発達障害で傷病手当金はもらえる? 活用できる支援制度をわかりやすく解説

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
発達障害の特性により仕事を休む必要が出てきたとき、生活費の心配から傷病手当金を受け取れるのか、気になる人も多いでしょう。
- 発達障害だけで傷病手当金はもらえるの?
- 経済的な不安を解消するために使える制度を知りたい
- どこに相談すればいいのかわからない
このコラムでは、このようなお悩みを抱えている人に向けて、発達障害と傷病手当金の関係や受給条件、傷病手当金以外に利用できる支援制度、発達障害や支援制度に関する相談先についてわかりやすく解説します。
発達障害のある人が活用できる支援制度を知りたい人は、ぜひ参考にしてください。
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目次
発達障害とは?
発達障害とは、生まれつきの脳の働き方の違いによって、コミュニケーションや行動、学習などに特性が現れる状態のことです。病気ではなく、脳の発達の特性であり、治療によって完治するものではありません。
発達障害には、主に以下の3つのタイプがあります。
- ASD(自閉スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害):対人関係やコミュニケーションに独特のスタイルがあり、特定の物事に対して強いこだわりを持つことがある
- ADHD(注意欠如・多動性障害):注意の切り替えや集中の持続が難しい、思いついたことをすぐに行動に移してしまうなどの特性がある
- LD/SLD(学習障害/限局性学習症):全体的な知的発達に遅れはないが、読む・書く・計算するなど特定の能力に著しい困難がある
特性は人によって現れ方が異なり、複数のタイプが重なって現れることもあります。詳しくは、以下のコラムでも解説しています。
発達障害だけで傷病手当金を受け取ることは難しい
発達障害だけを理由に傷病手当金を受け取ることは、原則として難しいのが現状です。
傷病手当金は、健康保険法第99条に基づき、病気やケガで仕事を休んだ際に支給される制度です。この法律では、傷病手当金の支給対象を「療養のため労務に服することができないとき」と定めています。(参考:e-Gov「健康保険法」)
しかし、発達障害は生まれつきの特性であり、治療によって完治する病気とは性質が異なります。したがって、それだけでは傷病手当金の対象になりません。
二次的な精神疾患があれば受給可能な場合もある
発達障害そのものでは傷病手当金の受給は難しいですが、発達障害に起因する二次的な精神疾患がある場合は、傷病手当金を受け取れる可能性があります。
二次的な精神疾患とは、発達障害の特性によって職場や日常生活でストレスを抱え続けた結果、発症する精神的な不調のことです。具体的には、以下のような疾患が該当します。
- うつ病
- 適応障害
- 不安障害
- パニック障害
たとえば、発達障害の特性によって職場でのコミュニケーションがうまくいかず、強いストレスを感じ続けた結果、うつ病や適応障害を発症するといったケースです。
精神疾患によって仕事を休む必要があると医師が判断し、傷病手当金の受給条件を満たしていれば、支給対象となります。
傷病手当金とは?
傷病手当金とは、病気やケガ、障害のために仕事を休み、事業主から十分な報酬を受けられない場合に、健康保険(社会保険)の加入者・被保険者とその家族の生活を保障するために設けられた支援制度のことです。(参考:全国健康保険協会「傷病手当金」、全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」、全国健康保険協会「傷病手当金について」)
国民健康保険の加入者・被保険者は対象外です。
対象となる病気やケガ、障害は、業務外の理由で生じた場合に限ります。会社の業務が原因で生じた病気やケガ、障害は、労災保険により補償されます。
傷病手当金の受給対象は、病気やケガ、障害によって就労不能であり、十分な報酬を受けられない人です。そのため、医師の診断書が必要です。
また傷病手当金は、退職前・在職中に就労できない状態の場合に受給できます。ただし、一定の条件を満たせば、退職後も継続して受給できます。具体的な受給金額や受給期間は、その人の休職の状況などによって異なります。
申請は、加入している全国健康保険協会や各健康保険組合、各共済組合で行えます。気になる人は、加入している健康保険の協会・組合にご相談ください。
傷病手当については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
傷病手当金の受給条件
傷病手当金を受給するには、健康保険に加入していることに加えて、以下の4つの条件をすべて満たす必要があります。
- 業務外の病気やケガで療養中であること
- 就労できない状態を医師に認定されていること
- 3日間連続での休業を含めて4日以上就労できない状態であること
- 休業期間に給与の支払いがないこと
詳しくは、以下のコラムで解説しています。
発達障害のある人が傷病手当金以外に利用できる支援制度
この章では、発達障害のある人が活用できる主な支援制度について解説します。
発達障害のある人が利用できる支援制度は、傷病手当金だけではありません。経済的なサポートを受けられる制度や就労に向けた支援など、さまざまな選択肢があります。
ご自身の状況に合った制度を見つけ、生活の安定や就労に向けた準備に役立ててください。
制度①自立支援医療
自立支援医療とは、精神疾患の治療にかかる医療費の自己負担を軽減できる制度です。発達障害の診断を受けている人も、医師が継続的な治療が必要と判断し、自治体の審査で認められれば、この制度を利用できます。
通常、医療機関での自己負担は3割ですが、自立支援医療を利用すると1割に軽減されます。たとえば、月に1万円の医療費がかかっている場合、通常であれば3,000円の自己負担ですが、自立支援医療を利用すれば、負担金は1,000円です。
また、所得に応じて月額の負担上限額が設定されているため、治療費が高額になった場合でも上限を超えて支払う必要はありません。
申請は、お住まいの自治体の障害福祉を担当する部署・窓口で行います。診断書や健康保険証などの書類が必要になるため、まずは主治医に対象となるか確認してから、窓口に問い合わせてみましょう。
制度②特別児童扶養手当
特別児童扶養手当とは、身体や精神に障害のある20歳未満の子どもを養育している保護者に支給される手当です。発達障害のある子どもも対象となる可能性があります。
手当の金額は、障害の程度によって異なります。2025年4月現在の支給額は、以下のとおりです。(参考:厚生労働省「特別児童扶養手当について」)
- 1級:月額56,800円
- 2級:月額37,830円
受給には所得制限があり、保護者の所得が一定額を超える場合は支給されません。また、子どもが障害児入所施設に入所している場合も対象外となります。
制度③障害年金
障害年金とは、病気やケガによって生活や仕事に支障が出ている場合に受け取れる年金制度です。
現役世代も対象となり、発達障害のある人も一定の条件を満たせば受給できる可能性があります。
障害年金には、以下の2種類があります。
- 障害基礎年金:国民年金に加入している人が対象
- 障害厚生年金:厚生年金に加入している人が対象
障害の程度によって1級から3級(障害厚生年金のみ)に区分され、等級に応じて支給額が決まります。発達障害の場合、日常生活や就労にどの程度の支障があるかが判断の基準になります。
受給するには、初診日に年金に加入していることや一定期間の保険料納付要件を満たしていることなどの条件があります。また、障害の状態が年金の等級基準に該当していることが必要です。(参考:日本年金機構「障害年金」)
制度④障害者雇用枠での就職
障害者雇用枠での就職は、発達障害のある人が自分の特性に合った配慮を受けながら働ける制度です。
一般枠での就職では障害を開示せずに働くことが多い一方で、障害者雇用枠では障害を開示し、企業から合理的配慮を受けられます。
合理的配慮とは、障害のある人が働きやすくなるよう、企業が提供する支援や調整のことです。たとえば、以下のような配慮が受けられます。
- 業務内容の調整(得意な業務を中心に担当する)
- 勤務時間の柔軟化(短時間勤務から始める)
- 作業環境の配慮(静かな場所での作業、視覚的な指示書の提供)
- 定期的な面談やフォローアップ
障害者雇用枠を利用するには、自治体の障害福祉を担当する部署・窓口で手続きを行い、精神障害者保健福祉手帳を取得する必要があります。
手帳を取得したら、ハローワークの専門窓口や障害者就業・生活支援センターなどを通じて求人情報を探すことが可能です。
制度⑤就労移行支援
就労移行支援とは、障害のある人が就職に向けて必要なスキルや知識を習得できる福祉サービスです。
発達障害のある人も多く利用しており、「どんな仕事が向いてるのかわからない」「働いた経験が少なくて不安」といった悩みを抱えている人に適しています。
就労移行支援事業所では、以下のようなサポートを受けられます。
- ビジネスマナーやパソコンスキルなどの職業訓練
- 体調管理やメンタル面の相談
- 就職活動のサポート
- インターン・職場体験先の紹介と職場探しの手伝い
- 就職後の職場定着支援
利用期間は原則2年間で、個々のペースに合わせて訓練を進められます。
利用するには、お住まいの自治体の障害福祉を担当する部署・窓口で申請手続きが必要です。詳しくは、以下のコラムも参考にしてください。
発達障害や支援制度に関する相談先
「発達障害や支援制度について相談したいけれど、どこに相談すればいいのかわからない」と感じている人もいるでしょう。主な相談先には、以下があげられます。
- 自治体の障害福祉を担当する窓口:自立支援医療や特別児童扶養手当、障害年金などの支・援制度について総合的に相談できる
- 発達障害者支援センター:発達障害に特化した専門相談機関で、医療機関の紹介や日常生活、就労に関する相談などが可能
- ハローワーク:障害者雇用を専門に担当する窓口で求人情報の提供や就職活動のサポートを受けられる
- 障害者就業・生活支援センター:就労と生活の両面から総合的な支援が受けられる
相談先に迷ったら、まず自治体の障害福祉を担当する窓口で、自分の状況に合った支援を案内してもらうのがおすすめです。1人で悩まず、専門の窓口を活用しながら、必要な支援を見つけていきましょう。
まとめ:発達障害が対象となる支援を賢く活用しましょう
発達障害だけを理由に傷病手当金を受け取ることは原則として難しいですが、二次的な精神疾患を発症している場合は受給できる可能性があります。
また、傷病手当金以外にも、自立支援医療や障害年金、就労移行支援など、発達障害のある人が活用できる支援制度は存在します。
大切なのは、自分の状況に合った支援を見つけ、適切に活用することです。
1人で悩まず、自治体の障害福祉を担当する窓口や発達障害者支援センターなど、このコラムで紹介した相談先を活用しながら、必要なサポートを受けてください。
発達障害だけで傷病手当金を受け取ることはできますか?
発達障害だけを理由に傷病手当金を受け取ることは、原則として難しいのが現状です。しかし、発達障害に起因する二次的な精神疾患がある場合は、傷病手当金を受け取れる可能性があります。
詳細については、こちらで解説しています。
発達障害のある人が傷病手当金以外に利用できる支援制度を教えてください。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2025年6月現在17校+オンライン校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2025年9月現在9校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
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