【2025年版】適応障害で退職した人が失業保険を受け取るには? 条件・手続き・注意点を解説

こんにちは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
仕事を続ける中で心身の不調を感じ、医師から適応障害と診断される方も少なくありません。
症状が悪化して退職を選ばざるを得ない場合、「退職後の生活費をどうすればよいのか」と不安に感じることもあるでしょう。
適応障害で離職した場合には、要件を満たせば失業保険を受け取れます。
このコラムでは、適応障害で離職したときに失業保険を受給できるかについてや失業保険の対象、失業保険を受給する流れについて解説します。適応障害による離職の可能性がある人は、ぜひ参考にしてください。
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目次
適応障害で離職したら失業保険を受給できる
適応障害になって離職した場合、失業保険の受給が可能な場合があります。失業保険は正式には「雇用保険の基本手当」といい、雇用保険の加入者が受けられる保障のひとつです。
生活の安定と就職活動支援を目的とした保障であり、受給できれば、離職後も焦らずに再就職を目指せるようになります。
失業保険の対象者は、雇用保険に一定期間以上加入していた労働者です。以下のように一定期間加入していること、今後働く意思・能力を備えていること、求職活動ができることといった要件を満たせば、雇用形態に関わらず受給できます。(参考:厚生労働省「離職されたみなさまへ」)
- 原則として、離職の日以前2年間に12か月以上の被保険者期間がある
- 倒産・解雇等による離職の場合や、期間の定めのある労働契約が更新されなかったこと
- そのほかやむを得ない理由による離職の場合は、離職の日以前1年間に6か月以上被保険者期間がある
また次章から解説しますが、失業保険にはいくつかの区分が設けられています。申請後、自身がどの区分になるかによって、失業保険を受給できる日数が異なります。離職を検討しはじめた段階で確認しておき、受給期間の目安を確認しておくと安心して過ごせるでしょう。
失業保険を受給できる対象
この章では、失業保険を受給できる対象について解説します。
対象①一般離職者
自己都合退職の人や、定年・懲戒解雇・契約期間満了の人が該当します。一般離職者が失業保険を受給できる期間は、被保険者となっていた期間に応じて以下のように分けられます。(参考:厚生労働省「雇用保険制度 離職されたみなさまへ」)
- 10年未満:90日
- 10年以上20年未満:120日
- 20年以上:150日
失業保険の受給がはじまるのは、離職票の提出と求職申込を済ませてから7日間の待期期間が終わってからです。また、自己都合退職や懲戒解雇で離職した場合は、さらに給付制限として1〜3か月の給付制限期間を終える必要があります。
対象②特定受給資格者・特定理由離職者
特定受給資格者は、会社の倒産や解雇などによって、再就職の準備をする時間なく離職を余儀なくされた人が該当します。
一方の特定理由離職者は、特定受給資格者に該当しない人のうち、有期雇用で契約更新がされなかった人、またはやむを得ない理由によって離職した人が該当する区分です。
例えば以下のようなケースで適応障害となった場合、特定受給資格者または特定理由離職者の区分になる可能性があります。(参考:ハローワークインターネットサービス「特定受給資格者及び特定理由離職者の範囲の概要」)
- 上司や同僚などからのハラスメント(パワハラ・セクハラなど)により退職を余儀なくされた
- 会社からの退職勧奨や退職強要があった
- 異動後の就労環境が過酷で、適応障害を発症した
- 医師から就労が困難と診断されていたにもかかわらず勤務を強要された など
ハローワークでこのような区分に該当すると判断されれば、雇用保険に加入していた期間が1年未満でも保障を受け取れます。
90〜330日まで、年齢や雇用保険の加入期間に応じて受給が可能です。雇用保険加入期間が1年未満の人や、5年未満かつ30歳未満の人は90日の受給となりますが、そのほかの人は120日以上にわたり受給できます。
また特定受給資格者や特定理由離職者が失業保険の受給をはじめられるのは、離職票を提出して求職申込をしたのち、7日間の待期期間を終えてすぐです。給付制限が設けられていないため、スピーディに保障を受け取れます。
対象③就職困難者
身体障害・知的障害・精神障害など、障害のある人が該当します。
ハローワークで就職困難者として認定された場合、年齢や雇用保険の加入期間に応じて、以下の期間にわたって給付を受けられます。(参考:厚生労働省「雇用保険制度 離職されたみなさまへ」)
- 45歳未満:保険加入期間1年未満で特定受給資格者・特定理由離職者の人は150日、1年以上の人は300日
- 45歳以上65歳未満:保険加入期間1年未満で特定受給資格者・特定理由離職者の人は150日、1年以上の人は360日
ただし就職困難者として認定されるには、障害があることの根拠となる書類が必要です。多くの自治体では精神障害者保健福祉手帳の提示が必要です。
ただし、自治体やハローワークによっては、医師の診断書や意見書などで認定される場合もあります。
障害のある人が適応障害の発症によって離職を検討するときには、自治体からの案内を確認しておくと、今後の見通しが立てやすくなるでしょう。
適応障害で退職して失業保険を受給する流れ
この章では、適応障害で退職して失業保険を受給する流れについて解説します。
ステップ①受診して診断を受ける
はじめに、精神科や心療内科などを受診して適応障害の診断を受け、適切な治療を検討しましょう。カウンセリングや治療薬を用いた治療に臨むことで、不調を緩和できるかもしれません。
また6か月以上にわたり通院すると、精神障害者保健福祉手帳の取得も可能になります。精神障害者保健福祉手帳を取得すれば、ハローワークで就職困難者として認定されやすくなります。
手帳があることによって、さらに長期的かつスムーズに失業保険を受給できる可能性が高まるといえるでしょう。
ステップ②休職・退職
適応障害の諸症状を和らげるには、ストレス源から距離を取る必要があります。状況に応じて、休職や退職をしてゆっくりと療養しましょう。
その際は、在職中に有給休暇を活用しつつ、健康保険の傷病手当金の申請を検討しましょう。
傷病手当金は、怪我や病気などによって仕事を休む際、被保険者とその家族の生活を守るための保障です。
きちんと受給しておくと、収入を得られるため焦らずに休めます。休職期間を終えても復職できそうにない場合は、退職後に失業保険を受給するのが一般的です。
退職時には、一身上の都合として退職届を提出します。また失業保険の受給には離職票が必要なため、離職票を発行してほしい旨を会社へ伝えておきましょう。
ステップ③必要書類の準備
失業保険を受給するために必要な書類を集め、手続きの準備を進めましょう。失業保険の受給手続きに必要なのは、以下の6種類です。(参考:厚生労働省「離職されたみなさまへ」)
- 離職票ー1
- 離職票ー2
- マイナンバーカードまたは、個人番号確認書類(通知カード・個人番号記載のある住民票)と身元確認書類(運転免許証や公的医療保険の資格確認書など)
- 6か月以内に撮影された写真2枚(離職票に貼付)
- 本人名義の預金通帳
- 船員保険失業保険証・船員手帳(※船員だった人のみ)
くわえて、特定受給資格者・特定理由離職者としての認定を受けるには、医師の診断書や意見書が必要な場合があります。また就職困難者として認定を受ける場合も、精神障害者保健福祉手帳が追加で必要なケースもあります。申請する区分に合わせて書類を準備しておきましょう。
また、会社が離職票の交付手続きをしない場合には、お住まいの地域を管轄するハローワークで相談を受け付けています。「会社とトラブルになり離職票が手元に届かない」というときには、一人で悩まず相談しましょう。
ステップ④ハローワークで求職申込と受給資格決定
ハローワークで、求職申込と受給資格確認の申請をしましょう。6種類の基本的な提出書類と状況に応じた書類を持参することで、担当者によって受給資格の確認が実施されます。
また受給資格の確認が取れると以下のことを確認されるため、回答できるように準備しておきましょう。
- 自己都合退職か会社都合での退職か
- 再就職への意欲があるか
- 健康状態について(就労ができるか)
この際、問題ない場合は、医師の診断内容を踏まえて就労可能なことを伝えます。
ただし、症状が重く、すぐに働くことが難しい場合には、医師の診断書を提出することで、失業保険の受給開始を最長3年間延長できます。体調が回復した後に受給を開始することも可能です。
受給の延長には、延長理由を証明する書類と専用の手続きが必要なため、診断書等を取得・持参しておきましょう。
ステップ⑤雇用保険説明会
失業保険を実際に受給できることが決まったら、ハローワークで雇用保険説明会が実施されます。
説明会では、受給資格者証をはじめとする必要書類の交付と、手続き方法・就職活動方法について説明されます。制度の概要、受給ルールなどの重要な情報が説明されるため、よく内容を確認しておきましょう。
ステップ⑥待期期間・給付制限
雇用保険説明会へ参加後、すぐに失業保険を受給できるわけではありません。通常、待期期間として7日間にくわえ、給付制限がある場合は1〜3か月間は給付を受けられないため注意しましょう。
また給付制限期間が終わると、失業の認定が行われます。失業の認定とは、受給者が提出する受給資格者証と失業認定申告書をもとに、ハローワークが受給者の就労の有無・就職活動の実績を認定する工程です。
失業の認定は、以下のように継続的に実施されます。(参考:厚生労働省「Q&A~労働者の皆様へ(基本手当、再就職手当)~」、厚生労働省愛知労働局愛知ハローワーク「○求職活動実績について」)
- 給付制限期間中:給付制限期間後に実施。期間の長さに応じて1〜3回以上の実績が必要
- 給付制限期間後:原則として4週間に1度実施。都度2回以上の求職活動実績が必要
そのため、待期期間・給付制限期間中も説明会に足を運んだり求人に応募したりするほか、ハローワークで相談をするなど就職活動の実績を残しておく必要があります。
ステップ⑦失業保険(基本手当)受給
待期期間と給付制限期間が終わったら、認定を受けた日数分の受給が可能です。保障は基本的に、普通預金口座への振り込みによって支給されます。
以降は初回と同様に、4週間に1度の失業認定を経て支給が実施されます。そのため、継続的な求職活動が必要です。手続きと受給をしたのちは、支給期間が上限に達するか、受給者の就職によって支給が終了します。
適応障害で失業保険を受けたいときの注意点
この章では、適応障害で失業保険を受けたいときの注意点について解説します。
注意点①勢いで退職せずに休む
適応障害と診断されたときに、とっさに仕事を辞めるのは避けましょう。後悔しないためには、まずは休職して療養に努め、判断力が戻ってから退職の決断を下すことが大切です。
また適応障害はストレス源から離れることで症状が寛解する傾向にあるため、休職中に以下のことを依頼しておくとよいでしょう。
- 上司へ異動や配置転換の希望を出す
- 医師やカウンセラーなど、専門的な視点からの意見を求める
- 直属の上司や、会社内のメンタルヘルス窓口に相談する
また休職期間中には、健康保険による傷病手当金を受け取れる場合もあります。会社へ相談しておくと、収入面の不安を軽減できるでしょう。
くわえて休職期間も含めて6か月間の通院をすることで、就職困難者として認定されるために必要な精神障害者保健福祉手帳の発給ができるようになります。まずは一度、落ち着いてゆっくりと休む時間を取ることが大切です。
注意点②ほかの制度の利用も検討する
失業保険だけでなく、ほかの制度の利用を検討することも大切です。例えば健康保険の傷病手当金は働けない状態にある人を対象とする制度のため、失業保険と同時には受給できません。
そのため、休職期間のうちに受給しておくことが大切です。またほかにも、以下のような制度も利用できる場合があります。
- 自立支援医療:精神疾患で通院が必要と認められた場合、医療機関での自己負担額が軽減される
- 障害者手帳:障害に関するさまざまな福祉サービスを受けるために必要
- 障害年金:怪我や障害によって、日常生活や就労が制限される場合に受け取れる年金
- 生活保護:収入がない、あるいは生活に困窮している人を対象として、生活を保障する制度
- 職業訓練受講給付金:ハローワークで実施される職業訓練に参加した、一定条件を満たす人が受け取れる支援金
- 国民健康保険料の軽減:離職期間中に支払う国民健康保険料が軽減される
自治体の窓口やハローワークの担当者と相談しながら、自身が受けられる制度やサービスについて知り、無理のない範囲内で手続きをして活用しましょう。
注意点③無理なく求職活動ができるかを検討しておく
失業保険を受給するときには、定期的に求職活動実績を提出する必要があります。セミナーへの参加や求人への応募などが実績となりますが、負担になりすぎず、きちんと取り組めるかを検討しておきましょう。
無理をして求職活動を始めると、適応障害の症状が悪化するおそれがあります。体調や主治医の意見を踏まえ、「今は休養を優先すべきか」「再就職を目指せる状態か」を冷静に判断することが大切です。
注意点④受給金額の上限・下限を確認しておく
失業保険で受給できる金額(基本手当日額)は、年齢に応じて上限が設けられています。(参考:厚生労働省「雇用保険の基本手当日額が変更になります ~令和7 年8月1日から~」)
- 29歳以下:7,255円
- 30~44歳:8,055円
- 45~59歳:8,870円
- 60~64歳:7,623円
基本手当日額は、賃金日額と給付率をもとに計算ができます。しかし基本手当日額がさらに高い金額になると計算できたとしても、以上の金額を超えての受給はできません。また、下限は一律で2,411円となっています。
ただし、上限・下限は制度の見直しによって変更となる場合があります。最新の情報は、厚生労働省やハローワークなどの案内を確認しておきましょう。
適応障害になったときの相談場所
適応障害で働けなくなったとき、相談できる場所として以下の5箇所があります。
- ハローワーク
- 就労移行支援事業所
- 精神保健福祉センター
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
それぞれの場所に関しては以下のコラムで詳しく触れているため、気になる人はあわせて確認してください。
まとめ:適応障害になっても失業保険を受給できる
適応障害によって離職した場合でも、条件を満たせば失業保険を受け取ることができます。特に特定受給資格者や特定理由離職者、就職困難者に該当すれば、早期かつ長期的な受給が可能になるケースもあります。
就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)では、うつ病や発達障害などで離職している期間中に、ビジネススキルを習得するサポートを行っています。
適応障害のある人も、障害福祉サービス受給者証があれば利用可能です。仕事に役立つスキルを身につけて、転職・スキルアップに活かしたい人はぜひご相談ください。
適応障害で失業保険は受給できますか?
適応障害になって離職した場合、失業保険の受給が可能な場合があります。失業保険は正式には「雇用保険の基本手当」といい、雇用保険の加入者が受けられる保障のひとつです。
詳細については、こちらで解説しています。
失業保険を受給できる対象を教えてください。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2025年6月現在17校+オンライン校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2025年9月現在9校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
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