発達障害がある人は生活保護を受けられる? 条件・申請方法・支援制度を解説

こんにちは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
- 発達障害があると、生活保護は受けられない?
- 働ける可能性があれば、申請してはいけない?
そんな不安や疑問を抱えていませんか?
生活保護は、発達障害の有無だけで判断される制度ではありません。現在の収入や資産、生活の状況、そして就労の難しさなど、さまざまな要素をもとに総合的に判断されます。
そのため、発達障害がある人でも、生活に困窮している状況であれば、生活保護を申請することは可能です。
一方で、制度の仕組みが分かりにくく、「自分は対象になるのだろうか」と悩んでしまう人も少なくありません。
このコラムでは、発達障害と生活保護の基本的な考え方や、申請できる主な条件、手続きの流れについて解説します。
あわせて、生活保護を受給した場合に受けられる支援や、申請時に押さえておきたいポイント、生活保護以外に相談できる支援機関についても紹介します。
制度を正しく知り、自分に合った支援を選ぶためのヒントを、このコラムで一緒に整理していきましょう。
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目次
生活保護は発達障害の有無ではなく、生活状況にも基づいて判断される
生活保護を受けられるかどうかは、発達障害があるかどうかではなく、現在の生活状況や経済的な困りごとに基づいて判断されます。
生活保護制度は、資産や収入、就労の状況、ほかの公的制度の利用状況などを総合的に確認し、最低限の生活を維持できているかどうかを判断する制度です。
そのため、発達障害のある人であっても、生活に困窮している状況であれば、生活保護の申請や受給の対象となる可能性があります。
生活保護の受給可否を判断する際に主に確認されるのは、以下のとおりです。
- 預貯金や不動産など、すぐに生活費に充てられる資産がほとんどない
- 就労が難しい、または働いていても最低生活費を下回る収入しか得られていない
- 年金や手当など、ほかの公的制度を利用しても生活が成り立たない
- 世帯全体の収入が、年齢や人数に応じて定められた最低生活費を下回っている
これらの項目は、発達障害の有無とは切り離して確認されます。(参考:厚生労働省 「生活保護制度」)
発達障害のある人であっても、生活に困りごとがあるときは、自治体の福祉事務所に相談することが大切です。
発達障害とは?
発達障害とは、脳の機能的な問題や働き方の違いにより、物事の捉え方や行動に違いが生じることで、日常生活および社会生活を送る上で支障が出る、生まれつきの脳機能障害のことです。(参考: American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、こころの情報サイト「発達障害(神経発達症)」、NHK福祉ポータル ハートネット「そもそも「発達障害」って?|大人の発達障害ってなんだろう? - 大人の発達障害」、宮尾益知・監修『ASD(アスペルガー症候群)、ADHD、LD 職場の発達障害』、松本卓也、野間俊一・編著『メンタルヘルス時代の精神医学入門 ーこころの病の理解と支援ー』、福西勇夫・山末英典・監修『ニュートン式 超図解 最強に面白い!! 精神の病気 発達障害編』)
発達障害は主に、以下の3つの診断名に分類されます。
- ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)
- ASD(自閉スペクトラム症/広汎性発達障害)
- LD/SLD(限局性学習症/限局性学習障害)
同じ診断名でも、人によって多様な特性が現れるのが発達障害の特徴です。また、いずれかの発達障害のある人は、ほかの発達障害が併存している可能性もあります。
生活保護とは?
生活保護とは、生活に困窮している人や病気やケガ、障害などで就労できない人に対して、その困窮の程度に応じて必要な保護を行い、健康で文化的な最低限度の生活の保障と自立の助長を目的とした支援制度のことです。(参考:厚生労働省「生活保護制度」、厚生労働省「生活保護制度」に関するQ&A」)
生活に必要な最低限度のお金を持つことが困難な人が、お金を受給できる制度とも言えます。
生活保護の申請は、お住まいの自治体を所管する福祉事務所、またはお住まいの自治体に福祉事務所がない自治体の場合、お住まいの自治体の生活保護を担当する部署・窓口で行えます。
なお、一定の資産がある場合、申請できないため注意してください。
また、生活保護は最後のセーフティネットとも呼ばれるように、本当にサポートが必要な人だけを対象とする支援制度です。
一般的に審査が厳しく、生活保護以外の支援制度の利用を提案されたり、申請が却下されたりする可能性があることを心に留めておいてください。
発達障害のある人が生活保護を申請できる主な条件
この章では、発達障害のある人が生活保護を申請できる条件について解説します。
条件①世帯の収入が最低生活費を下回っている
1つ目の条件は、世帯の収入が最低生活費を下回っていることです。
生活保護制度では、預貯金や年金・手当などのほか、資産や就労の状況などを総合的に活用してもなお所定の最低生活費に満たないときに支援が行われます。
厚生労働省の資料でも、「年齢や世帯の人数等により定められた最低生活費以下の収入の場合に生活保護を受給できる」とされています。(参考:厚生労働省「生活保護制度」)
最低生活費の考え方は、以下のとおりです。
- 最低生活費は、世帯人数や年齢、居住地域などに応じて決まる
- 世帯の収入には、就労による収入のほか、年金や各種手当などの社会保障給付も含まれる
- 収入の合計が最低生活費に満たないとき、その差額分が保護費として支給される
生活保護の判断では、発達障害の有無や働いているかどうかだけでなく、世帯全体の収入が最低生活費を下回っているかどうかが重要な基準になります。
条件②生活費に充てられる資産がほとんどない
2つ目の条件は、生活費に充てられる資産がほとんどないことです。
生活保護制度は、預貯金や不動産など、生活費に充てられる資産を活用してもなお生活が成り立たない場合に、必要な保護を行います。(参考:厚生労働省「生活保護制度」)
生活保護の申請時に確認される資産の考え方は、以下のとおりです。
- 預貯金や不動産、自動車など、すぐに生活費に充てられる資産がほとんどない
- 自動車や不動産については、通院・通勤・地域事情など生活に必要な事情がある場合、保有が認められることがある
- 資産があっても、売却や換金が難しい場合は、状況に応じて判断される
- 申請後は、福祉事務所が資産の状況を確認する
生活保護の判断では、収入だけでなく、生活費に充てられる資産がどの程度あるかも重要な基準となります。
条件③就労収入だけでは最低生活費を満たせない状況にある
3つ目の条件は、病気や特性により就労が難しい状況にあることです。
生活保護制度は、就労できない場合や、就労していても必要な生活費を得られない場合に、最低限の生活を保障してくれます。(参考:厚生労働省「生活保護制度」)
就労の可否を判断する際に確認される主なポイントは、以下のとおりです。
- 病気や特性の影響で、継続的な就労が難しい状況にある
- 働いていても、体調や特性により十分な収入を得られていない
- 医療機関の受診状況や、主治医の意見などをもとに、就労の難しさが確認される
- 就労の可能性については、福祉事務所が世帯の実態に応じて判断する
生活保護の判断では、単に働いているかどうかではなく、病気や特性によって就労がどの程度難しい状況にあるかが重視されます。
条件④ほかの公的制度を利用しても生活が成り立たない
4つ目の条件は、ほかの公的制度を利用しても生活が成り立たないことです。
生活保護制度は、年金や各種手当などの社会保障給付を活用しても必要な生活費を得られない場合は、生活保護の対象となります。(参考:厚生労働省「生活保護制度」)
ほかの公的制度の活用状況として、主に以下の点が確認されます。
- 障害年金や年金、各種手当を受給しているが、生活費としては不足している
- 利用できる制度を活用しても、最低生活費を下回る収入しか得られていない
- 制度の利用が難しい事情があり、実質的に生活の支えになっていない
- これらの状況を踏まえ、福祉事務所が世帯の実態に応じて判断する
生活保護は、ほかの制度を利用している場合でも、生活が成り立っていなければ検討できる制度なのです。
生活保護の申請手続きの流れ
この章では、生活保護の申請手続きの流れについて解説します。
手順①福祉事務所に相談する
1つ目の手順は、自治体の福祉事務所に相談することです。
福祉事務所は、生活保護に関する相談や申請を受け付ける窓口であり、申請前の段階から利用できます。(参考:厚生労働省「生活保護制度」)
この段階では、生活保護を申請するかどうかを判断するための説明や案内が行われます。相談時に行われる主な内容は、以下のとおりです。
- 生活保護制度の概要や、申請までの流れの説明
- 現在の生活状況をふまえた制度利用の考え方の整理
- 生活保護以外に利用できる公的制度の有無の確認
- 申請に進む場合の大まかな手続きの案内
相談後、生活保護の申請を希望する場合は、福祉事務所の案内に沿って以下の手続きに進みます。
手順②生活保護の申請を行う
2つ目は、生活保護の利用を希望する場合に、正式な申請手続きを行うことです。
生活保護の申請は、申請書を福祉事務所に提出することで行われます。(参考:厚生労働省「生活保護制度」)
この段階から、制度利用の可否を判断するための具体的な確認が始まります。
申請時に行われる主な内容は、以下のとおりです。
- 生活保護申請書の提出
- 世帯の収入や資産、生活状況に関する具体的な申告
- 預貯金や不動産など、資産状況の確認
- 年金や手当など、社会保障給付の利用状況の確認
申請が受理されると、次の手順として調査・審査に進みます。
手順③調査・審査を受ける
3つ目は、福祉事務所による調査と審査を受けることです。
生活保護の申請後、申請内容が要件を満たしているかどうかを確認するため、福祉事務所による調査と審査が行われます。
主に行われる調査内容は、以下のとおりです。
- 世帯の生活状況を確認するための訪問調査
- 預貯金や不動産など、資産状況の調査
- 就労状況や収入の有無に関する確認
- 年金や手当など、社会保障給付の利用状況の確認
- 親族に対して扶養が可能かどうかの確認(扶養照会)(※事情によっては行われない場合もある)
これらの調査結果を踏まえ、福祉事務所が世帯の実態を総合的に確認したうえで、原則14日以内(最長30日)で生活保護の可否が判断されます。(参考:厚生労働省「生活保護制度」)
手順④生活保護の開始が決定される
4つ目は、調査・審査の結果をもとに、生活保護の利用が決定される段階です。
調査・審査の結果、生活保護が必要と判断された場合、生活保護の開始が決定されます。
生活保護が開始されると受けられる支援は、以下のとおりです。
- 日常生活に必要な生活費の支給
- 一定の基準額内での家賃の支給
- 医療費や介護サービスに関する支援
- 必要に応じた家計相談や就労に関する支援
生活保護の受給中は、ケースワーカーが定期的に状況を確認しながら、生活の安定や自立に向けた支援が行われます。(参考:厚生労働省「生活保護制度」)
生活保護の受給中に受けられる5つのサポート
この章では、生活保護の受給中に受けられる5つのサポートについて解説します。
サポート①生活費や住まいに関する支援
1つ目は、生活費や住まいに関する支援です。
生活保護を受給すると、日々の暮らしに必要な費用や、住まいを安定して確保するための支援を受けられます。
これは、生活保護制度における「最低限度の生活の保障」を支える、基本的なサポートです。
主な支援内容は、以下のとおりです。
- 食費や光熱費など、日常生活に必要な費用の支給(生活扶助)
- 家賃や地代など、住居費の支給(住宅扶助)
- 状況に応じた転居費用や被服費などの一時的な支援(一時扶助)
住宅扶助については、世帯人数や地域ごとに上限額が定められており、その範囲内で家賃が支給されます。
また、家賃の滞納を防ぐため、必要に応じて福祉事務所が家主に直接家賃を支払う「代理納付」が行われる場合もあります。(参考:厚生労働省「生活保護制度の概要等について」)
生活保護では、まず「お金」と「住まい」という生活の土台を整え、安心して生活を立て直せる環境を支えてくれるのです。
サポート②医療や介護に関する支援
2つ目は、医療や介護に関する支援です。
生活保護を受給している間は、病気やケガ、障害、加齢による介護が必要な場合でも、医療や介護を受けやすい仕組みが整えられています。
主な支援内容は、以下のとおりです。
- 病院での診察や治療、薬代などの支援(医療扶助)
- 介護サービス利用時の自己負担を補う支援(介護扶助)
医療扶助では、指定医療機関において自己負担なく医療を受けられます。また、要介護認定を受けている場合は、介護保険サービスと連携しながら支援が行われます。
経済的な理由で受診や介護をためらうことがないよう、健康と生活の維持を支えることが、このサポートの目的です。(参考:厚生労働省「生活保護制度の概要等について」)
サポート③ケースワーカーによる相談と見守り
3つ目は、ケースワーカーによる相談と見守りです。
生活保護の受給中は、福祉事務所のケースワーカーが担当となり、定期的に生活状況を確認します。(参考:厚生労働省「生活保護制度Q&A」)
具体的な関わり方は、以下のとおりです。
- 定期的な面談や家庭訪問による状況確認
- 生活上の困りごとに関する相談対応
- 医療・就労・住まいなど、必要な支援先への調整や紹介
ケースワーカーは、単に制度の管理を行う存在ではなく、生活を安定させるための相談窓口としての役割も担っています。
困ったことを1人で抱え込まず、早めに相談できる体制が整えられている点も、生活保護の特徴です。
サポート④生活を立て直すための支援
4つ目は、生活を立て直すための支援です。
生活保護は、生活を支えるだけでなく、自立に向けた取り組みを後押しする制度でもあります。(参考:厚生労働省「生活保護制度の概要等について」)
状況に応じて行われる支援は、以下のとおりです。
- 就労に向けた相談や職業紹介
- 家計管理や金銭面の相談支援
- 就労準備や社会参加に向けた支援プログラムの案内
すぐに働くことが難しい場合でも、体調や生活状況に配慮しながら、無理のないペースで支援が進められます。
生活の安定を土台に、将来的な自立を目指していくことが、このサポートの目的なのです。
サポート⑤子どもや家庭に関する支援(該当する場合)
5つ目は、子どもや家庭に関する支援です。
生活保護世帯に子どもがいる場合、子どもの成長や学びを支えるための支援も用意されています。(参考:厚生労働省「生活保護制度の概要等について」)
主な支援内容は、以下のとおりです。
- 学用品費や給食費などの支援(教育扶助)
- 学習支援や生活支援事業へのつなぎ
- 進学や就職に向けた準備を支える給付金制度
家庭の経済状況によって、子どもの進学や将来の選択肢が狭まらないよう、継続的な支援が行われます。
子ども本人だけでなく、家庭全体の安定を支える視点が、このサポートの特徴といえるでしょう。
発達障害のある人が生活保護を申請するときのポイント
この章では、発達障害のある人が生活保護を申請するときのポイントについて解説します。
ポイント①困りごとをメモにして持参する
1つ目のポイントは、困りごとをメモにして持参することです。
生活保護の相談や申請では、ケースワーカーが生活状況を確認しながら、制度の説明や支援の必要性を判断します。
発達障害のある人の場合、その場で状況をうまく説明できないことも少なくありません。
そのため、事前にメモを用意しておくと安心です。例えば、以下のような内容を書き出しておくと役立ちます。
- 日常生活や仕事で困っていること
- 働こうとしてもうまくいかなかった経験
- 収入が不安定、または途切れている状況
- 通院状況や診断の有無
箇条書きで構いません。メモを見ながら話しても問題はなく、ケースワーカーも状況を把握しやすくなるでしょう。
ポイント②就労が難しい状況を客観的に示す
2つ目のポイントは、就労が難しい状況を客観的に示すことです。
生活保護では、就労能力の有無や程度を踏まえて保護の要否が判断されます。
そのため、発達障害の特性によって働くことが難しい場合は、その状況を第三者にも分かる形で示す必要があります。
就労が難しい状況を示す方法は、以下のとおりです。
- 医師の診断書や通院歴が分かる資料
- 過去の就労経験と、継続が難しかった理由をまとめたメモ
- 日常生活で困っていることを書き出したメモ
これらを用意しておくと、ケースワーカーが生活状況や就労上の課題を把握しやすくなります。
客観的な資料や整理したメモを持参することで、就労が困難な実態が伝わりやすくなり、申請時の説明負担も軽減されるでしょう。(参考:厚生労働省 「生活保護制度」、厚生労働省「生活保護制度におけるケースワーカーの役割と実務」)
ポイント③申請の意思を明確に伝える
3つ目のポイントは、申請の意思を明確に伝えることです。
福祉事務所での「相談」と「申請」は別の手続きです。申請の意思が確認されなければ、正式な申請手続きに進まない場合があります。
申請の意思を伝える方法は、以下のとおりです。
- 窓口で「生活保護の申請を希望します」と明確に伝える
- 口頭での説明が難しい場合は、メモを渡す
- 申請書の交付を希望していることをその場で伝える
申請の意思が確認されると、福祉事務所は申請書の交付や手続きの案内を行います。
不安があっても、まずは申請の意思を明確に伝えることが、生活保護利用へつながるでしょう。(参考:厚生労働省 「生活保護制度」、厚生労働省「生活保護制度におけるケースワーカーの役割と実務」)
発達障害のある人が生活保護以外にも相談できる支援機関
この章では、発達障害のある人が生活保護以外にも相談できる支援機関について紹介します。
支援機関①自立相談支援機関(生活全体の相談)
1つ目の支援機関は、自立相談支援機関です。
自立相談支援機関は、生活や仕事、住まいなどの困りごとを総合的に相談できる窓口で、全国の自治体に設置されています。
発達障害のある本人だけでなく、家族や友人などの周囲の人からの相談も受け付けており、相談は無料で秘密も守られます。(参考:政府広報オンライン「生活に困ったときの相談窓口 自立相談支援機関」)
主な支援内容は、以下のとおりです。
- 生活状況や困りごとの整理と、支援プランの作成
- 住まいや家計管理に関する相談・助言
- 就労に向けた準備支援や、支援付き就労の案内
- 家賃相当額の支給や、緊急時の住まいの確保に関する支援
- 子どもの学習や生活習慣、進学に関する支援(該当する場合)
相談後は、支援員が定期的に状況を確認しながら、必要に応じて支援内容を見直します。
状況が変わった場合でも、その都度相談できるため、「どこから手をつければいいかわからない」という人にとって、最初の相談先として利用しやすい支援機関です。
支援機関②福祉事務所(制度の説明・申請窓口)
2つ目の支援機関は、福祉事務所です。
福祉事務所は、生活保護をはじめとする福祉制度を担当する行政機関で、生活保護の制度説明から申請、決定、受給後の支援までを一貫して行う窓口です。
都道府県や市(特別区を含む)には設置が義務付けられており、生活に困ったときの公的支援の中心的な相談先となっています。(参考:厚生労働省「福祉事務所について」)
福祉事務所で主に行われる対応は、以下のとおりです。
- 生活保護制度の内容や利用条件の説明
- 現在の生活状況・収入・資産に関する聞き取り
- 生活保護を申請する意思の確認
- 申請書の受理と、その後の調査・審査の実施
- 受給開始後の相談対応や生活状況の確認(ケースワーク)
申請前の相談だけでも利用できるため、「生活保護を使えるか分からない」「まず話を聞いてほしい」という段階でも相談が可能です。
また、本人が来所できない場合には、状況に応じて電話相談や代理申請が認められることもあります。
生活保護の申請や制度利用に不安がある場合は、まず福祉事務所に相談し、現在の状況でどのような支援が考えられるのかを確認することが大切です。
支援機関③発達障害者支援センター(特性理解や支援の調整)
3つ目の支援機関は、発達障害者支援センターです。
発達障害者支援センターは、発達障害のある人やその家族を対象に、特性の理解や生活上の困りごとについて専門的な相談を受け付ける機関です。
福祉・医療・教育・就労など、複数の分野にまたがる課題について、関係機関と連携しながら支援の調整を行います。(参考:国立障害者リハビリテーションセンター「発達障害情報・支援センター」)
発達障害者支援センターで対応している主な内容は、以下のとおりです。
- 発達障害の特性や困りごとに関する相談
- 日常生活・対人関係・仕事などの困難への助言
- 利用できる福祉制度や支援サービスの情報提供
- 医療機関、福祉事務所、就労支援機関などとの連携・調整
- 家族からの相談への対応
相談は本人だけでなく、家族や支援者から行うことも可能です。
また、生活保護の申請時に、福祉事務所へ伝えるべき困りごとを整理する場として利用することで、申請時の説明がしやすくなる場合もあります。
発達障害の特性に配慮した支援を受けたいときは、福祉事務所とあわせて、発達障害者支援センターへの相談も検討するとよいでしょう。
支援機関④就労支援機関(就労移行支援など)
4つ目の支援機関は、就労支援機関です。
就労移行支援とは、障害のある人が就職に向けて必要なスキルや知識を習得できる福祉サービスです。
発達障害のある人も多く利用しており、「どんな仕事が向いてるのかわからない」「働いた経験が少なくて不安」といった悩みを抱えている人に適しています。
就労移行支援事業所では、以下のようなサポートを受けられます。
- ビジネスマナーやパソコンスキルなどの職業訓練
- 体調管理やメンタル面の相談
- 就職活動のサポート
- インターン・職場体験先の紹介と職場探しの手伝い
- 就職後の職場定着支援
利用期間は原則2年間で、個々のペースに合わせて訓練を進められます。
発達障害のある人の生活保護に関するよくある質問
この章では、発達障害のある人の生活保護に関するよくある質問を紹介します。
Q1発達障害があっても、働けると言われたら受給できませんか?
働けると判断された場合でも、必ずしも生活保護が受けられないわけではありません。
生活保護では、「就労の可否」だけでなく、実際の収入が最低生活費を下回っているかどうかが重視されます。
そのため、働いていても、収入が基準に満たない場合には、生活保護の対象となることがあります。
また、発達障害の特性により事情がある場合は、その状況を踏まえて総合的に判断されます。(参考:厚生労働省「発達障害のある人の生活保護に関するQ&A」)
不安がある場合は、医師の意見書や支援機関の記録をもとに、福祉事務所へ相談することが重要です。
Q2発達障害がある場合、障害年金と生活保護は併用できますか?
併用は可能ですが、両方を満額でもらえるわけではありません。
生活保護を受給している場合、障害年金は収入として扱われ、原則として生活保護費から差し引かれます。
そのため、二重に受給できる制度ではありません。
しかし、障害年金の等級や障害の状態により、生活保護に障害者加算が認められる場合があります。(参考:障害年金案内「よくある質問」)
障害年金は生活保護と対立する制度ではなく、生活を安定させるための補完的な支えといえます。
どちらの制度をどう使うのが適切かは状況によって異なるため、福祉事務所や年金事務所に相談しながら進めることが大切です。
まとめ:発達障害と生活保護の仕組みを理解し、必要な支援を活用しよう
発達障害のある人が生活に困難を感じる背景には、本人の努力や意欲だけではどうにもならない、環境や制度とのミスマッチが関係していることがあります。
生活保護は、「働けないから受ける制度」ではなく、生活を立て直すために一時的・継続的に支えを受けられる仕組みです。
医療や住まい、相談支援などを含め、状況に応じたサポートを受けながら生活の安定を目指すことができます。
また、生活保護以外にも、自立相談支援機関や発達障害者支援センターなど、困りごとを相談できる支援先は複数あります。
ひとつの制度だけで抱え込まず、複数の支援を組み合わせて考えることも大切です。
「利用してはいけないのでは」と自分を責める必要はありません。
制度を知り、必要な支援を選ぶことは、あなたの生活を守るための大切な選択です。
このコラムが、発達障害と生活保護に対する不安や迷いを整理し、あなたに合った支援につながるための一歩になれば幸いです。
生活保護の申請手続きの流れについて教えてください。
発達障害のある人が生活保護を申請するときのポイントについて教えてください。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2025年6月現在17校+オンライン校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2025年9月現在9校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2025年9月現在、首都圏・関西に9校舎を展開しています。トップページはこちら→



