アスペルガー症候群のある大人が抱えやすい困難 仕事を続けるコツを解説 | キズキビジネスカレッジ  

アスペルガー症候群のある大人が抱えやすい困難 仕事を続けるコツを解説

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。

近年、大人のアスペルガーという言葉が注目を集めています。

以前はアスペルガー症候群(現:ASD)のような発達障害は、子どものものというイメージが強かったのですが、大人になってから特性を自覚する人が増えてきたことが背景にあると言われています。

あなたも「自分が大人のアスペルガー症候群(現:ASD)ではないか?」「仕事が続かないのは発達障害のせいかもしれない」と思ってはいませんか?

このコラムでは、アスペルガー症候群(現:ASD)のある大人が抱えやすい困難や仕事を続けるコツについて解説します。アスペルガー症候群(現:ASD)の特性にお悩みの人は、ぜひ一度読んでみてください。

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、アスペルガー症候群(現:ASD)のある人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

前提:アスペルガー症候群という診断名・分類について

かつて使用されていたアスペルガー症候群を含む以下の診断名・分類は、ASD(自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)という診断名・分類に統合されています。

  • アスペルガー症候群
  • 自閉症
  • 高機能自閉症
  • 広汎性発達障害(PDD)

それぞれ別の発達障害として、診断基準も異なっていましたが、2013年に行われたアメリカ精神医学会が定めた精神障害の診察基準『DSM』の改訂の際に、厳密に区分するのではなく、地続きの=スペクトラムな障害として捉える現在のASDに変更されました。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』

ただし、アスペルガー症候群という変更前の診断名・分類が、法令や病院、日常会話などで現在も使用されることがあります。また、かつてアスペルガー症候群などと診断された人が、現在のASDという名称を認知していないこともあります。

それらを受けて、このコラムでは、内容的には現行のASDについて解説しつつ、表記としては、アスペルガー症候群(現:ASD)といたします。

アスペルガー症候群(現:ASD)のある大人が抱えやすい困難

アスペルガー症候群(現:ASD)のある大人が抱えやすい困難として、以下が考えられます。

  • 報告・連絡・相談などのコミュニケーションを上手くできない
  • ルール・マナー・暗黙の了解がわからない
  • 自分の体調や状態がわかりづらい
  • 感覚過敏で疲れやすい
  • 予定が急変するとパニックを起こす
  • やるべき仕事がわからない
  • 面接で何をどう話せばいいのかわからない
  • こだわりの強さが周囲に悪影響を与える
  • 仕事が長続きしない

アスペルガー症候群(現:ASD)のある大人が仕事で抱えやすい困難については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

アスペルガー症候群(現:ASD)のある大人が仕事を続けるコツ

アスペルガー症候群(現:ASD)のある大人が仕事を続けるコツとして、以下が考えられます。

  • 雇用枠を再検討する
  • バイトから始めることも検討する
  • 医療機関に相談する
  • 就労支援機関を利用する

アスペルガー症候群(現:ASD)のある大人が仕事を続けるコツについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。

アスペルガー症候群(現:ASD)のある大人が利用できる支援機関3選

公民を問わず、日常生活のケアから就労のサポートまで、アスペルガー症候群(現:ASD)の大人が利用できる支援機関は多々あります。

発達障害者支援センター

代表的な支援機関の一つに、発達障害者支援センターがあります。

発達障害者支援センターでは、発達障害に関係すると思われる困りごとを抱えている人に対し、専門的な立場から助言やアドバイスを行っています。

診断が下りていなくても、発達障害の特性を感じている人であれば相談可能です。アスペルガー症候群(現:ASD)を疑っている人は、一度、問い合わせてみることをオススメします。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターでも、アスペルガー症候群(現:ASD)を含む発達障害など、障害のある人の職業生活における自立をはかるために、地域の関係機関と連携しながらサポートを行っています。

いずれも、基本的にはお住いの市区町村役場が窓口になっておりますので、「どの支援機関が自分に合うのかわからない」という人は、総合窓口でその旨を相談してみてください。

就労移行支援事業所

国の法律に基づいて設置されている「就労移行支援事業所」では、日常生活のケアから仕事に役立つ専門的なスキルの講習まで、最低0円から福祉サービスの提供を受けられます(私たちキズキビジネスカレッジもその一つです)。

障害者手帳を取得していなくても、専門医による診断書があれば支援を受けられますので、ご興味があれば、ご検討中の事業所に相談するのがよいでしょう。

就労移行支援の詳細は、下記参考記事にまとめてありますので、併せてご覧ください。

改めて、大人のアスペルガー(現:ASD)とは?

この章では、「大人のアスペルガー(現:ASD)」について改めて解説します。

既にご存知かもしれませんが、これまでに紹介した内容の理解も深まると思いますので、ご覧ください。(以下参考:『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、宮尾益知『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』、姫野桂『発達障害グレーゾーン』、厚生労働省「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について」)

①ASDの概要

①ASDの概要

ASDとは、「自閉スペクトラム症、自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder)」を意味する発達障害の1種です。

ASDには多くの特性がありますが、その中でも下記の2点がよく見られるものとして挙げられます。

  1. 社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的な欠陥
  2. 行動、興味、または活動の限定された反復的な様式

他に、感覚過敏(光や音や刺激への敏感さが目立つ)、発達性協調運動障害(不器用さが目立つ)などの特性がある人もいます。

なお、「スペクトラム」というのは、特性に様々なグラデーションがある、という意味です。一口に「ASD」と言っても、その特性の現れ方はひとりひとり異なります。

②ASDという名称・分類について

ASDという名称・分類が使用されはじめたのは、2013年に、アメリカ精神医学会が前掲の『DSM-5 精神疾患の分類と診断の手引』を定めてからです。

それよりも昔には、「自閉症」「アスペルガー症候群」「広汎性発達障害」などという名称・分類であり、診断基準も現在とは異なっていました。

かつての分類では、「言語発達に遅れのある場合を自閉症」、「知能が定型の人と同等で言語発達の遅れがないケースをアスペルガー症候群」と区分して判断する傾向がありました。

一方、ASDという分類では、厳密な区分ではなく、「地続きの障害(=スペクトラム)」としてとらえようとしています。

なお、現在も「正式な医学用語」以外の場面(日常会話や法令名など)では、アスペルガー症候群などの旧名称・分類が残っていることもあります。

③ASDによる具体的な困難について

ASDによる具体的な困難について

ASDの特性は、具体的には次のような形・傾向で現れることがあります(例であり、「ASDの人には必ずこのような傾向がある」「このような傾向があれば必ずASDである」というものではありません)。

  • 人と目線が合いにくい
  • 場の状況や上下関係に無頓着である
  • 名前を呼ばれても反応しない
  • 一方的に言葉をまくしたてる
  • 会話による意思疎通がうまくできず、コミュニケーションの齟齬が生じやすい
  • 他人の発言をそのまま繰り返す
  • 相手の身振りの意味、意見・気持ちなどを察しづらい
  • 自分の考えと別の可能性を想定しづらい(相手の立場に立って考えることが苦手)
  • 質問の意図や発言の狙いを理解しづらい
  • 比喩や冗談を理解しづらい
  • 表情から気持ちを察しづらい
  • 自分だけのルールにこだわる
  • 決まった順序や道順にこだわる
  • 予定が急変するとパニックになる(パターン化した行動をする方が落ちついた生活を送ることができる)

④ASDの診断は医師だけが可能

ASDの概要

「自分が(ある人が)ASDかどうか」の診断は、医師による問診や心理士が実施する心理検査を中心に行われます。

逆に言うと、医師以外には「ASDかどうか」の診断・判断はできません

あなたが(ある人が)「発達障害かどうか」をハッキリさせたいのであれば病院を受診してみることをオススメします。

「診断を受けるのが不安」と思う人は、発達障害者のサポートを行う団体(各都道府県にある発達障害者支援センターなど)に「病院に行くべきかどうか」「診断をつけるメリットや注意点は何か」などを相談することができます。

⑤ASDの医学的な診断基準

下記は、2013年にアメリカ精神医学会がまとめた『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』(精神障害の診察基準などを記した書籍)に挙げられているASDの診断基準を抜粋・一部編集したものです。

次のような診断基準に当てはまればASDの可能性があります(あくまで可能性です。「どの程度なら『当てはまる』と言えるか、他の病気や障害の可能性はないかなども含めて、「ある人がASDかどうか」は、医師だけが判断できます)。

A.複数の状況で社会的コミュニケーションおよび対人的相互反応における持続的欠陥がある
  1. 相互の対人的-情緒的関係の欠落で、例えば、対人的に異常な近づき方や通常の会話のやり取りのできないことといったものから、興味、情動、または感情を共有することの少なさ、社会的相互反応を開始したり応じたりすることができないことに及ぶ
  2. 対人的相互反応で非言語的コミュニケーション行動を用いることの欠陥、例えば、まとまりのわるい言語的、非言語的コミュニケーションから、アイコンタクトと身振りの異常、または身振りの理解やその使用の欠陥、顔の表情や非言語的コミュニケーションの完全な欠陥に及ぶ
  3. 人間関係を発展させ、維持し、それを理解することの欠陥で、例えば、さまざまな社会的状況に合った行動に調整することの困難さから、想像上の遊びを他者と一緒にしたり友人を作ることの困難さ、または仲間に対する興味の欠如に及ぶ
B.行動、興味、または活動の限定された反復的な様式が2つ以上ある
  1. 情動的または反復的な身体の運動、ものの使用、または会(例:おもちゃを一列に並べたり物を叩いたりするなどの単調な常同行動、反響言語、独特な言い回し)
  2. 同一性への固執、習慣への頑ななこだわり、または言語的、非言語的な儀式的行動様式(例:小さな変化に対する極度の苦痛、移行することの困難さ、柔軟性に欠ける思考様式、儀式のようなあいさつの習慣、毎日同じ道順をたどったり、同じ食物を食べたりすることへの要求)
  3. 強度または対象において異常なほど、きわめて限定され執着する興味(例:一般的ではない対象への強い愛着または没頭、過度に限局したまたは固執した興味)
  4. 感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さ、または環境の感覚的側面に対する並外れた興味(例:痛みや体温に無関心のように見える、特定の音または触感に逆の反応をする、対象を過度に嗅いだり触れたりする、光または動きを見ることに熱中する)

⑥いわゆる「大人のアスペルガー(現:ASD)」とは

「大人のアスペルガー(現:ASD)」という言葉を聞くことがあるかもしれません。「大人のアスペルガー(現:ASD)」とは、医学的な定義がある言葉ではありません。次のような状態を指す俗語です。

  1. 学童期には目立った特性や困難が見られなかった、またはその診断等を受けることはなかったものの、成人してから仕事の場などでその特性が顕在化し、ASDの診断を受けることになった例
  2. 子どもの頃からASDの診断を受けていた人が大人になった状態

1に関連して、発達障害は生まれつきのものであり、「大人になって(大人になるにつれて)発達障害になった」ということではありません。その上で、大人になって受けた検査でASDであることが初めて判明したというケースは少なくないようです。

⑦大人のASDの「グレーゾーン」とは?

ASDの傾向が確認されるものの、確定診断が下りるほどではないほどの状態・人のことを俗に「(ASDの)グレーゾーン」と言います

グレーゾーンの場合、確定診断がないことから利用できる公的なサービスが限定されることがあります(例:障害者手帳を取得できないため障害者手帳が必須なサービスを利用できない)。

ただし、グレーゾーンの人でも「発達障害者支援センター」のようなサポート団体への相談は可能です。

確定診断があってもなくても、またASDに関係してもしなくても「発達障害に関する悩み事」は専門的な知識を持つ人たちに相談した人が対策や解決策を見つけやすくなるでしょう。

⑧ASD以外の発達障害

発達障害はその特徴によって、いくつかのグループに分けられています。

ASD以外の主な発達障害には、ADHD(注意欠如・多動性障害)、SLD(限局性学習障害)などがあります。

ASDとADHDの主な違いは、対人関係でのコミュニケーション能力の差にあらわれます。

ASDの場合

他人の身振りの意味などを察することや、状況の推測・暗黙の了解を理解しにくいことが多いです。運動が苦手なことも多いです。

ADHDの場合

ASDの人と比べると、コミュニケーションに大きな齟齬が生じたり、会話のやり取りや身振りの意味の理解に不自由さが生じたりするということは少ないです。
一方で、書類の記入間違いや物忘れといったミスが多いです。

ASD・ADHD・SLDの複数が併存する人もいます。気になる人は、下記参考記事をご覧ください。

まとめ:アスペルガー症候群(現:ASD)のある大人をサポートする支援機関はたくさんあります

病院をはじめ、アスペルガー症候群(現:ASD)のある大人をサポートする人たちはたくさんいます。困りごとの内容にあわせて、適切な支援機関を利用することをオススメします。

このコラムが、大人のアスペルガー症候群(現:ASD)でお悩みのあなたの助けになれば幸いです。

よくある質問(1)

アスペルガー症候群(現:ASD)の大人が利用できる支援機関を知りたいです。

「発達障害者支援センター」「障害者就業・生活支援センター」「就労移行支援事業所」などがあります。詳細はこちらをご覧ください。

よくある質問(2)

アスペルガー症候群(現:ASD)の自分が仕事を続けるためのコツを知りたいです。

一般論として、次の4点が考えられます。「自分の特性を理解する」「特性にあった仕事を選ぶ」「雇用枠の変更を考える」「定着支援を受ける」。詳細はこちらをご覧ください。

監修志村哲祥

しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。 臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。

【著書など(一部)】
子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数

日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

Amazon
翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

監修角南百合子

すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい

執筆寺田淳平

てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

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