大人の広汎性発達障害(現:ASD)とは? 特性や困りごと、相談先を解説

こんにちは、就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
- 広汎性発達障害(現:ASD)かもしれないと感じている
- 大人になってから生きづらさに気づいた
そんな不安や疑問を抱えていませんか?
広汎性発達障害は、現在ではASD(自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)という名称に統合されています。
特性のあらわれ方は1人ひとり異なり、対人関係やコミュニケーション、こだわりの強さなどみられるのが特徴です。
このコラムでは、広汎性発達障害(現:ASD)の基本的な考え方や大人にみられやすい特性、大人になってから気づく理由について解説します。
あわせて、仕事で抱えやすい困難や困りごとへの向き合い方についても紹介します。
特性を正しく理解し、自分に合った働き方や支援を考えるための情報を、このコラムで一緒に整理していきましょう。
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目次
広汎性発達障害(現:ASD)とは?
かつて使用されていた広汎性発達障害(PDD)を含む以下の診断名・分類は、ASD(自閉症スペクトラム症/自閉症スペクトラム障害)という診断名・分類に統合されています。
- アスペルガー症候群
- 自閉症
- 高機能自閉症
- 広汎性発達障害(PDD)
それぞれ別の発達障害として診断基準も異なっていましたが、2013年に行われたアメリカ精神医学会が定めた精神障害の診察基準『DSM』の改訂の際に、厳密に区分するのではなく、地続きの=スペクトラムな障害として捉える現在のASDに変更されました。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』)
ただし、広汎性発達障害(PDD)という変更前の診断名・分類は、法令や病院、日常会話などで現在も使用されることがあります。
また、過去に広汎性発達障害(PDD)などと診断された人が、現在のASDという名称を認知していない場合もあります。
それらを受けてこのコラムでは、内容的には現行のASDについて解説しつつ、表記としては広汎性発達障害(現:ASD)とします。
広汎性発達障害(現:ASD)の診断は医師のみが行える
広汎性発達障害(現:ASD)の診断は、医師のみが行える医学的な判断です。
国際的に定められた診断基準に基づき、専門的な評価を経て総合的に判断されるためです。本人や家族の自己判断だけで確定できるものではありません。
診断の流れは、以下のとおりです。
- 発達歴に関する聞き取り(保護者や本人からの情報)
- 専門家による行動観察
- DSM-5に示された標準化基準との照合
- 社会生活・職業生活への影響の確認
アメリカ精神医学会の「精神障害の診断と統計マニュアル第5版(DSM-5)」では、社会的コミュニケーションおよび相互作用の持続的な困難や、限定された反復的行動の有無など、具体的な基準が示されています。
診断は単一の検査のみで決まるのではなく、複数の情報を統合して医学的に評価されます。(参考:Centers for Disease Control and Prevention「Clinical Screening and Diagnosis for Autism Spectrum Disorder」)
大人の広汎性発達障害(現:ASD)にみられやすい特性
この章では、大人の広汎性発達障害(現:ASD)にみられやすい特性について解説します。
特性①対人コミュニケーションにずれが生じやすい
1つ目の特性は、対人コミュニケーションの場面で全体的なずれが生じやすいことです。
広汎性発達障害(現:ASD)では、社会的な相互関係の築き方そのものに特性がみられる場合があります。
具体的には、以下のような傾向がみられます。(参考:厚生労働省「広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群等)」)
- 相手との距離感がつかみにくい
- 会話のタイミングが合いにくい
- 場の空気や暗黙の了解を察しにくい
- 集団の中での役割理解が難しい
このような特性は、性格や態度の問題ではありません。
対人関係における関係性の築き方に特徴があると理解するのが、適切な支援や環境調整につながります。
特性②言葉の意図を読み取りにくく、自分の考えも伝えにくい
2つ目の特性は、相手の言葉の意図を読み取りにくく、自分の考えも伝えにくいことです。
広汎性発達障害(現:ASD)は、言葉の意味や場面に応じた表現を汎用的に理解するのが難しく、伝え方にもずれが生じやすい傾向があります。
具体的には、以下のようなあらわれ方をします。(参考:厚生労働省「広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群等)」)
- 相手が何を意図しているかを察するのが難しい
- 比喩や婉曲的な表現をそのまま受け取る
- 本当は違う意味で言っているのに文字どおりに理解する
- 自分の考えや気持ちを言葉にするのが難しく感じる
- 思ったことをそのまま話してしまい、誤解を生む場合がある
これは単純に言葉が話せないという意味ではなく、意図やニュアンスをくみ取ることや、場面に応じた言葉の使い分けがしにくいためです。
本人に意思や感情がないわけではありません。
言葉の受け取り方や伝え方に特性があるため、その点を踏まえて関わることが支援や配慮につながります。
特性③興味・関心の偏りやこだわりが強い
3つ目の特性は、興味・関心の偏りやこだわりが強いことです。
広汎性発達障害(現:ASD)では、関心の幅が限定されやすく、特定の対象や方法に強く集中する傾向がみられる場合があります。
具体的なあらわれ方は、以下のとおりです。(参考:厚生労働省「広汎性発達障害(自閉症、アスペルガー症候群等)」)
- 特定の分野やテーマに強い関心を示す
- 決まった手順ややり方を変えることに強い不安を感じる
- 予定変更に強いストレスを感じやすい
- 自分なりのルールを大切にする
- 関心のない話題には注意を向けにくい
この特性は、短所としてだけではなく、専門性や集中力の高さとして強みにもなります。
関心の方向やこだわりの特性を踏まえ、得意な分野を活かせる環境を選ぶと、力を発揮しやすくなるでしょう。
大人になってから広汎性発達障害(現:ASD)に気づく理由
この章では、大人になってから広汎性発達障害(現:ASD)に気づく理由について解説します。
理由①子どもの頃は周囲の支援で特性が目立ちにくかったため
1つ目の理由は、子どもの頃は周囲の支援で特性が目立ちにくかったためです。
発達障害の特性は幼少期からみられる場合がありますが、家庭や学校での配慮やフォローにより、大きな困難として表面化しないケースもあります。
具体的な背景は、以下のとおりです。(参考:政府広報オンライン「発達障害って、なんだろう?」)
- 家族が自然にサポートしていた
- 学校生活が比較的構造化されていた
- 特性が個性と受け止められていた
- 周囲の大人が無意識に調整していた
子ども時代は周囲の支えで乗り越えられていた場面が、大人になると環境の変化により負担としてあらわれる場合があります。
そのため、進学や就職といった環境の変化をきっかけに、自分の特性に気づくケースがあるのです。
理由②進学・就職で求められる社会性が高まるため
2つ目の理由は、進学や就職によって求められる社会性の水準が高まるためです。
学生時代までは家庭や学校という比較的限られた環境で過ごしますが、社会に出ると人間関係が広がり、役割や責任も増えます。
その結果、対人関係のやりとりや自己管理力がより強く求められるようになります。
具体的に増える場面は、以下のとおりです。(参考:政府広報オンライン「発達障害って、なんだろう?」)
- 相手の意図を察して行動する
- 場の雰囲気に合わせて発言する
- 優先順位を考えて計画的に動く
- 複数の人との関係を同時に調整する
子どもの頃は問題にならなかった特性が、環境の変化により困難としてあらわれる場合があります。
社会的な役割が増える中で負担を感じ、自身の特性を意識する人もいます。
理由③環境の変化で特性が困りごととして表れやすくなるため
3つ目の理由は、環境の変化で特性が困りごととしてあらわれやすくなるためです。
発達障害の特性は、生まれつきの脳の働き方の違いに由来します。環境との相互作用によって、その特性が強みとして活きる場合もあれば、負担としてあらわれる場合もあります。
具体的な変化は、以下のとおりです。(参考:政府広報オンライン「発達障害って、なんだろう?」)
- 職場や部署の異動
- 生活リズムの変化
- 人間関係の入れ替わり
- 業務内容の拡大や責任の増加
こうした変化により、それまで目立たなかった特性が表面化し、人間関係や仕事でつまずきやすくなる場合があります。
環境の影響を受けやすい点を理解すると、環境調整や支援を検討しやすくなるでしょう。
大人の広汎性発達障害(現:ASD)が仕事で抱えやすい9つの困難
この章では、大人の広汎性発達障害(現:ASD)が仕事で抱えやすい9つの困難について解説します。
困難①抽象的な指示が理解しにくい
1つ目の困難は、抽象的な指示が理解しにくいことです。
厚生労働省が支援した研究では、大人の広汎性発達障害(現:ASD)は特に聞いて理解する力(受容言語)が比較的低い傾向が示されています。(参考:厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)分担研究報告書「自閉スペクトラム症の成人における障害支援区分判定の妥当性に関する検証」)
仕事で起こりやすい場面は、以下のとおりです。
- いい感じにまとめておいてと言われる
- なるべく早めにとだけ伝えられる
- 口頭のみで詳細が示されない
また、複数の指示を一度に出される場面でも、整理に時間がかかる場合があるでしょう。
指示を具体的に伝える、手順や期限を明確に示すなどの工夫により、理解しやすさは高まります。
困難②臨機応変な対応が難しい
2つ目の困難は、臨機応変な対応が難しいことです。
厚生労働省が支援した研究では、大人の広汎性発達障害(現:ASD)は日常生活スキル全般の得点が低い傾向が示されています。
特に、計画変更や予期しない変化に対応する場面で困りごとが生じやすい状態とされています。(参考:厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)分担研究報告書「自閉スペクトラム症の成人における障害支援区分判定の妥当性に関する検証」、大阪府「発達障がいのある成人の理解と支援」)
仕事では、急な予定変更や想定外の依頼が入る場面が少なくありません。そのような状況では、気持ちの切り替えに時間がかかったり、対応方法がわからず混乱したりする場合があります。
業務の見とおしを事前に共有する、変更点を具体的に伝えるなどの配慮により、負担の軽減が期待できます。
困難③人間関係のすれ違いが起きやすい
3つ目の困難は、人間関係のすれ違いが起きやすいことです。
厚生労働省が支援した研究では、大人の広汎性発達障害(現:ASD)はコミュニケーション全体の水準が平均より低い傾向が示されています。(参考:厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)分担研究報告書「自閉スペクトラム症の成人における障害支援区分判定の妥当性に関する検証」)
その影響により、相手の意図を正確に受け取れない場面が生じます。
言葉をそのまま受け止めやすい、冗談が通じにくいといった特徴が、やり取りのずれとしてあらわれるのです。ずれが重なると、冷たい、協調性がないと誤解される場合もあるでしょう。
特性を理解し、伝え方や確認方法を工夫する支援が重要です。(参考:大阪府「発達障がいのある成人の理解と支援」)
困難④感覚過敏により疲労が蓄積しやすい
4つ目の困難は、感覚過敏による疲労が蓄積しやすいことです。
大人の広汎性発達障害(現:ASD)では、視覚や聴覚などの感覚刺激に敏感な場合があるためです。
仕事で起こりやすい場面は、以下のとおりです。
- 強い照明の下で長時間作業する
- 話し声や電話音が絶えない環境にいる
- キーボード音や機械音が気になる
- 空調やにおいが刺激になる
刺激が重なる環境では、気づかないうちに負担が蓄積します。
席の配置を調整する、ノイズ対策を行う、こまめに休憩を取るなどの工夫が負担軽減につながります。(参考:大阪府「発達障がいのある成人の理解と支援」)
困難⑤タスクの優先順位づけや進捗管理が難しい
5つ目の困難は、タスクの優先順位づけや進捗管理が難しいことです。
厚生労働省が支援した研究では、大人の広汎性発達障害(現:ASD)は、計画化や優先順位づけ、時間管理に関わる力が相対的に低い傾向が報告されています。(参考:厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)分担研究報告書「自閉スペクトラム症の成人における障害支援区分判定の妥当性に関する検証」)
仕事で起こりやすい場面は、以下のとおりです。
- やるべきことが複数あると着手順が決めにくい
- 期限や優先度が曖昧だと判断に時間がかかる
- 進捗を把握できず不安が強くなる
- 時間配分の見通しが立てにくい
これらは意欲の問題ではありません。
業務を小さく分けて順序を明示する、進捗を見える形にするなどの工夫を行うと負担軽減につながるでしょう。
困難⑥一度に複数のことを処理しにくい
6つ目の困難は、一度に複数のことを処理しにくい点です。
大人の広汎性発達障害(現:ASD)は、同時に複数の作業を進めることに難しさを感じる場合があります。
仕事で起こりやすい場面は、以下のとおりです。
- 複数のタスクを同時に依頼される
- 会議中に話題が次々と切り替わる
- 口頭でまとめて指示を受ける
- メールやチャットが重なり対応が追いつかない
複雑な内容を一度に伝えられると混乱しやすくなります。
小さなステップに分けて示す、優先順位を明確にするなどの工夫をすると取り組みやすくなるでしょう。(参考:大阪府「発達障がいのある成人の理解と支援」)
困難⑦金銭管理が極端になる
7つ目の困難は、金銭管理が極端になることです。
厚生労働省が支援した研究では、大人の広汎性発達障害(現:ASD)において、地域生活スキル(外出・買い物・金銭処理など)が低いと評価される割合が高いと報告されています。(参考:厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)分担研究報告書「自閉スペクトラム症の成人における障害支援区分判定の妥当性に関する検証」)
困難が起こりやすい場面は、以下のとおりです。
- 必要な支払いを後回しにする
- 関心のある分野に支出が集中する
- 収支の全体像を把握しにくい
- 期限管理が難しく感じる
支出を可視化する、引き落としを活用するなどの仕組みを整えると安定しやすくなります。
困難⑧ミスで自己否定に傾きやすい
8つ目の困難は、ミスで自己否定に傾きやすいことです。
厚生労働省が支援した研究では、大人の広汎性発達障害(現:ASD)において、不安や抑うつ傾向、自己評価の低さに関連する心理状態(内在化問題)が高い水準にあることが報告されています。(参考:厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)分担研究報告書「自閉スペクトラム症の成人における障害支援区分判定の妥当性に関する検証」)
仕事で起こりやすい場面は、以下のとおりです。
- 小さなミスを長く引きずる
- 注意を受けると自分全体を否定されたように感じる
- 一度の失敗で自信を失いやすい
ミスと人格を切り分けて振り返る仕組みを持つことや、事実と評価を分けて整理すると、負担は和らぎます。
困難⑨不安・うつなどの二次的不調が生じやすい
9つ目の困難は、不安・うつなどの二次的不調が生じやすいことです。
厚生労働省が支援した研究では、大人の広汎性発達障害(現:ASD)のある人の約4分の3に、メンタルヘルス上の課題が疑われました。また、不安や抑うつなどの内在化症状が強まると、日常生活スキルが低下しやすい傾向も確認されています。
仕事でみられる影響は、以下のとおりです。(参考:厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)総括研究報告書「成人期以降の発達障害者の相談支援・居住空間・余暇に関する現状把握と生活適応に関する支援についての研究」、厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)分担研究報告書「自閉スペクトラム症の成人における障害支援区分判定の妥当性に関する検証」)
- 小さな失敗をきっかけに強い不安が続く
- 出勤や対人場面への緊張が高まる
- 意欲が低下し、業務への着手が難しくなる
- 疲労感が抜けにくくなる
早い段階で相談や支援につなげることが、安定した就労の維持が期待できます。
広汎性発達障害(現:ASD)に関する相談先
この章では、広汎性発達障害(現:ASD)に関する相談先について解説します。
相談先①精神科・心療内科(診断・治療・医療相談)
1つ目の相談先は、精神科・心療内科です。
精神科や心療内科は、大人の広汎性発達障害(現:ASD)の検査や診断、治療を行う医療機関です。
発達特性が気になる場合や、仕事や日常生活での困りごとが強い場合には、医学的な評価を受けられます。
診断の有無を明確にしたい場合は、発達障害の検査を実施しているかどうかを事前に確認しましょう。医療機関によっては対応していない場合もあるため、予約前に問い合わせると安心です。
また、自治体によっては発達障害の診断を行っている医療機関の一覧や相談窓口を公開しているところもあります。受診先に迷った場合は、自治体のホームページを確認する方法もあります。(参考:政府広報オンライン「大人の発達障害に気づいたら」)
相談先②発達障害者支援センター(特性理解・支援調整)
2つ目の相談は、発達障害者支援センターです。
発達障害者支援センターとは、発達障害の早期発見と早期支援を目的として、発達障害のある人とその家族などをサポートするための支援機関です。(参考:国立障害者リハビリセンター 発達障害情報・支援センター「発達障害支援センターとは」)
保健や医療、福祉、教育、労働など、さまざまな分野の関係機関と連携しながら、地域の支援ネットワークを構築し、多様な相談に応じた指導や助言を行っています。また、求人に関する情報提供や就業先へのアドバイスなども行っています。
発達障害支援センターは、幼少期に発達障害の診断を受けた人だけでなく、大人になってから発達障害の診断を受けた人も支援の対象です。
また、医師から発達障害の診断を受けていない人でも支援を受けることが可能で、発達障害があるかもしれないと悩む人からの電話相談も受け付けています。
運営は都道府県や政令市が主体です。約75%は社会福祉法人・特定非営利活動法人などの民間法人が委託を受けています。(参考:発達障害者支援センター全国連絡協議会「発達障害者支援センターについて」)
各施設には、発達障害者支援センター運営事業実施要綱に基づき、最低3人の専任職員が配置されています。
要綱には社会福祉士の配置が規定されていますが、センターによっては臨床心理士や言語聴覚士、精神保健福祉士、医師などの専門家も配置されています。
発達障害者支援センターは全国に設置されています。2026年2月時点では支所を含めた約100ヶ所があり、各自治体が窓口を担っています。
相談先③基幹相談支援センター(地域の総合相談)
3つ目の相談先は、基幹相談支援センターです。
基幹相談支援センターは、地域における障害福祉の総合相談窓口として中核的な役割を担う機関です。
障害の種別を問わず、生活や就労、制度利用など幅広い相談に対応しています。
具体的には、障害者相談支援事業や成年後見制度の利用支援を行うほか、専門的な相談支援や地域の支援体制の強化にも取り組んでいます。
広汎性発達障害(現:ASD)に関する困りごとがあり、どこに相談すればよいかわからない場合、まずは地域の基幹相談支援センターに相談しましょう。必要に応じて、適切な支援機関や制度につないでもらえます。(参考:厚生労働省「基幹相談支援センター」)
相談先④精神保健福祉センター(こころの相談・生活支援)
4つ目の相談先は、精神保健福祉センターです。
精神保健福祉センターとは、精神障害のある人のサポートを目的とした、地域の精神保健福祉の中核を担う支援機関です。(参考:東京都福祉保健局「精神保健福祉センターとは」、e-Gov法令検索「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」)
精神保健福祉法(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律)に基づき、各都道府県に設置されています。地域によって、こころの健康センターや心と体の相談センターなど、一部名称が異なります。
精神保健福祉センターでは、精神疾患に関連する悩みの相談や社会に適応するための指導と援助を行っています。
精神障害による症状で悩んでいる本人だけでなく、家族や周囲の人の相談も受け付けています。また、匿名での相談も受け付けています。医師から正式な診断を受けていなくても相談は可能です。
相談先⑤自治体の障害福祉担当の窓口(制度・サービスの入口)
5つ目の相談先は、自治体の障害福祉担当の窓口です。
自治体の障害福祉担当の窓口は、障害福祉サービスを利用したいと考える人が最初に相談する行政窓口です。
広汎性発達障害(現:ASD)に関する相談や福祉サービスの申請、制度の説明などを受けられます。
具体的には、障害福祉サービスの利用手続きや受給者証の申請、相談支援事業所の紹介などを行っています。また、全国の障害福祉サービス事業所は「障害福祉サービス等情報検索サイト」で調べることが可能です。(参考:障害福祉サービス等情報検索)
相談先⑥障害者就業・生活支援センター(就労+生活支援)
6つ目の相談先は、障害者就業・生活支援センターです。
障害者就業・生活支援センターとは、雇用や保健、福祉、教育に関する関係機関と連携し、障害のある人の雇用の促進・安定を目的とした一体的な支援を行っている支援機関です。(参考:厚生労働省「障害者就業・生活支援センター」、厚生労働省「障害者就業・生活支援センターについて」、厚生労働省「障害者の雇用の促進等に関する法律」、厚生労働省「障害者就業・生活支援センターの指定と運営等について」)
障害のある人の就職活動の支援や求人の紹介、職場定着のためのサポートなどを行います。就業面だけでなく、金銭管理などの経済面や生活面のことまで、日常および地域生活に関する支援も行っています。
生活習慣や金銭管理、健康管理などについても幅広く相談できるため、生活面のサポートも受けたい人にオススメです。
2025年6月2日時点で、障害者就業・生活支援センターは全国に339ヶ所設置されています。
広汎性発達障害(現:ASD)に関するよくある質問
この章では、広汎性発達障害(現:ASD)に関するよくある質問を紹介します。
Q1大人になってからでも相談や診断は受けられますか?
大人になってからでも相談や評価、必要に応じた診断を受けることは可能です。
発達障害は年齢にかかわらず評価・診断が行われており、初めて相談する大人も医療機関や専門機関で支援を受けられます。
診断は医師が発達歴や行動の特徴を評価したうえで行われます。まずは、相談窓口や専門外来で状況を話すことから始めるのもいいでしょう。
困りごとは抱えたままにせず、医療機関や相談窓口に相談することが大切です。(参考:厚生労働省「こころの耳:発達障害のある方の仕事とこころ」)
Q2診断がなくても支援や相談は利用できますか?
診断がなくても、広汎性発達障害(現:ASD)に関する相談や支援は利用できます。
多くの相談機関において、診断の有無を利用条件とはしていません。特性が気になる段階でも相談できます。
例えば、自治体の障害福祉担当の窓口では、制度やサービスを利用できるかどうかの相談について受け付けています。より専門的な支援が必要な場合は、発達障害者支援センターにつないでもらえるでしょう。
発達障害者支援センターは診断の有無にかかわらず、本人だけでなく家族や周囲の人からの相談にも対応しています。
迷ったときは、まずは地域の窓口に相談することが大切です。(参考:発達障害情報・支援センター「福祉サービスに関するFAQ」)
まとめ:広汎性発達障害(現:ASD)を知り、自分らしい一歩を選ぼう
広汎性発達障害(現:ASD)のある人が仕事や生活で困難を感じる背景には、特性そのものだけでなく、環境との相性や周囲の理解不足が影響している場合があります。
しかし、自分の特性を知り、困りごとの理由を整理することで、選べる対処法は広がります。
医療機関や支援機関に相談する、職場に配慮を求める、環境を調整するなど、できる選択肢は1つではありません。
また、診断の有無にかかわらず利用できる相談先もあります。1人で抱え込まず、支援を組み合わせながら生活を整えていく方法もあります。
特性を知ることは、自分を否定するためではありません。
無理を重ねるのではなく、自分に合った働き方や暮らし方を選ぶための土台になります。
このコラムが、広汎性発達障害(現:ASD)への理解を深め、あなたが自分らしい一歩を選ぶきっかけになれば幸いです。
大人の広汎性発達障害(現:ASD)にみられやすい特性についてどのようなものがありますか?
大人の広汎性発達障害(現:ASD)が仕事で抱えやすい困難について教えてください。
以下が考えられます。
- 抽象的な指示が理解しにくい
- 臨機応変な対応が難しい
- 人間関係のすれ違いが起きやすい
- 感覚過敏により疲労が蓄積しやすい
- タスクの優先順位づけや進捗管理が難しい
- 一度に複数のことを処理しにくい
- 金銭管理が極端になる
- ミスで自己否定に傾きやすい
- 不安・うつなどの二次的不調が生じやすい
詳細については、こちらで解説しています。
監修志村哲祥
しむら・あきよし。
医師・医学博士・精神保健指定医・認定産業医。東京医科大学精神医学分野睡眠健康研究ユニットリーダー 兼任准教授、株式会社こどもみらいR&D統括。
臨床医として精神科疾患や睡眠障害の治療を行い、また、多くの企業の産業医を務める。大学では睡眠・精神・公衆衛生の研究を行っており、概日リズムと生産性、生活習慣と睡眠、職域や学校での睡眠指導による生産性の改善等の研究の第一人者。
【著書など(一部)】
『子どもの睡眠ガイドブック(朝倉書店)』『プライマリ・ケア医のための睡眠障害-スクリーニングと治療・連携(南山堂)』
他、学術論文多数
日経新聞の執筆・インタビュー記事一覧
時事メディカルインタビュー「在宅で心身ストレス軽減~働き方を見直す契機に」
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2025年6月現在17校+オンライン校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2025年9月現在9校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
監修角南百合子
すなみ・ゆりこ。
臨床心理士/公認心理師/株式会社こどもみらい。
サイト運営キズキビジネスカレッジ(KBC)
うつ・発達障害などの方のための、就労移行支援事業所。就労継続をゴールに、あなたに本当に合っているスキルと仕事を一緒に探し、ビジネスキャリアを築く就労移行支援サービスを提供します。2025年9月現在、首都圏・関西に9校舎を展開しています。トップページはこちら→












