適応障害のある人が退職する流れ 退職前にできる対策、退職後にすべき対応を解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
職場の人間関係や仕事のミスマッチが原因で起こる適応障害。あなたは、早めに退職して環境を変えた方がいいのではとお悩みではないでしょうか?
このコラムでは、適応障害のある人が退職する流れ、退職前にできる対策、退職前に確認すべきポイント、退職後にすべき対応について解説します。
適応障害による休職・転職・退職は逃げではありません。人間誰しも、合わない環境はあると考えることで、次の一歩にも進みやすくなると思います。
目次
適応障害のある人が退職する流れ
この章では、適応障害のある人が退職する流れについて解説します。
実際に退職を決めたなら、職場にその意思を伝えましょう。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、適応障害のある人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
流れ①退職の意思を伝える
一般的に、退職の意思と伝えるだけで、退職の手続きを始めることができると思います。事前に適応障害に関連する相談や休職などを行っていれば、より話は通じやすいでしょう。
さまざまな事情で適応障害のことを相談できていなかった場合には、退職の意思とあわせて伝えてもよいでしょう。また、職場以外にしっかり相談ができているようなら、適応障害のことはあえて伝えないという選択もあります。
退職の意図を伝えると、引き留められることもあります。この段階まで相談できていなかったのならなおさらです。また、それまでの相談時よりも具体的・積極的な対応を提案されることもあります。
適応障害の原因であるストレス要因から離れられるような提案があれば、医師やカウンセラーなどにも改めて相談した上で、現職に留まるという選択肢もありえます。
流れ②職場のルールに従って申請する
次に、職場のルールに従って退職届を作成・提出して申請しましょう。通常は自己都合退職として処理されます。
退職届に書く退職事由・退職理由は、一身上の都合で大丈夫です。適応障害と関連させる必要はありません。退職届の受理を拒まれたり、引き留めを断りづらかったりする場合は、法テラスなどに相談してみましょう。
- 法テラス(国によって設立された法的トラブル解決のための「総合案内所」)
- 労働条件相談ほっとライン(厚生労働省の委託事業)
- 各市区町村役所が行う、法律やお悩みの相談会
適応障害のある人が退職前にできる対策4選
この章では、仕事・職場が原因で適応障害になったが退職はしたくないという人に向けて、退職前にできる対策に付いて解説します。
退職しなくても同じ職場で働き続けることは可能です。退職の決心がついている人も、念のためご覧になることをオススメします。
適応障害になっても退職しない方法はあるという安心材料になると思います。その上で、実際のあなたが退職をするかどうかは、職場の人や医師、専門家、支援機関などに相談することで、より具体的に見つかっていくと思います。
対策①医師の診断を受ける
自分が適応障害かどうかわからないという人は、専門の医師の診断を受けましょう。
適応障害であってもなくても、心身の不調は、治療につなげることが大切です。治療薬を処方された場合は、用法・用量に従って、忘れずに服用しましょう。
対策②休職する
適応障害の診断が出ているかどうかに関わらず、現時点で出社拒否などの重い症状がある場合は、ひとまず休暇を取得して休むことを優先してください。いきなり退職という選択肢を選ぶのではなく、まずは休職しましょう。
「自分は休まなくて大丈夫」「休職せずに仕事を続ける方法はないか?」と思うかもしれませんが、適応障害を治療するためには、原因から離れることが効果的です。休職という選択が難しい場合、長期の有給休暇も検討してみましょう。
- 職場によっては、引き続き給料の一部を受け取ることができる
- 休養に専念できる
- 退職するかどうかをじっくり考えられる
- 休職者限定の支援を利用できる
- 主治医の許可があれば、休職中に転職活動を行うことも可能
退職するかどうかという重大な決断は、あせって行わず、療養を行いながらじっくり考えることが大切です。
休職者限定の支援として、リワーク・プログラムなどがあります。
リワーク・プログラムとは、適応障害などの精神疾患が原因で休職している人を対象とする、復職・転職に向けたリハビリテーションのことです。参加者は、対人技能訓練やストレス対処の講習を受けながら、安定した就労に向けた準備ができます。リワークについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
適応障害のある人の休職中の過ごし方については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
対策③担当業務の内容・量を相談する
仕事の関係で適応障害になった場合、担当業務の内容や量があなたに合っていない可能性が高いです。それらの変更を上司や人事を担当する部署に相談することで、原因を解決できる場合があります。
すぐに本格的な対応が難しくても、それらができるまでの一時的な対応として、時短勤務・リモートワーク・勤務日減などが可能になることもあります。また、あなたの知らない効果的だった前例対応などを紹介されることもあるでしょう。
これまでと同じ部署・同じ仕事で量だけ減らす、同じ部署内での担当業務を変えるなどが解決策になりうることもあります。
専門医による診断書も提示しながら相談すると、担当業務の不一致が原因であると話が通じやすいため、希望も通りやすくなります。
対策④配置転換・転勤を相談する
職場の人間関係や通勤手段、通勤時間などが、適応障害の原因になっていることもあります。その場合は、配置転換・転勤などを相談することで、解決につながることがあります。
これまでと同じ業務の内容・量で、環境や上司や同僚などの職場の人などが異なる支社で働くなどが解決策になりうることもあります。
専門医による診断書も提示しながら相談すると、話は通りやすいでしょう。異動したことで適応障害が治ったという人も少なくありません。
補足:職場がいわゆるブラック企業で相談できない場合
職場がいわゆるブラック企業で、相談できそうにない場合は、以下のような相談先があります。
- 労働条件相談ほっとライン(厚生労働省の委託事業)
- 法テラス(国によって設立された法的トラブル解決のための「総合案内所」)
- 各市区町村役所が行う、法律やお悩みの相談会
いわゆる退職代行サービスもありますが、それらは退職するためのサービスです。退職するかどうかの検討と療養が必要な段階で、最初に相談するのはあまりオススメしません。
適応障害のある人が退職前に確認すべきポイント4点
すでに退職の決心がついている場合でも、手続きを進める前に確認しておいた方がいいことがあります。
この章では、適応障害のある人が退職前に確認すべきポイントについて解説します。
ポイント①かかりつけ医の意見
まずは、かかりつけ医に意見を聞きましょう。
医師からも退職前に休職を提案されることがあるかもしれません。最終的に退職を判断するのはあなた自身ですが、判断材料のひとつとして、意見を聞いておきましょう。
ポイント②産業医の意見
職場に産業医がいる場合、その意見を聞くことも大切なポイントです。
産業医とは、労働者の健康管理に関して専門的な立場から助言や指導を行う医師のことです。産業医は労働安全衛生法に基づいて、常時50人以上の労働者を使用する事業所に1人以上、3000人超の事業所では2人以上が配置されています。診察にあたって料金は発生しません。(参考:厚生労働省「産業医について」)
産業医は中立的な立場から話をするため、面談の結果が給与査定や昇進に響くこともありません。
ポイント③経済的な状況
退職前には、ご自身の経済的な状況も確認しておきましょう。特に家族がいる場合は、家庭内で経済面のことを話し合っておいた方が、安心して退職できるはずです。
職場と勤続年数によっては、退職金が支給されます。また、適応障害のある人が利用できる支援機関もあります。
ポイント④退職のメリットとデメリット・注意点
退職前には、退職のメリットとデメリット・注意点について、改めて考えるようにしましょう。それぞれ以下のポイントが挙げられます。
- 休養に専念できる
- 合わない職場環境から離脱できる
- 療養後には、心機一転して自分に合った職場を探せる
- 職歴にブランクができる
- 現在の給与がなくなる
仕事・職場に関連して適応障害を発症すると、すぐに退職したいと思うかもしれません。しかし、繰り返すとおり、病気のときに焦って重大な決断はしない方がいいですし、退職は後からでもできます。
まずは休職しての療養をオススメします。また、休職中に転職活動をすることもできます。
適応障害のある人が退職後にすべき3つの対応
この章では、適応障害のある人が退職後にすべき対応について解説します。
対応①環境が合わなかったと割り切る
適応障害で退職すると、「自分はつらいことから逃げたのではないか」と考えて、落ち込む人もいます。しかし、合わない環境から去ることは、逃げではありませんし、逃げだとしても問題ありません。
自分の能力や人格に問題があったと考えずに、環境が合わなかった、合わない環境はあると割り切ることが大切です。実際、新しい環境でリスタートを切ったことで好転したという人はたくさんいます。安心してください。
対応②自分に合った仕事・職場を探す
退職後に転職活動をするときは、その仕事・職場が自分に合うかどうかを念頭に置いて就職先を考えましょう。逆に言うと、再度の職場不適応を避けるためには、給与や待遇がいいなどの理由だけで就職しないことが大切です。
一般的には、以下のような職場環境だと、ストレスがかかりにくいです。
- 無理をするような仕事ではない
- 日課の決まっているような仕事
- 仕事量が多くない
- 人間関係などが複雑ではない、無理に職場に馴染まなくてよい
以上を受けて、一般的には、以下のような仕事・働き方が、適応障害のある人でも続けやすいと言われています。
- 公的機関の事務職
- データ入力管理業務
- 専門知識を活かした資格職
- 工場のライン担当
- 警備員
- 清掃員
- 受付事務
- ガス・電気などの検針員
- 接客・調理などをするファーストフード店の店員
- 郵便・新聞や配達員
- レジ・品出しなどをするスーパーの店員
- Webライター
- Webデザイナー
- ノルマがなくきつくない、歩合制の営業職
- ドライバー
- 翻訳家
- デイトレーダー
- アフィリエイター
- 音源・動画などのクリエイター
自分がどんなことにストレスを感じやすいかを考えながら、支援機関などとも話しながら、あなたに合った仕事を探しましょう。
適応障害のある人に向いてる仕事については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
対応③支援制度・支援機関を利用して次のステップを目指す
「新しい職種や次のステップを目指そう」という考え方を持つと、退職を「いいきっかけだった」と受け止められるようになります。
次のステップを目指す上では、支援制度・支援機関を利用することが効果的です。
例えば、就労移行支援事業所では、仕事に役立つ専門的なスキルの講習を、原則無料で受けることができます。前職では経験できなかった業務を学ぶことで、働き方の幅を広げるチャンスになります。
適応障害のある人が利用できる支援制度7選
退職した適応障害のある人が利用できる支援制度は複数あります。ただし、実際にあなたが受給できるかどうか、どの程度の経済支援を受けられるかは、個々の状況によって異なります。
「経済的支援はたくさんある」と安心材料にしていただいた上で、具体的な利用方法には各窓口などに相談しましょう。
適応障害のある人が利用できる支援制度は以下のとおりです。
- 傷病手当金
- 失業保険(失業手当、雇用保険給付)
- 自立支援医療制度
- 障害者手帳
- 障害年金
- 労災保険(労働が原因の疾病の場合)
- 生活保護
適応障害のある人が利用できる支援制度について、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
特に、適応障害のある人が生活保護を利用する方法について、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
適応障害のある人が利用できる支援機関7選
適応障害のある人をサポートする支援機関はたくさんあります。気になるところがあれば、相談してみましょう。
各相談先は機能が異なるため、紹介する順番にオススメというものではありません。それぞれ、自分が利用したいサービスを行っているかどうかを確認して、問い合わせてみましょう。または、お住まいの自治体の障害福祉を担当する部署・窓口に、自分に向いてる支援機関を相談してみてください。
適応障害のある人には特に、就労移行支援事業所がオススメです。
就労移行支援事業所とは、一般企業などへの就職を目指す病気や障害のある人に向けて、就職のサポートをする支援機関のことです。体調管理の方法、職場でのコミュニケーションの基礎スキル、就職に必要な専門スキルなどを学ぶことができ、実際の就職活動でのアドバイス、就職後の職場定着支援も含む、総合的な就労支援を受けることが可能です。
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づいて行われる福祉サービスです。実際のサービスは、国の基準を満たした様々な民間の就労移行支援事業所が行います。(参考:e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)
就労移行支援事業所は各地にあります。私たち、キズキビジネスカレッジ(KBC)もその一つです。それぞれ特徴が異なるため、気になるところがあれば問い合わせてみてください。
就労移行支援事業所については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
その他、適応障害のある人が利用できる支援機関は以下のとおりです。
- 就労移行支援事業所
- 精神保健福祉センター
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
- 基幹相談支援センター
- ハローワーク(公共職業安定所)
- 転職エージェント
適応障害のある人が利用できる支援機関について、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
適応障害とは?
適応障害とは、仕事や職場の人間関係などから生じる特定可能な明確な心理的・社会的ストレスを原因に、心身がうまく対応できず、情緒面の症状や行動面の症状、身体的症状が現れることで、社会生活が著しく困難になっている状態のことです。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、松﨑博光『新版 マジメすぎて、苦しい人たち:私も、適応障害かもしれない…』、新橋スリープ・メンタルクリニック「ストレス性障害(適応障害)」、大阪メンタルクリニック「適応障害」、こころ診療所「適応障害の治し方6つ」、e-ヘルスネット「適応障害」)
適応障害の概要や症状、原因、診断基準、治療方法、治療期間、うつ病との違いなどについて、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
まとめ:適応障害のある人が退職前にできることはたくさんあります
適応障害になると、体調不良も相まって、すぐに退職を決断しそうになるかもしれません。
しかし、退職をする前にも、休職を取ったり、人事を担当する部署に業務調整を申し出たりと、できることはたくさんあります。
退職を焦る前に、まずは専門の医師に相談した上で、自分ができることを考えてみましょう。
もし退職をすることになったとしても、支援制度や再就職・復職・転職をサポートする支援機関はたくさんあります。ご安心ください。
このコラムが、退職を検討している適応障害のある人の助けになれば幸いです。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
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