大人のいじめとは? パターンや種類、対処法を解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
あなたは、職場で悪い噂を流されたり、無理な仕事を押しつけられたりすることはありませんか?
もし、集団で無視されたり、大勢の前で上司に叱責されたりするといったことがあるなら、あなたは「大人のいじめ」にあっているかもしれません。
いじめは子どもに限らず、大人の世界でも広まっています。
もしこのコラムにたどり着いたということは、あなたも大人のいじめに悩んでいるのではないでしょうか?
このコラムでは、大人のいじめの概要やパターン、種類、原因、影響、対処法について解説します。
このコラムを読むことで、きっとこれまでよりも生きやすくなるはずです。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、大人のいじめに悩む人のための就労移行支援事業所です。
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目次
大人のいじめとは?
この章では、大人のいじめの概要や大人のいじめの現状について解説します。
(参考:厚生労働省「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議ワーキング・グループ報告」、厚生労働省「職場におけるハラスメント対策マニュアル」、Job総研「2023年 職場イジメの実態調査」)
大人のいじめの概要
大人のいじめについて知る前に、まず、いじめそのものについて知っておきましょう。
文部科学省は、子どものいじめを以下のように定義しています。(参考:文部科学省「いじめの定義の変遷」、Gov法令検索「いじめ防止対策推進法」、法務省「「いじめ」をなくすために」)
児童生徒等に対して、当該児童生徒等が在籍する学校に在籍している等当該児童生徒等と一定の人的関係にある他の児童生徒等が行う心理的又は物理的な影響を与える行為(インターネットを通じて行われるものを含む。)であって、当該行為の対象となった児童生徒等が心身の苦痛を感じているもの
(参考:文部科学省「いじめの定義の変遷」)
しかし、現在は、文部科学省の定義に限定せず、悪質とみなされるいじめについては、傷害罪や暴行罪、強要罪などといった犯罪行為にみなすとしています。
東京都産業労働局は、大人のいじめを、以下のように記載しています。
職場(職務を遂行する場所全て)において、仕事や人間関係で弱い立場に立たされている成員に対して、精神的又は身体的な苦痛を与えることにより、結果として労働者の働く権利を侵害したり、職場環境を悪化させたりする行為
(参考:東京都産業労働局「職場のいじめ 発見と予防のために」)
また、弁護士の水谷英夫氏は、以下のように記載しています。
職場およびそれに隣接する場所、時間において従業員若しくは使用者らから一時的若しくは継続的になされる心理的、物理的、暴力的な苦痛を与える行為の総称
(水谷英夫『職場のいじめ・パワハラと法対策』)
以上のように、大人のいじめはさまざまな側面から指摘されています。
大人のいじめとは、特定の個人に対して、その個人が在籍する職場およびそれに隣接する場所などにおいて、一定の人的関係にある他の個人が行う、インターネットを通じて行われるものを含む、心理的又は物理的な影響を与える行為であって、当該行為の対象となった特定の個人が心身の苦痛を感じているものを指すと考えられるでしょう。
いじめの定義の詳細については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
大人のいじめに関する現状
厚生労働省の調査によると、あらゆる労働問題に関する相談を受け付ける総合労働相談コーナーに寄せられた、労働条件や労働関係に関する相談のうち、6万9932件が「いじめ・嫌がらせ」に関する相談だったという結果が出ています。
これは、相談内容の全項目の中で最多です。(参考:厚生労働省「令和4年度個別労働紛争解決制度の施行状況」)
次に多いのが4万2694件の「自己都合退職」、3番目に「解雇」であり、職場や隣接する場所において、大人のいじめがいかに蔓延しているかが見て取れます。
しかし、驚くことに、以上の「いじめ・嫌がらせ」の件数は、2022年4月の改正労働施策総合推進法の全面施行によって、これまで「いじめ・嫌がらせ」に含まれていた同法上のパワーハラスメントに関する相談をすべて別途で集計した後の件数であるという点です。
つまり、除外された以下項目の相談件数を合わせると、「いじめ・嫌がらせ」に関する相談は、約20万件も届いていることがわかります。
- 雇い止め
- 出向・配置転換
- 雇用管理等
- 募集・採用
- 採用内定取り消し
- その他の労働条件
- その他
補足:いじめる側の心理
厚生労働省のデータからも、大人のいじめは年々増加傾向にあることがわかりました。
ここでは補足として、いじめる側の心理について紹介します。
ハラスメント対策専門家である坪倉昇平氏は、2019年10月に起きた兵庫県神戸市須磨区の市立東須磨小学校での20代男性教諭が30~40代の男女教諭から壮絶ないじめを受けていた事件を例に、以下のように考察しています。(参考:坂倉昇平『 大人のいじめ』)
「学校全体に共通する特徴として、とにかく教員が多忙であり、子どものこと以外にかまっていられない、なかなか目が向きにくい、という背景事情が存するようである。」
「教員みんながストレスをためていて、無意識にストレスのはけ口を求めていたとの意見を述べる教員もいた。」
職場に長時間労働や過重な労働があり、それに対応する適切な人員が確保されていなかった。これが、いじめを止められないばかりか、いじめを生み出す構造を作り出していたのではないか、という指摘だ。そして、この構造が、この学校だけでなく、日本全体に共通する職場いじめの背景としてあるのではないだろうか。
(参考:坂倉昇平『 大人のいじめ』)
以上のように、いじめる側もなんらかの問題を抱えており、自分のなかにある怒りやストレスを適切に対処できないことで、大人のいじめを生み出しているという可能性が考えられます。
しかし、どのような理由があっても、きつい言葉で叱責したり暴力を振るったり、仲間外れにしたりといった行為は許されるものではありません。
もし現在、あなたに対してこのような行為が見られるのであれば、こちらを参考に、専門家などの知識を借りて、解決策を見つけることをオススメします。
大人のいじめの8つのパターン
この章では、大人のいじめの主なパターンを紹介します。
現在、「いじめられているかもしれない」と不安を抱える人は、それぞれのパターンをチェックしてみましょう。(参考:政府広報オンライン「NOパワハラ なくそう、職場のパワーハラスメント」、厚生労働省「事業主の皆さまへ NOパワハラ」、あかるい職場応援団「ハラスメントの類型と種類」)
パターン①暴言・暴力
1つ目のパターンは「暴言・暴力」です。
上司や同僚などの職場の人から、殴る・蹴るの暴行を振るわれたり、ミスをした際に「バカ」「無能」などと罵声を浴びせられるなど身体的または精神的に攻撃する事例があります。
さらに強烈なものだと「お前なんか向いていない」「消えろ」「死ね」などという言葉を浴びせられることもあるようです。
パターン②無視・仲間外れ
2つ目のパターンは「無視・仲間外れ」です。
出勤時の挨拶を無視されたり、話しかけても適当な理由をつけて会話をしてくれないなど人間関係の切り離しが挙げられます。
また、ひどい場合だと部署内の全員から無視されたり、一人別室で業務を任されたりすることもあるようです。
パターン③必要以上の叱責
3つ目のパターンは「必要以上の叱責」です。
こちらで紹介したものと関連しますが、ミスをした際の罵声に加えて、「これだから〇〇に仕事は任せたくないんだよな」と、大勢の社員に聞こえるように言ったり、「死ね」と、心に深い傷を負わせるような言葉を言ったりすることが挙げられます。
パターン④悪評の吹聴・嫌味・かげぐち
4つ目のパターンは「悪評の吹聴・嫌み・かげぐち」です。
上司や同僚などの職場の人からありもしない悪評を吹聴されたり、コンプレックスや特徴に対する嫌み・かげぐちを言われたりすることも少なくないようです。
パターン⑤過剰な要求・業務指示
5つ目のパターンは「過剰な要求・業務指示」です。
一日では到底こなすことのできない業務を「◯時間後に提出して」と言われたり、一方的に達成の困難なノルマを与えられたりすることも、大人のいじめのパターンと考えられています。
パターン⑥過小な要求・業務指示
6つ目のパターンは「過小な要求・業務指示」です。
こちらで紹介したものとは逆に、基本業務と関係のない雑務を毎日任されたり、上司の一方的な理由から仕事を与えられなかったり、さらには性別や勤続年数などを理由に能力発揮の機会を奪ったりすることも、いじめのパターンに含まれます。
パターン⑦責任の押し付け・手柄の横取り
7つ目のパターンは、「責任の押し付け・手柄の横取り」です。
上司や同僚などの職場の人から誤った指示を受けたのに、責任を取らされるのもパターンの一つです。
さらに、長期的な残業で成し遂げた業務を、先輩や同僚に横取りされるのも大人のいじめのパターンと考えられています。
パターン⑧プライベートへの干渉
8つ目のパターンは、「プライベートへの干渉」です。
体調不良のために休暇を申し出たときに、執拗に理由を質問されたり、結婚・交際相手の詳細をしつこく聞かれたりするのも、大人のいじめのパターンに該当します。
大人のいじめの6つの種類
この章では、大人のいじめの種類について解説します。(参考:あかるい職場応援団「ハラスメントの定義」)
種類①パワーハラスメント(パワハラ)
パワーハラスメント(パワハラ)とは、対象となる人に対して、業務上の地位や人間関係などの優位性を背景に、業務上必要かつ適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為のことです。(参考:厚生労働省「パワハラ 6類型」)
同僚の目の前で叱責したり、罵倒したりする行為や業務の進め方もわからない新人に対して他の人の仕事まで押しつける行為は、パワーハラスメントに該当します。
パワーハラスメントは、職場で見られる大人のいじめの代表的なものと言えるでしょう。
ただし、客観的に、業務上必要かつ適正な範囲で行われる業務指示や指導は、パワーハラスメントには該当しません。
種類②セクシャルハラスメント(セクハラ)
セクシャルハラスメント(セクハラ)とは、対象となる人の意に反する性的な関心や欲求にまつわる言動によって、不利益や精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為のことです。(参考:厚生労働省「職場におけるセクシュアルハラスメント」)
例えば、性的な事実関係を尋ねたり、性的な内容の情報を流布したり、性的な関係の強要、冗談の延長で性的な言葉を浴びせられたりすることは、セクシャルハラスメントに該当します。
部分的に、こちらで解説するジェンダーハラスメントと混同されるケースもありますが、対象となる人の性的指向や性自認にかかわらず、「性的な言動」に関する行為はセクシャルハラスメントに該当します。
種類③マタニティハラスメント(マタハラ)
マタニティハラスメントとは、「妊娠」「出産」「育児休業」などに関する言動によって、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為のことです。(参考:厚生労働省・都道府県労働局「STOP!マタハラ」)
男性の育児休暇の取得に関連するハラスメントは、パタニティハラスメント(パタハラ)と呼ばれることもあります。
例えば、以下のような発言は、マタニティハラスメントに該当します。
- 妊娠したなら今月いっぱいで辞めてもらっていいかな
- 妊婦さんが職場にいると心配だから転職したらどうかな
- 1年の育休は経営悪化が懸念されるので退職してほしい
これらはあくまで一例ですが、いずれも妊娠・出産・育児休業を理由とした不当に解雇されたり、妊娠を上司に打ち明けてすぐに態度が豹変したりする場合は、マタニティハラスメントに該当します。
種類④モラルハラスメント(モラハラ)
モラルハラスメント(モラハラ)とは、倫理に反する言動によって、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為のことです。
例えば、精神的な嫌がらせをしたり、相手の尊厳を傷つけたりする言動は、モラルハラスメントに該当します。
言葉だけに留まらず、怒っているような空気をわざと態度に出したり、物に八つ当たりすることも、モラルハラスメントとされています。
種類⑤ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)とは、ジェンダー(社会的・文化的性差)に関する言動によって、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為のことです。
例えば、以下のような発言は、ジェンダーハラスメントに該当します。
- 女なんだから仕事に口出しするな
- その見た目、男らしくないよ
今でこそ女性の社会進出は一般的になりましたが、いまなおジェンダーに関する固定概念に基づく言動は少なくありません。
近い領域のハラスメントとして、SOGIハラスメントが挙げられます。
SOGIハラスメントについては、こちらで解説します。
種類⑥SOGIハラスメント( SOGIハラ)
SOGI(ソジ)ハラスメントとは、「Sexual Orientation(性的指向)」「Gender Identity(性自認)」の頭文字をとった言葉で、対象となる人の性的指向や性自認にに関する言動によって、精神的・身体的苦痛を与える、または職場環境を悪化させる行為のことです。
(参考:NHK ハートネット「SOGIハラスメントとは 具体例や遭遇したときの対応」、宍粟市「SOGIハラスメントを知っていますか?」、東京弁護士会「SOGIハラスメント(2022年1月19日号)」)
例えば、性的指向や性自認にまつわる侮辱的な言動、または他人の性的指向や性自認を勝手に他の人へ漏らす行為(アウティング)などは、ソジ(SOGI)ハラスメントに該当します。
こちらで解説したジェンダーハラスメントと重複する事例も少なくなく、性自認と異なる生物学的性での生活の強要などは、ジェンダーハラスメントとソジ(SOGI)ハラスメントのいずれにも該当しえます。
補足①:その他のハラスメント
補足として、ほかにもさまざまなハラスメントが存在しています。
- リストラハラスメント:リストラ対象の人に自主退職を促したりするハラスメント
- アルコールハラスメント:飲酒の強要や意図的な酔い潰しなど飲酒に関するハラスメント
- スモークハラスメント:喫煙者が非喫煙者に対してタバコの煙やニオイなどで不快な思いをさせたりする喫煙に関するハラスメント
- スメルハラスメント:柔軟剤や体臭などの臭いによって周囲の人に不快感を与えるハラスメント
- リモートハラスメント:リモートワーク環境で起こるハラスメント
- カラオケハラスメント:カラオケを苦手とする人に歌うことを強要するなどカラオケに関するハラスメント
- ブラッドハラスメント:血液型を理由にして行われるハラスメント
補足②:ハラスメントをする側にならない方法
ハラスメントに敏感になった世間。自分の身を守りやすくなったと感じる人がいる一方で、「こんなことでも嫌がらせと受け取られるのか」と、日常的なコミュニケーションに不安を抱える人も増えています。
ハラスメントは非常にセンシティブな領域の問題であり、気にしすぎると息苦しさを感じることもあります。
そんなときは、周囲の人を気にかけつつ、自分なりにできることを心がけると良いかも知れません。
例えば、あなたが喫煙者の場合、知らないうちに上司や同僚などの職場の人に対して、タバコの臭いや喫煙回数で不快な思いを与えている可能性があります。
知らないうちに職場の誰かを不快な思いにさせている可能性を考えて、喫煙後はタバコの臭いを軽減する消臭スプレーを衣類に吹きかけたり、喫煙回数を減らしたりするなど、一定の配慮を意識すると良いかも知れません。
ハラスメントの種類や意味を理解することで、自分の行動を振り返り、見直すきっかけにつながります。
そうすることで、知らず知らずに起こっていたハラスメントを未然に防ぐことができるでしょう。一つ一つのハラスメントに対して、あなた自身ができる配慮はあります。
ハラスメントをする側にならないためにも、意識しておきましょう。
大人のいじめが起きる6つの原因
この章では、大人のいじめが起きる原因について解説します。(参考:NHK「防げるか? 大人の“いじめ”」、坂倉昇平『 大人のいじめ』、あかるい職場応援団「あかるい職場応援団」)
前提:「原因があれば、いじめてよい」というわけではありません
この章で解説する原因は、参考資料をもとにした一例です。全ての原因を網羅しているわけではありません。
そして、「いじめられている側が悪い」「何かの特徴があれば、いじめてよい」「原因があれば、いじめられても仕方ない」という趣旨ではありません。
あくまで参考としてご覧ください。
原因①意見を合わせ過ぎる
1つ目は、「意見を合わせ過ぎる」です。
上司や同僚などの職場の人の意見に同調しすぎると、「自分の意見を言えない人」と認識されてしまいます。
「保身のためにあえて言わないことを選んでいるのでは」「自分で考えながら仕事ができない人なんだな」と思われることも珍しくなく、その結果、「真面目に仕事に取り組まない人」というレッテルを貼られ、いじめの対象とされることがあるようです。
原因②ミスを繰り返している
2つ目は、「ミスを繰り返している」です。
坂倉昇平氏は、以下のように指摘しています。
加害者でもある元先輩社員は「何度注意してもミスを繰り返すので嫌悪感が募った」「怒りの感情がコントロールできなくなっていた」と述べている。
(参考:坂倉昇平『 大人のいじめ』)
以上のように、ミスを繰り返す人に対して、いじめる側は何らかの負の感情を抱くことがあると考えられます。
何度言っても繰り返されるミスにやがて怒りの感情をコントロールできず、強い言葉での叱責や暴力などに至ることもあるようです。
原因③遅刻・欠勤・サボりぐせがある
3つ目は、「遅刻・欠勤・サボりぐせがある」です。
真面目な姿勢で仕事に取り組む人がいる一方で、ほかの人が会社で決められた出勤時間までに出勤し、与えられた業務にきちんと取り組んでいる場合、遅刻や欠勤などを繰り返したり、サボってしまったりするような人がいると、周囲はあまり良い気分にはなれません。
遅刻・欠席・サボりぐせの目立つ人がいれば、真面目に取り組む自分がバカらしくなり、強い口調で叱責することもあるようです。
原因④指導・アドバイスを素直に聞けない
4つ目は、「指導・アドバイスを素直に聞けない」です。
ミスや勤務態度など、さまざまなシーンで受けることの多い指導やアドバイス。
その人のことを思い、できるだけやわらかい言葉で伝えても、このような姿勢が見られると、「自分はこれだけ気を遣ってアドバイスをしたのに」という感情から、いじめにつながることも少なくないようです。
原因⑤自己主張が強い
こちらで紹介したものとは逆に、「自己主張が強い」ことも、大人のいじめの原因になることがあります。
自分の意見に自信を持っていると、「周囲に聞いてもらいたい」「どんどん取り入れてもらいたい」と考えるものです。
しかし、自分の主張ばかりにこだわると、他人の意見や考えをきちんと聞く姿勢が持てず、周囲から見放されることがあります。
自己主張ができることはとても良いことですが、状況や場所などを選ばずに一方的に主張しているままだと、いじめの原因につながることもあるようです。
原因⑥ほかの人より優れているとされている点がある
6つ目は、「ほかの人より優れているとされている点がある」です。
世間的に優れているとされている点を備えている人は、周囲の人の嫉妬から大人のいじめにあうこともあるようです。
例えば、誰が見ても優れた容姿を持つ人は、それだけで妬みや嫉妬を買う場合があります。
自分にとっては生まれつきの容姿であり、いくつかのコンプレックスがあったとしても、他人はそのようなことに気付きません。
それどころか、人それぞれ悩みを抱えていることに理解しようともせず、いじわるなことを言う人もいます。
ほかにも、仕事ができる人も大人のいじめの対象になることもあります。
例えば、先輩と同じ業務を任された場合、先輩よりも上手にやり遂げてしまった場合、「仕事ができるからと言って調子に乗っている」と逆恨みされることがあります。
補足:いじめとは関係なく、ネガティブな特徴は見つめ直しましょう
あらためて、「原因があれば、いじめてよい」というわけではありません。
ただし、この章で紹介したネガティブな特徴については、いじめがあるかどうかに関わらず、一般論としては改善した方がよいでしょう。例えば、遅刻・欠勤・サボり癖などです。
とは言え、そうした特徴は、「自分でもわかっているけどなかなか変えられない」という部分もあります。
また、自分のどこにネガティブな特徴があるのかわからないこともあるでしょう。
自分のことを、自分ひとりだけで知ろうとする、変えようとする必要はありません。あなたをサポートする支援機関はたくさんあります。こちらで解説するとおり、職場外の相談窓口を利用するなどして、対処してみてください。
大人のいじめによる影響
大人のいじめを受けると、後遺症にさいなまれる場合があります。
具体的な症状は以下のとおりです。
- 人間不信
- 対人恐怖
- PTSD
- 無気力
- 過呼吸
- 自傷行為
- オーバードーズ
- 強い倦怠感
- 発熱・頭痛・肩凝り
- 引きこもり
- コミュニケーション障害
- 不安障害
- 適応障害
- うつ病
以上の症状以外にも、大人のいじめを原因とする休職・転職・退職もあるでしょう。
もし、大人のいじめを理由に休職・転職・退職するとなれば、こちらでも解説しますが、大人のいじめに関する証拠を記録することも必要です。
休職・転職・退職を検討する場合、収入が減ることも念頭に置かなければなりません。以上の症状が続くようであれば、通院をしながら転職活動をすることも考えられます。
一方、いじめた人や職場への影響には、以下のような項目があります。
- いじめの事実確認
- いじめた社員の処遇
もし、いじめの内容があまりに凄惨なものであれば、同じ職場で働くことに抵抗を覚え、多くの従業員が部署異動や退職を申し出る懸念もあります。
このことから、大人のいじめには多くの影響が、広範囲にわたって及ぶと考えられるでしょう。
大人のいじめの対処法5選
この章では、大人のいじめの対処法を紹介します。
大人のいじめにあっていると考えられるときは、紹介する対処法を試してみましょう。
もし現在進行形でいじめに悩み、会社に行くことすら抵抗がある人は、ぜひ参考にしてください。(参考:あかるい職場応援団「ハラスメントにあったらどうする?」)
対処法①毅然とした態度を心がける
大人のいじめには、毅然とした態度で対抗しましょう。
毅然とした態度とは、嫌なことにはNOを言うなど、自分の感情をきちんと伝える姿勢のことです。
自分に特別な原因が浮かばないのであれば、抵抗しなさそうな相手だと判断されたことでいじめられている可能性もあります。
ただし、必要以上に強い口調で抵抗すると、現状をエスカレートさせる恐れがあります。伝え方や姿勢には細心の注意を払い、大人な対応を心がけましょう。
対処法②いじめの証拠を記録する
2つ目の対処法は、「いじめの証拠を記録する」です。
いじめの証拠を記録しておくと、後々の事実確認などで有効です。メモや録音など適切な方法で記録しておいてください。
証拠を記録する際は、いじめの関係者や状況について整理することをオススメします。以下の点などを記録しておくといいでしょう。(参考:あかるい職場応援団「相談窓口のご案内」)
- いじめだと感じた出来事が起こった日時
- いじめと感じる出来事がおきた場所
- 言われたこと・されたこと
- その発言・行為をした人
- その場面を見ていた人
それぞれを整理することで、「どのような人が関わっているのか」「どのような状況でいじめが起きているのか」を客観的に把握できます。
その結果、今の職場で働き続けていても良いのか、改善策はあるのかなどが見つかりやすくなるでしょう。
坪倉昇平氏は、以下のような方法を勧めています。
相手に黙って録音するのは、「隠し撮り」や「盗聴」と同じじゃないかと気が引けるかもしれないが、「秘密録音」は裁判でも証拠として採用されており、罪悪感を覚える必要は全くない。(中略)「先ほど、こう言いましたよね?」「こういうことをしたからじゃないですか?と聞いて、回答を引き出すという方法がある。ここで、加害者から「したけど、不満でもあるの?」「それがどうかした?」などの答えが録音できれば、重要な証拠として使える。
(参考:坂倉昇平『 大人のいじめ』)
いじめの証拠は、こちらで紹介する対処法にも関連しますが、転職する際などにも役立ちます。
また、もし、いじめを理由に休職する場合、傷病手当金の請求にも証拠は必要になってきます。そのことから、いじめを原因になんらかのアクションを検討するときは、証拠集めの方法を調べておくと良いでしょう。
対処法③職場内の担当部署・窓口に相談する
もし職場内にいじめを相談できる部署・窓口があるのなら、積極的に利用するのも方法の一つです。
いじめを含めた職場でのハラスメントが社会問題になっていることから、こちらでも解説するとおり、窓口を設けることが職場に義務づけられています。(参考:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」)
大規模事業者の場合2020年6月から、中小規模事業者の場合2022年4月から設けられているはずです。職場内の担当部署・窓口を調べて、相談してみると良いでしょう。
ほかにも、信頼できる上司や同僚などの職場の人がいるのであれば、相談してみてください。大人のいじめを解決するには、周囲の協力が不可欠です。
対処法④職場外の相談窓口を利用する
こちらで紹介した職場内の担当部署・窓口に相談することに気が引ける人は、職場外の相談窓口を活用しましょう。
例えば、以下のような相談窓口が挙げられます。(参考:あかるい職場応援団「相談窓口のご案内」)
厚生労働省や法務省、NPO法人などが関わる相談窓口には、いじめを含むハラスメントに深い知識を持つ人がたくさん在籍しています。
職場内の担当部署・窓口を利用して、相談したことが発覚することを恐れる人は、一人で悩まず、職場外の相談窓口を利用しながら解決策や今後の対策を検討することをオススメします。
対処法⑤休職・転職・退職を検討する
最終的な改善方法として、休職・転職・退職を検討する方法もあります。
坂倉昇平氏は、大人のいじめを原因とする転職・退職について、休職した上で、健康保険の一部である傷病手当金の請求をすすめています。
退職すると、当然だが収入が途絶えてしまう。(中略)そこで、辞める前に、まず休むという対応を考えてみてほしい。なんとか病院に行って診断書を取り、休職が必要であると書いてもらい、それを理由に会社を休む。次に、健康保険の傷病手当金を請求するという手順だ。連続して4日以上休職すれば、4日目から支給の対象になり、支給額は元の賃金の3分の2ほどだが、無休よりはよっぽどマシだ。
(参考:坂倉昇平『 大人のいじめ』)
いきなり転職・退職をして収入を減らすよりも、まずは会社の就業規則を読み、休職制度の有無をチェックしましょう。
ただし、規定の休職期間を超過すると退職扱いになる恐れがあります。休職を検討する際は、休職期間も必ず確認しましょう。
休職については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
大人のいじめに対する事業者に求められる行動
厚生労働省では、大人のいじめが発覚した事業者に対して以下のような対応を求めています。(参考:厚生労働省「職場におけるパワーハラスメント対策が事業主の義務になりました!」、e-Gov法令検索「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」、文部科学省「いじめが抵触する可能性がある刑罰法規の例について」、静岡県「いじめは犯罪だ」)
- 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
- ハラスメントの内容、方針等の明確化と周知・啓発
- 行為者への厳正な対処方針、内容の規定化と周知・啓発
- 相談窓口の設置
- 相談に対する適切な対応
- 職場におけるハラスメントへの事後の迅速かつ適切な対応
- 事実関係の迅速かつ適切な対応
- 被害者に対する適正な配慮の措置の実施
- 行為者に対する適正な措置の実施
- 再発防止措置の実施
- 当事者などのプライバシー保護のための措置の実施と周知
- 相談、協力等を理由に不利益な取扱いをされない旨の定めと周知・啓発
これは2022年4月から義務化されています。しかし、事業者規模によってはいまだ対応できていない場合もあります。
もし職場にこのような対応が見られないときは、こちらで紹介した職場外の相談窓口の利用や休職や転職を検討するのも方法の一つです。
まとめ:一人で解決しようとせず、専門家への相談や転職を検討しましょう
大人のいじめは、自分一人で解決しようとせず、専門家などの知識を借りながら適切に対処することが大切です。
自分が受けている言動が大人のいじめに該当すると感じるときは、社内や外部の相談窓口などに相談することをオススメします。専門家に現状を話すことで、知識を借りながら解決策を見つけられるかもしれません。
このコラムが、大人のいじめに悩む人の助けになったなら幸いです。
大人のいじめとはなんですか?
大人のいじめとは、特定の個人に対して、その個人が在籍する職場およびそれに隣接する場所などにおいて、一定の人的関係にある他の個人が行う、インターネットを通じて行われるものを含む、心理的又は物理的な影響を与える行為であって、当該行為の対象となった特定の個人が心身の苦痛を感じているものを指すと考えられるでしょう。
詳細については、こちらで解説しています。
職場でいじめを受けています。対処法を知りたいです。
大人のいじめの対処法として、以下が考えられます。
- 毅然とした態度を心がける
- いじめの証拠を記録する
- 職場内の担当部署・窓口に相談する
- 職場外の相談窓口を利用する
- 休職・転職・退職を検討する
詳細については、こちらで解説しています。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→