就労移行支援 キズキビジネスカレッジ(KBC) 忘れっぽい人ができる仕事術 ASDの特性に由来する忘れっぽい傾向を解説

こんにちは。就労移行支援事業所・ キズキビジネスカレッジ(KBC) です。
アスペルガー症候群(現:ASD)のあるあなたは、忘れっぽい傾向があることに悩んではいませんか?
- 忘れっぽいのはアスペルガー症候群(現:ASD)のせいだろうか?
- 忘れっぽい傾向をカバーするにはどうすればいい?
物忘れの多さが、アスペルガー症候群(現:ASD)に由来するものか、そもそもわからないという人も多いと思います。
このコラムでは、 アスペルガー症候群(現:ASD)の特性に由来する忘れっぽい傾向、忘れっぽいアスペルガー症候群(現:ASD)のある人ができる仕事術、ADHDとアスペルガー症候群(現:ASD)の忘れっぽさの違いについて解説します。
アスペルガー症候群(現:ASD)の特性に由来する忘れっぽい傾向にお困りの人はぜひ一度読んでみてください。
目次
前提:アスペルガー症候群という診断名・分類について
かつて使用されていたアスペルガー症候群を含む以下の診断名・分類は、ASD(自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)という診断名・分類に統合されています。
- アスペルガー症候群
- 自閉症
- 高機能自閉症
- 広汎性発達障害(PDD)
それぞれ別の発達障害として、診断基準も異なっていましたが、2013年に行われたアメリカ精神医学会が定めた精神障害の診察基準『DSM』の改訂の際に、厳密に区分するのではなく、地続きの=スペクトラムな障害として捉える現在のASDに変更されました。 (参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 )
ただし、アスペルガー症候群という変更前の診断名・分類が、法令や病院、日常会話などで現在も使用されることがあります。また、かつてアスペルガー症候群などと診断された人が、現在のASDという名称を認知していないこともあります。
それらを受けて、このコラムでは、内容的には現行のASDについて解説しつつ、表記としては、アスペルガー症候群(現:ASD)といたします。
アスペルガー症候群(現:ASD)の特性に由来する忘れっぽい傾向4点
この章では、アスペルガー症候群(現:ASD)の特性に由来する忘れっぽい傾向について解説します。 (参考:バロン=コーエン 『自閉症スペクトラム入門―脳・心理から教育・治療までの最新知識』 、岡田尊司 『アスペルガー症候群』 、司馬理英子 『大人の発達障害 アスペルガー症候群・ADHD シーン別解決ブック』 )
傾向①一つのことに夢中で、他のことを忘れる
1つ目は、 一つのことに夢中で、他のことを忘れる点 です。
アスペルガー症候群(現:ASD)のある人の中には、特定分野への強いこだわりを持つ人が多くいます。
こだわりのある分野に夢中になると、寝食も忘れて没頭する過集中になることも少なくありません。
特に過集中の状態では、集中力を注いでいる対象以外のことは、頭から抜け落ちやすい傾向があります。
このように、一つのことに夢中で、他のことに構わなくなる傾向ゆえに、忘れっぽさが生じる場合があるのです。
傾向②忘れっぽさにムラがある
2つ目は、 忘れっぽさにムラがある点 です。
こだわりのある分野や興味のあることに対しては、アスペルガー症候群(現:ASD)のある人は驚くべき記憶力を発揮することがあります。
その反面、 興味を抱けない分野については、記憶しておかなくてはならない情報であっても、忘れっぽいことが多い です。
例えば、仕事に関わる専門知識などはよく覚えているのに、同僚からの指示や業務手順などは忘れやすいという状況などがあるでしょう。
傾向③口頭で伝えられたことは忘れっぽい
3つ目は、 口頭で伝えられたことは忘れっぽい点 です。
アスペルガー症候群(現:ASD)のある人の中には、口頭で説明を受けると頭に入りづらいという人がいます。
これは脳機能の性質に由来しており、聴覚情報だけを頼りに理解しようとしても、 努力だけではカバーしきれないところがある のです。
聴覚情報だと理解が不十分となることから、記憶も曖昧になり、忘れっぽさにつながるという人もいます。
傾向④同時並行で作業すると忘れっぽい
4つ目は、 同時並行で作業すると忘れっぽい点 です。
仕事や依頼を抱え込みすぎて忘れることは、誰にでもあることです。
しかし、アスペルガー症候群(現:ASD)のある人は、 一つのことに集中するのが得意な反面、同時並行で進めることが苦手 とされています。
案件が複数にまたがると、片方の作業をしているうちに、もう片方のことを忘れることが多いと言われています。
同時並行で作業をすると、特に忘れっぽいというのも、アスペルガー症候群(現:ASD)のある人に見られる特徴です。
忘れっぽい人ができる仕事術6選
この章では、忘れっぽい人ができる仕事術について解説します。 (参考:宮尾益知 『コミックでわかる「職場」のアスペルガー症候群』 、アズ直子 『マンガでわかる 私って、アスペルガー?』 )
前提:自分一人で解決しようと抱え込まない
前提として大切なことは、すべてを自分一人で解決しようと抱え込まないこと です。
アスペルガー症候群(現:ASD)の特性に由来する忘れっぽい傾向は、あなたの努力だけでは解決できない部分があります。
逆に言うと、 医師や専門家、支援機関、職場の人、周囲の人などと力を合わせることで、解決は近づいてきます。
また、人に限らず、仕事に役立ちそうなグッズや道具に頼るのも有効でしょう。
ぜひ、一人で気負わずに、周囲の人などに相談しながら、解説する仕事術を試してみてください。
仕事術①徹底的にリスト化する
1つ目は、 徹底的にリスト化すること です。
特に、あなたが関心を持つことができていない、けれど覚えておかなければならない作業については、できるだけリスト化することをオススメします。
その上で、何かに没頭した後は、ひとまずこのリストを読み返すなどのルールを定めておくとよいでしょう。
そうすることで、 一度は忘れたとしても、思い出すことができます。
また、アスペルガー症候群(現:ASD)のある人の中には、口頭での説明よりも、リストや手順表など、目で見て確認できる媒体の方が理解しやすい傾向を持つことがあります。
そういった意味でも、徹底的にリスト化するのは、アスペルガー症候群(現:ASD)の特性に由来する忘れっぽい傾向がある人にとって、有効な仕事術の一つです。
仕事術②図を用いて説明してもらう
2つ目は、 図を用いて説明してもらうこと です。
情報を図に置き換えて説明することを、専門用語で視覚的構造化と呼びます。
アスペルガー症候群(現:ASD)のある人は、目で見てわかりやすい状態の方が理解しやすいケースがあります。
その傾向がある人たちについては、支援機関でのサポートプログラムにおいても、いかにして視覚的構造化を行うかがカギとされています。
視覚的にわかりやすい形式の方が、コミュニケーションもうまく進み、記憶にも残りやすい のです。
忘れっぽさに悩んでいるアスペルガー症候群(現:ASD)のある人は、指示を受けるときに、図に置き換えて説明してもらうように、周囲にお願いをしてみてください。
あわせて、あなた自身も 図を用いて整理できないかを常に心がけてみるとよい でしょう。
忘れっぽさが口頭での説明による理解の曖昧さに由来している場合は、大きな効果を発揮するはずです。
仕事術③周囲の人にリマインドしてもらう
3つ目は、周囲の人にリマインドしてもらうことです。
アスペルガー症候群(現:ASD)のある人は、1つのことに集中しすぎるあまり、他のことが疎かになって忘れっぽさにつながりやすくなります。忘れないように心がけていたとしても、特性はなかなか変えにくく、自身のみで対応をするには限界があります。
そのため、 一度は忘れても思い出せるようにすることが大切 です。
そう考えたときに、周囲の人にリマインドしてもらうという仕事術は、単純ではありますが、理にかなった方法と言えるでしょう。
日常的なことは家族や友人などの周囲の人に、仕事のことは上司や同僚などの職場の人にリマインドをお願いしましょう。
忘れたまま放置するよりは、「リマインドしてもらえると助かります」とお願いされた方が、周囲の人も安心してフォローできるはずです。
忘れっぽさに悩むアスペルガー症候群(現:ASD)のある人は、無理のない範囲で周囲の人に頼れるように相談してみましょう。
仕事術④手順をできるだけ簡略化する
4つ目は、 手順をできるだけ簡略化すること です。
複雑な手順は、誰もが忘れやすくなるものです。
加えてアスペルガー症候群(現:ASD)のある人は、 自分のこだわりが手順をさらに複雑にしている可能性があります。
手順を簡略化できれば、忘れっぽさのカバーにつながります。
職場のルールや慣行とされているものとあなたのこだわりの両方をよく検討して、本当に必要な手順をリスト化したり手順表に落とし込んだりしましょう。
ただし、 職場のルールや慣行は、ひとりで簡略化するのではなく、上司や同僚にも相談しましょう。
あなたが省いても問題がないと思った作業が、他の人からすると必要な作業である場合もあるからです。
相談すること自体が難しいという人は、手順を図に落とし込んだ段階で、同僚に見てもらうのもよいでしょう。
手順の簡略化は、忘れっぽさの克服だけでなく、作業効率のアップにつながり、職場全体に良い影響をもたらす場合もあります。ぜひ一度、作業手順を見直してみてください。
仕事術⑤戸棚や物にラベルを貼る
5つ目は、 戸棚や物にラベルを貼ること です。
アスペルガー症候群(現:ASD)のある人は、興味関心の狭さや過集中などの特性により、作業に集中するあまり、その時に自分が使っていたものが元々どこにあったものなのか、誰から借りた物だったのかなどを忘れるといったことが多いと思います。
そうしたときに、 戸棚や物にラベルを貼っておけば、どこから持ってきたものなのか、誰のものなのかを思いだすことができます。
自分のデスクの引き出しはともかく、職場の共用の棚などは難しいかもしれませんが、職場の人に許可を取りながら、「共用」「会議室」など普段置いてある場所の名前や個人名などをラベルに貼ることで、整理できないかどうかを試してみるとよいでしょう。
仕事術⑥入れ物を一つにまとめる
6つ目は、入れ物を一つにまとめることです。
ラベルを貼ると同様に、こちらも物や道具を忘れがちな人のための仕事術です。
アスペルガー症候群(現:ASD)のある人は、物の持ち運びや保管についても、自分のルールやこだわりを持つことがあります。
そのルール・こだわりが、過集中などと相まって忘れるにつながることがあるのです。
例えば、ハンカチは他の道具と分けて、ポケットやカバンなどに入れずに手に持って移動したいというこだわりがある人の場合、電車の中で資料を読むことに過集中が起きて、いつの間にか手からハンカチが落ちていることに気づかないまま、電車を降りるということもあるでしょう。
日用品や普段よく用いる文具などは、肩にかけられる小型の袋やポーチに入れるなど、コンパクトな形でまとめて収納したり持ち歩いたりすることをオススメします。
また、必要最低限に物をまとめることは、考えをシンプルにしたり、日頃の行動を思い返したりしながら、頭の中で整理することにもつながるでしょう。
アスペルガー症候群(現:ASD)の特性に由来する忘れっぽい傾向がある人は、ぜひ入れ物をひとつにまとめることを心掛けてみてください。
ADHDとアスペルガー症候群(現:ASD)の忘れっぽい傾向の違い
同じ発達障害の一種であるADHD(注意欠如・多動性障害)にも忘れっぽい傾向が見られる場合があります。 (参考:こころの情報サイト 「発達障害(神経発達症)」 )
アスペルガー症候群(現:ASD)とADHDの特徴の両方がある場合は、忘れっぽさの原因をアスペルガー症候群(現:ASD)とADHDできれいに分けることは難しいかもしれません。
しかし、特性と状況から、忘れっぽさにつながるパターンを考えることは可能です。
例えば、アスペルガー症候群(現:ASD)の特性によってこだわりが強い場合には、自分のやり方、手順にこだわることで、自分の想像どおりにやることが目的となり、本来の指示内容を忘れる可能性があります。
対して、 ADHDの特性によって不注意傾向や衝動性が強い場合には、注意の対象が別なことに向き、事前に準備したものやスケジュールを忘れることもあります。
このように多くの場合は、特性と状況の相互作用によって忘れっぽさが生じていることが分かるのです。
ASDとは?
ASD(自閉スペクトラム症/広汎性発達障害、Autism Spectrum Disorder)とは、 人とのコミュニケーションなどに困難が生じる発達障害の一種のことです。 (参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修 『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』 、e-ヘルスネット 「ASD(自閉スペクトラム症、アスペルガー症候群)について」 、CDC 「Autism Spectrum Disorder (ASD) 」 、厚生労働省 「No.1 職域で問題となる大人の自閉症スペクトラム障害」 、福西勇夫、福西朱音 『マンガでわかるアスペルガー症候群の人とのコミュニケーションガイド』 )
かつて使用されていた以下の診断名・分類は、ASDという診断名・分類に統合されています。
- アスペルガー症候群
- 自閉症
- 高機能自閉症
- 広汎性発達障害(PDD)
それぞれ別の発達障害として、診断基準も異なっていましたが、2013年に行われた『DSM-5』の改訂の際に、厳密に区分するのではなく、地続きの=スペクトラムな障害として捉える現在のASDに変更されました。
ただし、変更前の診断名・分類が、法令や病院、日常会話などで現在も使用されることがあります。また、かつてアスペルガー症候群などと診断された人が、現在のASDという名称を認知していないこともあります。
ASDの概要や特性、診断基準などについては、以下のコラムで解説しています。
まとめ:忘れっぽい傾向は工夫次第で改善できます
アスペルガー症候群(現:ASD)の特性に由来する忘れっぽい傾向は、頑張って克服しようとしても、完璧になくすということはかなり難しいものです。
できないことをできるようにしていくことも必要ですが、仕事をする上では、 忘れっぽくてもカバーできるような仕組みづくりを考えることが重要 です。
特に、物事を本当に忘れた場合には、あなたひとりではうまくいかないことも多いと思います。
そのため、 周囲の人や身近な道具に頼るという姿勢を持つことがとても大切 です。
ぜひ、 一人で抱え込まずに、周囲に協力を求めるようにしてください 。
このコラムがアスペルガー症候群(現:ASD)の特性に由来する忘れっぽい傾向に悩む人の助けになれば幸いです。
よくある質問(1)
- アスペルガー症候群(現:ASD)特有の、「忘れっぽさ」の特徴はありますか?
-
一般論として、以下の4点が挙げられます。「一つのことに夢中で、他のことを忘れる」「忘れっぽさにムラがある」「口頭で説明されると忘れっぽくなる」「同時並行で作業すると忘れっぽくなる」。 詳細はこちら をご覧ください。
よくある質問(2)
- アスペルガー症候群(現:ASD)で忘れっぽい自分が使える仕事術はありますか?
-
一般論として、以下の6点が考えられます。「徹底的にリスト化する」「図を用いて説明してもらう」「身近な人にリマインドしてもらう」「手順をできるだけ簡略化する」「戸棚や物にラベルを貼る」「入れ物を一つにまとめる」。 詳細はこちら をご覧ください。
監修志村哲祥
監修キズキ代表 安田祐輔
監修角南百合子
すなみ・ゆりこ。臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい。
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