不安障害のある人に向いてる仕事 就職のポイントや支援機関を解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
不安障害のある人が仕事をするとき、以下のような不安を抱くのではないでしょうか?
- 不安障害のため、通勤がつらい…
- 不安障害でも働ける場所があるだろうか?
不安障害とは、不安や恐怖からくるストレスが心身に症状として表れ、日常生活や仕事に支障を来す病気です。
不安障害のある人が落ち着いて仕事に取り組むために必要なのは、自分に向いている仕事を探すことです。こちらで紹介するように、「雇用枠の変更」という方法もあります。
仕事を探すときは、支援機関を活用できます。
このコラムでは、不安障害の概要と転職や就職するときに押さえたいポイント、向いてる仕事、必要なサポートなどについて解説します。
不安障害の治療をしながら働くポイントをつかむため、本コラムに目を通しましょう。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、不安障害のある人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
不安障害のある人に向いてる仕事3選
不安障害のある人に向いてる仕事を3つ紹介しましょう。
あくまで一般論になるため、あなたの特性に合わせてご検討ください。
向いてる仕事①定型的な仕事
定型的な仕事とは、業務量や内容が定量的な業務です。
具体的には「事務、経理」が挙げられます。なぜなら、業務の量や内容が一定の職種は不測の事態が起こりにくいためです。
向いてる仕事②自分のペースでできる仕事
自分のペースでできる仕事とは「プログラマー、エンジニア」などです。
不安障害のある人は、周囲の人の視線や声に過剰に反応するため非常なストレスを感じることがあります。自分のペースで取り組める仕事であれば、周囲との接触を最低限にとどめられるため安心して働けるでしょう。(参考:あしたのクリニック 新宿院「【精神科医監修】不安障害の人におすすめの仕事と働き方を徹底解説」)
向いてる仕事③フリーランスまたは在宅での仕事
周囲に人がいる環境そのものがプレッシャーになる場合、フリーランスまたは在宅勤務が可能な仕事を探しましょう。
在宅勤務が難しいときは、フレックス制度を採用しているところを視野に入れると通勤の負担を減らせます。
フリーランスまたは在宅での仕事として挙げられるのは「Webデザイナー、Webライター」などです。(参考:こころのえ相談室 「社会不安障害-向いている仕事・おすすめ「リモートワーク」」)
実際、不安障害やうつなどの精神疾患がきっかけでフリーランスの仕事に転向する人は、最近では珍しくないようです。
不安障害のある人に向いてない仕事3選
不安障害のある人に向いていない仕事を3つ紹介します。
向いてる仕事と同様に、あくまで一般論になるため、あなたの特性にあわせてご検討ください。
向いてない仕事①交渉や折衝が求められる仕事
社会不安の症状が強いうちは、対人折衝が必要な「営業職・接客業・窓口業務」などは避けるのが無難です。
人とかかわることの多い仕事は臨機応変な対応を求められるため、不安やプレッシャーを感じやすいでしょう。
また、予測できない事態が起こりやすいため、パニックに陥る可能性があります。(参考:あしたのクリニック 新宿院「【精神科医監修】不安障害の人におすすめの仕事と働き方を徹底解説」)
向いてない仕事②移動や転勤の多い仕事
環境の変化が苦手な場合は、異動や転勤などは通勤経路が変わることによる不安などを抱えやすくなるため、パニック発作を起こしやすくなります。
異動や転勤の多い仕事としてあげられるのは「金融系、公務員、ゼネコン」などです。
また、周囲からの理解を得にくい場合は症状が深刻化するリスクがあります。そのため、環境が変わりやすい仕事は避けましょう。
向いてない仕事③勤務時間を変更しにくい仕事
不安障害のある人の中には、その日の体調によって通常通りに出社しにくいことがあります。そのため、通勤時間を変更しにくい仕事は向いていないかもしれません。(参考:こころ診療所吉祥寺駅前「気分の浮き沈みが激しい「(4)「ストレスへの敏感さ」での気分の浮き沈み」」)
勤務時間を変更しにくい仕事としてあげられるのは「講師、カスタマーサポート」などです。勤務時間や日数が決まっていることを固定制といい、主にオフィスワークを中心に採用されています。
体調に波があり不安定な場合は、その日の体調によって勤務時間を変更できない仕事もあまり向いていないでしょう。
不安障害のある人が職場で恐怖や不安を感じる4つの場面
不安障害のある人が職場で恐怖や不安を感じる主な場面を4つ紹介します。
場面①人前で発表するとき
元々、人前に出て発表するという行為が苦手な人はいますが、不安障害になると手足や声の震えのせいで、プレゼン自体がままならなくなります。(参考:ひだまりこころクリニック「不安障害「治療例」」)
また、一度失敗した経験があることで、「また同じ失敗をするのではないか」という予期不安を引き起こすことも少なくありません。
これは、社会不安障害を抱えている人に多く見られる事例です。
場面②ミスをしたとき
ミスをしたとき、周囲からの視線や反応が気になって仕事が手に付かなくなります。
「上司(部下)を失望させた」「きっと陰で悪く言われているんだろうな」と、小さなミスに対して強い不安や恐怖を抱くため、言葉を発しにくくなったり呼吸が苦しくなったりします。(参考:ベスリクリニック東京「仕事で緊張しすぎてしまう不安障害とは?治療法やすぐにできる対処法も 」)
場面③プレッシャーを感じたとき
仕事でプレッシャーを感じやすいのは、客先での打ち合わせや電話対応などです。不安障害のある人は、このようなシーンで身体的または精神的な苦痛を感じます。
そのため、声がうわずる、過呼吸などの症状が表れ、出社できなくなるケースがあります。(参考: ベスリクリニック東京「仕事で緊張しすぎてしまう不安障害とは?治療法やすぐにできる対処法も」)
場面④満員電車で移動するとき
これは特に「勤務地が都心にあるため、満員電車に乗らなければならない」という人が抱えやすい困難です。(参考:ひだまりこころクリニック「不安障害「治療例」」)
電車内には人が大勢いて息苦しくなるため、パニック発作が出たときには人によっては「このまま死ぬのではないか」と思うほどの恐怖に駆られます。
また「看護のために電車を止めるのではないか」「周りの人に迷惑をかけるのではないか」という不安も発作の引き金につながるようです。
発作が起きたときは、予定の就業時刻に間に合わないため時差出勤に切り替えたり、そのまま帰宅して休んだりすることになります。
不安障害のある人が転職や就職するときに押さえたい4つのポイント
不安障害のある人が転職または就職するときに押さえたい、主なポイントを4つ紹介しましょう。
ポイント①主治医に相談する
主治医に相談することで、カウンセリングや投薬治療を受けながら働けます。
現時点で通院をしていない人は、精神科やメンタルクリニックなどを受診して治療を受けましょう。
働きながら通院する場合は、上司や人事にその旨を伝えてください。なぜなら、業務時間や内容を調整してもらいやすくなるためです。
ポイント②自分に向いてる仕事を探す
自分に向いてる仕事を探すことで、比較的落ち着いて業務に取り組めます。なぜなら、不安障害から来る症状を抑えやすくなるためです。
不安障害のある人に適した仕事や環境の主なポイントは3つあります。
- マニュアルが用意されている
- 業務内容が定量的である
- 働き方に柔軟性がある
注意したいのは、自分に向いてる仕事や職場環境は個人によって異なることです。そのため、仕事を探すときに自分の症状や状態を把握しておきましょう。
把握しておくべきポイントは以下の2つです。
- 不安や恐怖を感じやすいシーン
- 落ち着いて取り組める業務や環境
ポイント③支援機関を活用する
精神障害や疾患のある人を支援する機関を活用しましょう。そのような支援機関は、就職をサポートした実績を豊富に持つところがあります。
主な支援機関を以下にまとめました。
- 就労移行支援事業所
- ハローワーク
- 障害者就業・生活支援センター
- 障害者就労支援センター
- 精神保健福祉センター
- 地域障害者職業センター
- 復職支援(リワーク・プログラム)
これらの機関は、個々の症状や障害の程度に応じた求人を紹介したり就職後のサポートを行ったりしています。支援の内容は各機関や施設によって異なるため、問い合わせて確認しましょう。
支援機関については、こちらで解説します。
ポイント④雇用枠を変える
雇用枠を一般雇用枠から障害者枠へ変更することで、周囲からのサポートや配慮を受けながら働けます。周囲から受けられる配慮とは、業務量や内容、勤務時間などの調整です。
ただし、給与やその後のキャリアなどの待遇面で差が生じる可能性があります。
症状が回復するまで様子をみるときは、一時的に勤務形態を変更することでも対応できるでしょう。
障害者雇用については、下記コラムを参考にしてください。
不安障害のある人が活用できる7つの代表的な支援機関
不安障害のある人が活用できる7つの代表的な支援機関を紹介します。
支援機関①就労移行支援事業所
就労移行支援とは、「一般企業などへの就職を目指す、病気や障害のある方」向けに、「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(通称:障害者総合支援法)」に基づいて行われる福祉サービスのことです。(参考:厚生労働省「就労移行支援事業」 、e-Gov法令検索「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律」)
実際のサービスは、国の基準を満たした様々な「就労移行支援事業所」が行います。
就労移行支援事業所では、体調管理の方法、職場でのコミュニケーションの基礎スキル、就職に必要な専門スキルなどを学ぶことができます。
さらには、実際の就職活動でのアドバイス、就職後の職場定着支援も含む、総合的な就労支援を受けることが可能です。
支援機関②ハローワーク
ハローワークでは、不安障害のある人に限らず、「職業相談」「職業訓練」「求人情報の提示」といった仕事に関連する支援を行っています。(参考:厚生労働省「ハローワーク」)
ハローワークで受けられる支援は、就職に関する相談やカウンセリング、求人の紹介などです。障害のある人の就職を支援する専門の窓口があるため、個々のケースに寄り添ったサポートを受けられます。
もちろん、窓口での相談の際には、「不安障害がある状態でどのように就職活動をすればよいのか」「面接や履歴書にはどのように記載すればよいのか」といった細かい疑問も解決できます。
支援機関③障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、就職活動の支援や求人の紹介、定着のためのサポートを行っている機関です。また、日常および地域生活に関する支援も行っています。(参考:厚生労働省「障害者雇用促進法制の整備について」)
障害者就業・生活支援センターは、2023年4月1日時点で全国に337か所設置されています。
障害者就業・生活支援センターの特徴は、就労だけでなく、金銭管理などの経済面や住居のことまで多岐にわたって相談できる点にあります。
支援機関④障害者就労支援センター
障害者就労支援センターとは、障害のある人の一般就労の機会を広げるための支援や、就職後に安心して働き続けるための支援などを行っている機関です。(参考:東京都福祉局「障害者就労支援センター」)
また、こちらで解説した「障害者就業・生活支援センター」と名称が似ていますが、別の機関です。
障害者就労支援センターは、各市区町村に設置されているため障害者就業・生活支援センターよりも数が多く、お住まいの地域によっては身近で利用しやすいかもしれません。(参考:上尾市障害者就労支援センター「働くを支える「障害者就労支援センター」 の役割と機能 」)
支援機関⑤精神保健福祉センター
精神保健福祉センターとは、「精神障害がある人のサポートを目的に、精神保健福祉法によって各都道府県に設置された支援機関」です。(参考:東京都福祉局「精神保健福祉センターとは」)
心の問題や精神障害による症状で困っているご本人だけでなく、ご家族や関係者の方からも、精神衛生に関する相談を受け付けています。
精神保健福祉センターは、他の支援機関と比較して、「精神疾患に特化している点」が特徴と言えるでしょう。
また、匿名でも相談を受け付けています。
支援機関⑥地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、障害がある一人ひとりのニーズに応じて、職業評価、復職支援、職業訓練などの専門的な職業リハビリテーションサービスを提供しています。
「復職後にどのように働くか」という悩みをお持ちの方に、特にオススメです。
運営は、「独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構」が行っており、全国47都道府県に設置されています。
また、当事者だけでなく、事業主に対しても雇用管理に関する相談・援助を実施しています。
支援機関⑦復職支援(リワーク・プログラム)
復職支援(リワーク・プログラム)とは、「精神障害で休職中の人を対象に復職や再発による再休職を防ぐためのプログラムを実施する支援制度」です。
復職支援は大きく次の3つに分けられます。(参考:一般社団法人日本うつ病リワーク協会「リワークプログラムとは」)
- 精神科治療、再休職予防が目的
- 利用料金には健康保険を適用可能(一部自己負担あり)
- 職場復帰のために、支援プランに基づく支援を行う
- 無料で利用可能だが、公務員は利用できない
- 企業側が、その労働者を労働させてよいかの見極めるために行う
- EAPという、「従業員支援プログラム」を利用することもある
リワークについて気になる人は、お近くの医療機関、地域障害者職業センター、そして職場に、どのような支援があるか確認してみてください。
リワークの詳細は、下記コラムをご覧ください。
補足:その他の支援団体
直接的に「就職」を支援するかどうかは別として、ご紹介してきたもの以外にも不安障害のある人を支援する団体は多数あります。
- 不安障害のある人の支援を行うNPO法人
- 当事者・経験者同士の支えあいを目的とする「ピアサポート」団体
これらの支援団体は、方向性や特色、雰囲気など、それぞれに特徴があります。
「不安障害 支援 ○○市」のようなネット検索を行ったりご紹介してきた支援団体の人に聞いたりすることで、さまざまな支援団体が見つかると思います。
>自分に合う支援団体を並行して利用すると、「次の一歩」に進みやすくなります。余裕があるようでしたら探してみてください。
不安障害のある人が仕事を続けるために必要な8つのサポート
不安障害のある人が仕事を続けるために必要な主なサポートを8つ紹介します。
サポート①専門家の治療を受ける
専門家とは、かかりつけ医や支援機関のことです。
話を聞いてもらうこと自体が不安の軽減にもつながりますので、ささいなことでも「かかりつけ医に相談してみる」という意識を持つようにしましょう。
就労を支援する専門機関は、あなたと職場の間に入って、働きやすい方法を模索するためのサポートをしています。
一例をあげると、障害者総合支援法(正式名称:障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律)に基づいて設置されている「就労移行支援事業所」では、定期面談によるメンタルケアから仕事に役立つ専門的なスキルの講習まで、最低0円から福祉サービスを提供しています。
就労移行支援事業所などは、原則的に診断書があれば就労支援サービスを受けることが可能です。
サポート②カウンセリング(精神療法)
カウンセリングも仕事を続けるために必要なサポートの1つです。
カウンセリングは認知行動療法を行うための手段であり、医師や臨床心理士との対話を通して次のようなことを行います。
- 心と身体をリラックスさせる
- 苦手なモノや場所に慣れる
- 極端な考え方や思考の癖を直す
これらを行うことで、ストレスを軽減できるのはもちろん、苦手なことを少しずつ克服できるため自信にもつながります。
また、仕事で感じた不安や恐怖を対処するためのサポートも受けられるので、不安や恐怖を1人で抱え続けることなく働けるのです。(参考:厚生労働省「不安障害」)
サポート③業務内容や配置の転換を相談する
業務内容を見直したり配置転換を相談したりできれば、負担を和らげるのに役立ちます。そのため、上司や同僚、勤め先で相談できる窓口や部署に、病状や困っていることを相談してみましょう。
周囲の人たちに自分の状況を知ってもらうことは、プレッシャーの軽減につながります。
また、短時間勤務への切り替えや業務量の調整もしやすくなるでしょう。
サポート④生活習慣を見直す
生活習慣を見直すのは、仕事のパフォーマンスを一定に保ち心身のコンディションを整えるためです。とくに、就寝と起床の時間は、なるべく一定にするよう心掛けましょう。
なぜなら、睡眠リズムの乱れは生活リズムの乱れや仕事のパフォーマンスに大きく影響するためです。
不安障害の人は、まず生活リズムを整えてストレスに強い心身をつくることから始めましょう。
サポート⑤不安になったときの対処法を身につける
不安になったときの対処法を身につけると、プレッシャーを和らげるのに役立ちます。
具体的なリラックス法には、以下のようなものがあります。
- 息を吐く時間を長くした深呼吸をする
- 10分程度のストレッチをする
- いつもより長くお風呂に浸かる
- 瞑想やマインドフルネスを実践する
あなたに合ったリラックス法を探し、日ごろの生活に取り入れるとよいでしょう。
サポート⑥通勤経路や時間帯を変える
不安障害のある人にとって、家を出てから会社に着くまではプレッシャーを感じやすい時間です。なぜなら、あまりに混雑する通勤経路や時間帯は、パニック発作を起こす可能性があるためです。
会社と相談して出勤の時間を早く(遅く)してもらえば、混雑する状況を回避できます。
もし、不安障害のことを職場の上司や同僚に話しているのであれば、時差出勤をして仕事をはじめるのもよいでしょう。
サポート⑦自分のペースで治療を進める
自分のペースで治療を進めるのは、不安や恐怖に徐々に慣れていく過程と時間の積み重ねが自信につながるためです。(参考:厚生労働省「こころもメンテしよう ~若者を支えるメンタルヘルスサイト~」「不安障害」)
不安や恐怖を払拭するには、ある程度の時間をかけて薬物療法や精神療法が効果を発揮するのを待つ必要があります。
時間をかけて自分のペースで治療できれば、不安障害を徐々に軽減できます。
不安障害を抱える人に対して「気の持ちようだ」と言う人もいるかもしれませんが、意識次第ですぐに解決するのであれば誰も悩むことはないはずです。
治療に専念している人も、治療しながら仕事をしている人も、「すぐに治るはずだと焦らない」ことが大切です。
サポート⑧休職する
さまざまな方法を試しても不安が治まらないときは、休職を検討しましょう。
不安や恐怖を感じながら働き続けると、症状が深刻になったりパフォーマンスが低下したりする恐れがあるためです。(参考:おりたメンタルクリニック 「休職について(心療内科・精神科)」)
ただし、休職制度の有無や内容は会社によって異なります。なぜなら、休職が法律で定められた制度ではないためです。
休職を検討するときは勤め先の就業規則や人事担当者に確認してください。
不安障害とは?
この章では、不安障害の概要と種類について解説いたします。
不安障害の概要
不安障害とは、不安や恐怖を感じたときに心身にさまざまな不調が表れる精神疾患のことです。
誰でも、大勢の前で話すときや意見を発表するときはドキドキしたり声が震えたりするでしょう。不安障害のある人は、そうした症状によって日常生活や仕事に支障をきたしています。(参考:厚生労働省「不安障害」)
本来、不安とは人間が生きていくうえで重要な機能です。なぜなら、不安を感じることで危険な状況を回避したり避難の準備をしたりできるためです。
ただし、不安障害のある人は常に危険な状況にあるようなプレッシャーを感じながら生きています。
また、人前に出ることへの強い不安や恐怖から登校や出勤がしにくくなり、人が集まる場所を避けるようになるため、円滑な社会生活を送りにくくなります。
不安障害のある人は、医師や周囲からのサポートを受けながら、時間をかけて治療を進めましょう。
不安障害は、その病態や誘因によって4つに分けられます。それぞれの違いを紹介しましょう。
種類①社交不安障害(社会不安障害)
社交不安障害は、人と話すことや混み合う場所へ出かけることに強い苦痛を感じる病気です。かつては対人恐怖、視線恐怖、赤面恐怖などと呼ばれていました。
人前で失敗したり恥ずかしい思いをしたりすることをきっかけに発症するといわれています。
社交不安障害の主な症状を4つ挙げました。(参考: 鈴鹿の心療内科・精神科 すずかこころのクリニック「不安障害・パニック障害」 )
- 発汗
- 震え
- 腹痛
- 動悸
種類②パニック障害
パニック障害とは、突然理由もなく動悸(どうき)やめまいがしたり、息が苦しくなったりする病気です。ときには「このまま死ぬのでは?」と恐怖を感じることがあります。
このような症状を「パニック発作」といい、この発作が繰り返し起こる状態がパニック障害です。
1度発作を経験すると、「またこうなったらどうしよう」と恐怖や不安を抱きやすくなります。こうした状態を「予期不安」といい、公共の場や交通機関、1人で出かけることを避けるようになります。
パニック発作の代表的な症状を以下に挙げました。(参考:厚生労働省「不安障害」)
- 動悸(どうき)
- 呼吸が苦しくなる
- 吐き気
- めまいやふらつき
種類③全般性不安障害
全般性不安障害とは、極度に不安や心配を抱えた状態が半年以上続くことを指します。全般性不安障害のある人は、日常のあらゆる場面で災害や不慮の事故などに対する恐怖を感じています。
例えば、家族の帰宅を待っているとしましょう。そのあいだ「事故に遭ったらどうしよう」「このまま帰ってこなかったら?」と考えます。
また、自分が外出しているときに「車が突然突っ込んできたらどうしよう?」「後ろから急に誰かに危害を加えられるかもしれない」と不安になるでしょう。
このように、全般性不安障害のある人は、日常のあらゆるシーンで極度の不安や心配を抱えています。
全般性不安障害の主な症状を以下にまとめました。(参考:油山病院「不安障害の種類と症状、治療」)
- 筋肉の緊張
- 不眠
- 過度の発汗
- 震え
- めまい
種類④強迫性障害
強迫性障害とは、意味がないと分かっていても特定の行為を止められず、繰り返し行わないと不安になる病気です。
特定の行為として代表的なものは以下のとおりです。
- 繰り返し手を洗う
- 外出時に施錠したかどうかを何度も確認する
- 階段や電信柱の数が気になる
- 特定の時刻に機械類の電源をオフ(オン)にする
強迫性障害のある人は、その行為に意味がないと分かっていても辞められません。なぜなら、その動作を繰り返すことで常に感じている不安や恐怖を和らげようとしているためです。(参考:油山病院「不安障害の種類と症状、治療」)
不安障害の主な治療方法
不安障害の主な治療方法を2つ紹介しましょう。
なお「そもそも不安障害なのかどうか」の診断や、上記の治療をどのように行うのかについては、患者の病状にあわせて、医師が診察をしてくれます。
診断や治療については自己判断をせずに、医師の診断を受けるようにしましょう。
もし、「医師の診断にどうしても納得できない」「処方された薬を服用することに抵抗がある」という場合は、セカンドオピニオンを求めて別の病院を受診するのもひとつの手段です。
代替医療や民間療法ではなく、「病院」の治療を受けるようにしましょう。
治療方法①薬物療法
不安障害における薬物療法は、セロトニンを増やす抗うつ剤を使用することで発作や不安を抑える脳の働きを強化します。
セロトニンとは、脳内の神経伝達物質の1つです。ほかの神経伝達物質の情報をコントロールして、精神を安定させる働きをします。(参考:厚生労働省「e-ヘルスネット「セロトニン 」)
中でも、「SSRI」という抗うつ薬は、副作用が少なく有効性がある程度高い薬とされているため、SSRIの服用を基本とするのが一般的です。
薬物療法で使われるものには、抗不安薬や漢方薬が挙げられます。なお、薬物療法においては必ず医師や薬剤師の指示に従ってください。
治療方法②精神療法
精神療法で代表的なものは2つあります。
- 認知行動療法
- 曝露(ばくろ)療法
認知行動療法の目的は、発作や不安のトリガーになる思考やイメージの癖を修正して不安をコントロールすることです。(参考:認知行動療法センター「認知行動療法とは」)
例えば、パニック発作が起きたために電車に乗ることを避けているとしましょう。その人にとって、パニック発作と電車に乗ることが直接関連付けられている状態です。
認知行動療法によって、その思考とは異なるパターンや状況があることが分かれば、不安や苦痛が和らぎます。
曝露(ばくろ)療法とは、不安を覚える状況や環境にあえて身を置いて恐怖や不安を和らげる療法です。(参考:e-ヘルスネット(厚生労働省)「エクスポージャー療法」)
不安や恐怖を感じる状況に身を置くときは、本人が許容できるラインから始めます。小さな子どもが初めてプールに入るとき、水位の低いところからスタートするのと同じです。
曝露療法のポイントは、医師やカウンセラーとの信頼関係を築いたうえで行うことです。
強迫性障害のある人がこの療法を取り入れた結果、繰り返し手を洗わなくてもよくなったケースがあります。
まとめ:不安障害のある人は継続して働けるよう周囲にサポートしてもらいましょう
不安障害のある人は、継続して働けるように周囲にサポートしてもらいましょう。なぜなら、通勤やオフィスなどあらゆるシーンで恐怖や不安を感じやすいためです。
就職や転職を検討するときは、自分に合った仕事や業種から探しましょう。不安障害のある人に適しているのは、業務内容が定量的で環境の変化の少ない仕事です。
専門の支援機関を活用すると、それぞれの状況に適した仕事を見つけるのに役立ちます。
何よりも大切なのは、障害やそれに伴う不安を一人で抱え込まないことです。ぜひ、医師や支援者を頼ってみてください。
専門的なアドバイスをもらえるだけでなく、相談すること自体が不安の解消につながります。
不安障害のある自分に向いてる仕事を知りたいです。
一般論として、「定型的な仕事」「自分のペースでできる仕事」「フリーランスまたは在宅での仕事」などが考えられます。詳細について、こちらで解説しています。
不安障害のある自分が転職や就職するときになにに気をつければいいですか?
一般論として、「主治医に相談する」「自分に向いてる仕事を探す」「支援機関を活用する」「雇用枠を変える」などが考えられます。詳細について、こちらで解説しています。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
執筆寺田淳平
てらだ・じゅんぺい。
高校2年の春から半年ほど不登校を経験。保健室登校をしながら卒業し、慶應義塾大学に入学。同大学卒業後の就職先(3,500人規模)で人事業務に従事する中、うつ病を発症し約10か月休職。寛解・職場復帰後、勤務を2年継続したのち現職のフリーライターに。
2019年に一般財団法人職業技能振興会の認定資格「企業中間管理職ケアストレスカウンセラー」を取得。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→