うつ病で休職する人が傷病手当金を受給する方法 受給条件や申請方法を解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
うつ病で休職する場合、まず不安になるのが、生活費や治療費などのお金のことでしょう。
うつ病で休職する人には、傷病手当金の利用をオススメします。
このコラムでは、うつ病で休職した人、休職を検討している人に向けて、うつ病で休職する人が傷病手当金を受給する方法や傷病手当金の概要などについて解説します。あわせて、うつ病のある人が傷病手当金以外に利用できる支援制度を紹介します。
傷病手当金などの支援制度を利用することは、決して恥ずかしいことではありません。
支援制度を利用しつつ、しっかり休養・治療することが、うつ病からの回復、その後の就労には欠かせません。
このコラムを参考に傷病手当金などの支援制度について知っていただけると幸いです。
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目次
うつ病で休職する人が傷病手当金を受給する方法
この章では、うつ病で休職する人が傷病手当金を受給する方法について解説します。(参考:厚生労働省「第7回 こころの病で再休職した場合、傷病手当金を再度支給できる仕組みはあるの?」)
前提:医師や支援機関などに相談しましょう
傷病手当金の仕組みには、複雑な部分があります。うつ病のあるあなたひとりで傷病手当金を申請するのは難しい部分もあると思います。
かかりつけの医師や専門家、支援機関に相談することで、あなたに必要なサポートが得られるでしょう。
ほかにも、相談できる支援機関はあります。例えば、以下のような相談先があるので、ぜひ利用してみてください。
- お住まいの自治体の担当する部署・窓口
- ご自身が加入している健康保険の窓口
- 社会保険労務士
- 職場の担当する部署・窓口
うつ病を原因に新規で申請・受給する場合
うつ病を原因に新規で傷病手当金を申請・受給する場合、受給条件を満たしていれば、申請・受給は可能です。
なお、通算扱いとなるは、2020年7月2日以降に支給開始以降が対象です。
最初の受給から、就労再開期間を除いて1年6か月以内の場合
最初の受給から、就労再開期間を除いて通算1年6か月以内の場合、最初に受給する原因となった同一のうつ病を理由とする申請・受給は可能です。
最初の受給から、就労再開期間を除いて1年6か月を過ぎていた場合
最初の受給から、就労再開期間を除いて通算1年6か月を過ぎている場合、最初に受給する原因となった同一のうつ病を理由とする申請・受給はできません。
最初に受給する原因となったうつ病が完治した後、うつ病を再発した場合または別の病気・ケガ・障害がある場合
最初に受給する原因となった同一のうつ病が完治した後、うつ病を再発した場合または別の病気・ケガ・障害がある場合、再発したうつ病や別の病気・ケガ・障害を理由とする申請・受給は可能です。
ここで言う完治とは、通常の社会生活に復帰した「社会的な完治」を意味します。以下の場合は、社会的な完治とは認められません。
- 本人が完治したと主観的に感じているだけの状態
- 医師が完治したと診断しただけで、まだ社会生活に復帰していない状態
社会的に完治した後にうつ病を再発した場合、または別の病気・ケガ・障害がある場合、新規に受給することができます。その場合の最長の受給期間は、再び1年6か月になります。
傷病手当金とは?
傷病手当金とは、病気やケガ、障害のために仕事を休み、事業主から十分な報酬を受けられない場合に、健康保険(社会保険)の加入者・被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた支援制度のことです。(参考:全国健康保険協会「傷病手当金」、全国健康保険協会「傷病手当金について」)
申請は、加入している全国健康保険協会や各健康保険組合、各共済組合で行えます。気になる人は、加入している健康保険の協会・組合にご相談ください。
傷病手当金の受給条件は、以下のとおりです。
- 健康保険(社会保険)の加入者・被保険者
- 業務外の病気やケガ、障害による療養での休業
- 就労できない状態を医師に認定されている
- 3日間連続での休業を含めて4日以上就労できない状態
- 休業期間に給与の支払いがない
申請する流れは、以下のとおりです。
- 医療機関を受診し、医師の診断書を取得する
- 職場に病気やケガで休職することを報告する
- 待機期間の3日間を過ごす
- 必要書類を用意する
- 書類を提出して職場に手続きしてもらう
傷病手当金については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
うつ病のある人が傷病手当金以外に利用できる支援制度
うつ病のある人が利用できる支援制度は、傷病手当金だけではありません。
支援制度は他にもたくさんあります。ご安心ください。
この章では、うつ病のある人が傷病手当金以外に利用できる支援制度を紹介します。
実際のあなたが利用できるかについては、専門家や支援機関などに相談してみましょう。
傷病手当金を含めて、支援支援を利用することは、決して恥ずかしいことではありません。
各支援制度を利用しつつ、経済的に安心して、うつ病の治療・休養に専念することで、「次の一歩」にも進みやすくなります。
うつ病のある人が利用できる支援制度については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
補足①:傷病手当金と失業保険(失業手当、雇用保険給付)は併用できない
傷病手当金は退職前・在職中に就労できない状態の場合に利用できる支援制度です。対して、失業保険(失業手当、雇用保険給付)は、退職後に就労できる状態の場合に利用できる支援制度です。
そのため、傷病手当金と失業保険(失業手当、雇用保険給付)は、同時期に併用できません。
ただし、時期に応じて切り替えて受給することは可能です。
具体的に気になる場合は、以下のような流れができそうか、ハローワークや加入している健康保険の協会・組合、支援機関などに確認してみましょう。
- 在職中に、傷病手当金を申請・受給して治療
- 退職して働けないうちは、傷病手当金の受給を継続
- 働ける状態になったら、失業保険(失業手当、雇用保険給付)を申請・受給
補足②:傷病手当金と障害年金は併用できる
障害年金は、求職しながらでも働きながらでも受給できます。
年金という名前ではありますが、高齢者だけではなく、20歳以上の人なら受給できます。また、病気やケガが治るまでは、生涯にわたって受給可能です。
傷病手当金と障害年金には、以下のような違いがあります。
- 障害年金は、心身の状態が「障害の基準」に該当している間はずっと受給できる
- 傷病手当金は、就労を再開したら受給が停止される。また、同一の理由による受給は最長で1年6か月
- 障害年金は、国民健康保険の加入者も受給できる
- 傷病手当金は、国民健康保険の加入者は受給できない
- 障害年金は、その理由となる病気・ケガ・障害の初診日から1年6か月後から申請できる
- 傷病手当金は、連続する3日間を含む、就労できず休んでいる4日目から申請できる
同一のうつ病を理由に傷病手当金と障害年金の両方を申請する場合、傷病手当金の受給金額の方が大きければ、障害年金との差額を受給できます。
障害年金の受給金額の方が大きい場合は、傷病手当金の受給はできません。(参考:協会けんぽ「障害年金との調整」)
なお、差額の調整を行わずに傷病手当金と障害年金を同時に受給していた場合は、調整の上、傷病手当金を返還する必要があります。
その代わり、うつ病と認定された日からの分、障害年金が支給されます。両方の申請・受給をするときは、両方の申請先に必ず確認しておきましょう。
ただし、現実的には、それぞれの申請・受給の時期が異なるため、結果として調整前に両方の満額を受け取り、事後的・事務的に返還手続きを行うことはあるようです。
うつ病とは?
うつ病とは、気分の落ち込みや憂うつ感、さまざまな意欲の低下などの精神的症状と、不眠、食欲の低下、疲労感などの身体的症状が一定期間持続することで、日常生活に大きな支障が生じる精神障害・気分障害のことです。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、厚生労働省「1 うつ病とは:」、厚生労働省「うつ病に関してまとめたページ」、、厚生労働省「うつ病」、国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所「うつ病」、株式会社メディカルノート「うつ病について」、MSDマニュアルプロフェッショナル版「抑うつ症候群」)
また、脳の機能が低下している状態、脳のエネルギーが欠乏した状態を指し、脳の中で神経細胞間のさまざまな情報の伝達を担うセロトニン、ノルアドレナリン、ドパミンなどの神経伝達物質のバランスの乱れや、感情や意欲を司る脳の働きに何らかの不調が生じているものと考えられています。
うつ病の概要や症状、治療方法などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
まとめ:公的なサポートを受けることは決して恥ずかしいことではありません
うつ病で休職した人、休職を検討している人は、条件に当てはまれば傷病手当金を受給できます。
また、傷病手当金以外にもうつ病のある人も利用できる支援制度はたくさんあります。
傷病手当金の利用は、決して恥ずかしいことではありません。支援制度を利用して、治療・休養に専念することが何よりも大切です。
医師や専門家、支援機関などと相談しながら、あなたに合う支援制度を探しましょう。
各支援制度を利用しながら治療も続けることで、うつ病の寛解や、就職や転職などの「次の一歩」も近づいてくるはずです。
傷病手当金とはどのような制度ですが?
傷病手当金とは、病気やケガ、障害のために仕事を休み、事業主から十分な報酬を受けられない場合に、健康保険(社会保険)の加入者・被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた支援制度のことです。
詳細については、こちらで解説しています。
うつ病になり傷病手当金を受給したいのですが、どこに相談すればよいですか?
監修志村哲祥
しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。
臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。
【著書など(一部)】
『子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数
日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
監修角南百合子
すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→