気分障害の人に向いてる仕事 仕事を続けるコツや仕事探しのポイントも解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
気分障害のあるあなたは、仕事を続けるのがつらくて、悩んではいませんか?
- 気分障害の特性の影響で調子が安定しない
- 仕事のモチベーションにムラが出やすい
- 気分障害が原因で仕事探しがうまくいかない
気分障害の人は、以上のような仕事の悩みを抱えやすいかと思います。
このコラムでは、気分障害の人が仕事を長続きさせるためのコツについて解説します。
このコラムが、あなたの次の一歩につながれば幸いです。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、気分障害のある人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
気分障害は、仕事を休めばある程度治る可能性があります
気分障害の人のよくある質問・疑問に、「仕事を休めば気分障害は治るのか?」というものがあります。
何をもって治るとするのかは、専門家によっても意見が異なりますが、薬の服用や通院をせずに日常生活を送ることができる状態を指すのであれば、仕事を休むことによって、ある程度治ることはあります。
特に、気分障害の要因として職場への不適応やストレスなどの適応障害の面が強かった場合には、仕事を休むことが比較的快復に結びつきやすいかと思います。
しかし、仕事を休んだからと言って、必ず治るわけではありません。
基本的には、浮き沈みに適応したり、ストレス対処法を身に付けたりしていく中で、気分をコントロールできるようにならなければ、先述したような意味で治るのは難しいと考えられます。
また、環境の変化が原因で再発する可能性もあるため、症状を受け入れながら焦らずに治療していくことが大切になります。
気分障害の人に向いてる仕事
それでは、気分障害の人に向いてる仕事や働き方には、どのようなものがあるのでしょうか?
一般的に、気分障害の人が仕事を考える上では、以下の点に着目するのが重要になってきます。
- 自分のペースで進められる仕事
- 勤務形態が柔軟な働き方
- 対人折衝の少ないバックオフィスの業務
マイペースにできる仕事は、自分で業務量を調整できるという点で、調子に波がある気分障害の人に向いています。
同様の理由で、フレックス制や裁量労働制など、勤務形態が柔軟な働き方も向いています。
また、対人折衝の少ないバックオフィスの業務であれば、人間関係によるストレスを軽減することができるでしょう。
これらを総合すると、以下のような仕事が具体的に向いていると言えると思います(一例であり、全てではありません)。
- 事務職
- 研究職
- エンジニア
- フリーランス
- 在宅ワーク
ただし、フリーランスや在宅ワークの仕事では、双極性障害のように躁うつの症状が見られる場合、マイペースな点があだになって、仕事をしすぎて調子を崩す場合もあります。
そのため、先述した「できるだけ残業を避ける」というコツのように、家族や同居人に「声掛けをしてもらう」などの工夫が必要です。
気分障害の人が仕事を続けるコツ5選
ここからは、具体的に、気分障害の人が仕事を続けるためのコツを解説していきます。
前提として大切なのは、医師の診断にきちんと従い、自己判断で治療を中断しないことです。
自分では「調子が戻ってきた」と思えるようになったとしても、薬の服用やその他の治療を中断してはいけません。
服薬や治療が症状の悪化・再発を予防している場合もあります。
医師の診断に従うことを大前提に、以下に紹介する仕事のコツを試すようにしてください。(参考:貝谷久宣『よくわかる双極性障害(躁うつ病)』、野村総一郎『新版 双極性障害のことがよくわかる本』)
コツ①特性を受け入れる
1点目は、「特性を受け入れる」です。
気分障害による感情の変化は、それ自体が病気の症状です。
気分障害じゃない場合には、感情の変化には何かしらの理由を伴うものでしょうが、気分障害の場合は考えても理由が思い当たらないことも多いのです。
また、先述したように、気分障害は「休めばすぐに治る」というものではなく、心のゆれ動きに徐々に慣れていったり、気分の波を小さくしていったりすることが必要になります。
そのため、特性を受け入れて焦らずに治療していく姿勢が大切です。
気分の浮き沈みに対して「どうして自分は情緒が安定しないのだろう」と考えるのではなく、「症状が出たときにどうすればいいのか」「何をすれば緩和できるのか」と考えるようにしましょう。
コツ②日頃から職場に相談する
2点目は、「日頃から職場に相談する」です。
気分障害の場合には、仕事上の困難の項目で挙げたように、パフォーマンスが安定しないことから、業務に穴をあけることが少なくありません。
「自分は調子を崩しやすい」など、日頃から職場に相談しておくことで、調子の悪いときにフォローを得やすくなるはずです。
また、自分の特性を話すことが不安を緩和したり、ストレス発散につながったりすることもあります。
特性を理解してもらえるよう、できるだけ職場に相談するようにしましょう。
コツ③スケジュールに余裕を持たせる
3点目は、「スケジュールに余裕を持たせる」です。
気分障害の場合、調子を崩すタイミングが自分でも掴めないという人が多いかと思います。
そうした人は、不調をあらかじめ計算に入れて、仕事のスケジュールに余裕を持たせることがオススメです。
「ここなら間に合わせられるかな」と思った日よりも、締め切りを数日後ろに設定してみましょう。
こうした心掛けが、あなたの心の余裕につながります。
コツ④できるだけ残業を避ける
4点目は、「できるだけ残業を避ける」です。
気分障害では、気分の波と勤務時間・仕事量が同調することが少なくありません。
そのため、疲れきることがないように、程々にしておく、ほどほどで仕事を切り上げるといった姿勢が大切です。
特に双極性障害の人は、繁忙期などでやむを得ず、遅くまで仕事をしたことがきっかけで、躁状態に転じるというケースもありますので、できるだけ残業を避けた方がよいでしょう。
とはいえ、躁状態になったときはハイになり、自身で気づくことも難しい場合があるため、無理をしてでも仕事を進める人もいるはずです。
そういうときは、前述のように、「あまりに残業が続いているようだったら声を掛けてください」と、周囲の人にあらかじめ伝え、頼るようにしてください。
コツ⑤定期的な休みを入れる
最後のコツは、「定期的な休みを入れる」です。
気分障害の人の中には、いつ調子が崩れるかわからないから、できるだけ有給休暇を使わず残しておくという人が割といます。
有給休暇の残数に余裕を持つことは、精神的な安定につながる面もあります。
しかし、公休以外に全く休みを取らなかったり、「もう少しがんばれる」と思って無理をしたりするのは好ましくありません。
気分の波をできるだけ一定にするためには、調子が崩れる前の段階で、小まめに休みを取ることが有効です。
限りのある有給休暇を利用することを不安に思うという人もいるかもしれませんが、できるだけ定期的に休みを入れることをオススメします。
気分障害の人の仕事上の困難3点
それでは、気分障害の人には、どのような仕事上の困難があるのでしょうか?
ここでは、代表的なものを3点ご紹介します。参考:五十嵐良雄『うつ病・躁うつ病で「休職」「復職」した人の気持ちがわかる本』
困難①調子の波が激しい
1つ目は、「調子の波が激しい」というものです。
気分障害の基本となる症状は気分の浮き沈みや揺れ動きにあるため、好調なときとそうでないときとで、調子に差が出やすいと言われています。
中でも、双極性障害では、躁状態のときには休み知らずに事ができる反面、うつ状態に転じたときにはその反動で身動きを取るのも苦しくなるなど、浮き沈みが激しいとされています。
また、気分障害の自覚が薄い人の場合は、どのタイミングで気分が変調するのかが特に把握しづらいため、昨日は元気だったのに、翌日はいきなり絶不調になるということも珍しくありません。
このように、調子の波の激しさに翻弄されることで、仕事がしづらいという困難があるようです。
困難②疲れやすい
2つ目の困難は、「疲れやすい」というものです。
特にうつ病の人は、症状自体に「易疲労性(いひろうせい、通常よりも疲れやすいこと)」が挙げられています。
抑うつ状態では行動意欲が減退することが多いため、モチベーションが下がっている状態で仕事を続けることが、さらなる疲労につながると考えられます。
また、こうした疲れやすいという傾向を周囲に理解してもらえないことから、中には同僚から「甘えているだけだ」と勘違いされることを仕事上の困難に挙げる人もいます。
困難③仕事のパフォーマンスが安定しづらい
3つ目は、「仕事のパフォーマンスが安定しづらい」です。
これまでに述べてきたように、気分障害の人は調子の波があるだけでなく、疲れもたまりやすいため、一定以上の安定したパフォーマンスを発揮し続けることが、どうしても難しい面があります。
また、不調の波も突発的にやってくることが多く、なかなかスケジュールどおりに仕事が進まないという人もいるでしょう。
気分障害の人の仕事探しのポイント3点
最後に、この章では、気分障害の人の仕事探しのポイントを紹介します。
仕事を長続きさせるコツと同様に、仕事探しのときにも一人で抱え込まず、周囲の人に相談することが大切です。
ここで言う周囲の人とは、かかりつけの先生やご家族、支援機関の支援員などのことです。
特に双極性障害では、あなたが仕事探しに乗り気でも、自分で気づかないうちに躁うつ状態になっていて、休養が必要な場合があります。
そういったときに、周りの人の見立てや意見が役に立つケースがありますので、できるだけ周囲の人を頼るようにしてください。
その点に留意しながら、以下の仕事探しのポイントを意識するようにしましょう。
ポイント①就労支援機関を利用する
1つ目のポイントは、「就労支援機関を利用する」です。
気分障害がある場合、障害を開示して働くオープン就労にすべきか、非開示で働くクローズ就労にすべきかなど、就職活動にあたって悩まれる方がいるかと思います。
また、障害者手帳を取得して、障害者雇用枠での就労を考えているという方もいるでしょう。
就労支援機関では、こうしたお悩みに応えた上で、就職活動の手助けをしています。
中でも、障害者総合支援法に基づいて、福祉サービスを提供している就労移行支援事業所では、メンタル面のケアから仕事に必要な専門スキルの指導、就職先の紹介まで、最低0円からサービスを受けられるため、オススメです。
就労移行支援を受けるためには、専門医による診断書が必要になりますが、どのように病院を利用したらよいか、という時点から相談可能です。
就労移行支援、オープン就労、クローズ就労については、それぞれ以下のコラムで詳述していますので、ご興味がありましたらご覧ください。
ポイント②勤務形態が柔軟な職場を探す
2点目は、「勤務形態が柔軟な職場を探す」です。
気分障害の人が、勤務形態が柔軟な働き方に向いているというのは、前述のとおりです。
これから仕事探しをされる方は、事情によっては在宅勤務に切り替えられるなど、労働者側で勤務形態を調整できるような職場を探すようにしましょう。
とはいえ、職種によっては、フレックス制や裁量労働制であるところを探すのが難しいところもあるかと思います。
そういった場合は、体調に合わせて勤務時間を減らすことのできる短時間勤務制度や、体調を大きく崩した際に長期の休暇が取れる休職制度といった福利厚生制度が整っているかどうかを確認するようにしましょう。
福利厚生制度が整っている職場であれば、体調不良者や障害者に対する配慮も浸透している可能性が高いため、気分障害の人が働き続けやすい環境である可能性が高いはずです。
ポイント③繁閑の差が少ない仕事を選ぶ
最後のポイントは、「繁閑の差が少ない仕事を選ぶ」ことです。
先述したように、残業が続くと、気分障害が悪化したり再発したりする確率が上がります。
これは、仕事による負荷以上に、生活リズムが乱れることに大きな原因があると考えられます。
そのため、繁忙期と閑散期の差が激しいような仕事ですと、つられて生活リズムも変動しやすいため、調子の波が大きくなりやすいのです。
他に、転勤や出張で移動や環境変化が多くなりがちな仕事も、生活リズムの乱れを招きやすいため、あまりオススメできません。
仕事探しの際には、できるだけ繁閑の差が少ない仕事を探すようにしましょう。
気分障害の人が利用できる経済的支援制度9選
この章では、気分障害の人が利用できる、失業保険以外の経済的支援制度を9つ紹介します(状況によって、必ず利用できるとは限りません)。
気分障害で退職した人が受けられる経済的支援(お金を受給できる支援と、各種支払いが減免できる支援)は、失業保険(失業手当)だけではありません。
支援制度は他にもたくさんありますので、ご安心ください。
経済的支援を受けることは、恥ずかしいことではありません。支援を受けつつ、経済的に安心して気分障害の治療・休養に専念することで、仕事復帰・仕事探しも含めて次の一歩にも進みやすくなります。
支援制度①傷病手当金
傷病手当金とは、病気やケガのために仕事を休む場合に健康保険の被保険者とその家族を保障するための制度です(国民健康保険の加入者は対象外です)。
傷病手当金を受給する条件は「病気やケガによって労働不能であること」です(医師の診断書が必要です)。
つまり、傷病手当金は「退職前に受給するお金」ということです。ただし一定の条件を満たせば、退職後も継続して受給できます。
傷病手当金の窓口は、全国健康保険協会、各健康保険組合、各共済組合になります。
ご興味がある場合は、ご自身の加入している健康保険に問い合わせてみましょう。
傷病手当金の詳細は、以下コラムをご確認ください。うつ病の人に向けた記事ですが、制度の概要はどなたが見ても参考になると思います。
なお、傷病手当金と失業保険は、同時期の併用ができません。詳細はこちらの章で解説します。
支援制度②障害年金
障害年金とは、ケガや病気などによって障害を負い日常生活や仕事に支障が出た場合に、年金加入者が受給できる年金です。
年金という名前ではありますが、高齢者だけではなく、20歳以上の人なら受給できます。また、病気やケガが治るまでは、生涯にわたって受給可能です。
障害年金や年金未加入時期がある人のための特別障害者給付金制度については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
傷病手当金と障害年金は、同時期の併用ができます。詳細はこちらの章で解説します。
支援制度③生活保護
生活保護とは、生活に困窮している人に対して、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、「健康で文化的な最低限度の生活の保障」「自立の助長」を目的とした支援制度です。(参考:厚生労働省「生活保護制度」)
生活に必要な最低限度のお金を持つことが困難な人がお金を受給できる制度と言えます。
生活保護で受給できるお金には生活扶助(食費・被服費・光熱費など)や住宅扶助(アパートなどの家賃)、医療扶助(医療サービスの費用など)などがあります。
また、受給金以外にも、国民年金保険料や住民税、NHK放送受信料などの税金・公共料金の支払いが減免されることがあります。
うつ病と生活保護の詳細については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
支援制度④障害者手帳
障害者手帳とは、障害のある人が、その障害の内容や程度に応じて交付される手帳の総称です。
障害者手帳には、以下の3種類があります(参考:厚生労働省「障害者手帳について」)。
- 身体障害者手帳
- 療育手帳
- 精神障害者保健福祉手帳
種類によって制度の根拠となる法律等は異なりますが、障害者手帳をお持ちの方はいずれも障害者総合支援法の対象となり、様々な支援や福祉サービスを受けることができます。
障害者手帳の詳細については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
支援制度⑤特別障害者手当
特別障害者手当とは、「精神又は身体に著しく重度の障害を有し、日常生活において常時特別の介護を必要とする特別障害者に対して、重度の障害のため必要となる精神的、物質的な特別の負担の軽減の一助として手当を支給する」制度のことです。(参考:厚生労働省「特別障害者手当について」)
利用できる場合、2023年4月現在では、月額2万7980円を受給できます。
申請先は、お住まいの市区町村役所です。
支援制度⑥自立支援医療制度
自立支援医療制度とは、心身の障害を除去・軽減するための医療に関する医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度です。気分障害もその支援の対象となります。(参考:厚生労働省「自立支援医療制度の概要」)
自立支援医療は、以下の3種類に分けられます。
- 精神通院医療(精神疾患の治療など)
- 更生医療(身体障害に関わる治療など)
- 育成医療(身体障害がある子どもに関わる治療など)
自立支援医療制度は指定の医療機関・薬局のみで利用可能ですが、通常3割負担の医療費が1割負担まで軽減されます。
負担額には上限が設定されており、原則上限以上の負担は免除されます。また、費用が高額な治療を長期にわたり継続しなければならない場合や所得の程度に応じて、更に軽減措置が行われます。
支援制度⑦労災保険(労働が原因の疾病の場合)
労災保険とは、仕事中や通勤中にケガや疾病といった労働災害が発生した場合に、その補償を得られる制度です。(参考:厚生労働省「労働災害が発生したとき」、労働問題弁護士ナビ「うつ病の労災が認められにくい理由と申請手続きの手順・流れを詳しく解説」、厚生労働省「精神障害の労災補償状況」)
ただし、一般論として、気分障害などの精神障害による労災認定は非常に難しいと言われています。
なぜなら、気分障害などの精神障害は原因の特定が難しく、私生活を含む様々な要因が複合的に絡みあって発症するケースが多いからです。
また、発病前の約6か月間に仕事による極度の心理的負荷が認められるなど、原因が仕事や職場にあることを明確化するための条件設定が厳しいという問題もあります。
労災保険の対象と認定される可能性もあるため、気になる人は労働基準監督署やお勤め先の人事部などに相談してみましょう。
支援制度⑧生活困窮者自立支援制度
生活困窮者自立支援制度とは、仕事や住居の確保に困窮している人に対して、生活状況に応じた支援を提供する制度です。(参考:厚生労働省「生活困窮者自立支援制度」、東京都福祉保健局「生活困窮者自立支援制度について」)
生活困窮者自立支援制度は、こちらでも解説した生活保護の受給に至る前に、対象者の自立を促進することを目的に制定された制度です。
就労などの自立に関する相談支援や自立に向けた支援計画の作成などを実施する自立相談支援事業、就職活動をすることなどを条件に一定期間の家賃相当額を支給する住居確保給付金の支給などの支援を行います。
その支援内容は多岐に渡り、またその内容は自治体によっても異なります。
支援制度⑨生活福祉資金貸付制度
生活福祉資金貸付制度とは、低所得者や障害者などの生活を経済的に支えつつ、その在宅福祉や社会参加の促進を図ることを目的とした貸付制度です。銀行などと比べて、低い金利でお金を借りることができます。(参考:全国社会福祉協議会「生活福祉資金」、厚生労働省「生活福祉資金貸付条件等一覧」、政府広報オンライン「生活にお困りで一時的に資金が必要な方へ「生活福祉資金貸付制度」があります。| 暮らしに役立つ情報」)
対象となるのは、「低所得者世帯」「障害者世帯」「高齢者世帯」であり、気分障害を含む障害者の場合は障害者手帳などの交付が前提となります。
生活福祉資金貸付制度は大きく分けて以下に分類されます。
- 総合支援資金(生活支援費、住宅入居費、一時生活再建費)
- 福祉資金(福祉費、緊急小口資金)
- 教育支援資金(教育支援費、就学支度費)
- 不動産担保型生活資金(不動産担保型生活資金、要保護世帯向け不動産担保型生活資金)
この制度は、あくまで貸付です。返済の義務があるという点は注意しましょう。
その他の支援制度
実際のあなたが利用できるサービスは、サポート団体などに相談しましょう。
(退職した)気分障害の人をサポートする制度は、失業保険も含めてたくさんあります。
ですが、気分障害の症状があるときには、制度を調べたり申請したりすることは難しいかもしれません。
実際のあなたがどの制度を利用できるかについては、ご家族・主治医・サポート団体などの協力も得ながら、役所、ハローワーク、年金事務所、健康保険組合などに確認することをオススメします。
以上以外の支援制度などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
気分障害の人が利用できる就職支援機関6選
気分障害の人が仕事を続ける・再開するために利用できる支援機関を紹介します。
どの支援機関が合っているのかわからないという人はお住まいの自治体の障害者福祉の課に相談してみてください。
ただし、就労や復職を焦ることなく、体調と相談の上、あまり無理をしないことが大切です。
体調を優先した上で、あなたに必要な支援を受けるという原則を覚えておいてください。
支援機関①精神保健福祉センター
精神保健福祉センターとは、「気分障害を含む精神障害がある人のサポートを目的に、精神保健福祉法によって各都道府県に設置された支援機関」です。(全国の一覧はこちらです)
心の問題や気分障害による症状で困っているご本人だけでなく、ご家族や関係者の方からも、精神衛生に関する相談を受け付けています。
精神保健福祉センターは、他の支援機関と比較して、精神疾患に特化している点が特徴と言えるでしょう。
また、匿名でも相談を受け付けています。(以上参考:東京都福祉保健局「精神保健福祉センターとは」)
支援機関②就労移行支援事業所
就労移行支援事業所は、病気や障害のある人に就労に向けた支援を行っています。(私たち、キズキビジネスカレッジもその一つです)
就労移行支援事業を利用できるのは、以下の条件を満たす方です。
- 原則18歳から65歳未満であること
- 一般企業への就職または仕事での独立を希望していること
- 精神障害、発達障害、身体障害、知的障害や難病があること
障害者手帳は必須ではなく、専門医による診断書があれば支援を受けることができます。
就労移行支援事業所では、以下のような幅広い支援を受けられます(具体的な支援内容は事業所によって異なります)。
- 就職に向けた専門スキルの講習
- 面接指導
- インターン先・就職先の紹介
- 就職後の定着支援
- メンタル面の相談
- 自己管理法の習得
相談は無料ですので、支援内容に興味を抱いた事業所があれば一度問い合わせてみることをオススメします。(以上参考:厚生労働省「就労移行支援事業」)
就労移行支援事業所の詳細は、コラムをご覧ください。
支援機関③ハローワーク
ハローワークでは、気分障害の人に限らず、「職業相談」「職業訓練」「求人情報の提示」といった仕事に関連する支援を行っています。
気分障害であることを告げて登録をしたり障害者向けの求人を探していることを告げたりすると、気分障害の人に向いていると思われる求人情報を紹介されるなど専門の支援を受けることが可能です。
もちろん、窓口での相談の際には、「気分障害がある状態でどのように就職活動をすればよいのか」「面接や履歴書にはどのように記載すればよいのか」といった細かい疑問も解決できます。
興味のある人は、管轄のハローワークに問い合わせてみてください。(以上参考:東京労働局「東京ハローワーク」)
支援機関④地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、気分障害に限らず、障害を抱える一人ひとりのニーズに応じて、職業評価、復職支援、職業訓練などの専門的な職業リハビリテーションサービスを提供しています。
気分障害の症状そのものよりも、「復職後にどのように働くか」という悩みをお持ちの方に、特にオススメです。
運営は、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が行っており、全国47都道府県に設置されています。
また、当事者だけでなく、事業主に対しても雇用管理に関する相談・援助を実施しています。
支援機関⑤障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターでは、就業と終業に伴う日常生活上の支援が必要な障害のある人に対し、窓口相談や職場・家庭訪問などを実施しています。
仕事に限らず、生活面での支援を受けたいという方にオススメです。
厚生労働省の資料によると、2023年4月時点で全国に337箇所あり、当事者の身近な地域において就業面と生活面を一体に捉えた相談と支援を行っています。(参考:厚生労働省「障害者就業・生活支援センターについて」)
障害者就業・生活支援センターの特徴は、就労だけでなく、金銭管理などの経済面や住居のことまで多岐にわたって相談できる点にあります。
興味のある方は、お近くの事業所にご相談ください。
支援機関⑥復職支援(リワーク・プログラム)
復職支援(リワーク・プログラム)とは、「気分障害を含む精神障害で休職中の人を対象に復職や再発による再休職を防ぐためのプログラムを実施する支援制度」です。(参考:一般社団法人日本うつ病リワーク協会「リワークプログラムについて」)
うつ病リワーク協会によると、復職支援は大きく以下の3つに分けられます。
- 精神科治療、再休職予防が目的
- 利用料金には健康保険を適用可能(一部自己負担あり)
- 職場復帰のために、支援プランに基づく支援を行う
- 無料で利用可能だが、公務員は利用できない
- 企業側が、その労働者を労働させてよいかの見極めるために行う
- EAPという、従業員支援プログラムを利用することもある
リワークについて気になる人は、お近くの医療機関、地域障害者職業センター、そして職場に、どのような支援があるか確認してみてください。
改めて、気分障害とは?
ここまでは、気分障害の人が仕事を長続きさせるためのコツを解説してきました。
この章では、改めて気分障害の概要、種類、症状、治療方法などをお伝えします。
気分障害の概要
気分障害とは、一定期間にわたる持続的な気分・感情の変調によって、日常生活に支障を来たす精神疾患のことです。(参考:岡田尊司『うつと気分障害』、厚生労働省「患者調査」、加藤忠史『これだけは知っておきたい双極性障害 躁・うつに早めに気づき再発を防ぐ! ココロの健康シリーズ』、車地暁生「ICD-10『臨床記述と診断ガイドライン』および『研究用診断基準』の気分(感情)障害における有用性と問題点について」)
「これといった理由もなく気分の浮き沈みが生じて、コントロールが難しくなる」という情緒的な不安定さが、気分障害の特徴ですが、それに関連して、食欲減退や不眠症といった身体症状が生じる場合もあります。
なお、「気分障害」という語は、WHO(世界保健機関)が公表している分類基準「ICD-10」と、アメリカ精神医学会の定める診断基準「DSM-IV」の両方において用いられてきました。
しかし、2013年に刊行された最新版の「DSM-V」では、気分障害という分類がなくなり、「うつ病」と「双極性障害」に切り離されることになりました。
そのため、現在では、医学的にはDSMに準拠した際には「気分障害」ではなく、「うつ病」「双極性障害」と表現・診断されることが一般的です。
とは言え、現在も「気分障害」という表現が一般に広まっていることは事実ですので、このコラムでもあえて「気分障害」という切り口・言い方を織り交ぜながら続けます。
日本では、2017年厚生労働省の患者調査によると、こうした気分障害の患者数は全国で約127万6千人にのぼり、過去7年間の間に30万人程度の増加が見られます。
次に、ICD-10にて気分障害に分類されている代表的な精神疾患を見ていきましょう。
基本的には、気分の変調がどのように現れているかによって分類が変わります。
種類①うつ病
うつ病とは、特別な理由がなく、気分の落ち込みや憂うつ感といった抑うつ(よくうつ)状態が持続する精神疾患です。
ICD-10では、以下のような症状が挙げられています。
- 異常な程度の抑うつ気分が2週間以上持続する
- 通常なら快楽をもたらす活動への興味、喜びの喪失
- エネルギーの低下、あるいは易疲労性(いひろうせい、通常よりも疲れやすいこと)の亢進(こうしん、高い度合いまで進むこと)
- 自信喪失、あるいは自己評価の低下
- 不合理な自責感、あるいは過剰で不適切な罪責感
- 何らかの型の睡眠障害
- 食欲の変化とそれに相応する体重変化
うつ病には、以上以外に様々な症状が見られ、症状の組み合わせと持続期間によって病状の程度が変わってきます。
種類②双極性障害
双極性障害とは、前述した抑うつ状態と、気分が高揚する躁状態を定期的に繰り返す精神障害のひとつです。
躁状態での具体的な症状として、以下が挙げられます。
- 自分が突然、偉くなった気がする
- ハイになりすぎて怒りっぽくなる
- 睡眠不足や徹夜でも平気になる
- 普段より饒舌になる
- 考えが脈絡なく頭に浮かぶ
双極性障害は、かつては躁うつ病という名前で知られていたため、うつ病の一種と考えられていました。
医師でもうつ病との見分けがつきにくいケースが少なくないようであり、見極めには継続した通院が必要になります。
種類③持続性気分障害
持続性気分障害とは、うつ病や双極性障害ほどに症状の程度が重くはないものの、気分の浮き沈みが見られる場合を指します。
持続性気分障害には、「気分変調症」と「気分循環症」の2種類があります。
基本的には、軽度の抑うつ症状が2年以上続く場合を「気分変調症」、双極性障害ほどではない軽度の抑うつ症状と躁うつ症状が2年以上続く場合を「気分循環症」と言います。
気分障害の治療法
気分障害の治療法は、薬物療法と精神療法の2種類に分けられます。
薬物療法とは、その名のとおり、症状の改善が期待できる向精神薬を服用する療法です。
精神療法では、医師やカウンセラーと会話をしながら、自身の考え方の癖や認知(思考)の歪みを修正していく認知行動療法などがメインとなります。
薬物療法と精神療法の比率は、疾患の内容や程度によって変わります。
例えば、双極性障害の治療では、一般的には薬物療法がベースとなり、躁とうつの波を小さくする気分安定薬を基本に、躁で衝動性が高まったときには抗精神病薬を併用するといった形を取ります。
いずれの気分障害においても、必要に応じて薬で症状を抑えながら、気分の浮き沈みをコントロールする仕方やストレス対処法を身につけていくというのが、一般的な治療の流れになります。
まとめ:気分障害でも工夫次第で長く働き続けることはできます
気分障害の人の仕事上の困難から、仕事を長続きさせるコツ、就職活動の際のポイントまでを解説してきましたが、役立つ情報はあったでしょうか?
気分障害であっても、工夫次第で長く働き続けることは、充分可能です。
気分障害の人は、調子がなかなか安定しないだけでなく、原因を特定できないことから、行き詰まりを感じてしまうことが多いと思います。
大切なのは、原因探しをすることではなく、いかにして特性を受け入れて対処していくかです。
あなた一人で抱え込まずに、医師や就労移行支援事業所のような専門家、周囲の人などに相談しながら、あなたなりの対処法を模索していってください。
このコラムが仕事に悩む気分障害の方の助けになったなら幸いです。
気分障害の自分が仕事を続けるためのコツを知りたいです。
一般論としては、以下の5点が挙げられます。「特性を受け入れる」「日頃から職場に相談する」「スケジュールに余裕を持たせる」「できるだけ残業を避ける」「定期的な休みを入れる」。詳細はこちらをご覧ください。
気分障害の自分が仕事を探す際のポイントを知りたいです。
一般論としては、以下の3点が考えられます。「就労支援機関を利用する」「勤務形態が柔軟な職場を探す」「繁閑の差が少ない仕事を選ぶ」。詳細はこちらをご覧ください。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→