適応障害とは? 原因や治療方法、うつ病との違いを解説 | キズキビジネスカレッジ  

適応障害とは? 原因や治療方法、うつ病との違いを解説

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。

このコラムでは、適応障害の概要や症状、原因、診断基準、治療方法、治療期間、うつ病との違いなどについて解説します。

適応障害に悩んでいるあなたの参考になれば幸いです。

適応障害とは?

適応障害とは、仕事や職場の人間関係などから生じる特定可能な明確な心理的・社会的ストレスを原因に、心身がうまく対応できず、情緒面の症状や行動面の症状、身体的症状が現れることで、社会生活が著しく困難になっている状態のことです。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、松﨑博光『新版 マジメすぎて、苦しい人たち:私も、適応障害かもしれない…』、新橋スリープ・メンタルクリニック「ストレス性障害(適応障害)」、大阪メンタルクリニック「適応障害」、こころ診療所「適応障害の治し方6つ」、e-ヘルスネット「適応障害」

適応障害は、原因から離れることで、病状はよくなっていきます。職場では調子が悪く、やる気がまったく出ないのに、家に帰ると元気で、趣味に熱中して取り組めるということが往々にしてあります。こうした症状の現れ方から、甘えていると勘違いされやすく、理解されづらいこともあります。

適応障害の症状

適応障害の症状は、情緒面の症状、行動面の症状、身体的症状の3つに分かれます。

具体的な適応障害の症状は以下のとおりです。

情緒面の症状
  • 憂鬱な気分・抑うつ気分
  • 不安感が高まる
  • 無気力
  • 注意力・集中力・記憶力の低下
  • わけもなく悲しくなる
  • イライラする
  • 細かいことがいつまでも気になる
  • 記憶力の低下
行動面の症状
  • 衝動的な言動の増加
  • たばこや飲酒の量の増加
  • 喧嘩や自傷行為
  • 強い貧乏ゆすりなどの落ち着かない動作の増加
身体的症状
  • 動悸
  • 頭痛
  • めまい
  • 冷や汗
  • 息苦しさ
  • 過呼吸
  • 手先や唇の震え
  • 倦怠感
  • 吐き気、膨満感
  • 耳詰まり
  • 耳鳴り

適応障害になった場合、特に仕事の現場では、以下のような状態になることがあります。

  • 欠勤、遅刻、早退が多くなる
  • 出勤するだけで動悸や息苦しさを感じる
  • 書類の記入ミスやデータの入力間違いが増える
  • 同僚や取引先とのコミュニケーションで口論になる
  • 話し合いを嫌がり、人付き合いを避けるようになる
  • 業務中にイライラしたり泣きたくなったり情緒不安定になる

身体面の症状に関しては、内臓疾患や他の病気に由来する要因も考えられます。内科の医療機関を受診を検討しましょう。それでも原因が特定できない場合には、心療内科・精神科やメンタルクリニックなどの医療機関を受診を検討しましょう。

適応障害の原因

適応障害は、特定可能かつ明確な何らかのストレスが原因で発症します。

仕事に関連して適応障害を発症した場合、仕事・職場のストレスとして、以下のような原因が考えられます。

  • 職場環境
  • 人間関係
  • ハラスメント
  • 担当業務
  • ノルマやプレッシャー
  • 働き方・勤務形態
  • 通勤手段

具体的に、以下のような場面に、仕事・職場のストレスを感じやすいとされています。

  • 適性に合わない仕事でミスが続き、成果が出せない
  • 大きな失敗をしてから、後ろめたい気持ちを引きずる
  • どの仕事もやりがいを感じられない
  • 能力に比べて、課されているノルマが重い
  • 仕事を認められず、承認欲求を満たすことができない

ほかにも、人間関係や環境の変化、結婚、出産、引っ越しなどの比較的ポジティブなライフイベントでも適応障害の引き金となることがあります。

なお、ストレスが仕事と関係するようであれば、転職・退職することで、症状がよくなることがあります。もちろん、適応障害を治療するためには、転職・退職しなければならないという意味ではありません。休職や移動、業務量調整などで症状がよくなることもあるため、今すぐ転職・退職しなければならないと、思いつめないようにしましょう。

適応障害の診断基準

アメリカ精神医学会が定めた精神障害の診察基準『DSM-5』によると、適応障害の診断基準は、以下のとおりです。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』

  • はっきりと確認できるストレス因に反応して、そのストレス因の始まりから3カ月以内に情動面または行動面の症状が出現
  • これらの症状や行動は臨床的に意味のあるもので、それは以下のうち1つまたは両方の証拠がある
    (1)症状の重症度や表現型に影響を与えうる外的文脈や文化的要因を考慮に入れても、そのストレス因に不釣り合いな程度や強度をもつ著しい苦痛
    (2)社会的、職業的、または他の重要な領域における機能の重大な障害
  • そのストレス関連障害は他の精神疾患の基準を満たしていないし、すでに存在している精神疾患の単なる悪化でもない
  • その症状は正常の死別反応を示すものではない
  • そのストレス因、またはその結果がひとたび終結すると症状がその後さらに6カ月以上持続することはない

以上の症状があると自分で思っている場合でも、必ず適応障害であるとは限りません。

そのため、一般の人が自己診断をすることは避けるべきです。

適応障害の場合、早期発見・早期治療と、しっかり病院に通うことが大切です。心身の状況に不安があるときは、早めに適切な治療を受けるために、医師や専門家に相談してください。

適応障害の治療方法

この章では、適応障害の治療方法について解説します。

治療方法①環境療法

環境療法とは、患者の生活環境を改善することを重視する療法のことです。

具体的には、ストレスの原因となっている要素を取り除いたり、心地よい環境を整えたりします。例えば、職場の環境を改善することで、ストレスの軽減や心の安定を図ることができます。

職場の人と話し合って、仕事のやり方を変えるのもひとつの方法です。また、転職するのも環境療法となるでしょう。特定のストレスが大きく、適応障害を繰り返していない人には有効です。

治療方法②薬物療法

薬物療法とは、治療薬を服用して症状を和らげる治療法のことです。

具体的には、抗不安薬や抗うつ薬が使われます。これらの薬は、脳内の化学物質のバランスを調整することで、精神状態を安定させる効果があります。

ただし、薬物療法はあくまでも補助的な役割です。そのためうつ病に移行しそうなときに使われることがあります。

治療方法③精神療法

精神療法とは、自分の心に働きかけてストレスの捉え方や付き合い方を変えていく療法のことです。

適応障害の場合、自分を追い詰める考え方を改善する必要があります。

まずは、自分がダメだと自分を追い詰めてしまう癖など、自分の考え方の癖を知り、そのうえでそれを減らせるように意識的に取り組んでいく必要があります。

治療方法④生活療法

生活療法の一つの方法は、日常のルーティンを整えることです。

適応障害では、日常生活の中でのストレスや負担が増えることがあります。そのため、睡眠や食事、運動などの日常の生活習慣を整えることが重要です。

十分な睡眠をとったり、バランスの取れた食事を摂ったりすることで、身体的な健康状態を保つことができます。

また、ストレスを軽減するためには、リラクゼーションやストレス解消の方法を取り入れることも有効です。例えば、ヨガや瞑想などのリラクゼーション法を実践することで、心と体のリラックスを促すことができます。

適応障害の治療期間

適応障害は、長期間にわたって継続することがあります。しかし、一般的には、適応障害の治療期間は個人によって異なります。治療期間は、症状の重さや個人の回復力によっても左右されます。

一般的には治療期間は3か月程度であり、長くても6か月です。(参考:おおかみこころのクリニック「適応障害」

治療期間中には、専門家の指導のもとで、適切な治療方法を選び、症状の軽減や回復を目指すことが重要です。また、治療期間中は、十分な休息やストレスの軽減も大切です。

適応障害の治療期間は長いかもしれません。しかし、適切な治療を受けることで、回復の道を歩んでいくことができます。大切なのは、焦らずにじっくりと向き合い、支えを受けながら治療に取り組むことです。

適応障害とうつ病との違い

適応障害とうつ病の症状は非常に似ている部分がありますが、それぞれ全く異なる疾患です。それぞれ誤診されることも少なくありません。

特に違うのは、ストレス要因の有無と回復にかかる時間です。

まず適応障害は、こちらで解説したとおり、ストレスや環境の変化など明確な原因によって引き起こされます。そのため、原因から離れることで、病状はよくなっていきます。

一方、うつ病は、発症する原因が不明の場合が多いです。また、原因が明確な場合も、原因から離れても症状が続くことがあります。

  • 適応障害:明確な原因がある。原因から離れることで、病状がよくなる傾向にある
  • うつ病:原因がはっきりしないこともある。原因が明確な場合も、原因から離れても症状が続くことがある

適応障害の治療は、ストレスの原因を特定し、それに対処することが重要です。心理療法やストレス管理の技術を学ぶことで、症状を軽減することができます。一方、うつ病の治療には、抗うつ薬や心理療法が一般的に使用されます。

ただし、適応障害とうつ病の境界はあいまいです。適応障害による症状が悪化したり長引いたりすれば、適応障害からうつ病に移行するケースもあります。

まとめ:適切に治療を続けましょう

適応障害を自力で治療することは困難です。

医師やカウンセラーとのつながりを保ち、適切に治療を続けましょう。今は苦しいかもしれませんが、きっとよくなっていきます。

このコラムが、適応障害に悩んでいるあなたの参考になったなら幸いです。

よくある質問(1)

適応障害とはなんですか?

適応障害とは、仕事や職場の人間関係などから生じる特定可能な明確な心理的・社会的ストレスを原因に、心身がうまく対応できず、情緒面の症状や行動面の症状、身体的症状が現れることで、社会生活が著しく困難になっている状態のことです。

詳細については、こちらで解説しています。

よくある質問(2)

適応障害の治療方法を知りたいです。

以下が考えられます。

  • 環境療法
  • 薬物療法
  • 精神療法
  • 生活療法

詳細については、こちらで解説しています。

監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。

【著書ピックアップ】
ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』

Amazon
翔泳社公式 【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2023年7月現在10校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2022年7月現在4校)

【その他著書など(一部)】
学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』

日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧

【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)

サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)

うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。トップページはこちら→

相談予約 LINE相談 相談フォーム 無料資料請求 電話相談
LINEで
相談
フォームで
相談
資料
DL
相談
予約