就労移行支援は障害者手帳なしで利用可能? 体験談を紹介
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)利用者の金山(仮名)です。
就労移行支援の利用を検討している人は、仕事や生活の面で以下のような悩みがあると思います。
- 自分に合う仕事がわからない
- 仕事を続けられる自信がない
- 自分自身の理解を深めたい
このコラムでは、このような悩みを持つ人に向けて、就労移行支援の利用に必要なものや利用するまでの手順、就労移行支援を利用するメリットとデメリット・注意点について解説します。あわせて、障害者手帳なしで就労移行支援を利用した筆者の体験談を紹介します。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、障害者手帳なしで就労移行支援の利用を検討している人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
就労移行支援は障害者手帳なしで利用できる可能性がある
結論から書くと、障害者手帳がなくても就労移行支援を利用できる場合があります。
筆者を含め、キズキビジネスカレッジ(KBC)の利用者にも、障害者手帳なしで就労移行支援を利用している人はいます。
なお、障害者手帳が必要かどうかは、お住いの自治体の判断によって異なります。
お住まいの自治体の障害福祉を担当する部署・窓口に、必ず確認するようにしましょう。
なお、厚生労働省によると、就労移行支援の対象者は以下のとおりです。(参考:厚生労働省「就労移行支援について」)
- 一般就労等を希望し、知識・能力の向上、実習、職場探し等を通じ、適性に合った職場への就労等が見込まれる障害者 (65歳未満の者)
- 企業等への就労を希望する者
就労移行支援の利用に必要な障害者福祉サービス受給者証とは?
この章では、障害者福祉サービス受給者証の概要と申請時に必要な書類について解説します。
障害者福祉サービス受給者証の概要
障害者福祉サービス受給者証とは、障害福祉に関するさまざまなサービスを利用する際に必要な認定証のことです。省略して、受給者証と呼ばれることもあります。障害福祉サービスの1つである就労移行支援も、受給者証が給付されていることが利用の条件となります。
この章で紹介する書類のいずれかが申請には必要となります。
書類①医師の診断書
発達障害や精神障害だけでなく、鬱や適応障害などの診断が下りた場合、医師から診断書をもらうことで障害者福祉サービス受給者証の申請に使用できる可能性があります。
筆者は障害者手帳なしで就労移行支援を利用していますが、適応障害の診断書を提出して障害者福祉サービス受給者証を取得しました。
書類②自立支援医療受給者証
精神科に定期的に通院している場合や、必要が認められた場合に所得できる自立支援医療受給者証でも、障害者福祉サービス受給者証の申請に使用されたケースがあります。
筆者の場合、自立支援医療受給者証を使って障害者福祉サービス受給者証は申請はしていませんが、精神科の通院の際に保険適用料金と薬剤量が1割負担になるため取得していました。
書類③障害者手帳
もちろん、障害者手帳も障害者福祉サービス受給者証を申請する際に利用可能です。
障害者手帳とは、障害がある人に交付される手帳のことです。障害者手帳をお持ちの人は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)の対象となり、さまざまな支援が受けられます。(参考:厚生労働省「障害者手帳について」、e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)
障害者手帳の種類は、以下のとおりです。
- 身体障害者手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
- 療育手帳
気になる人は、お住まいの自治体の障害福祉を担当する部署・窓口にご相談ください。
どの種類の障害者手帳を所持していても、障害者福祉サービス受給者証の申請に必要な条件は満たしています。それぞれの障害者手帳の取得には申請が必要です。
障害者手帳の申請方法などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
就労移行支援を利用する流れ
この章では、サービス受給者証の申請から就労移行支援サービスの利用開始まで就労移行支援を利用する流れについて解説します。
全てのステップが終了するまでの期間は1週間〜2か月程度かかります。
流れ①申請・調査
障害者福祉サービス受給者証の申請には、お住まいの自治体で手続きをする必要があります。
お住まいの自治体の障害福祉を担当する部署・窓口にて、就労移行支援を利用するために障害者福祉サービス受給者証を申請したい旨を伝えましょう。後日行われる認定調査の日程調整を行って、申請ステップは終了です。
調査は役所で行う場合や、家に訪問に来てもらう場合などがあります。
また、調査の日程までに就労移行支援を利用したい理由や、利用スケジュールなどに関する計画書であるサービス等利用計画案の提出が求められます。
就労移行支援を利用しながら、どのような生活を送りたいかなどをあらかじめ考えて作成しておきましょう。なお、セルフプランが認められていない自治体もあるため、事前に確認しておくといいでしょう。
調査は役所の混み具合によって1週間〜1か月程度かかります。
流れ②審査
申請ステップで決定した日時に担当職員と面談し、居住地や介助者がいるか、日常的に問題を抱えているかどうかなどの心身の状況に関する106項目のアセスメントに答えます。
また、申請ステップの際に依頼されたサービス等利用計画案の提出を行います。
主に生活リズムが整っているかや就労移行支援をいつから利用するのかなどが問われる程度になります。
流れ③取得
以上のステップ終了後、受給資格が得られるかどうかの連絡を待ちます。
受給資格が得られる場合には、基本的に電話で通知がきます。その際に障害者福祉サービス受給者証の有効期間を確認し、障害者福祉サービス受給者証の到着を待つだけです。
障害者福祉サービス受給者証がない段階での体験通所を実施している就労移行支援事業所もあります。気になる事業所をあらかじめ比較してみましょう。
就労移行支援とは?
就労移行支援とは、一般企業などへの就職を希望している病気や障害のある人を対象としたサービスのことです。就職に必要な知識や能力を養い、企業などへの就労につなげる役割を担ってます。
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づいて行われる福祉サービスです。実際のサービスは、国の基準を満たしたさまざまな民間の就労移行支援事業所が行います。(参考:e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)
就労移行支援の支援内容
就労移行支援では、ビジネスマナーからマーケティング、ライティングなどのスキルアップ系の講習、病気や障害について学ぶ自己理解系の講習、体調管理・メンタル面の相談、就職活動のサポートなど、できることは多岐にわたります。
人によって、精神障害などの特性への理解を進めるために通所していたり、まず外に出ることを目標として通所していたり、コミュニケーションの取り方の習得を目的として通所していたりと、その目的はさまざまです。
例えば、就労移行支援事業所であるキズキビジネスカレッジ(KBC)では、英語やプログラミング、動画編集、ライティングなど、幅広いプログラムを展開しており、利用者ごとにスケジュールを組むことが可能です。
キズキビジネスカレッジ(KBC)「プログラム内容」
筆者はADHDグレーゾーンがあることで、スケジュール管理や優先順位のつけ方が苦手です。また適応障害の症状から不安を感じやすい傾向もあります。
そのため、個別面談でそれぞれの分析と対策をスタッフと行いながら、英語やライティングのスキルを磨いています。
就労移行支援の通所期間と利用料金
就労移行支援は企業への就職を目的とするため、原則24か月の利用制限が設けられています。場合により12か月以内での延長が認められるケースもあります。
また、就職が決まった後に行われる職場で仕事を続けるための本人、スタッフ、職場の上司による定期的な3者面談などの職場定着支援は、3年間まで利用可能です。(参考:厚生労働省「就労移行支援事業 就労移行支援事業」)
利用料金に関しては前年度の所得によって変わってきます。詳しくは以下をご覧ください。
- 世帯の収入状況:生活保護受給世帯
- 負担上限月額:0円
- 世帯の収入状況:市町村民税非課税世帯(注1)
- 負担上限月額:0円
- 世帯の収入状況:市町村民税課税世帯(所得割16万円(注2)未満)※入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者を除きます(注3)。
- 負担上限月額:9,300円
- 世帯の収入状況:上記以外
- 負担上限月額:37,200円
(注1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。
(注2)収入が概ね670万以下の世帯が対象になります。
(注3)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。
(参考:厚生労働省「障害者の利用者負担」 )
補足:就労移行支援以外の就労支援機関
就労移行支援以外の就職サポートは複数あります。例えば、以下のようなものが挙げられます。
- 転職エージェント
- 就労継続支援
- ハローワーク
転職エージェントは、利用者と企業の間に立って求人紹介などをサポートするサービスです。
就労移行支援は、スキルや知識、自己特性理解や体調管理などに関する講習を行っているため、安定して就労できる状態になるためのサポートをメインとするサービスであるため、その役割が異なります。
一般的に、就労移行支援を利用して希望の職種で働けるように訓練しながら、転職エージェントで求人を探していく方法が多くとられています。なお、就労移行支援では、見つけた求人についてスタッフと相談することも可能です。
就労継続支援は、就労するまでのサポートを行う就労移行支援とは異なり、利用期間の制限がありません。事業所内での作業により、生産活動や労働の機会を得ることが主な目的になります。
ハローワークは利用者に対して求人紹介や就職のためのアドバイスを行います。また、在職中の人を含め、すべての求職者が対象となる点で、就労移行支援と異なります。書類作成や就職活動に関してのサポートは行っていますが、就労移行支援に比べて特性理解や支援サービスの充実度合が低い傾向にあると言えるでしょう。
就労移行支援を利用するメリットとデメリット・注意点
この章では、就労移行支援を利用するメリットとデメリット・注意点について解説します。
基本的に知識の習得や個別相談による体調管理、生活リズムの改善等がメリットとなる一方、懸念事項もあります。
就労移行支援を利用するメリット
就労移行支援を利用するメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
- 自己特性を理解できる
- メンタルケアのサポートを利用できる
- スキルアップのための講座を受講できる
- 就職活動のサポートを利用できる
- 生活習慣などの体調面のサポートを利用できる
就労移行支援を利用するメリットは、発達特性やメンタルケアなどの自己理解、ビジネスマナーからスキルアップのためのマーケティングやWEBデザイン等の講座を受けられることです。
個人の目的や発達特性、状況に応じてスタッフと方針を決めて必要講座を取っていくことや、就労や生活環境改善などのために相談にのってもらえます。就職に向けた動きをする上でプロによるサポートが受けられるところがメリットと言えます。
また、精神障害や発達障害などに関する似たような悩みを持つ利用者が多いため、孤独感を感じづらい点もメリットとして挙げられるでしょう。
講座中のグループワークなど、他の利用者と関わる機会が多い就労移行支援事業所もあります。障害の特性による困難を抱えながらも就労を目指している同じ立場の人同士で悩みや意見を共有することもできるでしょう。
就労移行支援を利用するデメリット・注意点
就労移行支援を利用するデメリットとして、以下のようなものが挙げられます。
- アルバイトができない
- 時間を浪費してしまう可能性がある
- 費用が高くつく可能性がある
就労移行支援の利用中は原則アルバイトを含め働くことができません。
また、スキル習得など多くの種類のことができる反面、就労移行支援を利用する目的を明確にしないと、ただ時間が過ぎていってしまう可能性があるでしょう。
自分が最終的にどのような職場で働きたいのか、そのために就労移行支援をどのように利用していきたいかを明確にすることが大切になります。あなたが思い描く就労までのゴールや、それに至るためのプロセスを明確にすることで、より効率的に就労移行支援を利用できると思います。
また、前年度の収入によっては費用が高くなる可能性がある点もデメリット・注意点として挙げられます。金銭面での負担には注意が必要です。
障害者手帳なしで就労移行支援を利用した筆者の体験談
この章では、障害者手帳なしで就労移行支援を利用した筆者の体験談を紹介します。
障害者手帳を持っていないのに利用できて驚いた
私は今までに適応障害で仕事を3回辞めています。過去に精神科で注意散漫な傾向がかなり高いいわゆるADHDグレーゾーンと診断され、日常生活でも生きづらさを感じていました。
自分に自信がなく、仕事も何が向いているのかわからず、途方に暮れている中で見つけたのが就労移行支援でした。
はじめは「障害者手帳を持っていないのに利用できるのかな?」と不安でしたが、キズキビジネスカレッジ(KBC)に連絡した後、トントンと事が進み、あっさり利用開始できたことに驚いたのを覚えています。
私がはじめに重視したことは自己理解とスキルアップです。まずは、自分の特性に対する対策を行うために自己理解を進めること、また、就職につなげるための知識やスキルを習得することが、私にとって重要だと考えました。
スタッフの提案を実行して前に進んでいる実感を覚えた特性上、私はマルチタスクやスケジュール管理が苦手です。他の人と比較して「自分はできないんだ」と、しんどくなってきたことが、スタッフさんとの面談や自己理解講座の中でわかってきました。
また、極端に自己評価が低いことも影響していたため、自分の捉え方を変えるとよいこともわかりました。
そんな自分の特性と傾向に対する対策として、キズキビジネスカレッジ(KBC)のスタッフさんから提案していただいた認知行動療法に取り組みました。
認知行動療法に取り組む中で、自分の感じ方を言語化することや、歪んだ捉え方を変えることに重きを置きました。その結果、自分の特性を理解することや行動を変化させることができ、前に進んでいると感じたのを覚えています。
希望している仕事に使えるスキルを養えた
就労移行支援を利用し始めたときは、自分が就労に向けてどのスキルや知識をつけていくべきかわかりませんでした。
そのため、自分が働く上で必要なものや適性を見極めるために、すべての講座を受講しました。その後、以前から興味のあった英語と、新しくチャレンジしたいと思ったライティングに力を入れていきました。
スタッフさんと相談する中で、英語とライティングは自分の適性や興味にもあっていると気づきました。自分が希望している仕事にも使える内容だったので、現在も力を入れています。これらのスキルは、就職の書類選考や面接時にも役立っています。
ほかにもキズキビジネスカレッジ(KBC)のスタッフさんに日頃の不安や就職に関する相談ができるため安心して利用できています。
また、他の利用者との交流を目的とした意見交流会や講座内のグループワークを通して仲間ができたことも安心して利用できている理由の一つかもしれません。
まとめ:就労移行支援は障害者手帳はなくても利用できる可能性がある
就労移行支援は障害者手帳なしでも利用できる可能性があります。
まずは、お住いの自治体や近隣の就労移行支援事業所に確認してみることをオススメします。
もし、あなたが現在就労をしておらず、問題を抱えているなら、まずは相談してみてください。
実際に利用する場合は、就労移行支援事業所のスタッフさんに相談してみたり、私のコラムを参考にしてみてください。このコラムがあなたの悩みを解決する手助けになったなら幸いです。
就労移行支援は障害者手帳なしでも利用できますか?
障害者手帳が必要かどうかは、お住いの自治体の判断によって異なります。お住まいの自治体の障害福祉を担当する部署・窓口に、必ず確認するようにしましょう。
詳細については、こちらで解説しています。
就労移行支援を利用する流れを教えてください。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
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