ひきこもりからの就活準備のため自己理解をしよう(大事なこと編)〜ひきこもりから社会復帰への道(7)〜 | キズキビジネスカレッジ  

ひきこもりからの就活準備のため自己理解をしよう(大事なこと編)〜ひきこもりから社会復帰への道(7)〜

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)利用者でひきこもりを経験した橋本大樹(仮名)です。

筆者は6年のひきこもり期間を経て、社会復帰のために少しずつ行動してきた者です。

筆者の経験や、長年ひきこもり支援を行ってきた「株式会社キズキ」の知見にもとづくと、ひきこもりの方には以下のお悩みがあるかと思います。

  • このままでいいとは思っていないけど、何から始めたらいいのかわからない...
  • 誰も味方がいない気がして、不安で動けない...
  • 働いたり、施設に通ってみても、続かないのではないか...
  • 無職の期間があるか、働いたことがなく、就職に希望を持てない...

これらの問題を解消してひきこもりが社会復帰する方法を、段階ごとにご紹介していきます。

このコラムでは、ひきこもりから就活の準備をする方法について解説します。

ひきこもりの方の社会復帰を目指すきっかけに、少しでもなれば幸いです。

※このコラムは、シリーズ「ひきこもりから社会復帰への道」の第7弾です。
前回のコラムは以下よりご覧ください。

ひきこもりの居場所となる当事者会とは?見つけ方や参加するための5つのポイントを解説〜ひきこもりから社会復帰への道(6)〜

シリーズ全体のまとめは以下よりご覧ください。

ひきこもりから社会復帰への道 4つのステップから細かく解説

私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、就活中のひきこもり状態にある人のための就労移行支援事業所です。

  • 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
  • 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
  • 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月

新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。

ひきこもりから「就職」で社会復帰する場合の前提

ひきこもりが社会復帰するには、まず就職活動の準備から

就職をひきこもりからの社会復帰の目的にしている人は、その準備をしていくことになります。

気持ちがある程度安定していても、就職活動を行うと、新たに大きな精神的負荷がかかることもあります。

就職活動には企業などの他者評価が関わってきます。他者評価を考えたり、不採用が続いたりすると、ストレスが強くかかりやすくなります。

また、就職活動の準備にもエネルギーが必要になります。

ぜひ、そんなあなたをサポートする人を見つけてください(家族や友人などに限らず、サポート団体はたくさんあります)。

特に、能力に関係なく自分を受け入れてくれる人がいるならば、その人は就職活動全般においても、精神的に大きな支えになってくれます。

さらには、就職活動を進めるための気づきを与えてくれることもあるでしょう。

前に進んだり戻ったりしながら、ゆっくり就職を目指していきましょう。

就職するには、「自分がどう働いていくか」を考えるためには、自己理解と働くイメージの具体化が欠かせません。

また、就職準備を終わらせて、選考に進んで就職までたどり着くまでには、時間がかかります。

長い期間でしっかりと考えたほうが、自分の納得の行く仕事に就きやすくなるでしょう。

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まずは自己理解をする

まずは自己理解をする

仕事を探す前に、まずは自己理解から始めましょう。

前もって自分のことを知って言葉にしておくと、向いてる仕事を見つけやすくなるでしょう。

また、履歴書や面接などの対策もしやすくなります。

就活がスムーズに行けば、挫折を防ぎつつ、社会復帰へのモチベーションを保ち続けやすくなります。

自己理解をするときに気をつけること

自己理解をするときに気をつけること

就職活動をするには、ご自身の過去に対して、ある程度前向きな姿勢が必要です。

就職活動では過去のことから得た学びなどを話す機会が多くあるからです。

自己理解を行ってる途中で、過去の嫌なことなどを思い出して気分が悪くなってくることがあるかもしれません。

気分が悪くなったら、一度作業をやめて休みましょう。

そして、調子が戻ってきたときに、再度自己理解を行ってください。

現在通院されている場合は、自己理解に取り組む前に、主治医に相談しましょう。カウンセラーにトラウマ治療を施してもらうことも、検討してみてください。

当コラムを見ながら自己理解をするときは、「とりあえず今の自分はこうかな?」と考えながら、自分と向き合ってみてください。

自己理解は難しいのでハードルを下げる必要があります。また、本当の自分を追い求め続けると作業が終わらなくなるでしょう。

さらに、自己には、行動や経験を通して、少しずつ変わっていく面もあります。そのため、理解しきれないこともあります。

むしろ不変的な自己を設定すると、成長が止まることもあります。

成長した自分が想像できなくなると、就職活動で、採用側に将来のキャリア像を伝えるのが難しくなってきます。

そのため、自己理解では「自分とは何かの仮説」を立てることを、意識してください。

仮説ですので、就活で選考を実際に進めているなかで、自己の仮説に違和感を覚える(=自己理解が間違っていたとわかる)こともあるでしょう。

そんなときは、自己理解の作業の中で間違っていた箇所を見つけて、再度考え直してみましょう。

そして、仮説を修正したり、新たな仮説を立ててみてください。

自己理解の手順

自己理解の手順

自己理解の手順は、以下の通りです。

自己理解の手順
  1. 大事なこと(価値観)の理解
  2. 得意なこと(長所や強み)の理解
  3. 好きなこと(興味や関心)の理解

1〜3の順でやっていく理由は、自分のやりたいことを実現するのに、現実味が出るからです。

好きなことを先に自由に考えたなら、あとで考えたときに「現実には厳しいし、やはり好きなだけでは無理かも」と、思いやすくなるでしょう。

しかし、得意なことを先に理解できていると、現実味を帯びてきます。

なぜなら、「好きなことの中で、自分は何が得意なのか?」と、具体的な想像をしやすくなるからです。

得意なこととは、充実していて、成果も出せそうなことです。

したがって、ご自身の得意なことがわかっていると、「〜をやるのは楽しいだけで無理かもしれない。だけど、〜なら楽しく結果を出せそうだな」と、諦めきることが少なくなります。

また、得意なことの前に大事なことも分かってると、就く仕事に対して適切な判断がしやすくなります。

就職活動で言えば、内定をもらった企業で本当に働くかを決めるための判断材料になります。

「本当にこれを、仕事にしていいのだろうか」と迷ったとき時は、自分の大事なこと(価値観)価値観を基準に仕分けをしましょう。

以上をまとめると、以下になります。

  • 「⒈大事なことの理解」で、自分の仕事の大原則を決めて、
  • 「⒉得意なことの理解」で、自分の仕事の実現性を高めて、
  • 「⒊好きなことの理解」で、自分の仕事をやりたいようにやる。

ここでは、大事なこと(価値観)の理解をする方法について解説します。

大事なこと(価値観)を理解することによる5つのメリット

大事なこと(価値観)の理解

大事なこと(価値観)は、(いまの)自分にとって、どうしても譲れないことと言えます。

就職活動や働くことについて、自分の大事なこと(価値観)について考えると、以下の5つのメリットがあります。

なお、価値観は、脳が「自分にとって、とても大切なもの」と認識しているので、一朝一夕で変えるのが困難です。

誰かの価値観とあなたの価値観を比較して考えたときに、ご自身がどうしても退けないことなら、相手と袂を分かつこと(=就職活動でいえば、合わないところへの就職活動を中止すること)もひとつの道かもしれません。

メリット①人生において重要な判断材料になる

自分の価値観は、人生においてさまざまな決断をする上で、重要な判断材料になります。

仕事だけでなく、人生の決断に迷ったときは、大事なこと(価値観)の理解をするために行った作業を見返してみましょう。

メリット②人間関係に役立つ

自分の価値観を知ることは、人間関係にも役立ちます。

自分の価値観を理解していれば、相手との価値観の違いも知ることができます。

そうすれば、相互理解のきっかけになるかもしれません。

また、日常で何か気になることがあっても、「自分(の価値観)とは、関係のないことだな」と気付ければ、受け流すことができるかもしれません。

メリット③「自分が仕事に求める最低条件」を想像しやすくなる

仕事の場面での大事なこと(価値観)とは、自分が働く上で、どうしても譲れないことです。

求人で言えば、雇用形態や勤務時間などに関しての、働く上での絶対条件の設定にも関わってきます。

働く上での絶対条件がわかっていれば、必要な所得や労働時間などを理解するヒントになります。

「自分が最優先すべき大事なこと(価値観)を維持するには、何が必要で、いくらかかるだろう」「何時間働けばいいのだろう」と、給与や勤務時間、雇用形態などを決める指標にしてみてください。

メリット④志望動機を作成しやすくなる

就職活動の選考では、必ず志望動機が聞かれます。

自分の大事なこと(価値観)を理解して言語化できていれば、適切な志望動機を作成しやすくなるでしょう。

なぜなら応募先の理念と自分の大事なこと(価値観)との接点という視点で書けるようになるからです。

志望動機をすぐに作成することができれば、書類提出の締め切りに余裕を持って送付できます。

また、複数の求人に応募している場合でも、並行して選考を進めやすくなります。

志望動機を書く際には、大事なこと(価値観)を考える上で

仕事の目的をもとに、作成していきましょう。

メリット⑤信念を持って働きやすくなる

自分の価値基準にあった仕事に就くことで「自分の仕事には意味があり、誇れることだ」と感じることができます。

そう感じられることで、幸福感が増して、精神の安定にもつながります。

たとえ仕事が上手く行かないときでも、「今は大変でも、自分の信念に関係する仕事だから頑張ろう」と、前向きに考え直すことができるでしょう。

自身の価値観と照らし合わることで、「これでは自分の土台となる価値が満たされてないから、自分の信念が達成できない。休もう」と、大事なことが自分の状態を知らせてくれることもあるでしょう。

大事なこと(価値観)を深く知るための7つの手順

大事なこと(価値観)を深く知るための7つの手順

大事なことを深く知るための方法の例として、以下7つの手順があります。試してみて、ご自身の価値観をより深堀りしてみましょう(例であり、他にも方法はあります)。

手順①これまでの人生を振り返って、大切にしてきたこと思い浮かべる

これまでの人生を振り返って、大事なこと(価値観)を見つけてみましょう。

振り返りの例
  • 幼いころや思春期にあった、忘れられない出来事や経験を思い出して、今の自分への影響を考えてみる
  • 「自分は人生で何を大事にしてそうか」と、周囲の人に聞いてみる
  • 自分の子どもや他人に助言するときに、教えたい人生の教訓を考えてみる
  • 自分の子どもや他人に助言するときに、教えたくないことの反対のことを考えてみる
  • 今の社会に足りないものを考えてみる
  • さまざまな分野のニュースや報道を見て、自分が感じたことに焦点を当てて考えてみる
  • 自分が尊敬する人物(家族、友人、歴史上の人物、架空の人物など)の生き方を考えてみる

手順②思い浮かべたエピソードを掘り下げ、15個程度のキーワードにして抽出する

これまでの人生を振り返って、思い浮かべたエピソードを端的な言葉で表現して、キーワードにしてみましょう。ここでは、自分が尊敬する人物の生き方に関連した例を紹介します。

<例>

尊敬する人/ジャンヌダルク
百年戦争末期に、若いながらフランスの危機を救ったのはすごいと思う。
自分も集団に貢献したい、誰かを助けたいと思ったから尊敬している。

キーワード:名声、献身、思いやり、○○、●●、△△、…

手順③他人軸な価値観を自分軸に変換する

以上で挙げたキーワードのうち、他人軸な価値観を自分軸に変換してみましょう。

他人軸な価値観とは、「他人から〜されたい」と思ってる価値観や、富や名声に関する価値観のことです。

「それを達成することで何をしたいのか?」と、自分軸の価値観に変えてみましょう。

<例>

名声(=他人軸な価値観)
→名声を得ることで何がしたいか。
→人に認められたい。
→では、人に認められることで、何がしたいか。
→人に認められることで、「自分は自分でいいんだ」と安心したい。
安心(=自分軸の価値観)

手順④抽出したキーワードを、さらに5個程度のカテゴリーでまとめてみる

抽出したキーワードを、さらに5個程度のカテゴリーでまとめてみましょう。

3キーワードをカテゴリーでまとめた例
  • 一歩一歩、行動、改善→前進
  • 名声、信頼、居場所→安心
  • 思いやり、献身、サポート、助ける→協力
  • ゆっくり、熟考、準備→ゆとり
  • 発見、気づき、学び、面白い→好奇心

マインドマップツール「miro」を使用するとキーワードを効率的にカテゴリーにまとめられます。

キーワードを付せんに書いた後に、似たキーワードを同じ色の付せんにしたり、カテゴリー名をタグ付けしてまとめるとより効果的でしょう。

手順⑤カテゴリーで価値観ランキングをつくる

カテゴリーを並べて、価値観に優先順位をつけてみましょう。

土台となる最初に満たすべき価値観(最上位の価値観)や、最終目標となる価値観(最下位の価値観)を考えながらランク付けしていくといいでしょう。

順位をつけることで、将来のキャリア像が見えてきたり、仕事選びで迷ったときの指標にもなります。

優先順位の例
  • 1位:安心
    安心できる居場所があれば、ゆとりができる。
  • 2位:ゆとり
    ゆとりができれば、誰かに協力して、助ける余裕もできる。
  • 3位:協力
    誰かに協力して助けることができれば、自信が湧いて行動する意欲が湧く。 行動できたら、前進できる。
  • 4位:前進
    前進する中で、学びを得ることができる。
    それにより気づきを得られる。気づいて理解ができれば、学ぶことが楽しくなる。
    そして、最終的に昔の好奇心旺盛だった自分を、取り戻すことができる。
  • 5位:好奇心
    最終目標達成

「~(上位の価値観)を達成できれば、~(下位の価値観)が達成できる」と、隣接する価値観のつながりを確認してみましょう。

確認した結果、価値観同士のつながりが順序良く下に降りて行くようであればOKです。

いくら並べ替えても過程が想像できない場合は、グループ内のキーワードも確認してみましょう。

キーワードを確認しながら過程を考えることで、隣接する価値観のつながりが、見えてきやすくなります。

手順⑥人にために何かしようとした経験を10個挙げる

人のために何かしようとした経験を10個挙げてみてください。

「しようとした経験」でOKです(「実際に相手が喜んでくれたか」は、考慮する必要はありません)。

与えようとした価値の例
  1. ひきこもり当事者会で、他の人のつらい話を聞いて、理解しようとした。
    →安心、協力
  2. オンラインで好きなアニメについて語ることで、その面白さを伝えようとした。
    →好奇心
  3. 当事者会で、通院のお金に困っている人がいたので、自立医療支援制度を教えた。
    →安心、前進、協力
  4. 小学生の頃に、転校生と帰り道が同じだったので、一緒に下校して仲よくなろうとした。
    →安心、協力
  5. 小学時代にクラスでオリジナルゲームが流行ったとき、さらにゲームを面白くするために、追加ルールを提案した。
    →好奇心、前進、協力
  6. 中学時代に、友達に自分が好きな教科の勉強を教えた。
    →前進、好奇心
  7. 中学時代に、姉が誕生日にほしいものを母から聞いておいて、当日にプレゼントした。
    →好奇心
  8. 高校時代に入っていた合唱部で、部員がいなくて廃部になりそうな中、最後までいた。
    →協力
  9. ひきこもりのブログを書くことで、他のひきこもり当事者にも、「ひとりじゃない」と思ってもらえるようにした。
    →安心、協力
  10. 文を書くのが好きだったので、高校時代にクラス会議の書記を務めて、クラスの意見をまとめるようにした。
    →協力

手順⑦「仕事の目的」を設定する

以下の手順で仕事の目的を設定してみましょう。

10個思い付いたら、今度は該当するカテゴリーに当てはめていきます(1個のエピソードに複数のカテゴリーが該当しても可)。

そして最後に該当カテゴリーの数を数えて、もっとも多いものを仕事の目的にするのです。

目的が思いつかない場合は、1番目と2番目に多いカテゴリーを掛け合わせて考えてみましょう。

集計結果の例
  • 価値観グループ:合計数:順位
  • 安心:4:2位○
  • ゆとり:0:5位
  • 協力:7:1位◎
  • 前進:3:4位
  • 好奇心:4:3位

<仕事の目的の例>

協力+安心=「集団の中で人と協力しながら、安心できる雰囲気や場所をつくる」

あなたが前を向いて行動を起こすきっかけに

ひとりで生活管理をすることが難しい場合

ここまで、自己理解の方法、特に大事なこと(価値観)を理解する方法について解説してきました。お読みいただき、ありがとうございました。

このコラムが、あなたが前を向いて行動を起こすきっかけになることを願っています。

病気や障害が関連してひきこもりになった方やひきこもり生活中に病気になった方、ひきこもりからの就職を希望する方は、キズキビジネスカレッジにご相談ください。

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