チック症のある人に向いてる仕事 仕事を続けるためのポイントを解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
チック症にはさまざまな症状がありますが、なかには仕事に支障をきたすものもあります。
このコラムでは、チック症の概要やチック症のある人に向いてる仕事や向いてない仕事、困りごと、仕事を続けるためのポイントについて解説します。あわせて、支援制度とよくある質問を紹介します。
このコラムを読むことで、あなたがチック症と付き合いやすくなり、仕事を良い方向へ向かわせる手助けになるでしょう。
周囲にチック症のある人がいる人もチック症について理解を深められるはずです。ぜひ最後までご覧ください。
私たちキズキビジネスカレッジ(KBC)は、チック症のある人のための就労移行支援事業所です。
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目次
チック症のある人に向いてる仕事
チック症の症状による言動は、本人の意思でどうにかできるものではありません。しかし、周りから理解を得られず、迷惑に思われることがあるかもしれません。チック症のある人にとっては、この周りに理解してもらえないことが何よりもつらいのです。
そのため、周囲の人がチック症を理解してくれていれば、職種が何であろうと、それがあなたにとって向いてる仕事だと言えます。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター「チック症・トゥレット症」、MSD製薬「小児と青年におけるトゥレット症候群とその他のチック症」)
とはいえ、周りに理解してくれる人ばかりがいる環境や状況は多くはありません。
つまり、一般的に言うならば、周りの人との連携が少なく、周りの人や環境に左右されない自分のペースで進められる仕事がチック症がある人に向いていると言えるでしょう。
チック症のある人に向いてる仕事の主な例は、以下のとおりです。
- ライター・デザイナー
- プログラマー・エンジニア
- 漫画家・作家
- 経理・会計
- 研究職
チック症のある人に向いてない仕事
チック症のある人に向いてない仕事は、不特定多数の人と関わったり症状が仕事内容に影響したりする仕事です。
チック症はストレスが強くかかることで現れやすいため、常に気を張る必要がある仕事は避けたほうがよいでしょう。
また、手先の細かい動きが必要な仕事もチック症の症状が現れると、仕事に支障が出る可能性があります。そのため、症状が現れた場合でも、仕事ができるかを検討することが大切なのです。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター「チック症・トゥレット症」、MSD製薬「小児と青年におけるトゥレット症候群とその他のチック症」)
これらを踏まえると、チック症のある人に向いてない仕事の主な例は以下のとおりです。
- 接客業
- 営業(特に飛び込み系)
- コールセンター(特に音声性チックの場合)
- 自動車整備士(特に運動性チックの場合)
ただし、チック症のある人全員が、これらの仕事が向いていない、またはできないというわけではありません。
症状の現れ方には個人差がありますし、環境によっては無理なく働き続けられることもあるでしょう。
ご自身の症状や周囲の理解の度合い、そしてやりたい仕事かなどを踏まえて、検討してみてください。
大人のチック症による仕事や日常生活での困りごと
この章では、大人のチック症による仕事や日常生活での困りごとについて解説します。
主な困りごとには、以下のようなものが挙げられます。
- 会議など静かにすべき場面で声が出ることがある
- 商談など大事な場面で汚い言葉が出ることがある
- 顔をしかめる動作で上司や同僚などの職場の人に不快感を与えることがある
- 手の動きのチックで物を落とすことがある
- 頭を振るチックによって頭痛や肩こりになることがある
- 人混みでチックが出て目立つことがある
同じような症状があり不安な人もいるかもしれませんが、あなただけではありません。また、こちらで解説しているように、治療法もありますので安心してください。
このような困りごとに向き合う方法については、こちらで解説しています。ぜひ参考にしてください。
チック症のある人が仕事を続けるための4つのポイント
この章では、チック症のある人が仕事を続けるためのポイントについて解説します。
自分でより働きやすい環境を作るため、ぜひ参考にしてください。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター「チック症・トゥレット症」、MSD製薬「小児と青年におけるトゥレット症候群とその他のチック症」)
ポイント①周りの人に症状を伝える
チック症は、周りに理解がないと誤解されやすい症状です。周りの反応がストレスになり、チック症の症状が悪化するケースもあります。
そのため、周りの人に症状を伝え、理解や配慮を求めることが仕事を続けるための重要なポイントとなります。周りがチック症を理解していれば、少しは気持ちも楽になるでしょう。
チック症のことを伝えるなら、まず人事を担当する部署の担当者や直属の上司がいいでしょう。チームや職場全体で理解する流れを作ってくれるはずです。
ポイント②リラックスして休む
リラックスして休むことも、チック症に向き合う上で重要です。周囲の反応などで気分が落ち込んだ場合は、休んで気持ちを整理しましょう。
また、チック症の症状では、身体を動かしたり音を発したりするので、身体的にも疲れます。そのため、休息を取ることは、心身ともに大事なのです。
ポイント③支援制度を利用する
チック症のある人は、さまざまな支援制度を利用できます。支援制度を利用することで、さらに働きやすくなることもあるでしょう。
チック症のある人が利用できる支援制度は、こちらで紹介しています。ぜひご覧ください。
ポイント④通院する
チック症があり仕事を続けるのが難しい場合は、通院して治療するのも一つの方法です。
こちらで紹介しますが、チック症の治療法としては、認知行動療法や薬物療法などさまざまな方法があります。
人それぞれで適している治療法は異なるため、まずは一度病院へ行き、症状について相談したり、悩みを打ち明けたりすることから始めてみてください。
チック症と仕事に関するよくある4つの質問
この章では、チック症と仕事に関するよくある質問と回答を紹介します。
同じ疑問を持っている人は、ここで一緒に解決しておきましょう。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター「チック症・トゥレット症」、MSD製薬「小児と青年におけるトゥレット症候群とその他のチック症」、ブレインクリニック「大人のチック症とは?チック症の症状や原因、診断基準について」)
Q1.大人になってチック症が再発することはある?
大人になってチック症が再発するケースはあります。
子どものころにチック症になり、成長とともになくなっていたけれど、大人になって再び発症することもあります。
チック症が再発したかもしれないと不安なときは、一度医療機関を受診してみるといいでしょう。
Q2.チック症があるままで仕事をするのは難しい?
チック症があるままでも、仕事をすることは可能です。
チック症と一言で言っても、症状は人それぞれ違っています。日常生活や仕事に支障がなければ大丈夫です。
もし、日常生活や仕事に支障があり、続けていくのが難しいと感じるなら、医療機関で治療していくのも一つの手です。
Q3.チック症は何科の病院へ行けばいい?
チック症の受診は、子どもなら小児科や小児神経科・児童精神科ですが、大人は精神科や神経内科がいいでしょう。
近くの病院に該当の科がない場合は、オンライン診療を利用することを検討してみてください。また、候補の病院に該当する科があるかどうかわからない場合は、その病院に問い合わせてから足を運ぶといいでしょう。
Q4.周りはチック症のある人に対してどう接すればいい?
周囲にチック症のある人がいる場合は、まずチック症への理解を深めてみてください。なぜそのような言動をしているのかを理解するだけでも大丈夫です。
また、チック症のある人の言動を気にしすぎないことも大事です。わざとやっているわけではないので、必要以上に過敏に反応されると、ストレスを与える可能性があります。
そして、助けを求められたら、負担になりすぎない範囲で本人が求めているサポートやフォローを行ってください。協力者が一人でもいると、心はグッと楽になるものです。
チック症とは?
チック症が仕事に与える影響を知るためには、まずチック症について理解を深める必要があります。
この章では、チック症の概要や症状、原因、診断基準、治療法について解説します。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』、NCNP病院 国立精神・神経医療研究センター「チック症・トゥレット症」、MSD製薬「小児と青年におけるトゥレット症候群とその他のチック症」)
チック症の概要
チック症とは、突発的な運動や発作を繰り返す機能障害のことです。チック症群、チック障害群とも言われます。
チック症には大きく分けて運動性チックと音声性チックがあります。この運動性チックと音声性チックの発現期間によって、チック症は以下の3種類に分けられます。
- 暫定的チック症:単発または多発の運動チックおよび/または音声チックがみられるが1年未満のもの
- 持続性チック症(慢性チック症):単発または多発の運動チックまたは音声チックのどちらか(両方ではない)が1年以上みられるもの
- トゥレット症候群(Tourette syndrome):運動チックと音声チックの両方が1年以上みられるもの
基本的には暫定的チック症から始まり、持続性チック症、トゥレット症候群と進行していきます。
チックにも種類があり、極めて短時間のチックである単純性チックとより長い時間続く複雑性チックがあります。
複雑性チックの中には、汚言と言われる卑猥な言葉や便に関連した言葉などを叫ぶことも含まれます。
併発しやすい病気・障害として、ADHD(注意欠如・多動性障害)や強迫性障害(OCD)および関連症状が挙げられています。
チック症の症状①運動性チック
運動性チックとは、顔やからだの動きに見られるチック症の症状のことです。具体的に、以下のような症状が挙げられます。
- まばたきが多い
- からだがビクッとする
- 首を縦に振る
- 手を開く
- 顔を叩く
- 急に跳び上がる
症状によっては、日常生活に大きな影響を与える場合もあります。
例えば、首を縦に振るという症状の影響で肩が凝ったり、手を開くという症状の影響で物を落としたりするなどのケースがあります。
チック症の症状②音声性チック
音声性チックとは、声や音に見られるチック症の症状のことです。具体的に、以下のような症状が挙げられます。
- 咳払いが多い
- 耳にした言葉を発する
- 鼻を鳴らす
- 汚い言葉を発する
- うなり声を上げる
- 甲高い声を出す
音声性チックも、症状によっては、日常生活に大きな影響を与える場合があります。
例えば、鼻を鳴らすという症状の影響で周りにうるさいと思われたり、汚い言葉を発するという症状の影響で周りに不快な思いをさせたりするなどのケースがあります。
チック症の原因
チック症を発症する原因は、現在の医学では明確に特定されていません。ただ、以下のような原因が関係していると言われています。
- 体質
- 遺伝
- 神経伝達物質
- ホルモンバランス
これらは一つだけではなく、複数の原因が重なってチック症につながる場合があるのです。
また、一過性のチック症の場合は、ストレスや環境が原因と考えられることが多く、ストレスの緩和で症状が軽減されるケースもあります。
チック症の診断基準
アメリカ精神医学会が定めた精神障害の診察基準『DSM-5』によると、チック症の診断基準は以下のとおりです。(参考:American Psychiatric Association・著、日本精神神経学会・監修『DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル』)
注:チックとは、突発的、急速、反復的、非律動性の運動または発声である。
トゥレット症・トゥレット障害
- A. 多彩な運動チック、および1つまたはそれ以上の音声チックの両方が、同時に存在するとは限らないが、疾患のある時期に存在したことがある。
- B. チックの頻度は増減することがあるが、最初にチックが始まってから1年以上は持続している。
- C. 発症は18歳以前である。
- D. この障害は物質(例:コカイン)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:ハンチントン病、ウイルス性脳炎)によるものではない。
持続性(慢性)運動または音声チック症/持続性(慢性)運動または音声チック障害
- A. 1種類または多彩な運動チック、または音声チックが病期に存在したことがあるが、運動チックと音声チックの両者がともにみられることはない。
- B. チックの頻度は増減することがあるが、最初にチックが始まってから1年以上は持続している。
- C. 発症は18歳以前である。
- D. この障害は物質(例:コカイン)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:ハンチントン病、ウイルス性脳炎)によるものではない。
- E. トゥレット症の基準を満たしたことがない。
暫定的チック症/暫定的チック障害
- A. 1種類または多彩な運動チックおよび/または音声チック。
- B. チックの持続は最初にチックが始まってから1年未満である。
- C.発症は18歳以前である。
- D.この障害は物質(例:コカイン)の生理学的作用または他の医学的疾患(例:ハンチントン病、ウイルス性脳炎)によるものではない。
- E. トゥレット症または持続性(慢性)運動または音声チック症の基準を満たしたことがない。
この診断基準では「発症は18歳以前である」とされているので、大人になってからチック症が発症した場合は、幼少期に診断されていなかったり大人になって再発したりしたことが考えられます。
チック症の治療法
チック症の治療法としては、主に以下の4つがあります。
- 心理教育および環境調整
- 認知行動療法
- 薬物療法
- 外科治療
心理教育および環境調整では、周りの人の理解を促し、ストレスを軽減させることを目指します。
認知行動療法は、本人の凝り固まったり狭くなったりしている考えや行動を変えることで、ストレス軽減を目指す治療法です。
薬物療法は、抗精神病薬などを使い、チック症の軽減を目指します。
外科治療では、深部脳刺激療法(DBS)という手術を行います。ただ、この治療は以上の3つでも改善しない難治性のチック症に対して行われることが多い治療法です。
まとめ:チック症と向き合い仕事を良い方向へ導きましょう
チック症は人それぞれで症状の差はありますが、症状と付き合いながら仕事を続けていくことは可能です。
周りの人に話したりリラックスして休んだりすることで、症状が軽くなるケースもあります。
もし仕事を続けていくのが困難だと感じる場合は、医療機関を受診してみてください。チック症の症状に関する悩みや困りごとを打ち明けることで、あなたに合った治療方法やアドバイスを提案してもらえるはずです。
チック症とはなんですか?
チック症とは、突発的な運動や発作を繰り返す機能障害のことです。
詳細については、こちらで解説しています。
チック症のある私に向いてる仕事を知りたいです。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
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