吃音のある人が実践できる仕事術 向いてる仕事を解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
吃音のあるあなたや吃音について関心があるあなたは、仕事について以下のような悩みを抱えているのではないでしょうか?
- 電話に出るとき、どもらないか心配になる
- 朝礼のスピーチで人前に立つとうまく話せなくなる
- 大事なプレゼンほど言葉に詰まってスムーズに話せない
吃音のある人がストレスなく働くためには、仕事の向き不向きを知ったり、業務中に工夫したりすることが重要です。
このコラムでは、吃音のある人に向いている仕事や向いていない仕事、実践できる仕事術について解説します。あわせて、吃音のある人が利用できる支援制度・支援機関を紹介します。また、吃音のある人と一緒に働く人に向けて、職場でできる対応についても解説します。
吃音が原因で仕事に困難を抱えている人は、ぜひ参考にしてください。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、吃音のある人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
吃音のある人が抱える仕事上の困難4選
この章では、吃音のある人が抱える仕事上の困難について解説します。
何が困難と感じるかによって、対処法が異なります。
自分に適した対処法を知るためにも、まずは仕事上の困難を明確にしましょう。(参考:菊池良和『吃音の合理的配慮』、飯村大智『吃音と就職 先輩から学ぶ上手に働くコツ』)
困難①人と話すときにすぐどもる
人と話すときに吃音の症状が出ることで、業務に影響するケースは少なくありません。
吃音のある人は卒業式や授業中などの人前で話す場面で緊張して、「はい」などの短い単語もうまく言えなかった経験があるでしょう。
緊張や不安を感じると吃音の症状は出やすくなるため、仕事で人前に出るとうまく話せなくなる人は多くいます。
例えば、会議中に意見を求められても、緊張して、うまく伝えられない事例が見られます。
意見を求められても、多くの人がいるとなかなか発言ができないかもしれません。
話せないと、評価が下がってしまうと心配になる人もいるでしょう。
困難②うまく電話ができない
吃音のある人は仕事中、うまく電話ができず困っているケースがよく見られます。
電話は相手の顔や状況がわからず、会話ですべてを伝え、理解しなければならないので、吃音のある人にとっては大きな負担です。
また吃音で言葉に詰まる人は、言いやすい言葉に変換して対処する傾向がありますが、自分の名前は他の言葉に言い換えられません。
電話対応では毎回自分の名前を言う必要があるため、吃音のある人にとっては難易度が高いでしょう。
特に新入社員や事務職・営業職の場合、すぐに電話を取らなければなりません。
しかし電話を取ると症状が出て、電話先の人から叱責を受けることも。とはいえ電話に出ると上司から怒られたり、評価に響きます。
症状と評価を意識してしまい、ストレスや不安が増えたり、業務をスムーズに進められなくなることは珍しくありません。
困難③大事な場面で言葉がつまる
プレゼンや商談など、大事な場面で言葉がつまる点も吃音がある人が直面する困難のひとつです。
吃音は緊張や不安を感じたときに出やすくなるので、仕事で大事な局面ほど、吃音の症状が起こる可能性が高くなります。
例えば、最初に自分の名前を言えなかったり、提案内容に関わる重要な言葉が出てこなかったりする事例が見られます。
プレゼンや商談でうまく会話できないと、顧客の信頼を得られません。
さらに、ただ言葉に詰まるだけでなく、会社の利益や経営に大きく影響する恐れがあるため、そのような業務にストレスを感じる人もいるでしょう。
困難④社内外のコミュニケーションに影響が出る
吃音の症状が影響して、社内外のコミュニケーションに影響が出た人も少なくありません。
「ありがとうございます」「いらっしゃいませ」「おはようございます」「お世話になっております」「お疲れ様です」「お先に失礼いたします」など、仕事の場面でよく使われる言葉が言いにくいという吃音のある人は少なくありません。
挨拶やお礼の言葉がうまく言えないと、コミュニケーションに支障をきたす可能性があります。
吃音のある人が実践できる仕事術6選
吃音のある人でも、業務の進め方を工夫すれば、仕事上の困難を減らせます。
この章では、吃音のある人が実践できる仕事術について解説します。
日々のストレスを減らすためにも、以下の仕事術を把握しましょう。(参考:菊池良和『吃音の合理的配慮』、飯村大智『吃音と就職 先輩から学ぶ上手に働くコツ』)
仕事術①働く環境を整える
吃音のある人には、まず働く環境を整えることをオススメします。
仕事がなかなか続かない要因はさまざまですが、吃音のある人の場合、周囲の理解があるかどうかが大きく影響するでしょう。
吃音を周囲に打ち明けることで、周囲からの理解を得られる可能性があります。働きやすくなるように、周囲に吃音を打ち明けて、周囲の人と調整できると高い効果を得られるでしょう。
例えば、コミュニケーションを取る際に、口頭ではなく、チャットツールを積極的に利用してもらえる場合もあります。
周囲に伝える際は、何に困っており、どのような配慮が必要なのか具体的に伝えるようにしましょう。
仕事術②業務内容を調整できるか相談する
吃音が仕事に影響している場合、業務内容を調整できるか上司に相談してみてはいかがでしょうか?
会話・電話が少ない業務や部署に変われば、吃音の症状が出ても問題なく仕事を進められる可能性があります。
例えば、電話対応が苦手であることを相談したら、電話対応を免除してもらい、事務作業に集中できるようになったという事例もあります。また、部署異動により電話対応や商談がなくなり、職場の人との電話や相談だけ受ければOKとなった人もいます。
2021年の障害者差別解消法改正に伴い、事業者の合理的配慮の提供が、過重な負担にならない範囲で、できうる限りの努力をすることが義務となりました。
合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と同じように生活し、活動できる均等な機会を確保するために必要な配慮のことです。(参考:e-Gov法令検索「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)」、厚生労働省「合理的配慮指針」、政府広報オンライン「事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化」、内閣府「合理的配慮の提供が義務化されます!」)
合理的配慮については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
仕事術③業務では事前準備に力を入れる
事前準備に力を入れると、業務のミスが減ってストレスや緊張、不安を感じる場面が少なくなり、吃音の症状が出にくくなるかもしれません。
ミスへの不安が少なくなれば、電話対応・商談・プレゼン・会議などに対してもリラックスした状態で仕事ができるはずです。
例えば、事前に顧客との議題や質問を資料にまとめておけば、言葉に詰まっても、伝えたいことが資料に書かれているので相手も意図を理解できます。
また、困難なことが起こった際は、困った対象や理由、対処方法などをまとめておくと、次に同様の場面が発生した際にも、事前に対処方法を把握しているので焦らずに対処できるでしょう。
仕事術④話し方より伝え方を重視する
吃音によりどもる人は、話し方より伝え方を重視するように考え方を変えてみてください。(参考:都筑澄夫『吃音は治せる―有効率74%のメンタルトレーニング』)
話し方に意識がいくと、自然な話し方から遠のきます。
基本的に多くの業務では上手な話し方よりも、意図・意見が伝わることの方が重要です。
言葉だけで伝えようとせず、図・表・資料・写真・ジェスチャーなどを用いれば、うまく話せない場合も相手に理解してもらいやすくなります。
仕事中は事前に伝えたいことを文章でまとめた資料を作成し、相手に見せながら話すとよいでしょう。
仕事術⑤円滑な人間関係を構築する
日頃から円滑な人間関係を構築しておけば、吃音がコミュニケーションに影響する可能性を低くできます。
人間関係が良好であれば、どもったときも気にされることは少ないでしょう。吃音にも理解を示してくれるため、安心して話せます。
業務で困ったときも周囲のサポートを得やすくなり、スムーズに仕事を進められます。
円滑な人間関係を構築するためには、相手の話をしっかり聞き、笑顔でコミュニケーションを取ることが重要です。(参考:医療法人社団平成医会「円滑な人間関係を保つ方法」)
うまく挨拶やお礼ができなかったときは、チャットツールや筆談を用いてでも伝えるとよいでしょう。
仕事術⑥メンタルリハーサル法を実践する
吃音のある人はメンタルリハーサル法を実践すると、仕事で話しやすくなる可能性があります。
メンタルリハーサル法とは、頭のなかで話すイメージをする吃音訓練法のことです。(参考:都筑澄夫『吃音は治せる―有効率74%のメンタルトレーニング』)
頭のなかのイメージにより、不安・恐怖・マイナスな感情を感じにくくし、なくしていくことが目的です。
具体的には、自分の取るべき行動を実施する前にイメージし、吃音のない話し方を頭のなかでリハーサルします。
話す技術を身につけるのではなく、成功体験のシミュレーションから話す楽しさを知ることで、徐々に効果を得られます。
通勤中や寝る前など、気軽に行える点が魅力です。
ただし、声に出して訓練したり、いやな出来事を思い出してはいけません。自分に対して否定的な感情が生まれて、かえって症状が悪化する恐れがあります。
あくまで頭のなかだけで、実際の会話をイメージすることが重要です。
補足:吃音のある人は障害者雇用での就職も可能
吃音も発達障害・言語障害のひとつであり、障害者手帳を取得していれば障害者雇用での就職も可能です。
障害者雇用とは、障害のある人を対象とした雇用枠を設けて雇い入れる制度のことです。障害の特徴や内容、個々の能力などに合わせて、安心して働けるようにすることを目的としています。
面接の段階で配慮をお願いできるため、新人のときから電話対応を免除してもらったり、働きやすい部署に配属してもらえたりするかもしれません。
障害者雇用については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
吃音のある人に向いてる仕事
吃音のある人は、以下のような特徴がある仕事に向いてます。
- 電話対応が少ない技術職・専門職などの仕事
- ほかの人との会話が少ない製造業などの仕事
- 周囲の理解が得られる仕事
- 自分一人、または少人数で働ける仕事
仕事に悩みを抱える吃音のある人は、人との会話に不安を抱えている傾向があります。
電話対応やほかの人との会話が少ない仕事を選んだほうが、自分のペースで話せるでしょう。
また、少人数の職場なら、会話が限られているため働きやすいといえます。
なお、技術職や専門職を目指す場合は、資格取得や勉強が必要な可能性があるので覚えておきましょう。
ただし、吃音だけを気にして仕事を選ぶと、選択肢が狭まります。周囲の理解が得られるのであれば、悩みを抱えることなく仕事ができるはずです。
自分がやりたいことを中心に、吃音があってもストレスを感じずに働けるかどうかをチェックしましょう。
吃音のある人に向いてない仕事
吃音のある人は、以下のような仕事は向いてない可能性があります。
- 電話対応が多い事務職・営業職などの仕事
- 臨機応変な対応が求められる仕事
- ほかの人と話すシーンが多い営業職・販売職・サービス業などの仕事
事務職や営業職のように電話対応が避けられない仕事や、顧客との会話が多い販売職やサービス業などでは、人と話すシーンが多く、ストレスを感じるかもしれません。
また、臨機応変な対応が求められる仕事はストレスを感じやすく、吃音の症状が出やすくなることもあります。
とはいえ、ここで紹介した仕事が、必ずしも吃音のある人全員に向いてないわけではありません。
例えば、電話対応が多い事務職であっても、社内からしか電話がかかってこない総務部なら働けたという人もいます。
症状や周囲の環境は個人差が大きく、状況によっては向いてない仕事でもストレスを感じずに働けるはずです。
あくまで参考程度にとらえ、自分がやりたいことか、好きなことか、周囲の理解を得られるかなどをもとに仕事内容を検討してください。
吃音のある人が利用できる支援制度
吃音がある人のなかには、支援を受けられるか気になっている人も少なくないでしょう。
この章では、吃音のある人が利用できる支援制度を紹介します。
今はサポートを求めていない人も、支援制度があると把握しておけば将来役に立つかもしれません。ぜひ内容を確認し、利用を検討してみてください。(参考:菊池良和『吃音の合理的配慮』、菊池良和『吃音の世界』)
支援制度①障害者手帳
吃音も発達障害・言語障害に該当するので、障害の程度によっては障害者手帳を取得できます。
障害者手帳とは、障害がある人に交付される手帳のことです。障害者手帳を所持する人は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)の対象となり、さまざまな支援を受けられます。(参考:厚生労働省「障害者手帳について」、e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)
幼児期から吃音がある発達性吃音のある人は精神障害者保健福祉手帳、病気やストレスにより吃音が生じた獲得性吃音のある人は身体障害者手帳を取得できる可能性があります。
ただし、吃音がある人であれば誰でも取得できるというわけではないため、障害者手帳の申請を検討している人は医師へ相談しましょう。
障害者手帳については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
支援制度②障害年金
吃音も障害者年金の対象になっているため、吃音でも受給できる可能性があります。
障害年金とは、病気やケガ、障害などによって仕事や生活などに支障を生じている場合に、年金加入者が受給できる支援制度のことです。(参考:日本年金機構「障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額」、日本年金機構「障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額」、日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」、日本年金機構「国民年金」、日本年金機構「障害年金ガイド令和5年度版」、日本年金機構「20歳前の傷病による障害基礎年金にかかる支給制限等」)
社会的行動や意思疎通能力の障害が顕著な場合に受給できるので、受給を検討している人は医師・年金事務所・年金相談センター・市町村役場などに相談してみてください。
障害者年金については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
支援制度③自立支援医療制度
自立支援医療の対象として言語障害が含まれており、吃音のある人も支援を受けられる可能性があります。
自立支援医療制度とは、心身の障害を除去・軽減するための医療に関する医療費の自己負担額を軽減する公費負担の支援制度のことです。(参考:厚生労働省「自立支援医療について」、厚生労働省「自立支援医療制度の概要」、東京都福祉保健局「自立支援医療(更生医療」)
通常、医療保険による医療費の自己負担額は3割ですが、自立支援医療制度を利用すれば、原則1割まで軽減することができます。この制度は、指定の医療機関・薬局のみで利用可能です。
具体的な支援内容や条件、名称は、自治体によって異なります。気になる人は、お住まいの自治体の障害福祉を担当する部署・窓口にご相談ください。
吃音の薬物療法や通院はお金がかかるので、経済的な困難を減らしたい人はぜひ利用を検討してみてください。
吃音のある人が利用できる支援機関・専門家
吃音のある人は支援制度以外に、支援機関・専門家も頼れます。
支援機関・専門家を利用することで、仕事をスムーズに進めるアドバイスを受けられるかもしれません。
この章では、吃音のある人が利用できる支援機関・専門家を紹介します。
支援機関・専門家①就労移行支援事業所
就労移行支援事業所とは、一般企業などへの就職を目指す病気や障害のある人に向けて、就職のサポートをする支援機関のことです。体調管理の方法、職場でのコミュニケーションの基礎スキル、就職に必要な専門スキルなどを学ぶことができ、実際の就職活動でのアドバイス、就職後の職場定着支援も含む、総合的な就労支援を受けることが可能です。
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づいて行われる福祉サービスです。実際のサービスは、国の基準を満たしたさまざまな民間の就労移行支援事業所が行います。(参考:e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)
就労移行支援事業所は各地にあります。私たち、キズキビジネスカレッジ(KBC)もその一つです。それぞれ特徴が異なるため、気になるところがあれば問い合わせてみてください。
就労移行支援事業所については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
支援機関・専門家②ハローワーク
ハローワーク(公共職業安定所)とは、仕事を探している人や求人を募集したい事業者に対して、就労に関連するさまざまなサービスを無償で提供する、厚生労働省が運営する支援機関のことです。正式名称は公共職業安定所で、職安と呼ぶ人もいます。
主に職業相談や職業訓練、求人情報の提示などを行っており、具体的な支援内容は事業所によって異なりますが、一般的には以下のような幅広いサポートを行います。
全国に500ヶ所以上あり、主に職業相談や職業訓練、求人情報の提示、雇用保険や雇用対策など、地域密着型の雇用に関する幅広いサポートを行います。
また、病気や障害のある人に向けたサポートも行っています。障害者手帳を所持していない人でも、医師による診断書があれば、障害の特性や希望職種に応じた職業相談や履歴書や面接での病気・障害の伝え方などのサポートを受けることができます。
ハローワークについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
支援機関・専門家③言語聴覚士
言語聴覚士とは、言葉でのコミュニケーションに困難を抱える言語障害などのある人に対して専門的なサポートを提供する専門職のことです。 (参考:一般社団法人 日本言語聴覚士協会「言語聴覚士とは」、関⻄福祉科学大学「吃音とは?言語聴覚士が関わる吃音症の治療や訓練」)
国家資格が必要な職業で、吃音やコミュニケーションに関する専門教育を受けており、病院・施設などで吃音のある人への支援を行っています。
当事者やその周囲の人へ吃音への対応方法を伝え、困り事をサポートしてくれます。
補足:吃音に関連する支援団体や自助会、互助会、家族会、ピアサポート団体
支援機関を利用することにハードルを感じる人は、自助グループなどへ行ってみてもよいでしょう。
自助会、互助会、家族会、ピアサポート団体とは、吃音のある人同士の支えあいを目的に、情報交換などを行う団体のことです。お互いの悩みを打ち明けたり、対処方法を共有したりします。
専門的な治療や指導を受けられるわけではありませんが、ほかの当事者と悩みを分かち合えます。
悩みを打ち明けて共感したり、自分の持つ知識や情報・価値観・支援機関の感想などを共有したりできるため、抱えている課題を解決する糸口が見つけられるかもしれません。
団体ごとに方向性や特色、雰囲気などに特徴があります。
「お住まいの自治体名+自助会」「発達障害+支援+ピアサポート」などのインターネット検索で見つけることもできます。また、支援機関に相談することで、さまざまな団体が見つかります。
自分に合う団体を並行して利用すると、さらに次の一歩に進みやすくなるはずです。余裕があるようでしたら探してみてください。
吃音のある人と一緒に働く人ができる2つの対応
吃音のある人と一緒に働く人のなかには、どのように対応すればよいかわからず悩んでいる人も多いでしょう。
ストレスなく働いてもらうには、環境づくりが大切です。
この章では、吃音のある人と一緒に働く人ができる対応について解説します。
吃音のある人と仕事でうまく付き合うためにも、以下の対応を実践してみてください。 (参考:菊池良和名『吃音のことがよくわかる本』、飯村大智『吃音と就職 先輩から学ぶ上手に働くコツ』、都筑澄夫『吃音は治せる―有効率74%のメンタルトレーニング』)
対応①話を最後まで聞く
吃音のある人と一緒に働く場合、話を最後まで聞くように気をつけましょう。
話をさえぎると、コミュニケーションを妨げることにつながります。
また助け舟のつもりで「◯◯ってこと?」と言葉を先取りしても、相手を傷つける恐れがあります。
どうしても言葉が出ず困っているときのみ、推測した言葉を返す程度にとどめてください。
基本的に吃音へ特別な配慮をしようとするよりも、しっかり聞く姿勢でいることが重要です。
対応②話し方についてアドバイスしない
吃音のある人に、話し方へのアドバイスをしないようにしてください。
良かれと思って「落ち着いてね」「ゆっくり話して」などのアドバイスをしても、本人にとってはダメ出しと感じる可能性があります。
「話し方がダメ」とプレッシャーを感じたら、アドバイスが逆効果になることも。伝えたい気持ちを抑えないためにも、アドバイスをせず聞くことに徹しましょう。
吃音とは?
そもそも吃音とはどのような症状で、どのように治療するのかを把握していない人もいるでしょう。
この章では、吃音の概要や症状、種類、診断基準、治療方法について解説します。 (参考:菊池良和『吃音の合理的配慮』、菊池良和『吃音の世界』、飯村大智『吃音と就職 先輩から学ぶ上手に働くコツ』、都筑澄夫『吃音は治せる―有効率74%のメンタルトレーニング』)
吃音の概要
吃音とは、言葉が出にくくなる言語障害・発達障害の一種のことです。吃音の症状で社会生活へ支障がある場合、吃音症に該当します。
吃音症は厚生労働省にも病気として認められており、健康保険も原則適用されます。 (参考:厚生労働省「【分類一覧】 傷病分類表」、厚生労働省「第Ⅴ章 精神及び行動の障害(F00-F99)」)
重篤なケースでは、障害として認められるケースもあります。
吃音の原因
吃音は愛情不足や、育て方などで生じる病気ではありません。
原因は脳や神経機能の異常や、遺伝的要因、環境的要因と考えられています。
吃音の症状
吃音の症状は、以下のとおりです。
- 繰り返し:「お、お、おはよう」と音を繰り返す
- 引き伸ばし:「おーーはよ」と音を引き伸ばす
- ブロック:「おはよう」と言おうとしても、最初の音「お」でつかえて言えなくなる。「・・・・っおはよう」と最初の音だけ大きくなる
3つの症状が単独で生じることも、併発するケースも見られます。
さらにブロックの症状が出るときは、随伴症状が出ることも。随伴症状とは、舌を出す、手足でタイミングをとる、足を叩く、体の一部に力が入るなどの二次的症状のことです。
またた行やう段など、特定の音から始まる言葉で症状が出やすくなる人もいます。
吃音の症状は、話初めや息継ぎのあとに出やすいとも言われています。
なお、吃音が発生し始めた時期は、症状が出る時期と全くなくなる時期の波があります。
家で喋れることも、人前では喋れなくなるケースも多く、自分の意志で何とかなるものではありません。
種類①発達性吃音
発達性吃音とは、2〜5歳で発症することが多いとされている先天性の吃音のことです。
多くの場合は成長とともに自然と消失しますが、大人になっても症状が残る人もいます。
原因ははっきりと判明していませんが、現在はもともと吃音が生じやすい体質・遺伝と環境的な要因が合わさったことで生じると考えられています。
吃音が生じる子どもは言語発達がよい傾向があるので、急激な言語発達に口がついてこられないことも原因となります。
種類②獲得性吃音
獲得性吃音とは、何らかの病気やケガ、障害、ストレスなどが原因で生じる吃音のことです。
例えば、脳卒中で体が麻痺したり言語障害などが起こったりしたあとに、吃音が生じた場合などが該当します。
一般的に吃音は幼児期に発症しますが、獲得性吃音の場合は10代後半以降も発症する可能性があります。
吃音の治療方法
吃音には確立された治療法がありません。
しかし現在、以下のような治療法は有効と考えられています。
- 環境の調整
- 言語訓練
- カウンセリング
- 心理療法
- 薬物療法(吃音が原因の二次障害に対して実施)
同じ吃音がある人でも、症状や有効な支援方法は人によって異なります。
どの治療方法が最適かは、医師や専門家、支援機関に相談してみましょう。
なお、薬物療法に関して、日本だけでなくアメリカでも、吃音へ有効だと認可された治療薬はありません。
まとめ:吃音がある人は対処法の実践や支援を活用して仕事を進めやすくしよう
吃音がある人は、どもったり言葉が出なくなったりして、業務に支障が出ることがあります。
電話や商談といった吃音が出やすい業務のない仕事や、会話が少なくなる少人数の職場を選ぶと、吃音をカミングアウトしなくてもはたらきやすくなるでしょう。
上司や周囲の人へ相談し、はたらく環境や業務内容を調整してもらえれば、転職せずに業務をスムーズに進められるようになります。
また吃音は発達障害・言語障害の一種なので、公的な支援を受けられます。
仕事上の困難を減らしたい人は、このコラムで紹介した支援制度や支援機関・専門家の活用も検討してみてください。
なお、私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)でも、吃音がある人のサポートをしています。
吃音による職場や働き方に関する困りごとがある人は、ぜひお気軽にご相談ください。
吃音とは何ですか?
吃音とは、言葉が出にくくなる言語障害・発達障害の一種のことです。吃音の症状で社会生活へ支障がある場合、吃音症に該当します。
詳細については、こちらで解説しています。
吃音のある人に向いてる仕事はどんなものがありますか?
以下が考えられます。
- 電話対応が少ない技術職・専門職などの仕事
- ほかの人との会話が少ない製造業などの仕事
- 周囲の理解が得られる仕事
- 自分一人、または少人数で働ける仕事
詳細については、こちらで解説しています。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→