職場のストレスの原因とは? ストレスマネジメントの具体的な方法を解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
仕事でストレスを感じているあなたは、以下のような悩みはありませんか?
- 職場で人間関係の悩みがある
- 業務量や仕事のプレッシャーを感じている
- 体調不良や睡眠障害など健康面への影響が出ている
- ストレスへの具体的な解決法を知りたい
このコラムでは、仕事でストレスを感じている人に向けて、職場のストレスの原因やストレスマネジメントの方法、メリットについて解説します。あわせて、働く人のストレスマネジメントをする事業主に向けて、利用できる支援制度などを紹介します。
仕事でストレスを感じているあなたの参考になれば幸いです。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、仕事でストレスを抱えている人のための就労移行支援事業所です。
- 病気や障害があっても、KBCでは初任給は38万円も
- 通常52%の就職率が、KBCでは約83%
- 通常約1年半かかる就職内定が、KBCでは平均4ヶ月
神田・新宿・横浜・大阪に校舎があり、障害者手帳がなくても自治体の審査を経て利用することができます。遠方の方は、日常的にはオンラインで受講しながら(※お住まいの自治体が認めた場合)、「月に1回、対面での面談」を行います。詳しくは下記のボタンからお気軽にお問い合わせください。
目次
ストレスとは?
ストレスとは、外部からの刺激を受けた際に身体の内側で生じる反応のことです。(参考:eヘルスネット「ストレス」)
また、場合によっては、その原因となる外部からの刺激と体の内側で生じる反応を合わせてストレスと呼ぶこともあります。
職場のストレスの原因6選
この章では、職場のストレスの原因について解説します。
前提:ストレッサーとは?
ストレッサーとは、ストレスを生む原因となる外部からの刺激のことです。
ストレッサーには以下の種類があります。(参考:パブリックヘルスリサーチセンター「ストレスとは」)
- 物理的ストレッサー:激しい高温や低温 、激しい騒音や振動
- 化学的ストレッサー:薬物、空気中の有害物質
- 心理社会的ストレッサー:対人関係、仕事上の問題
人間には自己を守るための機能が備わっており、健康を保とうとする働きがあります。そのため、心や体の限界を超えるストレッサーが加わると、さまざまな変化が心身に生じ、体調不良や病気の原因となることがあるのです。
原因①仕事の失敗・責任の発生
仕事で失敗したり、仕事を成功させなければいけないと責任を感じたりすることがプレッシャーになり、ストレスを感じることがあります。(参考:厚生労働省「メンタルヘルス対策のポイント」)
仕事の失敗は、自己評価や他者からの評価、社内での評価などさまざまなことに影響するため、ストレスの要因になるのです。
また、業務上の責任が大きくなると、「問題を解決できるだろうか」「期待に応えられるか」という不安につながりストレスの要因になることがあります。
業務上の責任から感じるプレッシャーや不安の具体例については、以下のようなことが挙げられます。
- 売上や業績を達成できるか
- 苦手な仕事を最後までやり遂げられるか
- 上司や先輩からの期待に応えられるか
原因②仕事の量・時間
仕事の量や勤務時間が、ストレスの要因になることもあります。(参考:WHO「Mental health at work」)
長時間勤務自体がストレスの原因になることはもちろん、残業などが続くと睡眠時間の確保が難しくなり、疲労回復ができず体調を崩すリスクも高まります。
また、身体と心は密接に繋がっているため、体調不良をきっかけに精神的なストレスを強く感じるようになることもあります。
ほかにも、仕事の時間が長くなることでプライベートの時間が削られると、リフレッシュの機会が減少するため、精神的な負担を感じやすくなったり、心身ともに疲弊しやすくなったりする可能性も考えられます。
さらに、過度の残業が常態化している職場では、ストレスから体調不良が起こり欠勤や休職が必要になる恐れもあるはずです。
原因③対人関係・ハラスメント
職場での対人関係やハラスメントもストレスの要因になります。
職場で起こりやすいハラスメントの代表として、以下のものが挙げられます。
- パワーハラスメント(パワハラ)
- セクシャルハラスメント(セクハラ)
- マタニティハラスメント(マタハラ)
- モラルハラスメント(モラハラ)
- ジェンダーハラスメント(ジェンハラ)
- SOGIハラスメント( SOGIハラ)
最近では人種や国籍を理由に差別をするレイシャルハラスメントや、在宅勤務の社員に対して過度な要求や非難をするリモートハラスメントなどがあり、社会の変化とともに新たな新たなハラスメントが生まれています。
これらのハラスメントは、職場の雰囲気を悪化させ、ハラスメントを受けている人はもちろん、周りの人にとっても大きなストレスとなります。
また、ハラスメント以外でも職場でのいじめなど、職場での対人関係の悩みを抱えることは少なくありません。
人間は本質的に社会的な生き物であり、他者との関わりなしでは生きられないため、対人関係の悩みや困難は大きなストレスの要因となるのです。
大人のいじめについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
原因④仕事の内容
仕事の内容が自分に合っていない場合も、ストレスの要因となることがあります。
例えば、人と話すことが苦手な人にとって、営業や接客の仕事はストレスに感じるでしょう。仕事の内容からストレスを感じる場合は、自分の特性にあった仕事を選ぶことで、ストレスを軽減できるかもしれません。
自分の特性を理解するためには、学校などの集団の中で、自分がどのような役割を担っていたのかを振り返ったり、さまざまな仕事を経験したりすることがよいでしょう。
経験を重ねることで、次第に自分に合った仕事内容が見えてくるはずです。
原因⑤顧客や取引先との関係
こちらで解説した原因と関連していますが、社外の人間関係もストレスの要因となることがあります。
顧客や取引先との人間関係は、金銭を介したビジネスの関係であり、プライベートの話をする機会も少ないことなどから、信頼関係を築きづらいことが多いです。
また、ビジネスの関係であれば当然のことではありますが、明確な納期が決められていたり成果が求められたりします。そのため、社内での人間関係以上に大きなプレッシャーを感じることがあるのです。
また、営業職や販売職の場合は、自社を選んでもらえるように商品やサービスを売り込む必要があるため、競合他社との競争という側面でのプレッシャーもあるでしょう。
このような顧客や取引先との関係の中で生じるプレッシャーがストレスになることがあります。
原因⑥職場環境
職場環境もストレスの原因になる可能性があります。(参考:WHO「Risks in ambient work environment」)
ストレスの要因となる職場環境の具体例としては、以下のものが挙げられます。
- 会話や電話、機械音などの騒音が常に聞こえる
- 業務に適さない照明の明るさ
- 不衛生な環境
- プライバシーのないオフィス
騒音によって集中力がそがれる可能性があることはもちろん、その結果生産性が低下することも考えられます。
また、業務に適さない明るさの照明は、目の疲れや頭痛を引き起こし、ストレスを増加させることがあります。さらに、物が散乱しているデスクやオフィス、デスクごとの距離が極端に近くプライバシーのない環境もストレスに繋がります。
職場におけるストレスに関する最新状況
厚生労働省の調査では、回答者の約8割が現在の仕事で悩みやストレスを感じているそうです。ストレスの内容としては、主に以下のことが挙げられています。(参考:厚生労働省「職場におけるメンタルヘルス対策の状況」)
- 仕事の量(36.3%)
- 仕事の失敗、責任の発生等(35.9%)
- 仕事の質(27.1%)
こうしたストレスが原因で精神障害を発症した、あるいは自殺したとして労災認定が行われる事案が近年増加しています。日本国内での自殺者総数が年間2万人を超えるなかで、労働者の自殺者数も6000人を超えて推移しています。
厚生労働省の調査によると、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業主の割合は、約63.4%となりました。
前年の約59.2%と比べると少し増えていますが、まだまだ取り組んでいない事業主は多いようです。(参考:厚生労働省「令和4年 労働安全衛生調査(実態調査) 結果の概要 」)
では、職場でのストレスを軽減するために働く人や事業者は、何ができるのでしょうか?
働く人ができることの1つとして挙げられるのが、ストレスマネジメントです。ストレスマネジメントの詳しい内容については、こちらで解説しています。
また、事業主も同様に職場でのストレスマネジメントを行うことが大切です。具体的な取り組みについては、こちらで解説しています。
ストレスマネジメントとは?
ストレスマネジメントとは、ストレスとの付き合い方を模索し、ストレスに対して適切に対処することです。(参考:e- ヘルスネット「ストレスマネジメント」)
ストレスは避けられないものではありますが、ストレスが全くない状態が心の健康にとってよいという訳でもありません。
例えば、適度なストレスがあることによって、挑戦する意欲がかきたてられ、成長の機会を得られることもあるでしょう。
そのため、ストレスを根本からなくそうとするのではなく、ストレスを受けた際に適切に対処できるようになる、つまりストレスマネジメントができるようになることが大切なのです。
自分でできるストレスマネジメント6選
この章では、自分でできるストレスマネジメントについて解説します。
方法①セルフモニタリング
セルフモニタリングとは、自分の疲れやストレスに気付くために、自分の心や身体を観察することです。
ストレスマネジメントを行う上で最も大切なのは、自分がストレスを感じていることに気づくことです。
どんなに効果的な対処法を知っていても、まず自分がストレスを感じていることを認識していなければ、対処法を活用しようとは思えないでしょう。
どのくらいのストレスがかかっているのかを自分自身で認識できる方法の1つが、セルフモニタリングなのです。(参考:国立精神・神経医療研究センター「シリーズ:ストレスとうまく付き合うために①-1 ~セルフモニタリングについて~」)
ストレスを感じる度合いには、個人差があり、セルフモニタリングを通して自分がどの程度疲れているのかを把握することで、適切な対処法を選べるようになります。
例えば、風邪をひいた場合も、まずは体温計で熱を測って普段よりも体温が高くなっていないか確認するでしょう。
そして、いつもより少し体温が高ければ「少し体温が高いから早めに休もう」と判断できたり、大幅に体温が高ければ「高熱があるから会社を休もう」と決断できたりするなど、自分の状態に応じた行動を取れるようになります。
ストレスについても同じで、まずは「今自分はどれくらい疲れているのか」「どれほどストレスを感じているのか」といったことに気づくことが、適切な対処への第一歩となります。
また、ストレスマネジメントを通してストレスの原因を認識できると、ストレスによる体調不良を予防することにもつながるのです。
方法②ストレスコーピング
ストレスコーピングとは、特定のストレスを引き起こす問題や状況への対処方法のことです。ストレスコーピングには、主に以下の2種類があります。(参考:厚生労働省「ストレス・コーピング」)
- 問題解決型
- 情動焦点型
問題解決型は、ストレスがかかる状況を改善したり、問題を明確化したりしたうえで、解決策を探し実践します。そして、実践したことに対して評価を行い、自分に合った対処法を模索します。つまり、ストレスの原因そのものに働きかける方法なのです。
一方、情動焦点型は、問題に対する自分の感情をコントロールしたり、変化させたりする方法です。感情をコントロールすることで、問題から一時的に逃れたりストレスを最小限にしたりすることで、精神的な負担を軽くします。
方法③休養する
休養もストレスマネジメントをする上で重要です。休養には以下の2つの意味が含まれています。(参考:厚生労働省「休養・こころの健康」)
- 休むことで心身の疲れを癒し、元気を取り戻す
- 養うことで翌日に向けた活力を育み、心身や社会的な健康を高める
以上のどちらの意味の休養であっても、休養をとるには十分な時間が必要です。
また、休養の取り方も好みや体調に合わせて自分自身に合ったものを見つけることが重要になります。
例えば、身体に疲労がたまっていると感じるのであれば、温泉やヨガなどでリラックスするのがオススメです。また、身体を動かしてリフレッシュしたい場合は、スポーツをしたり、ボランティアに参加したりして、過ごすとよいでしょう。
しっかりと休養を取ることで、ストレスを軽減できることはもちろん、さまざまな経験を通してストレスとの上手な付き合い方が見つかるかもしれません。
方法④生活習慣を整える
生活習慣を整えてストレスを軽減するためには、睡眠や食事、運動に重点を置くことが大切です。具体的には、以下のポイントを意識すると効果的です。
- 睡眠時間を整え、質を高める
- バランスのいい食事を心がける
- 適度な運動を取り入れる
まず、規則的な睡眠を保つために、就寝時間と起床時間をできるだけ毎日同じにしましょう。睡眠の質を高めるためには、リラックスできるように以下の方法などを取り入れて寝室の状態を整えておくこともオススメです。
- アロマキャンドルを焚く
- ストレッチをする
- 睡眠導入BGMを流す
また、バランスのいい食事も効果的です。少し話は変わりますが、2013年に和食がユネスコ無形文化遺産に登録されたのをご存じでしょうか?(参考:農林水産省ttps://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wpaper/attach/pdf/r2_wpaper-14.pdf" target="_blank">「伝えたい日本の伝統的な食文化」)
登録された理由の1つとして、和食はバランスがよく、健康的な食生活が送れる点が評価されています。
自炊や外食の際は、和食の基本形である一汁三菜を意識してみるのもいいでしょう。また、旬の食材を取り入れることで、より豊かな食生活を送ることができるでしょう。
運動については、働いているとなかなか時間を確保するのが難しいかもしれません。そんな時は、通勤の間や休憩中にウォーキングをしてみたり、エスカレーターの代わりにできるだけ階段を使用したりするなどがオススメです。
方法⑤職場の人や周囲の人に相談する
仕事の困りごとがあった際に職場の人や周囲の人に相談することも、ストレスマネジメントの方法の1つです。
一人で悩みを抱え込んでいると不安や心配が大きくなり、ストレスもたまっていきます。しかし、自分以外の誰かに相談できれば解決策が見つかったり、解決策が見つからなかったとしても気持ちが軽くなったりすることがあるのです。
また、最近では1on1やメンター制度を導入する職場も増えています。社内制度を活用して、仕事の悩みや課題について社内のメンターや上司、先輩に相談してみることもオススメです。
社内で相談しにくい内容の場合は、信頼できる友達や家族、またこちらで紹介する専門家や支援機関に相談することもできます。
方法⑥専門家や支援機関に相談する
周囲に相談できる人がいない場合は、メンタルクリニックや地域の精神保健福祉センターなどの専門家や支援機関を利用しましょう。
また、対面での相談は緊張するという人は、電話やメールなどで相談できる支援機関がオススメです。
以下のこころの耳相談は、厚生労働省が提供する働く人向けのメンタルヘルス支援サービスです。
電話やSNS、メールなどからもアクセスが可能で、職場でのストレスや人間関係の悩み、過重労働による健康問題などについて、メンタルヘルスの専門家に相談できます。
厚生労働省「相談窓口案内」
補足:過剰な飲酒・夜ふかしなどは逆効果
仕事のストレスや疲れを飲酒や夜ふかしで発散することもあるかもしれません。
しかし、過剰な飲酒は、高血圧や肝障害、糖尿病、痛風などの生活習慣病のリスクを引き起こす可能性があります。(参考:東京都「飲酒|とうきょう健康ステーション」)
加えて、身体が休まっているものの脳が活動しているレム睡眠の増加、夜中に目が覚めてそこからなかなか寝付けなくなる中途覚醒の増加など、睡眠の質の低下につながります。(参考:NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター「お酒を飲むとぐっすり眠れる?」)
また、夜更かしは、翌日が仕事であれば睡眠時間の現象につながることはもちろん、翌日が休日で長時間寝られたとしても起床時間が遅くなり、生活リズムが乱れます。
睡眠時間が短くなれば、睡眠中に身体が回復できず疲労感が蓄積され、精神的なストレスにもつながります。
睡眠の質が低下すると、睡眠中に疲れが取れず、疲労が慢性化する恐れもあるため注意してください。
ストレスマネジメントの3つのメリット
この章では、ストレスマネジメントのメリットについて解説します。
メリット①体調不良の予防
ストレスマネジメントは、体調不良の予防につながります。
例えば、ストレスマネジメントの1つであるストレスコーピングを行う中で過去を振り返り、ストレスがかかると頭痛の症状が出やすいことに気づいたとします。この頭痛は、ストレス反応のサインであると考えられるため、今後頭痛が出た際には「ストレスがかかっているのかも」と気づくことができるのです。
ストレスがかかっていることに気づければ、意図的にストレスを発散できたり、ストレスの要因から離れたりすることができます。つまり、大きな体調不良が起こる前に予防ができるのです。
このように、ストレスマネジメントを通して、自分自身のストレスに対する反応を自己認識できるようになると、ストレスによる体調不良を未然に防げるのです。
メリット②自身のストレス状態に関する理解の向上
自分自身のストレス状態への理解を深められる点も、ストレスマネジメントのメリットと言えるでしょう。
こちらで解説したように、ストレスマネジメントの1つであるストレスコーピングを行っていると、自分自身がストレスを感じた際にどのような反応が自分の心や体に生じるかがわかるようになります。
例えば、以下のような変化がストレスへの反応と考えられます。
- 忙しい仕事の影響で月経不順が頻発する
- 試験のプレッシャーで風邪をひく
- 人間関係の悩みで眠りが浅くなる
心と体は密接に関係し合っているため、ストレスにより精神的な負担がかかることで、身体面にもさまざまな不調が出ることがあります。(参考:e- ヘルスネット「こころとからだ」)
ストレスマネジメントを行っていない場合は、その不調がストレスによるものだと気づかずに、知らぬ間にストレスが大きくなっていることもあるでしょう。
しかし、ストレスマネジメントを行っていれば、自分の心や体の反応とストレスを関連づけて考えられるようになり、さらにはストレスの原因を突き止められたりするなど、自分自身のストレス状態に関する理解が深まっていくのです。
メリット③業務の円滑化・生産性向上
ストレスマネジメントを行うと、業務を円滑に進められるようになったり、仕事の生産性を向上させられたりするようになります。
ストレスマネジメントを行い、ストレスとうまく付き合えるようになれば、仕事において精神的にも身体的にも負担を感じづらくなり、自身の本来の能力を発揮しやすくなります。
そのため、ストレスがかかっている状態と比較すると、業務を早く進められたりこれまで以上の成果を出せたりすることがあるのです。
また、ストレスマネジメントを行うことで心に余裕が生まれれば、職場の同僚や顧客などとも良好なコミュニケーションができるようになるため、業務がスムーズに進みやすくなるでしょう。
補足:離職率低下やハラスメント防止など事業主側にもメリットがある
ストレスマネジメントを行うことのメリットは、働く人だけでなく事業主側にもあります。
事業主が社内でストレスマネジメントを実施することによって得られるメリットは、以下のとおりです。
- 離職率の低下
- ハラスメントの防止
まず、ストレスマネジメントによって従業員のストレスが軽減されれば、ストレスによる心身の不調などによる離職率が低下します。
また、ストレスがかかりづらい職場になれば従業員の働く意欲が高まり、従業員の生産性の向上や業務の円滑化につながることもあるでしょう。さらに、従業員にとって働きやすい環境になれば、従業員の勤続年数が長くなる可能性も考えられます。
また、適切なストレスマネジメントはハラスメント防止にも寄与します。
従業員のメンタルが安定することで心の余裕が生まれ、相手を気遣えるようになったり良好なコミュニケーションが取れるようになったりするため、ハラスメントの防止につながるのです。
事業主ができるストレスマネジメント7選
この章では、事業主ができるストレスマネジメントについて解説します。
方法①職場環境の把握
まずは、職場環境把握をし、問題点があれば改善をしましょう。
職場環境を把握するために確認する主な項目は、以下の内容が挙げられます。
- 職場の物理的レイアウト
- 労働時間や作業方法
- 組織、人間関係
職場の物理的レイアウトとしては、チーム内のコミュニケーションの促進につながるよう、チームメンバーが集まりやすいレイアウトにしたり、反対に個人が集中しやすい個別ブースを設置したりすることが効果的です。
また、職場の照明や換気、温度調整などを適切に管理してみてください。
ほかにも、フレックスやリモートワークの導入、産業医やカウンセラーとの連携なども考えられます。
職場環境を把握し改善することで、労働者のストレスを軽減しメンタルヘルス不調を予防できるでしょう。(参考:厚生労働省「職場環境改善ツール」)
方法②ラインケア
ラインケアとは、職場のメンタルヘルス対策の一環で、ラインと呼ばれる管理監督者による従業員へのケアのことです。主に、部下の心身の健康状態を把握し、ストレスや悩みを早期に察知・サポートする役割を担います。(参考:厚生労働省「15分でわかるラインによるケア」)
具体的には、部下に以下の様子がないかを気にかけ、早期に気付くことが大切です。
- 遅刻や早退、欠勤が増る
- 仕事の能率が悪い
- 表情に活気が無く、動作にも元気がない
ラインケアには、日常的なコミュニケーションや相談の場を設けることが含まれ、ストレスの軽減や問題の深刻化を防ぐことが目的です。
方法③ストレスチェックの実施
厚生労働省が推進する事業主向けストレスチェックは、従業員のメンタルヘルスを評価し、職場環境の改善を図るための制度です。
ストレスチェックの結果については、個人情報が保護され、従業員の健康管理や職場改善のために活用されます。
厚生労働省はこの取り組みを通じて、メンタルヘルスの重要性を広め、ストレスによる健康問題の予防を目指しています。
以下の厚生労働省のサイトでは、実際にストレスチェックを行っている職場の事例が掲載されています。ぜひご覧ください。
厚生労働省「職場のメンタルヘルス対策の取組事例」
方法④1on1・メンター制度の導入
1on1とは、上司と部下が定期的に行う個別面談で、業務進捗や今後のキャリア、メンタルヘルスについて話し合います。
面談で深いコミュニケーションを行い、信頼関係を築くことで、部下の業務でのパフォーマンス向上や職場でのストレス軽減につながるのです。
また、メンター制度は、経験豊富な社員が後輩にアドバイスを行う制度で、メンターは信頼関係を築いたうえで、個人に応じた指導を行い、後輩が自信を持てるようサポートします。従業員のスキルや知識の向上が促進されます。
1on1やメンター制度を導入することで、個人の細やかな変化に気づけることに加えて、こちらで解説したラインケアにも連携ができるため、より丁寧なサポートが可能になります。
方法⑤メンタルヘルス研修の実施
メンタルヘルス研修とは、従業員にメンタルヘルス対策の重要性を理解してもらうための研修のことです。
厚生労働省が公開しているメンタルヘルス研修には、主に以下の3つの種類があります。
- セルフケア研修
- ラインケア研修
- ハラスメント研修
メンタルヘルス研修は、ストレスの付き合い方や睡眠、リラクゼーションなどに関することを学べる内容となっています。ラインケア研修では、こちらで解説したラインケアを適切に実施するための内容を学べる研修です。
以下のサイトでは、メンタルヘルス研修に活用できる動画などが公開されているので、ぜひご活用ください。
厚生労働省「職場のメンタルヘルス研修ツール」
方法⑥産業医などの相談窓口の設置
産業医などの相談窓口を設置することも、職場のストレスマネジメントとして有効です。
産業医の主な活動内容として、以下のことが挙げられます。
- 従業員との相談
- 過重労働への対策
- 休業者の職場復帰支援
- メンタルヘルス教育
- ストレスチェックを通じた職業性ストレスの評価
- 職場環境の改善
以上の活動を行う産業医が職場にいることで、従業員は職場でのストレスやストレスによる体調不良について相談しやすくなり、体調不良により休職・退職する従業員の減少が期待できます。
また、こちらで解説した職場環境の把握についても、産業医の専門的な意見を聞きながら行うことができるでしょう。
なお、職場のストレスマネジメントについては、産業医以外にも相談できます。その他の相談窓口に関してはこちらをご参照ください。
方法⑦外部支援機関との連携
外部支援機関と連携することも、事業主ができるストレスマネジメントです。
事業主が連携できる支援機関は、以下のとおりです。
- 都道府県産業保健推進センター:地域における産業保健の推進を支援し、事業主へのアドバイスや研修を提供する支援機関
- 地域産業保健センター:労働者の健康保持やメンタルヘルスの向上を目的とした支援や情報提供を行う支援機関
- 中央労働災害防止協会:労働災害の防止を目指し、メンタルヘルスに関する啓発活動や研修を実施する支援機関
- 労災病院:労働者の健康管理やメンタルヘルスの治療を行い、職場復帰支援にも取り組む支援機関
- EAP(従業員支援プログラム):従業員のメンタルヘルスをサポートするための専門的なカウンセリングサービスを提供するプログラム
これらの支援機関との連携を通じて、事業主は従業員のメンタルヘルスを効果的に管理できるようになり、さらに職場環境の改善も可能になります。
事業主が利用できるストレスマネジメントに関する支援制度2選
この章では、事業主が利用できるストレスマネジメントに関する支援制度を紹介します。
支援制度①団体経由産業保健活動推進助成金
団体経由産業保健活動推進助成金とは、中小企業や労働保険の特別加入者を支援する団体が、傘下の中小企業に対して産業医や保健師などの専門職、または産業保健サービスを提供する事業主と契約した場合に、その費用の一部を助成する制度のことです。
詳細は、独立行政法人労働者健康安全機構の公式WEBサイトに掲載されています。
独立行政法人 労働者健康安全機構「助成金」
支援制度②心の健康づくり計画助成金
心の健康づくり計画助成金とは、心の健康づくりに関する具体的な取り組みを行う事業主や団体に対して、必要な経費の一部を助成する制度のことです。
助成金の対象となる活動には、メンタルヘルス教育の実施、職場環境の改善、ストレスチェックの導入などがあります。これにより、従業員の心の健康を守り、働きやすい職場環境を整えることが期待されています。
心の健康づくり計画助成金の詳細は、以下の資料でご確認いただけます。
独立行政法人労働者健康安全機構「令和4年度版 心の健康づくり計画助成金」
まとめ:仕事のストレスは無理をせずに周りに相談しましょう
仕事でのストレスは、すべてが悪いというわけではありません。しかし、過度なストレスは精神的な負担になることはもちろん、体調不良につながる恐れがあります。
そのため、今あなたが仕事で大きなストレスを感じている場合は、今回紹介したストレスマネジメントを取り入れて、ストレスとの上手な付き合い方やストレスの対処法を探してみてください。
ただし、仕事のストレスで精神的に追い込まれ、体調にも大きく影響が出ている場合は、無理をせずに家族や友人、専門機関に相談し助けを求めましょう。
このコラムが、仕事のストレスで悩むあなたのお役に立ちましたら幸いです。
ストレスって、なんなんですか?
ストレスとは、外部からの刺激を受けた際に身体の内側で生じる反応のことです。
詳細については、こちらで解説しています。
ストレスマネジメントの方法を知りたいです。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2024年10月現在、首都圏・関西に6校舎を展開しています。トップページはこちら→