ひきこもりから働くイメージをしよう〜ひきこもりから社会復帰への道(10)〜
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)利用者でひきこもりを経験した橋本大樹(仮名)です。
私は6年のひきこもり期間を経て、社会復帰のために少しずつ行動してきた者です。
私の経験や、長年ひきこもり支援を行ってきた「株式会社キズキ」の知見にもとづくと、ひきこもりの方には以下のお悩みがあるかと思います。
- このままでいいとは思っていないけど、何から始めたらいいのかわからない...
- 誰も味方がいない気がして、不安で動けない...
- 働いたり、施設に通ってみても、続かないのではないか...
- 無職の期間があるか、働いたことがなく、就職に希望を持てない...
これらの問題を解消してひきこもりが社会復帰する方法を、段階ごとにご紹介していきます。
今回はひきこもりから就活の準備をする方法、特に就労のイメージを具体化する方法について解説します。
ひきこもりの方の社会復帰を目指すきっかけに、少しでもなれば幸いです。
※この記事は、シリーズ「ひきこもりから社会復帰への道」の第10弾です。
前回のコラムは下記よりご覧ください。
シリーズ全体のまとめは下記よりご覧ください。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、ひきこもり状態にある人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
就労のイメージを具体化する
就職活動するのであれば、「自分が仕事をしているイメージ」を具体化していきましょう。
イメージを具体化するためには、仕事に関する情報収集が必須となります。
情報を集めていくと、実際の業務や、求められるスキルが明確になります。
そうすることで、就職のための課題や目標も自然と思いつくでしょう。
目標達成の方法を考えたり、課題解決の方法を探すことで、就労に向けた道筋もできていきます。
就労のイメージを具体化する3つの方法
就労のイメージを具体化する3つの方法を解説します。
方法①就職までの道筋を具体化する
まずは「仕事探しの専門家」に相談してみましょう(すぐ後で例を紹介します)。
専門家に聞くことで、就職までの道筋がより見えてきます。
希望条件を、専門家に伝えて相談してみましょう。
希望条件に合った仕事や求人がなかった場合は、その条件を希望する理由や背景を、伝えてみるといいでしょう。
他の条件で、希望に合った仕事を提案してくれるかもしれません。
また、「あなたが考えている仕事・働き方」よりも、もっとご自身に合うものを提案してくれるかもしれません。
就労に必要なスキルがある場合、職業訓練などを通じてスキルの習得を目指してもいいでしょう。
その場合は、動画や本を探して独学で勉強してみたり、スクールの情報を集めることになります。
スクールを利用するのであれば、複数のサービスから資料請求をしたり、体験授業を受けてみてください。
比較をしながら、ご自身に合った学習の仕方で学びましょう。
- ハローワーク
全国ハローワークの所在案内を参考に、お近くのハローワークに相談してみてください。
また、ハローワークでは、定期的に会社説明会を開いています。
説明会に参加して社員の話を聞くことで、企業に対するイメージが、明確になるでしょう。
- dodaチャレンジ
- ランスタッドチャレンジド
- DIエージェント
- エージェント・サーナ
- クローバーナビ
- 就労移行支援事業所
方法②業種研究&職種研究で具体化する
まずは、自分が向いてそうな職種や業種について調べてみましょう。
その際に、職業情報提供サイト「job tag」を使うことをおすすめします。
job tagとは、厚生労働省が運営する職業情報提供サイトです。サイト内の情報は、職業のイメージを想像しやすいようにつくられています。
「職業の詳細」では、職場の映像を交えた動画もあります(例:一般事務)。
その仕事の実状を映像で知ることで、就職後のイメージが視覚的に理解できるでしょう。
特に、就業経験のない方や、他の業界での再就職先を目指している方には、より役立つかもしれません。
job tagには、以下の情報が掲載されています。
- 求められるスキル
- その仕事に就いている人の興味の傾向
- 仕事の場所や対人業務の頻度など
- テーマ別検索のカテゴリーから、長所や興味に近いものに、チェックを入れて検索してみる。
- 仕事の性質で検索から、自分が条件や環境に近いものにチェックを入れて検索してみる。
- 自己理解をしても、就きたい仕事が曖昧な場合
ー個人での利用ー→職業を検索する→ざっくりとしたイメージから探したい - 自己理解を通して、就きたい仕事が明確になっている場合
ー個人での利用ー→職業を検索する→具体的な条件から探したい
方法③企業研究で具体化する
働きたい業種や職種が明確になったら、それに合った企業や団体の求人を見てみましょう。
- 企業情報の収集は、job tagの求人検索を使ってみる。
- 気になった企業があれば、求人情報をお気に入り登録したり、印刷しておく。
- その企業の情報をさらに詳しく知るために、企業のサイトを検索して見てみる。
- 企業のサイトを見ながら、「企業理念が自分に合っているか」「自分の強みを発揮できる社内環境や業務内容か」などを、より深く考えてみる。
- 就きたい仕事や入社したい企業の条件をメモしておく。
就労への道筋
就労への道筋の例をご紹介します(例であり、「実際のあなた」に向いた手順などは、先述のサポート団体などと話すことで具体的にわかっていくと思います)。
道筋①ひきこもりの特性を活かして働く
私なりに、ひきこもりの方の特徴を考慮しつつ、向いてる仕事の仮説を立ててみました。
もちろん、ひきこもりの方の特性は人によってさまざまなため、一括りにはできません。
オススメの仕事は、あくまで参考にしていただければ幸いです。
ここでは、私自身や、今まで私が関わったひきこもりの方たち、一般的な傾向による特徴を挙げています。
- 誠実
- 優しい
- 注意深い
- 職人気質(黙々と作業に打ち込める)
- 専門家気質(ひとつのことを、ずっと考えていられる)
- 人疲れしやすい
- 1対1だと、会話がしやすい
- 時間をかけて、人間関係を作っていく
- 安心できる場なら、力を発揮できる
上記の特徴を踏まえて、オススメの仕事を紹介します。
- プログラマー
- テクニカルライター
- 一般事務
- データ入力
- ビル施設管理
- セキュリティエキスパート
- カウンセラー(医療福祉分野)
- デバッガー、ホワイトハッカー
- ITサポート事務
- 医療ソーシャルワーカー
- 福祉事務所ケースワーカー
- 介護支援専門員/ケアマネジャー
- 児童相談所相談員
- 児童指導員
- 福祉用具専門相談員など
デバッガーやホワイトハッカー、ITサポート事務などの職業は、実際にキズキビジネスカレッジの利用者(ひきこもり経験あり)が、現在就労されている職種です。
それぞれ注意深く作業に取り組める傾向が強い点、コミュニケーションにおいて精神的負荷がかかりにくい点で、ひきこもり経験者に適しているのかもしれません。
また、いずれも仕事に必要な会話が、ある程度前もって予測できます。したがって、意思疎通に不安がある方でも、構えず対応ができるかもしれません。
道筋②就労継続支援を利用してみる
障害の診断がある方は、就労継続支援A型または就労継続支援B型の利用も検討できます。
就労継続支援A型
就労継続支援A型は、「労働者」として働きながら、一般企業への就職を目指すサービスです。
- 就労移行支援事業を利用したり、特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業等の雇用に結びつかなかった方
- 企業等を離職した方など就労経験のある方で、現に雇用関係がない方
- 生産活動その他の活動の機会の提供(雇用契約に基づく)
- 就労に必要な知識および能力の向上のために必要な訓練
- その他の必要な支援
18歳以上の場合は利用者とその配偶者の所得、18歳未満の場合は児童を監護する保護者の属する世帯(住民基本台帳上の世帯)の所得に応じた自己負担の上限月額があります。
ただし、上限月額よりもサービスに係る費用の1割の金額の方が低い場合には、その金額を支払います。
その他に、食費などについての実費負担があります。
- 月額81,645円(令和3年度)
就労継続支援B型
就労継続支援B型とは、障害や病気・ケガなどで一般就労が難しい人へ、軽作業や生産活動の機会を提供する福祉サービスです。
障害者総合支援法に基づいた福祉サービスで、雇用契約を結ばずに自分の体調に合わせて働くことができます(作業に応じて「工賃」を受け取ることができます)。
作業内容は、商品の製作や調理、清掃など、事業所ごとに様々です。
就労継続支援B型については、下記のコラムをご参照ください。
道筋③インターンシップへの参加
一般に、「インターンシップ」と聞くと、「新卒の大学生が参加するもの」というイメージがあると思います。
しかし、現在は既卒者や社会人向けのインターンも増えてきています。
「実務を体験してから考えたい」という方は、インターンへの参加を検討してみてください。
一部の企業は、未経験や無職も対象としているようです(例:インターンシップマッチングサービス「キャリターン」の未経験&無職OKの検索結果)。
また、20代の方対象ですが、UZUZという人材紹介サービスもあります。「就労経験が全くない」など、就労への道筋をご自身で立てにくい方は、利用してみるのもいいかもしれません。
障害をお持ちの方が「就労移行支援」を利用する場合は、職員にインターンについて相談してみるのもよいでしょう。
あなたが前を向いて行動を起こすきっかけに
ここまで、ひきこもりから働くイメージをする方法について解説してきました。お読みいただき、ありがとうございました。
この記事が、あなたが前を向いて行動を起こすきっかけになることを願っています。
「病気や障害が関連してひきこもりになった方」や「ひきこもり生活中に病気になった方」「ひきこもりからの就職を希望する方」は、キズキビジネスカレッジにご相談ください。
「ひきこもりからの学び直し(高校受験、大学受験など)を希望する方」は、キズキ共育塾にご相談ください。
『世界一やさしい「やりたいこと」の見つけ方』 八木 仁平著
『「とりあえず」就職するための本』 しまだ やすひろ著