ADHDのある人が掃除できないのはなぜ? 片づけられるようになる方法を解説

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
あなたは、ADHD(注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害)の特性によって掃除ができないことについて、以下のように悩んでいませんか?
- 部屋を片づけたいのに、どこから手をつければいいのかわからない
- 掃除しようと決めたのに、気がついたら別のことをしていた
- 片づけなきゃ…と思っているのに、体がまったく動かない
また、片付けが苦手な自分を責めていたりしませんか?しかし、掃除ができない状態は、決してあなたのせいではありません。
また、近年はADHDのある人は、掃除や片づけが苦手とされる理由や、どうすれば改善できるかといった情報がネット上や書籍などで紹介されるようになってきています。
このコラムでは、ADHDのある人が掃除ができないことによる弊害や掃除できない理由や片づけられるようになるためのコツについて解説します
ぜひ、最後まで読んでみてくださいね。
ADHD(注意欠如・多動症)の特性によって掃除ができないあなたへ
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目次
ADHDのある人が掃除ができないことによる4つの弊害
ADHDのある人にとって、掃除や片付けは想像以上に大きなハードルです。
ADHDのある人が掃除ができない状態は、ただのだらしなさではなく、脳の特性によるものだからこそ、本人も周囲もその困難を正しく理解することが大切です。
また、掃除ができないことで、生活や心にさまざまな影響が生じることもまた事実です。
この章では、ADHDのある人が掃除できないことで起こりうる代表的な4つの弊害について解説します。
弊害①必要なものが見つからずにイライラする

探し物が見つからずにイライラするという状態は、ADHDのある人が日常的に直面する大きなストレスの一つです。
書類や鍵、財布、スマホなど、生活に欠かせないものほど見失いやすく、見つからないことで焦りや不安から、イライラする気持ちが大きくなっていきます。
また、イライラしながら物を探していると、気づかないうちにさらに散らかっていたと言うことにもなり、片付いていない状態がさらに悪化します。
その結果、時間のロスが増え、日常生活の流れが乱れてしまいがちです。
弊害②片付けられないことで、無駄な出費がかさむ
必要なものが見つからないと、「もう一つ買えばいいか」という気持ちが芽生えがちです。
すると本来は不要だった買い物が積み重なり、家計にも影響します。
特にADHDのある人は、衝動的な行動を取りやすい傾向があるため、片付けの問題と無駄な出費は強く関連しています。
弊害③ほこりや汚れで健康面が不安になる

掃除が滞ることで、部屋にほこりやカビ、ハウスダストが溜まりやすくなります。
喘息やアレルギー体質の人にとっては健康への直接的なリスクとなり、体調を崩す原因にもなりかねません。
目に見えない部分での衛生悪化は、放置されやすい問題でもあるため、より注意が必要です。
弊害④散らかった部屋にいると気持ちが落ち着かない
視界に入る情報量が多いと、それだけで脳は疲れます。
部屋が散らかっていると、ただそこにいるだけで気が散りやすくなり、リラックスできません。
ADHDのある人はもともと刺激に敏感で、集中力が持続しにくいため、散らかった空間にいること自体が精神的な負担になります。
結果的に、家が休まる場所ではなくなる可能性があります。
ADHDのある人が掃除をできない5つの理由
ADHDのある人が掃除や片付けを「やりたいのにできない」と感じるのは、意志の弱さではなく脳の特性に根ざした理由があります。
苦手には必ず背景があり、それを理解することで適切な対処法も見えてきます。
この章では、ADHDのある人が掃除に取り組むことが難しい5つの代表的な理由について解説します。
理由①優先順位をつけるのが苦手

ADHDのある人は、今なにをすべきかを整理するのが苦手です。
目の前にやるべきことが複数あると、どれから手を付けていいかわからず、結果として何も進まない状態に陥りがち。
掃除という漠然としたタスクは、優先順位をつけにくいため、後回しになりやすいのです。
理由②面倒なことをつい先延ばしにする
ADHDのある人は、実行機能と呼ばれる行動の司令塔の働きが弱い傾向があります。
そのため、「やらなきゃ」と思っても、実際に行動に移すまでに強いハードルを感じます。
特に掃除のように明確な期限がない作業は、気が重くなってつい先延ばしにしがちです。
また、掃除をやらなかった自分を責めることで、さらに行動が億劫になるという悪循環にも陥りやすくなります。
理由③次々に考えが浮かんで集中できない

掃除中に「この本を棚に戻そう」と思ったはずが、「そういえばこの本、誰かに貸していたっけ?」といったように、思考が別の方向に飛びやすいのもADHDのある人の特徴です。
あちこちに注意が向きやすく、作業が中断されるため、結果的に片付けが進みにくくなります。
ひとつの作業に集中し続けることが難しいという点が、大きな障壁となります。
理由④一度のめり込むと止まらない
ADHDのある人は、一部の作業に強く没頭しすぎる過集中になることがあります。
片付け中にアルバムを見つけて読み始めたり、掃除用具の整理にこだわったりするなど、本来の目的から逸れることで、最終的に掃除全体が終わらないということがよくあります。
集中できること自体は長所ですが、時間を忘れることで生活に支障が出ることもあります。
理由⑤空間の把握が苦手で、物の配置がうまくいかない

ADHDのある人は、空間的な把握や整然と物を配置する力が弱い場合があります。
収納の中でどう物を並べるか、どこに何を置けば使いやすいかといった判断が難しく、せっかく片付けてもすぐに元通り散らかることもあります。
この繰り返しが、「どうせ片付けてもムダ」という気持ちにつながりやすく、掃除に対する意欲の低下につながるのです。
ADHDのある人でもできる片付けのコツ12選
ADHDのある人が掃除や片付けに苦手意識を持つのは自然なことですが、それでも自分に合ったやり方を見つければ、少しずつ前に進むことができます。
完璧を目指すのではなく、できる範囲で継続することが最大のポイントです。
この章では、ADHDの特性を理解したうえで実践しやすい片付けのコツについて解説します。
コツ①一度にやろうとせず、場所を1カ所に絞る

「今日は部屋全部を片付けよう」と思うと、あまりの量に気が遠くなり、結局手がつかないことがよくあります。
まずは「引き出しひとつ」「机の上だけ」といった具合に範囲を限定することで、掃除を始めやすく、さらに達成感も得られやすくなります。
小さく始めて、コツコツ続けることが掃除を習慣化する第一歩です。
コツ②作業の手順を細かく可視化する
ADHDのある人は、頭の中だけで段取りを組むのが苦手な傾向があります。
そのため、以下のように、あらかじめ具体的な手順を紙やスマホにメモしておくと、迷わず行動に移せるようになります。
- 1.ゴミ袋を用意する
- 2.いらないものを捨てる
- 3.掃除機をかける
コツ③タイマーを使って短時間で集中する

ADHDのある人に限らず、長時間の掃除は集中力が続かず疲れます。
そこでオススメなのが、タイマーを使って区切りながら掃除をする方法です。5分、10分など短い時間を設定して、その間だけ集中してみましょう。
終わったら一度休憩を入れることで、負担を減らしながら継続しやすくなります。
コツ④シンプルな収納ルールを決める
収納ルールが複雑だと、それだけで片付けのハードルが上がります。
そのため、以下のようなルールを設定しましょう。
- 文房具はこの箱に入れる
- 充電器はこの引き出しに片付ける
誰が見てもわかるシンプルなルールを設定することで、迷わず片付けやすくなります。
できるだけ、一アクションで収納できる仕組みにすると、日常生活の中でも整った状態を維持もしやすくなります。
コツ⑤物を置かないルールを先につくる

「ここには何も置かない」と最初から決めることで、片付けの判断が楽になります。
たとえば、ダイニングテーブルや玄関の棚など、特定の場所を常にスッキリさせておくことで、とりあえず置くクセを予防できます。
視覚的にもスッキリした空間が広がり、気分も整いやすくなります。
コツ⑥物を減らす・買い足す前に見直す
ADHDのある人は「これ便利そう!」などと衝動的に物を買う傾向があります。
衝動的な買い物をなくすためには、新しく何かを買う前にすでに同じようなものがないか本当に必要かを一度立ち止まって考えるクセをつけましょう。
また、定期的に持ち物を見直す時間を設けて、自然と物が増えすぎない環境を整えることも大切です。
コツ⑦耳栓やイヤホンを活用して音の情報を減らす

掃除中に、外の音や生活音が気になって集中できない場合は、耳栓やノイズキャンセリング機能のあるイヤホンを活用するのも有効です。
耳から余計な情報が入らないようにすることで、注意散漫になりにくくなります。
コツ⑧コードレス掃除機で行動のハードルを下げる
掃除をする際は、掃除機を使用することが多いと思いますが、掃除機を使うためにコンセントを差したり、コードを巻いたりするといった手間が、掃除を遠ざける原因になることもあります。
コードレス掃除機やハンディタイプの掃除機を使うと、思い立ったときにサッと動けるため、掃除のハードルがぐっと下がります。
また、掃除道具を取り出しやすい場所に置いておくのもポイントです。
コツ⑨曜日ごとに掃除エリアを分けて管理する

こちらで紹介した方法と似ていますが、家中を一気に片付けるのではなく、曜日ごとにエリアを分けることで、無理なく計画的に掃除が進められます。
たとえば月曜日はリビング、火曜日はキッチンというようにルールを決めておくと、毎日少しずつ整えられるうえ、掃除の計画が可視化されて達成感も得られます。
また、曜日ごとにやることを決めておけば、掃除を習慣化しやすくなるでしょう。
コツ⑩一つずつ丁寧に取り組む習慣をつける
「あれもこれも」と焦って掃除をしようとすると、結局どれも中途半端な状態になることがあります。まずは一つのことに集中し、丁寧に向き合うことが大切です。
また、事前にやることをリストにしておき、完了した作業にはチェックマークをつけるようにすると、自分なりの達成の証を残せるので、継続のモチベーションにもつながります
コツ⑪どうしても難しい時は一気に片付ける

日によっては、どうしても気力が出ないこともあります。そんなときは、自分を責めるのではなく、気力が湧いたときに一気に片付ける作戦でも構いません。
気分が乗っているタイミングで過集中の力を活かせば、大きな片付けも一気に進むことがあります。波のある自分に合った方法で取り組みましょう。
コツ⑫テレビを見ながら・音楽を聴きながらする
掃除だけに集中するのが難しい場合は、好きなテレビや音楽を流しながら作業するのもオススメです。
気分転換にもなり、作業が苦痛に感じにくくなります。気分が乗る工夫をすることが、掃除を続ける大きなカギになります。
掃除を続けるための4つのポイント
ADHDのある人にとって、片付けは始めることだけでなく、続けることも大きなハードルになります。
一度きれいにしても、気づいたらまた散らかっていたという経験は少なくないでしょう。
だからこそ、自分に合った仕組みをつくり、小さな工夫を積み重ねていくことが大切です。
この章では、掃除や片付けを日常に無理なく取り入れるための4つのポイントについて解説します。
ポイント①小さな成功を積み重ねて自信に変える

ADHDのある人は、過去の失敗体験から「どうせ続かない」「自分には無理」と思い込みがちです。
ですが、大切なのは完璧を目指すことではなく、「昨日よりちょっとできた」を積み重ねることです。
- 引き出しひとつ片付けられた
- 5分間掃除ができた
- 今日は掃除機をかけられた
このような小さな成功をしっかり認識し、自信につなげていくことで、「自分は掃除ができる」という実感が育ちます。そして、、明日の掃除へのモチベーションにもなります。
ポイント②毎日のゆるいルーティンをつくってみる
掃除が習慣になると、取り組むまでのエネルギーが少なくて済むようになります。
ただし、あまりに厳密なルールを設けると逆に続かないこともあるため、以下のようなゆるいルールから始めてみましょう。
- 毎朝の歯磨きのあとに机の上を拭く
- 寝る前に5分だけ床を片付ける
生活の一部に無理なく組み込むことで、掃除のハードルが下がり、自然と続けやすくなります。
ポイント③家族や友人の手を借りる

ひとりで掃除を完璧にやろうとすると、途中で挫折することもあります。
そこで大切なのが、家族や信頼できる人に協力を求めることです。
「ここだけ一緒にやってほしい」とお願いしたり、片付けの進み具合を報告して励ましてもらったりすることで、孤独感が減り、やる気を保ちやすくなります。
助けを求めるのは甘えではないと認識することが、継続のためにはとても重要です。
ポイント④必要なら、専門の支援やサービスも検討する
どうしても自力で片付けられない、モチベーションが湧かないという場合は、無理に一人で頑張ろうとせず、専門の手を借りることも選択肢の一つです。
発達障害に理解のある家事代行サービスや、片付けのアドバイスをくれる専門家もいます。
また、自治体によっては福祉サービスの対象になることもあるため、困ったときは相談窓口に問い合わせてみるのもよいでしょう。
自分に合ったサポートを見つけることで、生活の質は大きく変わります。
まとめ:少しずつで大丈夫。ADHDのあなたへ贈る片付けのコツ

ADHDのある人にとって、掃除や片付けが苦手なのは脳の特性によるもの。
「やりたいのにできない」のは、あなたの意志が弱いせいではありません。
小さな範囲から始めたり、タイマーを使ったり、自分に合った方法で取り組むことが大切です。
無理せず、少しずつ整った暮らしを目指していきましょう。
ADHDのある人が掃除ができないことで起こりうる弊害は何ですか?
以下が考えられます
- 弊害①必要なものが見つからずにイライラする
- 弊害②片付けられないことで、無駄な出費がかさむ
- 弊害③ほこりや汚れで健康面が不安になる
- 弊害④散らかった部屋にいると気持ちが落ち着かない
詳細については、こちらで解説しています。
ADHDのある人が掃除を無理なく取り入れるにはどうしたらいいですか?
以下が考えられます。
- 小さな成功を積み重ねて自信に変える
- 毎日のゆるいルーティンをつくってみる
- 家族や友人の手を借りる
- 必要なら、専門の支援やサービスも検討する
詳細については、こちらで解説しています。
監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2025年6月現在17校+オンライン校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2025年9月現在9校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
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