合理的配慮とは? 基本や具体的な内容について解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
障害のある人が、日常生活や社会参加において直面する多くの障壁。こうした障壁をできる限り取り除き、すべての人が生活しやすい環境を整えるよう努力することを合理的配慮といいます。
2024年4月1日に事業者が合理的配慮の提供を行うことは、義務となりました。
このコラムでは、合理的配慮の概要や法律、具体的な内容、合理的配慮を提供するためのポイント、相談先などについて解説します。
実際に障害がありつつ働いている人はもちろん、これからの職場の環境整備について悩んでいる事業者も、ぜひ参考にしてくださいね。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、病気や障害のある人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
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神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
合理的配慮とは?
この章では、まず、合理的配慮の概要や必要性について解説します。(参考:e-Gov法令検索「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)」、厚生労働省「合理的配慮指針」、政府広報オンライン「事業者による障害のある人への「合理的配慮の提供」が義務化」、内閣府「合理的配慮の提供が義務化されます!」)
合理的配慮の概要
合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と同じように生活し、活動できる均等な機会を確保するために必要な配慮のことです。障害のある人が業務上で支障があったときに改善するための措置を取ることも合理的配慮に含まれます。
2021年の障害者差別解消法改正に伴い、事業者が、過重な負担にならない範囲でできうる限りの努力をすることが義務となりました。
事業者が合理的配慮の提供に関する努力を怠り、行政機関からの助言や指導に従わない場合には、罰則も設けられています。罰則については、こちらで解説しています。
合理的配慮の提供は義務
改めて、2021年の障害者差別解消法改正に伴い、2024年4月1日から、合理的配慮の提供は事業者の義務となりました。(参考:e-Gov法令検索「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(平成二十五年法律第六十五号)」)
第三章 行政機関等及び事業者における障害を理由とする差別を解消するための措置
(行政機関等における障害を理由とする差別の禁止)
第七条
行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害を理由として障害者でない者と不当な差別的取扱いをすることにより、障害者の権利利益を侵害してはならない。
行政機関等は、その事務又は事業を行うに当たり、障害者から現に社会的障壁の除去を必要としている旨の意思の表明があった場合において、その実施に伴う負担が過重でないときは、障害者の権利利益を侵害することとならないよう、当該障害者の性別、年齢及び障
害の状態に応じて、社会的障壁の除去の実施について必要かつ合理的な配慮をしなければならない。
合理的配慮の提供について、内閣府の資料によると以下のように解説されています。(参考:内閣府「合理的配慮の提供が義務化されます!」)
- ①行政機関等と事業者が、
- ②その事務・事業を行うに当たり、
- ③個々の場面で、障害のある人から「社会的なバリアを取り除いてほしい」旨の意思の表明があった場合に
- ④その実施に伴う負担が過重でないときに
- ⑤社会的なバリアを取り除くために必要かつ合理的な配慮を講ずること
内閣府では合理的配慮について、以下のような具体例を挙げています。
- 飲食店で車椅子のまま着席したい場合、机に備え付けの椅子を片付けて、車椅子のまま着席できるスペースを作った
- 筆談の文字が小さく、読みづらい場合、太いペンで大きな文字を書き、筆談を行った
- 文字の読み書きに時間がかかるため、セミナーで板書を書き写すことができない場合、デジタルカメラ、やスマートフォンなどで、板書の撮影を許可した
以上のような合理的配慮の提供にあたっては、障害のある人と事業者などとの間で建設的対話を重ね、共同で対応案を検討していくことが重要です。
障害のある人と障害のない人が話し合い、互いに気持ちよく過ごせる方法を考えることが、合理的配慮です。
合理的配慮を行うべき範囲
合理的配慮は、障害のある人が社会で平等に生活し、活動するために必要な調整や変更を行うことです。
合理的配慮を行うべき範囲は、事務・事業の目的・内容・機能に照らして、以下の3つを満たすものを指します。
- 必要とされる範囲で本来の業務に付随するものに限られること
- 障害のない人との比較において同等の機会の提供を受けるためのものであること
- 事務・事業の目的・内容・機能の本質的な変更には及ばないこと
ただし、これはどんな場合でも障害のある人が快適に活動できるよう環境整備を行わなくてはならないというものではありません。事業者の過重な負担にならない範囲で行うということが、合理的配慮のポイントです。
合理的配慮の必要性
障害のある人は、日々の生活や就労時に配慮やサポートを必要とします。そして、配慮やサポートを得ることは、障害のある人も障害のない人も共に生きられる社会の実現を目指すうえで、認められているのです。
なぜなら、障害があることで感じる障壁は、障害を持っていることに問題があるのではなく、障害のある人への配慮がなく障壁を感じざるを得ない社会に問題があるからです。
例えば、車いすを利用している人が階段のあるお店を利用できないとします。こういった場合、車いすを利用している人が悪いのではなく、障害の有無によって使用できるかどうかが決まるお店の配慮不足と考えられるでしょう。
そのため、事業者は、事業所の規模や形態、予算的な限界を超えて障害のある人を支援することは不可能ではあるものの、過重な負担にならない範囲で合理的配慮を提供することが義務付けられているのです。
合理的配慮の対象者
合理的配慮の対象者は、身体障害のある人、知的障害のある人、発達障害や高次脳機能障害を含む精神障害のある人など、あらゆる種類の障害のある人です。
この場合の障害のある人とは、障害者手帳を持っている人だけではありません。心や体の働きに障害があり、社会の中にあるバリアによって生活に制限を受けているすべての人が対象です。
これには、障害のある子どもも含まれ、学校や受験時などでも合理的配慮を求めることができます。
合理的配慮の提供が過重な負担として考慮されるケース
合理的配慮の提供は、過重な負担にならない範囲でできうる限りの努力をすることが義務とされています。
合理的配慮を提供する事業者としては、この過重な負担という点に関して判断に迷うことがあるかもしれません。内閣府は、個別の事案ごとに、以下の要素などを考慮して判断することとしています。
- 事務・事業への影響の程度、事務・事業の目的・内容・機能を損なうか否か
- 実現可能性の程度、物理的・技術的制約、人的・体制上の制約
- 費用・負担の程度
- 事務・事業規模
- 財政・財務状況
例えば、小規模な事業者が高額な設備を導入することが困難な場合は、無理にこれを行う必要はありません。
障害のある人本人が望む合理的配慮が過重な負担になる場合は、別の方法での合理的配慮が提供できないかを、話し合いながら検討しましょう。
合理的配慮に関連する法律・条例
この章では、合理的配慮に関連する法律や条例について解説します。
法律・条例①障害者差別解消法
障害者差別解消法とは、行政機関および事業者に対して、障害のある人への不当な差別的取扱いを禁止し、合理的配慮の提供、環境の整備などを通じて障害のある人も障害のない人も共に暮らせる共生社会の実現を目的とした法令のことです。(参考:障害者の差別解消に向けた理解促進ポータルサイト「障害者差別解消法」)
2021年(令和3年)の障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律の一部を改正する法律(障害者差別解消法)改正に伴い、2024(令和6年)4月1日から、事業者による合理的配慮の提供が義務となりました。
ここでの事業者とは、商業など事業を行う企業や団体、店舗のことを指します。目的の営利・非営利、個人・法人の別は問いません。また、個人事業主やボランティア活動をするグループなども事業者に入ります。
さらに教育、医療、福祉、公共交通なども障害者差別解消法の範囲内です。日常生活および社会生活全般に係る分野が広く対象となっています。
法律・条例②自治体の条例
障害のある人と障害のない人が共に暮らす社会の実現に向けて、各自治体も条例を定めています。
例えば東京都では、2018年(平成30年)10月1日、東京都障害者差別解消条例が定められました。
この条例では、国に先駆けて、都内の事業者による合理的配慮の提供が義務とされていました。(参考:ハートシティ東京「東京都障害者差別解消条例」)
また、千葉県では、障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例の中で、不利益取扱いと合理的な配慮に基づく措置を行わないことを差別と定めています。(参考:千葉県「障害のある人もない人も共に暮らしやすい千葉県づくり条例」)
ほかにも自治体ごとに類似の条例が定められていることがあります。気になる人は各自治体のWEBサイトなどからご確認ください。
合理的配慮を行わなかった場合の罰則
障害者差別解消法では、違反した場合でも、直ちに罰則を課されることはありません。
事業者などが合理的配慮を提供しなかった場合には、まず行政機関から指導や助言が行われます。(参考:内閣府「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律についてのよくあるご質問と回答<国民向け>」、厚生労働省「障害者雇用促進法に基づく障害者差別禁止・合理的配慮に関するQ&A」)
改善の指示や指導を無視し、改善が見られない場合には、正式な改善命令が発せられます。大臣が求めた報告に応じなかったり、虚偽の報告をしたりすると、20万円以下の罰金の対象です。
また都道府県労働局長は、当事者から申請があった場合には、紛争調整委員会に調停を行わせることもあります。
合理的配慮の具体的な内容
この章では、特に職場での合理的配慮の具体的な内容や実践例について解説します。
実際に企業で行われている事例もあります。参考にしてみてください。(参考:厚生労働省障害者雇用対策課「合理的配慮指針事例集」、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター「合理的配慮提供のポイントと企業実践事例」)
内容①職場環境を整える
障害のある人は、障害のない人が当たり前に過ごす職場や業務内で使用するものなどで、物理的な障壁を感じることが少なくありません。
たとえば、階段やエスカレーター、机、椅子など、多岐にわたります。
そのため、障害のある人が建物や施設を利用しやすくするために、職場環境を整える必要があります。
具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
- 車椅子を利用する人のために机や椅子の高さを調整できるようにする
- 障害のある人用のトイレを設置する
- 視覚障害のある人のために音声案内付きの機器などを導入する
内容②意思疎通をしやすい方法を取り入れる
意思の疎通やコミュニケーションにも合理的配慮が必要な場合もあります。
以下のような合理的配慮を行うことで、障害のある人が周りの人々と効果的にコミュニケーションを取ることができるようになるでしょう。
- 聴覚障害のある人のため、セミナーに手話通訳をつける
- すべての会議で、AIによる簡易的な議事録を導入する
- スマートフォンなどに聴覚障害のある人向けの専用のアプリケーションをインストールして、 やりとりを行っている
内容③業務指導や相談に関し、担当者を定める
精神障害や心の病を抱える人が業務上で必要となるサポートは、それぞれ違います。
障害や病気特性にあわせた支援や相談の担当者を事前に決めておくことで、スムーズな対応が可能になります。例えば、以下のような事例があります。
- 朝礼や終礼時など、定期的に面談や声かけを実施する
- 作業日報や日誌を提出してもらうことなどにより、担当者が本人の状況を確認している
- 直接相談しにくい内容も相談できるよう、相談用紙と投函する箱を設置している
内容④個人に合わせて柔軟に対応する
発達障害では、特性によって通常の時間に出勤することが困難であったり、体調に波があったりすることがあります。また、通院・服薬を要するケースもあります。
そうした場合、個々の特性や状況に合わせて、適切な配慮を行うことが必要です。具体的には、以下のような取り組みが挙げられます。
- 人混みを苦手とする特性があるため、食堂に早めに行けるように休憩時間を調整する
- 通勤ラッシュを避けやすくするため、始業時間を遅くする
- 過集中により疲労しやすいので、積極的な休憩の取得や、時間をずらしての休憩・休憩時間の延長を認める
合理的配慮の提供のための3つの注意点
この章では、事業者に向けて合理的配慮を提供するための注意点について解説します。
注意点①個々の事情に合わせた柔軟な対応が必要
合理的配慮を提供する際には、一人ひとりの特性に合わせた柔軟な対応が求められます。
障害の種類や程度、生活環境や支援の必要性は人それぞれ異なります。画一的な対応では、不十分なことも多いのです。
例えば、同じ車椅子を利用している人でも、事務と接客業では必要なサポートが異なります。
ディスクワークの場合、車椅子が通れるスペースを確保するだけではなく、机や、コピー機などの高さを調整する必要があります。
一方店頭での業務では、お客様と視線をあわせるための工夫や、商品を運ぶための道具も必要です。また、必要になる車椅子の大きさや機能もさまざまです。
ほかにも、支えがあれば自分で立ち上がれる人と全身が動かしづらい人では、支援の程度も異なります。
それぞれの障害の特性や程度を理解した上で、仕事の内容にあわせた対応を行いましょう。
注意点②「前例がない」「特別扱いできない」はNG
合理的配慮を提供する際には、「前例がない」「特別扱いできない」と言って対応しないのは誤りです。
障害のある人が必要とする配慮は、その人の特定の状況に基づくもので、過去の事例が適さないこともあります。
例えば、視覚障害のある人が働く場合、音声読み上げソフトの導入や、点字案内の設置などを希望されることがあるでしょう。これまでに対応を行ってきた視覚障害のある人が必要と言わなかったとしても、対応を断る理由にはなりません。その人の業務には、その合理的配慮が必要な理由があるのかもしれません。
また、合理的配慮を求めることは、特別扱いを要求するものではありません。働く上で、平等な機会を得るための必要な手段です。
当事者と事業者が話し合い、働きやすい環境にしていくことが、合理的配慮の基本となります。
注意点③過重な負担にならないようにする
こちらで解説したとおり、合理的配慮は、事業者側が過度に負担を強いられるものではありません。合理的配慮の提供が過重な負担となる場合、その提供が免除されます。
例えば、小規模な飲食店が食事の介助を希望された場合、人的要因から対応できないことがあり得ます。しかし、その代わりにスプーンやフォークなどを用意したり、食べやすく食材を小さく切ったりするなどのサポートは可能かもれません。
障害者差別解消法では、障害のある人が継続して勤務できることが重要であるとしています。過重な負担を追うことで、事業に支障が出るようでは元も子もありません。
障害のある人本人が望む合理的配慮が過重な負担になる場合であっても、「過重な負担となるのでできない」と端的に考えるのではなく、「どんなことならできるのか」と柔軟に検討することが、合理的配慮なのです。
合理的配慮を提供するための5つのポイント
この章では、事業者に向けて、合理的配慮を提供するためのポイントについて解説します。(参考:内閣府「合理的配慮の提供が義務化されます!」)
ポイント①マニュアルや社内ルールに障壁がないか確認する
合理的配慮を提供するためには、企業や組織のマニュアルや社内ルールに潜む障壁を取り除くことが重要です。
まず、企業のマニュアルや社内ルールを点検し、障害のある人にとって不便な点や理解しにくい部分がないか確認します。
社内の書類提出や業務報告などがオンラインのみの場合、視覚障害のある人には不便かもしれません。この場合、音声案内や支援ツールを導入するなどの対応が必要です。
また、社内ルールを判断基準にしていると、イレギュラーなできごとや例外的な支援に対応できなくなることがあります。ルールはあくまで指針とし、必要であればその都度最適な合理的配慮について検討しましょう。
なお、マニュアルの見直しや研修の実施などのソフト面の対応など、合理的配慮を的確に行うために不特定多数の障害のある人を対象として行う事前改善措置のことを、環境の整備といいます。この環境の整備は努力義務です。
ポイント②建設的な対話を重ねる
合理的配慮を効果的に提供するためには、障害のある人本人やその家族、支援者との建設的な対話を重ねることが重要です。建設的な対話は、相手のニーズを理解し、最適な対応策を見つけるためのプロセスです。
まず、障害のある人本人と直接対話し具体的なニーズを詳しく聞き取ることが大切です。
どのような障害があり、日常生活や業務でどのような困難を感じているのかを理解することが、適切な合理的配慮を提供するための第一歩となります。
また、建設的な対話を行うためには、実現可能な対応を障害のある人と事業者が一緒に考えることが必要です。
事業者は、障害のある人本人に普段行っている対策を尋ねたり、障害のある人本人は、現在事業者が導入している設備を確認したりするなど、お互いを理解するための対話を重ねましょう。
対話を通じて双方の理解を深め、信頼関係を築くことで、結果的に対応ができなかった場合でも、互いに気持ちのよいやり取りができるはずです。
ポイント③対応できない理由があるときは、丁寧に説明して理解を得る
建設的な対話を重ねた結果、やはり合理的配慮を提供することが難しい場合には、その理由を丁寧に説明して理解を得ることが重要です。
技術的な制約や財政的な負担が大きい場合でも、単に「できない」と言うのではなく、その具体的な状況を詳細に伝えることで、理解を得られやすくなります。
実際に入社することになれば、一日のうちの長い時間を職場で過ごすことになります。職場が身体的・精神的に困難を感じるような環境では、長く勤めることはできません。
合理的配慮の提供ができない場合には、入社後に配置換えや業務の変更が必要になることもあるでしょう。
そうしたときに、双方が嫌な思いをしないためにも、事前に建設的な対話を重ねて、合理的配慮として「できることはなにもないのか」「どんなことであればできるか」などを、よく検討する必要があります。
必要であれば専門家に相談するなどして、できうる限り双方が納得できる解決策を探してみましょう。
ポイント④社内の対応窓口を決めておく
合理的配慮を効果的に提供するためには、社内に明確な対応窓口を設けておくことも大切です。社内の対応窓口を決めることで、障害のある人やその支援者がどこに相談すればよいか明確になります。また、情報が一元管理されることで、対応の質の向上にもつながります。
対応窓口では、障害のある人からの相談内容や対応履歴を適切に記録し、必要に応じて関係部署と共有してください。ただし、プライバシーの保護には配慮が必要です。
対応窓口の連絡先を社内の掲示板などで周知したり、定期的に相談会を開催したりするのも効果的です。相談窓口を明確にすることで、障害のある人だけでなく、サポートする周囲の人にとっても安心できる環境を目指しましょう。
ポイント⑤困ったときは相談窓口を利用する
合理的配慮に関する問題が発生したとき、社内の知識や経験だけで対応するのが難しい場合があります。そんなときには、外部の支援機関や相談窓口を活用して、専門的な助言や支援を受けましょう。設備導入に使える補助金や、支援事業を紹介してもらえるかもしれません。
定期的に相談窓口を利用し、継続的な支援を受けることも有効です。事業者側やほかの社員が気づかないうちに、差別的な行動をとっているかもしれません。定期的に勉強会やセミナーを開き、正しい知識を取り入れることは、社員の意識改革にもつながります。
合理的配慮に関する相談先
この章では、合理的配慮に関する相談窓口について解説します。
相談先①新しい相談窓口「つなぐ窓口」
「つなぐ窓口」とは、内閣府が設置した、障害者差別に関する相談窓口のことです。(参考:内閣府「障害者差別に関する相談窓口「つなぐ窓口」)
2023年(令和5年)3月の障害者差別解消法改正では、障害のある人や事業者、都道府県・市区町村などの自治体からの相談に対して、法令の説明や適切な相談窓口等につなぐ役割を担う国の相談窓口について検討を進めることが明記されました。
これに伴い、障害を理由とする差別などに関する相談を自治体・各府省庁などの適切な相談窓口に円滑につなげるための調整・取次を行うことを目的に、試行的に設置されました。「つなぐ窓口」は、2023年(令和5年)10月16日から2025年(令和7年)3月下旬まで利用できる予定です。
連絡先は、以下のとおりです。
- 電話相談:0120-262-701 毎日10時から17時まで(祝日・年末年始を除く)
- メール相談:info@mail.sabekai-tsunagu.go.jp
相談先②障害者差別に関する相談窓口
障害者差別解消法第14条には、「国及び地方公共団体は、障害者及びその家族その他の関係者からの障害を理由とする差別に関する相談に的確に応ずるとともに、障害を理由とする差別に関する紛争の防止又は解決を図ることができるよう必要な体制の整備を図るものとする。」と記されています。(参考:内閣府「関係府省庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」)
これに伴い、障害者差別に関する相談窓口が、各自治体などに設置されました。連絡先などは、各都道府県のWEBサイトなどで確認してください。
また、内閣府では「関係府省庁所管事業分野における障害を理由とする差別の解消の推進に関する対応指針」として、不当な差別的取扱いの禁止および合理的配慮の提供に関して、事業者が適切に対応するために必要な指針を定めています。
「これは不当な対応かもしれない」と思ったときには、こちらの方針も確認してみてくださいね。
まとめ:合理的配慮の提供は、対話を重ねながら柔軟に検討しよう
2024年4月から義務化された合理的配慮は、障害のある人も障害のない人も、平等に社会参加できるように必要な変更や調整を行うものです。
対象者は身体障害、知的障害、精神障害など多岐にわたり、各障害に応じた柔軟な対応が求められます。
やむを得ず対応できない場合は、理由を丁寧に説明し、過重な負担にあたらない範囲の代替案を提示するとよいでしょう。
困ったときは、こちらで紹介した相談先を利用して、必要な支援を受けてください。
すべての人が生きやすい共生社会の実現を目指し、まずは身近な環境から変えていけるよう、建設的な対話を重ねていきましょう。
合理的配慮とは、何ですか?
合理的配慮とは、障害のある人が障害のない人と同じように生活し、活動できる均等な機会を確保するために必要な配慮のことです。
詳細については、こちらで解説しています。
合理的配慮を提供するためのポイントはありますか?
以下が考えられます。
- マニュアルや社内ルールに障壁がないか確認する
- 建設的な対話を重ねる
- 対応できない理由があるときは、丁寧に説明して理解を得る
- 社内の対応窓口を決めておく
- 困ったときは相談窓口を利用する
詳細については、こちらで解説しています。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→