ADHDの就職活動 成功のための重要事項5選を徹底解説 | キズキビジネスカレッジ  

ADHDの就職活動 成功のための重要事項5選を徹底解説

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)の寺田です。

あなたは、ADHDのために就職活動がうまくいかないのではないかと不安になっていませんか?

たしかに、就職活動をする上でADHDの特性で困難が生じることがあるかもしれません。

しかし、ADHDの特性を強みとして活かす方法がわかれば、あなたに合った就職先は見つかりやすくなるはずです。

このコラムでは、就職を希望しているADHDの方向けに、ADHDの特徴、アピールポイント、あなたに合った就職先の見つけ方を徹底解説します。

また、就職活動をしていく中で「自分はもしかしてADHDではないのか?」と思い当たった方にも役立つ内容となっていますので、お悩みの方はぜひこの記事をご参照ください。

ADHDでお困りの方をひとりでも減らすことができれば幸いです。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、就職活動中のADHDのある人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

就職活動における、ADHDの特性の長所と短所

就職活動における、ADHDの特性の長所と短所

ADHDの特性でも、特に「就職活動を進めるために考えるべき長所と短所」を紹介します。

特に就職活動の際は、ADHDを単なる「障害」ととらえるのではなく「特性」として受けとめることが大切です。

その上で、「自分はADHDの特性の中がどのように現れているのか(現れやすいのか)」を見極める必要があります。

そうした見極めや就職活動全体については、転職エージェントや就労移行支援事業所など、ADHDに理解のある就労支援機関を積極的に利用することをオススメします。

特徴をそれぞれ長所と短所にわけて理解することができれば、あなたに合った就職先を探すポイントは見えてきますので、順に見ていきましょう。

①ADHDの特性の強み(長所)

①ADHDの特性の強み(長所)

ADHDの人が就職する上で長所になりうる点として以下の5つが挙げられます。(参考:榊原洋一、高山恵子『図解 よくわかる大人のADHD』)

ADHDの長所
  • 独創性に富んでいて発想力がある
  • 好奇心旺盛でチャレンジング
  • 感覚に優れていて周囲の環境に敏感
  • 興味のある分野であれば寝食も忘れて没頭できる
  • 決断力があってスピーディーに物事を判断できる

中でも、ADHDの人の発想力や独創性が大きな強みになるという話は有名です。

発達障害の専門家として著名な福島学院大学大学院教授の星野仁彦先生は、ADHDの人の独創性が「過集中」の傾向とあわさることで優れた成果をあげられると指摘しています。

「過集中」とは、自分の興味、関心の有無によって集中力と意欲が一気に高まる、ADHDに典型的な特徴の一つです。(参考:星野仁彦『発達障害に気づかない大人たち』)

ADHDの人の好奇心や独創性は、長所にも短所にもなる症状です。

過集中傾向と併せてプラス方向に活用できれば、自分の才能や能力にあった職種で生き生きと仕事をすることができ、結果的に素晴らしい業績を残せる可能性があります。

②ADHDの人の短所

②ADHDの人の短所

反対に、ADHDの人の短所にはどのようなものがあるのでしょうか?

ADHDの人の短所として以下の5つが挙げられます。(参考:日本精神神経学会『今村明先生に「ADHD」を訊く』)

ADHDの短所
  • 書類の記入漏れなどのミスをしやすい
  • 仕事の優先順位をつけるのが苦手で先延ばししがち
  • マルチタスクをしようとすると業務効率が落ちる
  • 机のうえを散らかしがちで、書類や物を失くす
  • 深く吟味せずに応答したり行動する

こうした特徴をカバーするための工夫は、サポート団体などと一緒に考えていくことが可能です。

就職先を探す際には、こうした短所の影響が出にくい職種や短所への対策が立てやすい職場を選んでみるのも一つの手です。

補足:ADHDの人に向いている職業・働き方

就労を検討する際には、ADHDの人に向いている職業・働き方かどうかを考えることも大切です。

ADHDの特性を活かすことができ、また「自由度の高い」働き方がオススメです。

詳細は、下記コラムに書いています。気になる方はご一読ください。

ADHDの人が実際の就職活動で困ること4選とその解決策

ADHDの人が就職活動で困るのは具体的にどのような点なのでしょうか?

今回は、次の4つを取り上げていきます。

改善に向けての取り組みも紹介しますので、悩んでいる方は、ご自身のADHDの傾向と照らしあわせながら確認してみてください。

①スケジュール管理がうまくできない

①スケジュール管理がうまくできない

ADHDの人の悩みとして、「スケジュール管理がうまくできない」というのは筆頭に挙げられるものです。

就職活動においては、複数企業のエントリーシートの締切や面接の日程を管理しなければなりません。

しかしADHDの人はこうした日程調整が苦手な傾向にあるため、ダブルブッキングして困ることが往々にしてあります。

スケジュール管理がうまくなりたいという人は、まず「スマホのスケジュール帳やメモ帳を利用する習慣」をつくりましょう。スマホの方が、紙の手帳よりもなくしにくいです。

なお、スケジュール管理については、「メモを取ることそのもの」よりも、「どんな内容をメモするか」「メモの取り方をどうするか」の方が重要です。

次のように、具体的なメモの書き方を身につけられるよいでしょう。

  • 予定が入ったら、すぐにスケジュール帳(メモ帳)に書き込む
  • 面接時間、面接場所を記入する
  • (アプリの場合、仕様で可能なら、)就活日程は、文字の色を変えたり目立たせたりしてカレンダーに記入する
  • (アプリの場合、仕様で可能なら、)重要な予定の枠を目立たせる

その上で、日程調整の場面では記録内容を必ず見ながら話すようにすると、スケジューリングの失敗を防げます。

なお、電話で話しながらスケジュールを調整する場面もあると思います。通話と同時に別のアプリを開く練習や、紙とペンの用意をしましょう。後者の場合、通話中には紙に書いて、通話が終わったらすぐにスマホに転記します。

「メモを取ること」は、慎重で信頼できる人だという好印象を与えることもできます。次項で紹介する「スマホアプリ」と組み合わせてみるのも一つの手です。

②時間に間に合わない(遅刻が多い)

「約束の時間に間に合わない(遅刻が多い)」というのもADHDの人が直面しやすい課題です。

当日の予定確認や目的地に到達するまでにかかる時間の見積もりが甘かったり、出かけるときにいろいろなことが気になって出発の時間が遅れたりするというケースが多いと言われています。

電車遅延や渋滞などが理由で時間に間に合わないということは、誰しも日常的に起こることです。

しかし、遅刻の頻度が「あまりに多い」のがADHDの人の特徴です。

遅刻しそうなときは、担当の人に連絡をして素直に謝るようにしましょう。

また、スマートフォンのカレンダーの「アラーム」や「リマインダーアプリ」の活用もオススメです。

大切な約束や面接があるときには、スマートフォンのカレンダーなどにアラーム付きで設定をしておきましょう。

このとき、予定そのものの時間ではなく、家を出るべき時間も設定したり、さらには一緒に確認事項や、目的地までの交通経路をスクリーンショットなども付記したりしておくと効果的です。

「時間に間に合わない」というケースに限らず、ADHDの人は短所をカバーするために、ツールや周囲の人を頼るという意識を持つと就職活動も順調に進みやすいです。

③忘れ物や見落としが多い

③忘れ物や見落としが多い

ADHDの人が就職活動で困ることの3点目は、「忘れ物や見落としが多い」です。

提出すべき書類を忘れたり、締め切りを見落としたりすることは誰にでもあることですが、ADHDの人は特性の影響でそういった機会が特に生じやすくなります。

就職活動では些細なミスが原因で採用プロセスから外れることもありますので、入念な対策が必要です。

そこで取り入れていただきたいのが、「玄関のドアにその日の持ち物や予定をメモして貼っておく」という方法です。

絶対に忘れてはならないような物や面接があるときには、確認のためにも紙に書きだしてみてください。

そして外出する際に、必ず目につくような場所にリマインダーを貼っておくようにしましょう。

ご家族と同居している人であれば、「予定や持ち物を前もって伝えておいて当日一声かけてもらう」というのも不注意防止策として効果があります。

④面接やディスカッションが上達しない

「面接やディスカッションが上達しない」という悩みも、よく挙げられるものです。

原因としては、面接中にそわそわして落ちつきがないことや人の話を最後まで聞かないこと、吟味せずに意見を述べてしまうことが考えられます。

これでは悪印象を与えるだけでなく、協調性のない人と判断されかねません。

そこでオススメしたいのが、「話すときに年配の方に向かって話していることを想定する」、「一呼吸置いてから返事をする」というものです。

面接の場では、緊張もあいまって話すスピードが速くなりがちです。

ディスカッション時に、すぐに意見を述べて積極性をアピールしようと気負ってしまうこともは仕方のないことです。

そんなときに、相手がご高齢の方だったらという想定で話すことで、間を置いてゆっくり返事ができるようになります。

ゆっくり話すことで余裕が出てくれば、考えもまとめやすくなるのでオススメです。

実際にご家族におじいさまやおばあさまがいる方は、面接の練習だと思って話す機会を増やしてみるとよい訓練になります。

ぜひ一度試してみてください。

ADHDの人が就職先を探すときのチェックポイント5点

ADHDの人が就職先を探すときのチェックポイント5点

ADHDの人が就職活動をする際にチェックすべきポイントは様々ですが、ここでは次の5つに厳選して解説します。

人によって優先順位は変わりますが、どのポイントも重要ですので、必ず確認するようにしましょう。

ポイント①ADHDであることを開示するかどうか

ADHDの人がまず確認すべきことは、「相手先にADHDであることを開示するかどうか」です。

これは障害を周囲に知らせて働く「オープン就労」にするか、知らせずに働く「クローズ就労」にするかという違いです。

さらに言えば、障害者枠と一般枠のどちらで就職するか、という選択にも関わってきます。

どちらの雇用枠を選ぶかによって、採用プロセスや就職後の働き方が大きく変わってくきますので、これから紹介するメリットと注意点を吟味して判断しましょう。

その上で、転職エージェントや就労支援施設などの第三者を利用する・相談することが重要です。

ADHDと診断されれば、国の定める法律に基づいて設置された就労移行支援事業所などから、障害に理解のある職場探しの手伝いをしてもらうことができます。

■オープン就労のメリットと注意点■

まず、オープン就労(障害者枠)で就職するメリットはおおまかに次の2つです。

  • 業務内容や配属部署に配慮がある
  • 支援機関の援助を受けられる

共通して、「自分の特徴に合った働き方」に役立ちます。

先に解説したとおり、ADHDの人は長所と短所がはっきりしています。

そのため、業務内容や配属部署によっては活躍しづらい場合があるのは事実です。

支援機関と職場とあなたで長所と短所を理解していくことで、苦手な業務の担当にならないだけではなく、逆にあなたの長所を活かせる配属となる可能性も高くなります。

一方、オープン就労(障害者枠)の注意点として以下のものが挙げられます。

  • 就職先の選択肢が少ない
  • 与水準が比較的低い

上記はあくまでも一般枠との比較になりますが、選択肢や所得の点で難があることは事実です。

とはいえ、一般枠と同等の給与や社会保障を得られる就職先もあるため、条件次第では注意点を解消できるでしょう。

オープン就労の詳細は、下記コラムをご覧ください。

■クローズ就労のメリットと注意点■

それでは、ADHDであることを開示しないクローズ就労(一般枠)のメリットとは何でしょうか?主には以下の3つです

  • 業種や職種の選択肢が増える
  • 求人数が多い
  • 給与水準が比較的高い

基本的には、オープン就労(障害者枠)の裏返しになります。

考えなければいけない点は以下に挙げる注意点の方です。

  • 業務内容や配属部署の配慮が受けづらい
  • 障害を隠さねばならないというストレスがある

ADHDの合併症として、二次障害と呼ばれるものがあります。

ADHDの人は、身近な人から叱責されたり拒絶されるといった体験を繰り返しがちなため、そうした経験がうつ病や全般性不安障害の原因になりうるということはよく知られています。(参照:田中康雄『大人のAD/HD』)

特徴に対する配慮がなかったり、ストレスを感じたりすることは、叱責や拒絶につながります。

また、ADHDの特徴はうつ病の初期症状とも似ている場合があり、自他ともに「どういう状態なのか」「どう対応したらよいのか」がわかりづらい状況にもなりえます。詳しくは下記コラムをご覧ください。

その他、クローズ就労の詳細は下記コラムをご覧ください。

メリットと注意点を天秤に掛けて、何を優先するかをじっくり考えた上で、オープン就労(障害者枠)とクローズ就労(一般枠)どちらを選ぶかを判断してください。

ポイント②障害に理解のある職場かどうか

ポイント②障害に理解のある職場かどうか

ポイントの2点目は、就職先が「障害に理解のある職場かどうか」です。

2018年に障害者雇用促進法が改正されたことで、それまでは2.0%だった障害者の法定雇用率が2.2%に引き上げられるなど、障害を持つ労働者への取組が重視されるようになりました。

それに伴い、コンプライアンスの一環として障害者への配慮を前面に押しだす職場が増えてきています。

障害に理解のある職場かどうかを見分けるポイントは、以下の2つです。

  • 研修制度が充実しているかどうか
  • 福利厚生制度が整備されているかどうか

労働者への健康意識が高い職場ほど、メンタルヘルス対策などの精神面に配慮した研修制度を多く実施しています。

こういった職場は、管理職向けに精神不安や障害を抱える従業員への配慮について、定期的に研修を行っている可能性が高いです。

また、福利厚生に力を入れているというのも従業員への配慮の表れとみられます。

休職制度などの福利厚生面で曖昧な説明しかされない職場の場合は、障害者への理解や心身の健康に関心が薄いと考えてよいかもしれません。

就職を検討しているADHDの方は、障害に理解のある職場かどうかを判断基準のひとつにしましょう。

ポイント③就労形態にゆとりがあるかどうか

3つ目のポイントは、「就労形態にゆとりがあるかどうか」です。

先述したように、ADHDの人は時間どおりに行動することが苦手です。

始業と終業の時間が明確に定められている就職先を選ぶと、フラストレーションがたまってストレスになりやすいのです。

しかし、職場によってはゆとりのある就労形態を取り入れている場合があります。

フレックス制や裁量労働制などの勤務形態を採用していれば、ADHDの人でも無理なく働くことができます。

全体的にはそういった仕組みがなくても、個別の事情に応じて一時的に勤務時間の切り替えなどが可能かどうかということも確認しておくとよいでしょう。

ポイント④自由な社風かどうか

ポイント④自由な社風かどうか

「自由な社風かどうか」も就職先を選ぶ際には重要なポイントです。

一般的に、金融系などの手堅い業界などでは厳格な社風の企業があります。

「厳格な社風」だからといって「よい」「悪い」というものはありませんが、ADHDの人はある程度のゆとりや自由を必要とします。

そういった堅い企業よりも、行動力や発想力を活かす余地のある自由な社風の方が適していると考えられます。

自由な社風かどうかは、ウェブサイトや採用パンフレットだけでなく、実際に働いている社員の服装や髪型といった外的な要素からも判断できるでしょう。

就職先として検討している企業・団体などがある場合は、自由な気風が感じられるか様子見してみることをオススメします。

ポイント⑤周りに協力者がいるかどうか

ポイント⑤周りに協力者がいるかどうか

最後に確認しておきたいポイントは、あなたの就職に関わる様々な事柄について、協力してるくれる人がいるかどうかです。

ADHDの人が自分の特徴を理解する上では、第三者の意見が重要になってきます。

ご自身では当たり前のことに思われても、それが症状のひとつであるという可能性もあるのです。

そのため就職活動をする際には、専門の医療機関だけでなく、先述した就労移行支援事業所や転職エージェントの助けも検討するとよいでしょう。

ADHDに関する専門的な知見を得られるだけでなく、エントリーシートの書き方、面接の受け方、就職を有利に進めるための職業訓練プログラムやメンタル面での相談に乗ってもらえます。

また、自分に向いた就職先を探してもらうことも可能です。

診断書が出ていれば、国の定める法律に基づいて無料で支援を受けられる場合もありますので、就職活動を進める際にはぜひ活用してみてください。

改めて、ADHDとは?

改めて、ADHDとは?

改めて、ADHDの概要を紹介します。既にご存知かもしれませんし、これまでに紹介した内容と重複する部分もありますが、全体的な理解が深まると思いますので、よければご覧ください。
(参考:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、田中康雄『大人のAD/HD』、岩波明『大人のADHD:もっとも身近な発達障害』)

①ADHDの概要

①ADHDの概要

ADHDとは、「注意欠如・多動性障害(Attention-Deficit Hyperactivity Disorder)」を意味する発達障害の一種です。

ADHDには多くの特性がありますが、その中でも下記の2点がよく見られるものとして挙げられます。

  • 不注意…忘れ物やケアレスミスが多く、確認作業を苦手とする
  • 多動・衝動性…気が散りやすく、貧乏ゆすりなど常に身体を動かしていないと落ちつかない

その他にもよく挙がる特性の現れ方として、「マルチタスクやスケジュール管理が苦手」といったものがあります。

②ADHDの診断は医師だけが可能

②ADHDの診断は医師だけが可能

「自分が(ある人が)発達障害(ADHD)かどうか」の診断は医師による問診や心理士が実施する心理検査を中心に行われます。逆に言うと、医師以外には「発達障害かどうか」の診断・判断はできません。

あなたが(ある人が)「発達障害かどうか」をハッキリさせたいのであれば病院を受診してみることをオススメします。

「診断を受けるのが不安」と思う人は、発達障害者のサポートを行う団体(各都道府県にある発達障害者支援センターなど)に「病院に行くべきかどうか」「診断をつけるメリットやデメリット」などを相談することができます。

③ADHDの医学的な診断基準

下記は、2013年にアメリカ精神医学会がまとめた『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』に挙げられているADHDの診断基準です。

次のような診断基準に当てはまればADHDの可能性があります(あくまで可能性です。「どの程度なら『当てはまる』と言えるか、他の病気や障害の可能性はないかなども含めて、「ある人がADHDかどうか」は、医師だけが判断できます)。

不注意
  • (a)学業、仕事、または他の活動中に、しばしば綿密に注意することができない、または不注意な間違いをする
    (例:細部を見過ごしたり、見逃してしまう、作業が不正確である)
  • (b)課題または遊びの活動中に、しばしば注意を持続することが困難である
    (例:講義、会話、または長時間の読書に集中し続けることが難しい)
  • (c)直接話しかけられたときに、しばしば聞いていないように見える
    (例:明らかな注意を逸らすものがない状況でさえ、心がどこか他所にあるように見える)
  • (d)しばしば指示に従えず、学業、用事、職場での義務をやり遂げることができない
    (例:課題を始めるがすぐに集中できなくなる、また容易に脱線する)
  • (e)課題や活動を順序立てることがしばしば困難である
    (例:一連の課題を遂行することが難しい、資料や持ち物を整理しておくことが難しい、作業が乱雑でまとまりない、時間の管理が苦手、締め切りを守れない)
  • (f)精神的努力の持続を要する課題(例:学業や宿題、成人では報告書の作成、書類に漏れなく記入すること、長い文書を見直すこと)に従事することをしばしば避ける、嫌う、またはいやいや行う
  • (g)課題や活動に使うようなもの(例:学校教材、鉛筆、本、道具、財布、鍵、書類、眼鏡、携帯電話)をしばしばなくしてしまう
  • (h)しばしば外的な刺激(成年後期および成人では無関係な考えも含まれる)によってすぐ気が散ってしまう
  • (i)しばしば日々の活動(例:用事を足すこと、お使いをすること、青年後期および成人では、電話を折り返しかけること、お金の支払い、会合の約束を守ること)で忘れっぽい

上記の項目のうち、6つ以上の項目が少なくとも6か月以上続いている
症状のいくつかが2つ以上の環境(職場・家庭・学校など)で見られる
12歳以前から複数の症状が見られる。

多動性および衝動性
  • (a)しばしば手足をそわそわ動かしたりトントン叩いたりする、またはいすの上でもじもじする
  • (b)席についていることが求められる場面でしばしば席を離れる
    (例:教室、職場、その他の作業場所で、またはそこにとどまることを要求される他の場面で、自分の場所を離れる)
  • (c)不適切な状況でしばしば走り回ったり高い所へ登ったりする
    (注:成人では、落ち着かない感じのみに限られるかもしれない)
  • (d)静かに遊んだり余暇活動につくことがしばしばできない
  • (e)しばしば”じっとしていない”、またはまるで”エンジンで動かされているように”行動する
    (例:レストランや会議に長時間留まることができないかまたは不快に感じる;他の人には、落ち着かないとか、一緒にいることが困難と感じられるかもしれない)
  • (f)しばしばしゃべりすぎる
  • (g)しばしば質問が終わる前に出し抜いて答え始めてしまう
    (例:他の人達の言葉の続きを言ってしまう;会話で自分の番を待つことが困難である)
  • (h)しばしば自分の順番を待つことが困難である
    (例:列に並んでいるとき)
  • (i)しばしば他人を妨害し、邪魔する
    (例:会話、ゲーム、または活動に干渉する;相手に聞かずにまたは許可を得ずに他人の物を使い始めるかもしれない;青年または成人では、他人のしていることに口出ししたり、横取りすることがあるかもしれない)

上記の項目のうち、6つ以上の項目が少なくとも6か月以上続いている
症状のいくつかが2つ以上の環境(職場・家庭・学校など)で見られる
12歳以前から複数の症状が見られる。

④ADHDの「治療」について

ADHDの特性に働きかける薬や対応などの治療は確立されてきています。

その例は下記コラムをご覧ください。

⑤ADHDは、生まれつきのもの

⑤ADHDは、生まれつきのもの

ADHD(発達障害)は、生まれつきのものです。ADHDの特徴は幼少期から見られます。

そのため「成長してからADHDになる(成長につれてADHDになる)」ということはありません。

また、以前は「ADHDは、子ども特有のもの」と考えられていましたが、現在の医学では、「ADHDの症状は、大人になっても継続するもの」であるとされています(ただし、多動・衝動性の特性は、一般的に成長するうちに薄れることも多く見られます)。

このコラムでもご紹介してきたとおり、対策、相談先、特性を緩和する薬などもたくさんあります。苦労や困難が生じることもあるとは思いますが、必要以上に不安に感じる必要はありません。

⑥いわゆる「大人のADHD」とは

近年、「大人のADHD」という言葉が使われるようになってきました。

大人のADHDとは?
  • 幼少期からADHDの特性は持っていたものの、「大人になってからADHDだと気づいた状態」を指す俗語のことです。決して「大人になってからADHDになった」わけではありません。
    就職後に正確な処理・確認作業・管理業務を求められるようになったことで、困難に直面しADHDの特性があることに気付いたという人は少なくありません。

「大人のADHD」について詳しく知りたい人は下記コラムをご覧ください。

⑦いわゆる「グレーゾーン」とは

⑦いわゆる「グレーゾーン」とは

ADHDの傾向が確認されるものの、確定診断が下りるほどではないほどの状態・人のことを俗に「(ADHDの)グレーゾーン」と言います。

グレーゾーンの場合、確定診断がないことから利用できる公的なサービスが限定されることがあります(例:障害者手帳を取得できないため障害者手帳が必須なサービスを利用できない)。

ただし、グレーゾーンの人でも「発達障害者支援センター」のようなサポート団体への相談は可能です。

確定診断があってもなくても、またADHDに関係してもしなくても「発達障害に関する悩み事」は専門的な知識を持つ人たちに相談した人が対策や解決策を見つけやすくなるでしょう。

⑧ADHD以外の発達障害

発達障害はその特徴によって、いくつかのグループに分けられています。

ADHD以外の主な発達障害には、ASD(自閉症スペクトラム障害)、SLD(限局性学習障害)などがあります。

ADHD・ASD・SLDの複数が併存する人もいます。気になる人は下記コラムをご覧ください。

まとめ:専門機関に相談しながら就職活動を進めましょう

まとめ:専門機関に相談しながら就職活動を進めましょう

ADHDの特徴から就職を有利に進めるためのチェックポイントまで解説してきましたが、ご自身の就職活動に役立てられそうな情報はあったでしょうか?

何よりも大切なのは、自身の特性を理解するとともに、周囲の力を頼ることです。

ADHDの方が就職する際には考慮すべき項目がたくさんあります。

このコラムで挙げたのはその一例にすぎません。

症状の程度や状況によっては、より入念な準備が必要になるでしょう。

そうした人の就労を助けるために、国が設置している支援機関や転職エージェントなどのサービスがあるのです。

ぜひ先述した就労移行支援事業など、利用可能なものをうまく活用し、専門家に相談しながら就職活動を進めていってください。

本記事がADHDの方の就職の手助けになれば幸いです。

よくある質問(1)

ADHDの特性には、メリット・長所となりうるところはありますか?

一般論として、次の5点が考えられます。(1)独創性に富んでいて発想力がある、(2)好奇心旺盛でチャレンジング、(3)感覚に優れていて周囲の環境に敏感、(4)興味のある分野であれば寝食も忘れて没頭できる、(5)決断力があってスピーディーに物事を判断できる。詳細はこちらをご覧ください

よくある質問(2)

ADHDの人が就職活動で困りがちなことはありますか?

例としては、「スケジュール管理がうまくできない」「時間に間に合わない(遅刻が多い)」「忘れ物や見落としが多い」「面接やディスカッションが上達しない」があります。解決策も含め、詳細はこちらをご覧ください。

監修志村哲祥

しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。 臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。

【著書など(一部)】
子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数

日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

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翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

監修角南百合子

すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい

執筆寺田淳平

てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→

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