特別障害者手当と特別障害給付金制度の違いとは? 申請する流れを解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
ページをご覧になっているあなたは、以下のような疑問や不安を抱えているのではないでしょうか?
- 特別障害者手当と特別障害給付金制度は何が違う?
- 自分は特別障害者手当と特別障害給付金制度のどっちを使える?
このコラムでは、特別障害者手当と特別障害給付金制度の違いや特別障害者手当・特別障害給付金制度の概要について解説します。
あわせて、特別障害者手当・特別障害給付金制度以外の支援制度やよくある質問を紹介します。
特別障害者手当・特別障害給付金制度を利用しようと思っている人はもちろん、今後のために知っておきたい人もぜひ最後までご覧ください。
目次
特別障害者手当と特別障害給付金制度の違い
特別障害者手当と特別障害給付金制度の大きな違いは、利用可能な対象者です。
特別障害者手当の対象者は、精神または身体に重度の障害があり、日常生活で常時特別な介護を必要とする20歳以上の人です。
対して、特別障害給付金制度の対象者は、国民年金に任意加入していなかったために障害年金を受けられなかった人です。
そのため、特別障害給付金制度は特別障害者手当とは異なり、障害基礎年金などの受給資格を満たせなかった人に対する救済措置的な位置づけと言えるでしょう。
特別障害者手当とは?
この章では、特別障害者手当について解説します。
特別障害者手当の概要
特別障害者手当とは、精神または身体に著しく重度な障害があり、日常生活において常に特別な介護を必要とする在宅生活をしている人に対して、必要となる精神的、物質的な負担の軽減を目的に、手当を支給する支援制度のことです。 (参考:厚生労働省「特別障害者手当について」)
特別障害者手当の利用対象者・利用条件
利用対象者は、精神または身体に重度の障害があり、日常生活で常時特別な介護を必要とする20歳以上の人です。 (参考:厚生労働省「特別障害者手当について」、東京都福祉局「特別障害者手当(国制度)」)
特別障害者手当を受給するには、利用対象者に当てはまる上、以下の条件を満たす必要があります。
- 20歳以上
- 病院や診療所に継続して3か月を超えて入院していない
- 施設などに入所していない
- 受給者・申請者、または受給者の配偶者・扶養義務者の所得が所得限度額を超えない
特別障害者手当の受給金額
受給金額は2024年4月時点で、月額2万8840円です。年間にすると、34万6080円になります。
特別障害者手当の受給期間
特別障害者手当は一度申請すれば、原則として毎年2月、5月、8月、11月に、それぞれの前月分までが支給されます。
所得制限を超えると支給されなくなります。なお、所得が制限額以下になった年の翌年の8月分から再度支給が始まります。
特別障害者手当を申請する流れ
特別障害者手当を申請する流れは、以下のとおりです。
- お住まいの自治体の担当する部署・窓口で申請用紙を受け取る
- 医師に依頼して診断書を作成する
- 必要書類を窓口に提出する
- 審査が行われて結果が通知される
- 審査に通ると支給が始まる
自治体によって必要書類は異なります。あらかじめ窓口で聞いておきましょう。
特別障害者手当を利用するメリット
特別障害者手当を申請するメリットは、やはり定期的に一定額の支給を受けられることです。
最初に申請は必要ですが、その後は自動的に支給されるので、手間もかかりません。
特別障害者手当を利用する際の注意点
特別障害者手当を利用する際の注意点は、所得制限です。
特別障害者手当を利用する際は、所得制限があります。受給資格のある人の前年の所得が一定の額を超えるとき、または、配偶者もしくは受給資格のある人の生計を維持する扶養義務のある人の前年の所得が一定の額以上であるときは手当は支給されません。この点に注意しておきましょう。
扶養親族などの数によっても細かく分かれているため、あらかじめ確認しておきましょう。
特別障害給付金制度とは?
この章では、特別障害給付金制度について解説します。 (参考:厚生労働省「特別障害給付金制度について」、日本年金機構「特別障害給付金制度」)
特別障害給付金制度の概要
特別障害給付金制度とは、国民年金に任意加入していなかったことで、障害基礎年金など受給要件を満たせず、障害年金を受給できない障害のある人に対して、福祉的措置として創設された支援制度のことです。
特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律に基づく給付であり、障害基礎年金や障害厚生年金とは異なる制度です。 (参考:e-Gov法令検索「特定障害者に対する特別障害給付金の支給に関する法律」)
特別障害給付金制度の利用対象者
利用対象者は、以下の条件を満たす人です。
- 1991年3月以前に国民年金任意加入対象であった学生
- 1986年3月以前に国民年金任意加入対象であった被用者などの配偶者であって、当時、任意加入していなかった期間内に初診日があり、現在、障害基礎年金の1級、2級相当の障害の状態にある人
- 65歳に達する日の前日までに、当該障害状態に該当し、請求した人
ここでの初診日とは、障害の原因となる傷病について、はじめて医師または歯科医師の診療を受けた日のことです。 (参考:日本年金機構「特別障害給付金制度」)
国民年金任意加入対象であった学生については、以下を目安としてください。
- 定時制、夜間部、通信を除く、大学、大学院、短大、高等学校および高等専門学校の昼間部在学していた学生
- 1986年4月から1991年3月までの期間中、①に加え、専修学校および一部の各種学校の昼間部在学していた学生
国民年金任意加入対象であった被用者などの配偶者とは、以下の場合が該当します。
- 厚生年金保険、共済組合などの被用者年金制度の加入者の配偶者
- 通算老齢・通算退職年金を除く、①の老齢給付受給権者および受給資格期間満了者の配偶者
- ①の障害年金受給者の配偶者
- 国会議員の配偶者
- 1962年12月以降の地方議会議員の配偶者
なお、障害基礎年金や障害厚生年金、障害共済年金などの受給対象の人は、特別障害給付金を受け取れません。
また、特別障害給付金を受け取るには厚生労働大臣の認定が必要です。
特別障害給付金を受給するには、利用対象者に当てはまる上、受給者本人の前年の所得が472万1000円を超えない必要があります。また、370万4000円を超える場合は、2分の1が支給停止となります。 (参考:日本年金機構「特別障害給付金制度」)
特別障害給付金の場合は特別障害者手当と異なり、受給者本人の所得のみが関わってくるので、事前に確認しておきましょう。
特別障害給付金制度の受給金額
2024年度時点の受給金額は、以下のとおりです。
- 障害基礎年金1級相当に該当:月額5万5350円(2級の1.25倍)
- 障害基礎年金2級相当に該当:月額4万4280円
特別障害給付金の額は、毎年度見直されています。また、老齢年金、遺族年金、労災補償などを受給している場合は、その受給額分を差し引いた額が支給されます。
特別障害給付金制度の受給期間
特別障害給付金は一度申請すると、2月、4月、6月、8月、10月、12月の年6回のタイミングで、前月分までの額が支給されます。
ただし、所得制限を超えると支給されなくなり、所得が制限額以下になった年の翌年の10月分から再度支給が始まります。 (参考:日本年金機構「特別障害給付金制度」)
特別障害給付金制度を申請する流れ
特別障害給付金を申請する流れは、以下のとおりです。
- 必要書類を準備する
- お住まいの自治体の障害福祉を担当する部署・窓口で申し込む
- 審査が行われて結果が通知される
- 審査に通ると支給が始まる
必要書類については、誰でも準備しなければならないものと特定の人だけ準備する必要があるものに分かれます。 (参考:日本年金機構「特別障害給付金制度」)
- 特別障害給付金請求書
- 基礎年金番号通知書または年金手帳等の基礎年金番号を明らかにすることができる書類
- 障害の原因となった傷病にかかる診断書(障害の原因となった傷病が複数ある場合、各傷病についての診断書)
- 呼吸器系結核、肺化のう症、類似するじん肺症を含むけい肺のいずれかの傷病の場合、レントゲンフィルムおよび心電図所見のあるときは心電図の写し(ほかの傷病の場合でもレントゲンフィルムが必要となる場合あり)
- 病歴・就労状況等申立書
- 受診状況等証明書(③の診断書が初診時に治療を受けた病院と異なる場合に必要)
- 特別障害給付金所得状況届
- 住民票などの生年月日についてのお住まいの自治体長の証明書、または戸籍の抄本( ①に個人番号・マイナンバーを記載された場合は省略可能)
- 公的年金制度などから年金などを受給している場合、その受給額を明らかにする年金額改定通知書などの書類
初診日において国民年金任意加入対象の学生であった場合、追加で以下の書類が必要です。
- 学校に在学していたことを証明する在学・在籍証明書などの書類
- 廃校などにより学校に在学していたことを証明する在学・在籍証明書などの書類を添付できない場合に限り、卒業証明書の写しや卒業証書の写し、成績通知票の写し、その他に在学していたことを明らかにすることができる書類
- 国民年金法上の適用を確認するにあたり、学校に在学していたことを証明する在学・在籍証明書などの書類では在学期間や在学の状況などが確認できない場合、在学内容の確認にかかる委任状
また、初診日において配偶者が被用者年金制度などに加入していたなどの事情により、国民年金任意加入対象であった場合、追加で以下の書類が必要です。
- 生年月日および婚姻年月日の確認が可能な、戸籍の謄本または抄本
- その他、初診日において配偶者の公的年金などの加入・受給の状況を明らかにすることができる書類
自分が準備すべき書類を、事前にホームページを見たり窓口で聞いたりしておきましょう。 (参考:厚生労働省「特別障害給付金制度について」、日本年金機構「特別障害給付金制度」)
特別障害給付金制度を利用するメリット
特別障害給付金制度を利用するメリットは、国民年金に任意加入していなかったため、障害基礎年金などを受給できなかった人でも利用できる点です。
最初に申請すれば、その後は定期的に受給できるため、手間もかかりません。
特別障害給付金制度を利用する際の注意点
特別障害給付金制度を利用する際の注意点は、特別障害者手当と同様、所得制限です。所得制限を超えると、支給が停止されます。
また、老齢年金、遺族年金、労災補償などを受給している場合は、その受給額分を差し引いた額が支給されるのであわせて把握しておきましょう。
特別障害者手当や特別障害給付金制度に関するよくある質問
この章では、特別障害者手当や特別障害給付金制度に関するよくある質問を紹介します。
Q1.特別障害者手当や特別障害給付金制度は審査がある?
特別障害者手当と特別障害給付金制度は、それぞれ審査があります。そのため、申請したからといって、必ず受給できるわけではありません。 (参考:厚生労働省「特別障害者手当について」、厚生労働省「特別障害給付金制度について」)
審査を受けるには必要書類を提出する必要があるので、各WEBサイトで確認しておきましょう。
Q2.障害年金と併給できる?
特別障害者手当と障害年金は併給できますが、特別障害給付金と障害年金は併給できません。 (参考:厚生労働省「特別障害者手当について」、日本年金機構「特別障害給付金制度」)
これは、特別障害給付金制度が、障害年金の受給資格を満たせなかった人を対象としているためです。
まとめ~特別障害者手当と特別障害給付金制度の違いを把握しましょう~
特別障害者手当と特別障害給付金制度は一見似ていますが、異なる支援制度です。
利用対象者や条件も変わりますから、違いを把握して適切に利用しましょう。
特別障害者手当とは何ですか?
特別障害者手当とは、精神または身体に著しく重度な障害があり、日常生活において常に特別な介護を必要とする在宅生活をしている人に対して、必要となる精神的、物質的な負担の軽減を目的に、手当を支給する支援制度のことです。
詳細については、こちらで解説しています。
特別障害者手当の利用対象条件は何ですか?
以下が考えられます。
- 20歳以上
- 病院や診療所に継続して3か月を超えて入院していない
- 施設などに入所していない
- 受給者・申請者、または受給者の配偶者・扶養義務者の所得が所得限度額を超えない
詳細については、こちらで解説しています。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
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