統合失調症のある人に向いてる仕事 働きやすい環境や仕事を続けるコツを解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
統合失調症のあるあなたや、統合失調症のある家族がいる人は、以下のような悩みがあるかと思います。
- 仕事はできる?
- 発症後は働かないほうがよい?
- 仕事に集中できない...
- どんな仕事が向いているの?
- 仕事選びや就職について注意すべきことはある?
統合失調症の症状が原因で働きにくくなり、もう仕事を続けられないのではないかと不安かもしれません。
しかし、仕事選びや仕事を続けるためのポイントを把握すれば、統合失調症を抱えながら働くことも可能です。
このコラムでは、統合失調症のある人に向いてる仕事、働きやすい環境、仕事に関する現状、仕事するときの課題仕事を選ぶときのポイント、仕事を続けるコツ、仕事復帰のポイントについて解説します。あわせて、統合失調症のある人が利用できる支援機関を紹介します。
統合失調症で就職・就労に悩んでいる人は、ぜひ読んでみてください。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、統合失調症のある人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
統合失調症のある人に向いてる仕事3選
この章では、統合失調症のある人に向いている仕事について解説します。
統合失調症のある人には、以下のような仕事が向いているといわれています。
- 事務職
- 軽作業
- 製造業
- 商品管理
ただし、向き・不向きはもともとの性格や症状によっても異なるので、あなたに必ず向いているとは限りません。
あくまで「統合失調症のある人にも向いている仕事がある」という安心材料として、参考にしてください。
実際に仕事を探すときは医師や専門家のアドバイスをもとに、業務内容・職場など複数の観点から自分とマッチするか考えてみましょう。(参考:松岡広樹『統合失調症の人と働くために知っておきたいこと みんなが幸せになる精神障害者雇用』)
仕事①細かな判断が不要な仕事
統合失調症のある人には、細かな判断が不要な仕事が向いているといえます。
判断力が低下する症状があるため、柔軟な対応が求められる接客業・営業などは難しいと感じるかもしれません。
マニュアルやルールによる判断を行いやすい傾向がある仕事がおすすめです。
細かな判断を求められませんし、他の仕事と比べて作業を覚えやすいでしょう。
ただし冒頭に紹介した軽作業・製造業・商品管理などは基本的に立ち仕事です。疲れやすい点には注意してください。
仕事②人と接することが少ない仕事
人と接することが少ない仕事も、統合失調症のある人に向いている傾向があります。
コミュニケーションが多く求められる仕事は、細かな判断が必要です。
また人と接することが多いと、陽性症状が現れたときに周囲の目が気になったり、コミュニケーションに難が生じたりするかもしれません。
そのため、1人でもくもくと進められる仕事がおすすめです。
ただし、事務職の場合、職場によっては、来客対応があります。
職場や上司に相談し、来客対応・電話対応の担当を外してもらえるか確認してみてください。
仕事③ルーティンワークの仕事
決まった業務を続ける、ルーティンワークの仕事も統合失調症のある人におすすめです。
1度覚えれば、新たな記憶・判断が必要ありません。
マニュアルが完備されている仕事なら、なかなか覚えられなくても1人で進められます。
専門知識が不要な職種も多く、未経験でも仕事を始めやすいでしょう。
集中力が求められる場合もありますが、自分のペースで進められる傾向があります。
統合失調症のある人の仕事に関する現状
統合失調症がある人でも仕事ができるのかという悩みを抱えている人は多いでしょう。
この章では、統合失調症のある人の仕事に関する現状について解説します。(参考:厚生労働省「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」、厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査結果」、高橋太郎・著、中込和幸・監修『統合失調症患者と家族が選ぶ 社会復帰をめざす認知矯正療法』)
現状①仕事をする人の割合は増えている
厚生労働省の調査によると、「現在雇用されている、障害のある人」は約64万2000人です。(参考:厚生労働省「令和5年 障害者雇用状況の集計結果」)
そのうち精神障害のある人は約13万人程度で、前年よりも約18.7%も増加しました。
ただし、この調査の場合、週20時間以上30時間未満の人は0.5人分としてカウントしているため、実際の雇用人数の総数とは異なる点に注意してください。
日本の障害者雇用率は、毎年伸びている状況です。
また厚生労働省の調査によると、「精神障害者保健福祉手帳を保持している労働者」のうち、統合失調症がある人は約31.2%と最多でした。(参考:厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査結果」)
現状②統合失調症のある人でも仕事はできる
統合失調症のある労働者が3割程度いることからもわかるように、統合失調症のある人でも仕事は可能です。
ただし、「しかるべき休養を取ったのち、統合失調症の病状が安定してから」「かかりつけの医師が『就労できる』と判断してから」というのが、条件になります。
病状が安定しないうちに仕事復帰をして、再度心身の調子を崩す人は少なくありません。
しかし、服薬やリハビリテーションなどの治療をすれば、日常生活を送ることができます。
何よりもまず医師の指示に従い、焦らずに、統合失調症の回復に努めましょう。
仕事を続ける上では、自己判断で通院をやめたり、治療薬の服用を怠ったり、断薬したりしないことが大切です。
その上で、再発予防策を講じつつ、無理をしないように、業務量などをコントロールしましょう。
そうすれば、統合失調症であっても仕事を続けることができます。
統合失調症のある人が仕事するときの課題5選
こちらでも触れたとおり、統合失調症のある人にも仕事は可能ですが、働きづらさを感じることがあります。
この章では、一般的に統合失調症のある人が働くときに感じる課題について解説します。
「自分だけが困っているのではないか」と不安な人は、自分だけの悩みではないことを確認してみてください。(参考:高橋太郎・著、中込和幸・監修『統合失調症患者と家族が選ぶ 社会復帰をめざす認知矯正療法』)
課題①周囲や幻覚・幻聴が気になって集中できない
統合失調症のある人の場合、仕事中に周囲の人や幻覚・幻聴が気になって集中できないケースはよく見られます。
実際に周囲の人が自分を見ていなくても、見られているように感じると気になって業務に影響します。
薬物療法を進めると幻覚・幻聴が気にならなくなりますが、その日の調子によっては症状が現れる場合があります。
幻覚・幻聴だとわかっていても、症状が長く出るとストレスに感じるでしょう。
また、陰性症状が出ている時期に部屋で閉じこもっていた人の場合、光や音に過敏であるといった症状が和らぐまでに多少時間が必要です。
こうした幻聴や感覚過敏によって、周囲の環境が気になり、「仕事に集中しづらい」ということが起こりうるのです。
課題②心身ともに疲れやすい
心身ともに疲れやすいことも、統合失調症のある人が抱える課題のひとつです。
認知機能障害によって、集中しづらくなったり判断が難しくなったりするため、同じ業務でも発症前と比べて負担を感じやすくなります。
意欲低下や無気力などの陰性症状が現れると、仕事だけでなく生活するだけで疲れることもあります。
また療養生活が長く、体力が低下して疲れやすいケースも多いでしょう。
課題③陰性症状が原因でやる気が出ない
陰性症状が原因で、やる気が出ずに仕事へ影響が出て悩む人もいます。
意欲が低下し無気力になると、業務をスムーズに進められなくなります。
統合失調症をオープンにしていない場合や理解されない職場では、症状が原因の無気力を怠慢だと勘違いされることも。
あなたなりに頑張っていても、評価に影響が出ることもあるようです。
課題④認知機能障害のために業務が難しい
認知機能障害による症状で、業務が難しく感じる悩みもあります。
思考力・判断力・記憶力など仕事で必要な基礎スキルが低下したことで、発症前は問題なく行えていた業務のミスが増えるケースはよく見られます。
業務を遂行できなくなったことで、やる気がないと周りの人に思われたり、評価が下がったりすることもあるようです。
課題⑤給与水準が低い
給与水準が低めである点も、統合失調症のある人が悩む課題のひとつです。
厚生労働省によると、精神障害のある人の1か月の平均賃金は約12万5000円でした。(参考:厚生労働省「平成30年度障害者雇用実態調査結果」)
労働時間別の1か月の平均賃金は以下のとおりです。
- 週30時間以上:約18万9000円
- 20時間以上30時間未満:約7万4000円
- 20時間未満:約5万1000円
また、一般労働者の平均月収は約31万8000円です。(参考:厚生労働省「令和5年賃金構造基本統計調査」)
これらの調査結果から、精神障害がある人は、精神障害がない労働者よりも給与水準が低いことがわかります。
生活に必要な金額を稼げなければ、療養も難しくなるでしょう。
統合失調症のある人が働きやすい環境
統合失調症のある人は、仕事をする上で複数の課題があります。
しかし、働きやすい環境を見つければ、仕事の悩みが減るかもしれません。
この章では、一般的に統合失調症のある人が働きやすい環境について解説します。(参考:松岡広樹『統合失調症の人と働くために知っておきたいこと みんなが幸せになる精神障害者雇用』)
職場環境①特性に合わせて働ける職場
特性に合わせて働ける職場は、統合失調症のある人におすすめです。
判断力や記憶力、集中力が落ちているとき、細かい判断が必要な業務やマルチタスクを求められる仕事は心身ともに疲れやすいでしょう。
また人手不足ですぐに休めない環境では、不調なときに困ります。
柔軟な対応や細かい判断を求められず、出勤を調整しやすい職場は、特性に合っており働きやすいでしょう。
職場環境②症状への理解がある職場
統合失調症の症状へ理解がある職場も、働きやすい可能性が高いでしょう。
判断力が落ちたり気力に波があったりすることに理解があれば、業務効率が低くなったときに許容してもらえるかもしれません。
また急な体調不良に対して、休憩やシフト調整などの対処をしてもらえる職場もあるようです。
統合失調症のある人は、人と関わることに対して緊張・恐れを感じやすい傾向があります。
症状への理解があり相談できる環境なら、不安を感じずに働けるでしょう。
統合失調症のある人が仕事を選ぶときのポイント6点
統合失調症のある人が仕事を選ぶときは、働きやすい環境や向いている仕事以外にも重視するポイントがあります。
この章では、統合失調症のある人が仕事を選ぶときのポイントについて解説します。(参考:松岡広樹「統合失調症の人と働くために知っておきたいこと みんなが幸せになる精神障害者雇用」)
ポイント①医師に相談する
統合失調症のある人が仕事を選ぶときは、まず医師に相談しましょう。
症状が回復するまでの間に、無理して仕事を始めて大きなストレスを感じると、再発リスクが高くなります。
統合失調症で悩む人は、治療を進めることが第一です。
そもそも仕事をしてよい状態なのか、治療に専念したほうがよいのか医師に確認してみてください。
症状が落ち着いてきて仕事ができる状態になったら、医師に相談したうえで就職活動を始めましょう。
ポイント②無理なく働けるかを確認する
無理なく働ける職場環境か、事前に確認することがおすすめです。
統合失調症のある人は特性に合っていない業務内容だったり、周囲の人が症状への理解がなかったりすると働きにくいと感じるでしょう。
「働きやすい職場環境かどうか」とあわせて、自分の性格・能力・好みなどをもとに、自分に合っている職種・業務内容かをチェックすることが大切です。
体調不良時の休憩や通院のための休暇を取れる職場なら、症状が悪化したときも安心して続けられるでしょう。
統合失調症と向き合いながら仕事をする場合、無理をしないことが重要です。
ポイント③マイペースに働ける職場を選ぶ
「マイペースに働けるかどうか」も統合失調症のある人の仕事選びには重要です。
統合失調症のある人は認知機能障害により、発症前よりスムーズに業務を進められなくなる場合があります。
自分のペースで働ける職場・業務内容なら、体調に合わせて働けるでしょう。
以下のような制度があると、少ない負担で働き始められます。
- 時短勤務:1日の労働時間を通常より短縮して働く
- フレックス勤務:仕事の開始時間と終了時間を自分で決めて働く
- 時差出勤:職場の一部またはすべてで始業時間・終業時間を変更して、混雑する時間帯の通勤をなくす
- 在宅勤務:自宅で働く
仕事を選ぶ際はマイペースに働ける制度があるか、導入してもらえるかを確認してみましょう。
ポイント④症状を周囲に伝えるか考える
統合失調症のある人が働く場合、症状を周囲に伝えるかどうかも考えましょう。
病気や障害などを相手先に開示した上で就職活動・就労をすることを、オープン就労といいます。
症状を話せば、理解を得られるメリットがあります。職場によっては病気や障害にあわせた配慮を受けられるため、働きやすくなるでしょう。
給与や労働環境などの条件に問題がない場合は、オープン就労がおすすめです。
対して、病気や障害などを相手先に開示しないで就職活動・就労をすることを、クローズ就労といいます。
クローズ就労の場合、周囲の人に病気や障害にあわせた配慮がされないため、業務内容や職場環境によっては仕事が辛いと感じるかもしれません。
ただしオープン就労より、給与などの条件がよい案件が多い傾向があります。
オープン就労とクローズ就労のどちらのほうがメリットを得られるか考えてから、仕事を探しましょう。
オープン就労とクローズ就労については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
ポイント⑤障害者雇用と一般雇用のどちらかを選ぶ
統合失調症のある人は、障害者雇用と一般雇用のどちらで働くかを選ぶことも大切です。
障害者雇用とは、障害のある労働者が、障害の特徴や内容に合わせて働きやすくするため、安心して働くための雇用枠のことです。
対して、一般雇用とは、障害者雇用以外の雇用枠のことです。障害の有無にかかわらず誰でも応募することが可能です。
障害者雇用では病気や障害にあわせた配慮を受けられるため、特性に合わせた働き方を実現できます。
ただし、統合失調症のある人が障害者雇用をされるためには、基本的には障害者手帳が必須です。
また、障害者雇用の枠は一般雇用より少なく、給料も低い傾向があります。
統合失調症のある人がオープン就労をする場合、障害者雇用を選んだほうが病気や障害にあわせた配慮を受けられる可能性が高いでしょう。
一方で、症状について職場に伝えないなら、一般雇用で働くことになります。
「病気をオープンにするかどうか」とあわせて、一般雇用・障害者雇用のどちらを選ぶか考えてみてください。
障害者雇用や障害者手帳については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
ポイント⑥支援機関を利用する
統合失調症のある人が仕事を選ぶとき、支援機関の利用も検討してみてください。
公・民を問わず、統合失調症などの精神疾患がある人の就労をサポートしている支援機関は多数あります。
中には、お勤め先とあなたの間に入り、業務内容や仕事量といった労務環境の調整をしている機関もあります。
どんな仕事・働き方が合っているか知りたい人は、支援機関に頼ることがおすすめです。
仕事探し・就職に関する相談・仕事に必要なスキルの習得など、目的に応じて支援機関を使い分けてみてくださいね。
支援機関については、こちらで解説します。
統合失調症のある人が仕事を続けるコツ5点
統合失調症のある人は無理して仕事をすると、症状が再発する可能性があります。
仕事を続けるためには、負担やストレスを減らす働き方をすることが重要です。
この章では、統合失調症のある人が仕事を続けるコツを解説します。(参考:松岡広樹『統合失調症の人と働くために知っておきたいこと みんなが幸せになる精神障害者雇用』、厚生労働省「精神障害(精神疾患)の特性(代表例)」)
コツ①治療薬の服用・通院を続ける
統合失調症のある人が仕事を続けるためには、治療薬の服用・通院を続けることが大切です。
薬物療法が中心である統合失調症では、治療薬を飲み忘れると症状が再発・悪化するリスクがあります。
一般的に統合失調症の症状がすぐ再発する人の多くは、自己判断での服薬の中断が原因です。
症状が悪化すると仕事だけでなく生活にも大きな影響が出ます。治療薬の服用・通院は必ず続けましょう。
治療薬の副作用で仕事に支障が出た場合、または症状が落ち着いてきたときは、勝手に断薬せず医師に相談してください。
治療薬の切り替えの際は、かかりつけ医と相談の上、少しずつ変えていくのがよいでしょう。
コツ②定期的なカウンセリングを受ける
定期的なカウンセリングも、統合失調症のある人が仕事を続けるためには重要です。
医師の診察では治療薬や治療についての相談がメインなので、生活や仕事の悩みに関して話す時間は少ないでしょう。
臨床心理士などの専門家によるカウンセリングでは、自分の気持ちや悩みについて話せます。
仕事によるストレスは、あなたの予想以上に心身に蓄積されるものです。
ご自身では気付いていなくても、何らかの症状や、認知・思考の歪みが出ている場合があります。
経過観察を続けることで、普段とは違った振る舞いが見られたときに、カウンセラーも気付きやすくなります。
コツ③自分の症状について理解を深める
統合失調症のある人が仕事を続けるコツのひとつに、自分の症状について理解を深めることも挙げられます。
仕事を続けているうちに、症状が再発することは珍しくありません。
「症状が出る予兆は何か」「調子が悪いときはどのように対処したらよいのか」を理解することで症状の再発・悪化を防げます。
かかりつけ医に、すぐに休んだほうがいいときの症状を事前に確認しておくことも有効です。
統合失調症の症状や予兆が出たら、無理せず休んだり医師・職場に相談したりしましょう。
職場に統合失調症であることを開示する場合は、事前に症状が出やすい状況・対処法を共有しておくこともおすすめです。
コツ④生活習慣を整える
生活習慣を整えることも、統合失調症が仕事を続けるために大切なポイントです。
統合失調症のある人は、ストレスに弱い特徴があります。
生活習慣が乱れるとストレスが増え、仕事に影響が出るリスクがあるのです。
決まった時間に起床・就寝をしたり、栄養バランスの整った食事を3食取ったりするなど、生活リズムを整えるように心がけましょう。
特に、睡眠を安定させることは、ストレスからの回復や予防に大いに役立ちます。
生活秩序や時間感覚を整えることで、精神的な安定をつくり、ストレス耐性を高めるようにしましょう。
コツ⑤相談しやすい環境を作る
統合失調症のある人は、相談しやすい環境を作ったほうが長く働けるでしょう。
職場に相談できる人がいれば、「困ったときすぐに相談できる」ことが安心材料になります。
話しやすい環境にするためには、上司・先輩・産業医など特定の担当者を1人決めておくことがおすすめです。
その上で体調のよい状態のときに、対処方法を伝えておくとよいでしょう。
統合失調症の人の仕事復帰のポイント4選
この章では、統合失調症で休養している人に向けて、仕事復帰のポイントについて解説します。(参考:糸川昌成・監修『統合失調症スペクトラムがよくわかる本』)
仕事復帰の際には、何よりもまず、かかりつけの医師の判断を聞くことが大切です。
特に、現職への復帰を希望されている場合、かかりつけの医師の発行する、復職が可能かどうかの診断書が必要になってきます。
これから解説する仕事復帰のポイントについても、かかりつけの医師との相談を前提に、実践してみてください。
ポイント①焦らずに回復に専念する
まずは「焦らずに回復に専念する」ところから始めましょう。
責任感の強い人ほど、休養によって生じるブランクを少しでも短くしようとして、復帰を焦ります。
しかし、病状が落ちつく寛解期に入る前に復職しても、また休養を余儀なくされる確率が高いです。
焦らずに心身の調子を整えることが、何よりも大切です。
ポイント②適度な運動をする
ポイントの2点目は「適度な運動をする」です。
ご自宅や近所などでできる範囲で構いませんので、散歩やスクワットなどの運動をしましょう。
これは認知機能障害を軽減するリハビリテーションの一環にもなります。
また、特に日中に運動することによって、生活リズムを整えやすくするというメリットも期待できます。
ストレスの緩和にもつながりますので、可能な範囲で、適度な運動を習慣にしましょう。
ポイント③雇用枠の変更を考える
こちらでも解説しましたが、統合失調症のある人は、障害者雇用と一般雇用のどちらで働くかを選ぶことも大切です。
復職するにせよ、別の就職先を探すにせよ、もし現在、基本的に障害を持たない人が応募する一般雇用で働いているのでしたら、障害者雇用への変更を考えてもよいかと思います。
雇用枠を障害者雇用に変更することで、業務内容や仕事量の調整といった障害に対する配慮を受けることができます。
障害者雇用には、メリットとデメリット・注意点があります。それぞれ比較した上で検討しましょう。
障害者雇用については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
ポイント④就労移行支援事業所を利用する
最後のポイントは、「就労移行支援事業所を利用する」です。
こちらで詳しく解説しますが、就労移行支援事業所では、体調管理の方法、職場でのコミュニケーションの基礎スキル、就職に必要な専門スキルなどを学ぶことができます。
特に、統合失調症のような精神障害がある人にとっては、職場定着が重要になりますが、就労移行支援事業所などでは職場定着支援も行っています。
就労支援を受けるかどうかは、職場復帰を成功させるためのポイントになると言えるでしょう。
統合失調症のある人が利用できる支援機関5選
この章では、統合失調症のある人が利用できる支援機関を紹介します。
自分に合った支援機関を探してみましょう。
支援機関①ハローワーク(公共職業安定所)
ハローワーク(公共職業安定所)とは、仕事を探している人に対して、就労に関連するサポートを行っている支援機関のことです。(参考:東京労働局「東京ハローワーク」、厚生労働省「こころの健康サポートガイド」、厚生労働省「ハローワークにおける障害者の就労支援」)
主に職業相談や職業訓練、求人情報の提示などを行っており、具体的な支援内容は事業所によって異なりますが、一般的には以下のような幅広いサポートを行います。
- 仕事で活かせる知識・技能の習得
- 仕事や私生活で活かせるメンタル面のサポート
- 「どのような仕事や働き方が向いているのか」のアドバイス
- 転職先候補の業務や雰囲気を体験できる「職場体験実習(インターン)」の紹介
- 履歴書・経歴書・エントリーシートの作成支援
- 面接対策
- 転職後の職場定着支援
国が運営しており、障害の有無を問わず利用できます。
障害がある人向けの求人探しができるため、統合失調症であることをオープンにしたい人や障害者雇用を考えている人にもおすすめです。
応募書類の添削・模擬面接など就職に関する対策も行えます。
支援機関②地域障害者職業センター
地域障害者職業センターとは、病気や障害のある人に対して、職業評価や職業指導、職業準備訓練、職場適応援助などの専門的な職業リハビリテーションを提供する支援機関のことです。(参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センター」、高齢・障害・求職者雇用支援機構「就職支援・相談窓口」、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センターによる支援」、厚生労働省「地域障害者職業センターの概要」)
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営しており、障害者雇用促進法に基づいて、全国47都道府県に設置されています。ハローワークや医療福祉機関と連絡を取りながら、障害のある方の就労活動をサポートしています。
地域障害者職業センターの強みは、専門の障害者職業カウンセラーです。
例えば、現在のビジネススキルに基づいて就職し、職場へ適応するための計画を立ててくれるサービスがあります。
また就職や就職後の定着に関する相談・助言や、ビジネススキルを高める援助も可能です。
病気や障害に悩む当事者だけでなく、障害のある人を雇用する事業所に対して、雇用管理に関する相談・援助も行っています。
地域障害者職業センターは、障害者手帳を持っていない人も利用できます。
支援機関③障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターとは、雇用や保健、福祉、教育に関する関係機関と連携し、障害のある人の雇用の促進・安定を目的とした一体的な支援を行っている支援機関のことです。(参考:厚生労働省「障害者就業・生活支援センターについて」、厚生労働省「障害者雇用促進法制の整備について」、厚生労働省「障害者就業・生活支援センターについて」)
障害のある人の自立を目的としているため、以下のような幅広い支援を受けられます。
- 就職に関する相談
- 職業準備訓練
- 就職活動の支援
- 長く働き続けるための支援
- 健康管理や金銭管理など生活に関する相談・助言
就労面だけでなく、金銭管理などの経済面や生活面のことまで、日常および地域生活に関する支援も行っています。仕事だけでなく、生活についてもサポートを受けたい人におすすめです。
2023年4月1日時点で、全国に337箇所設置されています。
支援機関④障害者就労支援センター
障害者就労支援センターとは、 障害のある人の就労機会の拡大を図るため、自治体が設置する支援機関のことです。
障害のある人の就労全般に関する相談や、就職に向けたサポート、ハローワークへの同行などの支援を行っています。
障害者就労支援センターの設置は自治体によって異なります。お住まいの自治体のWEBサイトをご確認ください。
また、「お住まいの自治体名+障害者就労支援センター」などのインターネット検索で見つけることもできます。
支援機関⑤就労移行支援事業所
就労移行支援とは、一般企業などへの就職を目指す、病気や障害のある方向けに、「障害者総合支援法(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)」に基づいて行われる福祉サービスのことです。(参考:e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)
実際のサービスは、国の基準を満たした様々な民間の「就労移行支援事業所」が行います。
就労移行支援事業所では、体調管理の方法、職場でのコミュニケーションの基礎スキル、就職に必要な専門スキルなどを学ぶことができます。
さらには、実際の就職活動でのアドバイス、就職後の職場定着支援も含む、総合的な就労支援を受けることが可能です。
就労移行支援事業所は各地にあります。私たち、キズキビジネスカレッジ(KBC)もその一つです。それぞれ特徴が異なるため、気になるところがあれば問い合わせてみてください。
就労移行支援事業所については、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
統合失調症とは?
この章では、統合失調症の概要や症状について解説します。(参考:American Psychiatric Association『DSM-5』、春日武彦「統合失調症」、松岡広樹『統合失調症の人と働くために知っておきたいこと みんなが幸せになる精神障害者雇用』)
統合失調症の概要
統合失調症とは、考えや気持ちがまとまらなくなったり、妄想や幻覚が現れたりする慢性的な精神疾患のことです。
約100人に1人が発症するといわれているほど、誰でもなる可能性があります。統合失調症は若い世代に多く見られており、発症のピークは20代、次いで10代、30代、40代です。
以下の3種類の症状により、社会生活がスムーズに営みづらくなる特徴があります。
どの症状も1つだけであれば、統合失調症とは断定できません。
複数の症状が一定期間見られることが、大きな特徴といえます。
統合失調症の症状①陽性症状
陽性症状は、実際に存在しないものをあるように感じる症状です。
統合失調症というと、多くの人が陽性症状を思い浮かべます。
具体的な症状は、以下のとおりです。
- 幻覚・幻聴
- 妄想(主に被害妄想)
- まとまりのない会話
- 強い苛立ち、興奮
症状にあわせて、具体的には以下のような行動が見られます。
- 落ち着きなくうろつく
- ぶつぶつと独り言を言う
- 光や音に過敏になる
- 注意散漫になり、会話内容などを思いだせない
- 盗聴器が仕掛けられているなどと訴える
陽性症状は統合失調症の初期である、発症後数週間〜数か月の間に現れる傾向があります。
とはいえ例外もあるので、長期的に陽性症状が見られる人もいます。
なお、発症の数年前には、以下のような前駆期症状が見られます。
- 不安、不眠などの抑うつ的症状
- 軽度の意欲低下や無気力
統合失調症の症状②陰性症状
陰性症状は、今まであった感覚などが失われる症状です。
周囲の人に伝わりにくいことから、症状に気づかれないこともあります。
具体的な症状は、以下のとおりです。
- 意欲低下や無気力
- 感情の鈍麻
- 表情が平板になる
- 引きこもり、無関心
- 思考の減衰
症状にあわせて、具体的には以下のような行動が見られます。
- ベッドに寝たきりのままでいることが増える
- 外見や身だしなみに気を払わなくなる
- 喜怒哀楽の感情表現がなくなる
- 何に対しても無関心になる
初期に現れる陽性症状に対し、陰性症状は発症から数か月経って現れる傾向があります。
統合失調症のあるあなたや、統合失調症のある家族がいる人は陽性症状より長い期間、向き合うことになるでしょう。
統合失調症の症状③認知機能障害
認知機能障害は、認知能力が低下する症状です。
一般的には記憶や思考、理解、計算、学習、注意、集中、判断、解決、問題解決といった知的能力に障害が生じます。
発症から数年経つと、症状が目立ち始めます。
認知機能障害は、仕事や対人関係がうまくいかなくなる原因のひとつです。
統合失調症の原因
統合失調症の根本的な原因は、現在わかっていません。
ただし、以下のようないくつかの原因が組み合わさることで発症すると考えられています。
- 胎児のとき脳に障害を受けた
- 妊娠時、父親が高齢だった
- 病気に弱い体質である
- 母親が妊娠中、心理的・社会的・身体的ストレスを感じた
- 母親が妊娠中、栄養失調・糖尿病・感染症にかかった
また遺伝も、統合失調症の原因となる可能性があります。
一般的な統合失調症の発症率は約0.7〜1.0%程度ですが、両親のいずれかが統合失調症だと発症率が約10〜12%、両親とも統合失調症だと発症率が約48%に向上します。
ただし、遺伝が発症に関わっているといわれていますが、遺伝形式ははっきりわかっていません。
統合失調症発症には遺伝的要因だけでなく、さらに他の因子も必要になるといわれています。
統合失調症の治療法
統合失調症の主な治療方法は、薬物療法とリハビリテーションです。
薬物療法では、主に以下の治療薬が使われます。
- 抗精神病薬
- 抗不安薬
- 気分安定薬
- 睡眠薬
抗精神病薬を服用すると生じる、便秘・口の渇き・立ちくらみなどの副作用を防ぐために、抗パーキンソン薬や昇圧薬・下剤などを用いることもあります。
なお、抗精神病薬は特に陽性症状へ効果を期待できますが、陰性症状には対応できないこともあります。
そのため薬物療法にくわえて、生活技能訓練・作業療法などのリハビリテーションや、家族技能訓練を組み合わせて治療します。
- 生活技能訓練(生活に関する具体的な場面を想定し、どんな話し方・振る舞いをするか考え、メンバー同士で話して評価・練習し合う)
- 作業療法(室内ゲーム・絵画・料理・袋詰め・園芸・農作業などを行う)
- 精神療法(専門家に不安なことや心配なことを相談し、解決方法を一緒に見つける)
- 家族技能訓練(家族のための生活技能訓練。家族技能訓練により家族の関係を調整する)
なお、治療するときは以下のような症状の移り変わりに応じて、最適な治療方法を実施します。
- 前駆期:発症数年前、前駆期症状が見られる
- 急性期:発症数週間~数か月、陽性症状が多く見られる
- 消耗期:発症数か月~数年、陰性症状が多く見られる
- 回復期:発症数年以後、認知機能障害が多く見られる
- 寛解期:発症数年以後、症状の落ちつきが見られる
消耗期から寛解期にかけては、症状の揺り戻しを繰りかえしつつ、ゆっくりと時間をかけた療養生活を経て、落ちついた日常生活を送れるようになります。
まとめ:統合失調症のある人は無理なく働ける仕事を探そう
現在、統合失調症と向き合いながら働いている人は一定数います。
統合失調症のある人が働き続けるためには、無理せず働ける業務内容・環境の仕事を選ぶことが大切です。
あなたの周りには、支援機関も複数あります。
仕事が不安な人や就職に悩んでいる人は、1人で抱え込まずに、支援機関や医師、カウンセラーといった専門家に頼ることも重要です。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)でも、統合失調症に悩む人の就職を支援しています。
仕事や生活について悩みがある人や、就職のサポートを受けたい人はお気軽にご相談ください。
統合失調症があります。私に向いてる仕事を知りたいです。
統合失調症があるのですが、仕事を続けられますか?
統合失調症のある人が仕事を続けるコツについて、以下が考えられます。
- 薬の服用・通院を続ける
- 定期的なカウンセリングを受ける
- 自分の症状について理解を深める
- 生活習慣を整える
- 相談しやすい環境を作る
詳細については、こちらで解説しています。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
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翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→