思われる場合には、労災の申請が可能かどうかを担当部署に確認してみてもよいでしょう。
確認事項⑦職場との連絡手段や頻度を考える
最後に意外と忘れられがちなのが、「職場との連絡手段を決める」ことです。
うつ病の場合、電話に出たくなかったり、メールをしたくなかったりと、連絡すること自体が大変になります。
そのため、休職に入ってからの連絡手段や頻度を、あらかじめ考えておきましょう。
職場との連絡手段が定まっていれば、休職中に気がかりなことがあっても安心できます。
また、病状を報告するタイミングを決めておけば、職場からの不定期な連絡を受けずに済むでしょう。
通院や診断書の有効期限が切れるタイミングで、受診結果の報告をするのが一般的です。
「あなたが連絡しやすい手段」と「どのくらいの頻度で連絡するか」を考えておいてください。
うつ病で休職するときの具体的な手続き4点
この章では、うつ病で休職するときの具体的な手続きを解説します。ただし、職場によって異なる部分もあります。
「よくある流れ」としては、主に以下の4つのステップで進みます。
- 医師による診断書の発行
- 上司など職場の人への連絡
- 人事担当者との手続き
- 休職申請書類の提出
休職する際には、医師が発行する診断書の提出が必要です。まずはかかりつけの病院やクリニックに相談してください。
診断書とは、病気や障害を証明する書類のことです。決まった書式があるわけではなく、医療機関ごとのフォーマットがあります。
診断書には、以下のような項目について記されます。
- 症状
- 病名
- 治療内容
- 治療期間
診断書によって、休職手続き以外にも次のようなことが可能になります。
- 支援制度の申請
- 病気や障害に応じた業務の調整
診断書が発行されたら、所属する部署の上司に診断書を提示し、うつ病によって療養・休職の必要がある旨を伝えます。
直接会わずに、電話やメールで伝えることもできます。また、具体的な連絡先は、職場や個人の事情によって異なります。上司ではなく、人事を担当する部署の担当者などの場合もあるでしょう。
このとき、休職者が多い職場は別として、普段は淡々とお仕事を進めていた人や、気丈に振る舞われていた方は、上司から多少驚かれるかもしれません。
上司に伝える際には、精神的にエネルギーが必要かと思います。ご自身に一番負担のない方法を検討しましょう。
伝える前に数日の休暇を取るなどして、それとなく療養が必要なことを匂わせておくという手段もあります。
いずれにせよ、診断書には相応の効力がありますので、基本的には休職が認められるはずです。
その後は、人事を担当する部署の担当者との面談や休職手続きに進みます。こちらも、直接会う以外に、メール・電話・郵送などで行う方法があります。
人事を担当する部署の担当者とのやりとりに上司も含めるかどうかは、あなたの判断によることが多いです。
特に、うつ病の原因がその上司からの明らかなハラスメントなどである場合は、含めないように配慮してもらえるでしょう。
場合によっては、休職に代わる選択肢として異動の打診が行われたり、労働災害の申請について説明されたりします。
結果として実際に休職するのであれば、職場の書式に則って休職の申請書類を提出し、手続きが完了するはずです。
ただし、担当業務によっては、休職までの間に最低限の引継ぎを頼まれると思います。その際は、無理のない範囲で遂行してください。
休職することが決まったら、とにかく仕事のことを忘れてゆっくり心身を休めるようにしましょう。
うつ病は短期間休んだからといって、すぐ治るものではありません。一時的に気持ちが上向きになったり、できることが増えたとしても、「これですぐに働ける」と考えるのは危険です。
主治医の許可が出るまでは休むことが自分の仕事と考えて休養に集中しましょう。
うつ病による休職中の過ごし方:4つのQ&Aから解説
この章では、うつ病による休職中の過ごし方をQ&A形式で解説します。
ここに挙げるものは、私自身が休職中に感じたことでもあります。
悩みと併せて、対処法やオススメしたい考え方も解説しますので、ぜひご覧ください。(参考:五十嵐良雄『うつ病・躁うつ病で「休職」「復職」した人の気持ちがわかる本』、松﨑博光『新版 マジメすぎて、苦しい人たち:私も、適応障害かもしれない…』)
Q1.休職中は何をすべきですか?
休職中は何をすべきかを考える前に、前提としてお伝えしておきたいことがあります。
それは、「あなたの判断で通院や服薬をやめない」ということです。
調子が良くなってくると、「もう病院に行く必要はない」と自分で判断する人がいます。
しかし、回復していたとしても、それは継続的な薬の服用の結果であったり、医師の目から見ればまだ休養が必要であったりという場合が多いのです。
そのため、休職中は通院を続けて、その上で元気が出てきたら、医師と相談の上で「何をすべきか」を考えるようにしましょう。
休職中にしておくとよい行動として、ここでは以下の4つを挙げさせていただきます。
- 生活リズムを整える
- 自分なりのリラックスの仕方を覚える
- どこかへ通う習慣をつける
- 適度に運動する
うつ病で休職した初期は、日中も横になって過ごすことが多いかと思います。
回復してきたら、まずは生活リズムを整えることから始めましょう。
その際には、「どこかへ通う習慣をつける」や「適度に運動する」というのが有効です。
日中に外出して日光を浴びることで、体内時計が整うはずです。
また、瞑想やアロマテラピーをしたり、長めにお風呂に入ったりといった「自分なりのリラックスの仕方を覚える」ことは、うつ病の回復だけでなく、その後の予防にもつながります。
Q2.休職中に旅行してもいいでしょうか?
休職中に、「リフレッシュのために旅行したい」という人もいます。
特に、職場環境との不適応による「適応障害」が原因で休職した場合は、比較的早期に元気になる場合もあります。
しかし、元気になったからと言って、すぐに旅行に出ることはオススメできません。
まだ十分に回復しているとは限らないため、まずはかかりつけの医師に相談をして、判断を仰ぐようにしましょう。
もし、旅行へ行ったとしても、同僚の目に触れるSNSなどに写真を載せる行為はしないようにしましょう。
「療養に専念していないのではないか」「本当はもう復帰できるのにずる休みしているのではないか」という疑いを持つ人は残念ながらいます。その後の仕事や人間関係に影響が出てくることもあるため、一応控えましょう。
Q3.休職期間の目安は?
厚生労働省の調査によると、うつ病などの精神疾患によって休養した労働者は、職場復帰までに平均107日(約3.5か月)かかるという結果が出ています。
しかし、これはあくまでも平均日数です。
うつ病から復帰するまでにかかる時間は、人によって異なります。
もし平均日数を超えたとしても、焦らずに休養に励んでください。
というのも、うつ病などで休職した人が再休職する割合は、5年で47.1%と半数近くにものぼるのです。(参考:厚生労働省「平成28年度労災疾病臨床研究事業費補助金研究報告書」)
2度目の休職では、復帰までに平均157日かかるなど、1度目のときより時間がかかるため、焦らずに治療を進めることが大切になります。
どうしても気持ちが焦ることもあるかと思いますが、平均日数はあくまで目安として考え、ご自身の復帰については、必ずかかりつけ医の診断に従うようにしてください。
うつ病からの復職については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
Q4.休職中に利用できる支援機関はありますか?
休職中に利用できる支援機関は多数あります。(参考:東京都「東京都発達障害者福祉センター(TOSCA)」、厚生労働省「精神保健福祉センターと保健所」、東京都福祉保健局「よくある相談事例|東京都立精神保健福祉センター」、厚生労働省「サポステ|地域若者サポートステーション」)
こちらで解説した就労移行支援事業所は、メンタル面のケアだけでなく、復帰までの支援を得ながら、自身のスキルアップも目指せますのでオススメです。
就労移行支援事業所については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
他に、診断がなくても支援を受けられる機関もあります。
臨床心理士に相談ができる精神保健福祉センターでも、あなたの状態に応じたアドバイスを受けられるでしょう。
その他、15歳〜39歳までの「若者」を対象としている地域若者サポートステーション(通称:サポステ)でも就労の悩みを受け付けています。
基本的には、都道府県が設置しているものになります。どの支援機関を利用できるのか悩んでいる人は、お住まいの自治体の障害福祉を担当する部署・窓口に相談してみてください。
うつ病の人が利用できる支援機関については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
うつ病による休職を経験した筆者の体験談
この章では、うつ病による休職を経験した筆者の体験談を紹介します。
私の場合、繁忙期を耐え抜いた後の「燃え尽き症候群」がきっかけとなり、うつ病になりました。
繁忙期の末期になって気を緩めた途端に、どっと疲れが出て、ベッドから起き上がれなくなったのです。
それまでも「出勤がつらい」と思うことはあったものの、「これくらいは他の人でもある」と思っていました。
しかし、繁忙期が終わって張り詰めた糸が切れたことで、本格的に抑うつ症状が現れるようになったのです。
ひとまず休みを取って、メンタルクリニックに通ったところ、うつ病の診断が下りました。
とはいえ、すぐに休職の診断書が出るわけではなかったため、数日は休暇を挟みながら出勤を続けました。
この段階で、同僚は私の様子がおかしいことに気づいていたようです。
まもなく診断書が下りたため、上司と面談をしましたが、そのときに「休職を取った方がよいのではないかと思っていた」と言われました。
それからは、人事部の担当者と面談をして、休職に入りました。
休職の初期は、日中もベッドに横たわって、眠っていることが多かったです。
その後は、「生活リズムを整えること」と「体力を維持すること」の2点を念頭に置きつつ、自分のやりたいことをしていました。
回復してきたとはいえ、職場復帰への恐れをなかなか拭うことはできず、私の場合は何度も主治医や上司、人事担当者との面談を重ねて、休職期間が長引きました。
しかし、最終的には現職に留まることを選択しました。
「当時の勤め先が、基本的には、自分の性格に合致していると感じていたこと」「業務内容が合わないだけで、異動の提案もすでに受けていたこと」が、現職に留まった理由です。
その後は、自分に合ったリラックスの仕方や仕事術を実践し、気持ちよく働くことができました。
現在は、当時のうつ病とは全く別の理由で転職し、次のステップへとキャリアを進めています。
うつ病で休職中の部下がいるときの対応4点
この章では視点を変えて、うつ病で休職中の部下がいる人に向けて、対応について解説します。(参考:中村美奈子『復職支援ハンドブック―休職を成長につなげよう』、亀田高志『改訂版 人事担当者のためのメンタルヘルス復職支援』)
うつ病で休職中の人の中には、自分がまだ職場復帰できる状態にないのに、焦りから「復帰できる」と思っている場合があります。
そのようなときに、部下の調子を適切に判断し、フォローアップができるかどうかで、その後の職場定着が大きく変わってくるのです。
「今後復職したらどのような対応をされるのか」と不安に思っている休職中の方も、併せてお読みいただければ幸いです。
対応①休職者の不安を理解する
まずは「休職者の不安を理解する」ことから始めましょう。
主に、以下の点を確認してください。
- 復帰する際に不安なことは何か
- どの業務がつらかったのか
- 業務量に問題はなかったか
- 人間関係に問題はなかったか
特に、業務内容と業務量については、念入りに聴くようにしましょう。
休職後しばらくは「いつになったら復職できそうか」という質問をすることは望ましくありません。
休職者に焦りや罪悪感を生じさせる可能性があります。
休職者の状況を理解するとともに、その不安を軽減することに努めましょう。
対応②就業規程をわかりやすく説明する
「就業規程をわかりやすく説明する」というのも大切な対応です。
基本的に就業規程は公開されているものの、規程に関わらない部門の人は、読み込んでいないことがほとんどです。
上司や人事からの説明を要する場合が多いため、内容をわかりやすく説明する技術が求められます。
休職者へ説明をする際は、人事部門内で当たり前に使っている用語、基本事項を、休職者はほとんど知らないということを想定しましょう。
そして、休職者が内容を理解しているか、説明をしている途中でも、都度確認をしましょう。
休職者の年次によっては、新卒や中途採用の人向けに解説するつもりで接した方がいい場合もあります。
なお、休職した側の意見になりますが、「もし休職可能な期間を過ぎた後は、どうすればよいか」など、規程の説明が丁寧だと、「頑張って復帰しよう」という気持ちになります。
私の場合は、休職したときの年齢がまだ若かったこともあり、上司が経済的な面まで相談に乗ってくれるなど、親身になって接してくれました。
このときに、いい加減に扱われていたら、「この企業は人を使い捨てにするかもしれない」「復職してもフォローがないかもしれない」と、離職につながっていたかもしれません。
当然、補充要員の採用にかかる手間や研修費用を考えれば、離職は避けるべきかと思います。
誠実さが休職者へ伝わるように、規程の説明はきちんとするようにしましょう。
対応③復職可能な状態かを見極める
これは休職してある程度の期間が経ってからの対応になりますが、「復職可能な状態かを見極める」ことが特に重要です。復職に際しては産業医が以下のようなことを復職面談として確認してくれる会社も多いでしょう。
上司が面談を行う際は、必要に応じて以下のような質問をしてみましょう。
- 復職に関して医師はどう言っているか
- 生活リズムは安定してきているか
- 日中はどう過ごしているか
- 症状はどの程度緩和されているか
- 支援者やご家族も復帰に前向きか
ただし、日中の過ごし方などを深掘りすることは、プライベートな内容を追及することにもなるため、注意してください。
また、質問をする際には、できるだけ緊張感を和らげるように意識して話しかけてください。
職場復帰をすると、人とコミュニケーションをする機会が増えます。
面談がコミュニケーション感覚を取りもどすためのリハビリになることもありますので、無理のない範囲で対話を行い、休職者の様子を伺ってみてください。
対応④異動や短時間勤務を提案する
4番目は「短時間勤務や配置転換を提案する」です。
休職中の人の中には、ご自身の口から短時間勤務や異動の話を切り出せる人もいますが、申し訳なくてうまく希望できないという人もいます。
そのため、明らかに勤務環境がマッチしていないような場合や、人間関係上の問題が強かったような場合には、職場側から提案するというのもひとつの手段です。
適応障害などは、環境が改善するだけで格段にパフォーマンスが上がる場合もあります。(参考:厚生労働省「適応障害」)
もちろん、異動という話になれば、受け入れ先などの調整が必要になります。
しかし、短時間勤務や異動は、離職を防ぐ意味でも効果的ですので、職場側からの提案も考慮に入れるとよいでしょう。
うつ病とは?
まとめ:確認事項をチェックして休職に専念しましょう
うつ病で休職する際の確認事項から、手続き、人事の対応までを詳しく解説してきましたが、役に立ちそうな情報はありましたか?
大切なのは、あなたひとりの自己判断で決めるのではなく、周囲の人や専門家を適切に頼ることです。
うつ病だと人と接するのもつらいかもしれませんが、ここで人に頼ることを覚えると、その後の回復状況も変わってくるかと思います。
ぜひ一人で抱え込まずに、周囲の人に相談してみてください。
このコラムがうつ病による休職で悩んでいる方の助けになれば幸いです。
休職とはどのようなものなのでしょうか?
休職とは、雇用契約を維持したまま労働を免除、または停止させる措置のことです。
詳細については、こちらで解説しています。
休職するときに確認しておくべきことはありますか?
以下が考えられます。
- 専門医に相談する
- 就労支援機関に相談する
- 就業規程の休職制度を確認する
- 貯金などの経済面を確認する
- 家族に連絡・相談する
- 労災の申請が可能かを考える
- 職場との連絡手段や頻度を考える
詳細については、こちらで解説しています。
監修志村哲祥
しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。
臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。
【著書など(一部)】
『子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数
日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
監修角南百合子
すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→