ジョブコーチとは? 支援内容や利用する流れを解説
こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)です。
障害のある人にとって、スムーズに働くことが困難な場合も多いと思います。そんな人に知っておいていただきたいのが、ジョブコーチの存在です。
このコラムでは、ジョブコーチの概要や種類、支援内容、利用する流れ、利用するメリット、利用する際の注意点などについて解説します。あわせて、ジョブコーチの支援事例を紹介します。
障害があって、仕事探しや仕事への定着に悩みを持つ人は、ぜひお読みください。
目次
ジョブコーチとは?
この章では、ジョブコーチの概要や目的、役割について紹介します。(参考:厚生労働省「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援とは?」、厚生労働省「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について」)
ジョブコーチの概要
ジョブコーチとは、障害のある人が職場にスムーズに適応し、働き続けられるようさまざまな支援を行う人のことです。障害のある人が職場への適応に関して課題がある場合、職場に出向いて、障害の特性を踏まえた専門的な支援を行います。職場適応援助者とも呼ばれます。
ジョブコーチは、障害のある人に対して、当事者の職務の遂行や職場の従業員との関わり方、職場内のコミュニケーション、効率の良い作業の進め方など、障害のある人が職場に適応するためのアドバイスをします。
また、障害のある人を雇用する事業主に対しても、障害のある人が実力を発揮しやすい作業の提案や、障害特性を踏まえた仕事の教え方などのアドバイスをすることで支援します。
具体的な目標を定めた上で策定される支援計画に基づいて援助を行い、最終的には上司や同僚などの職場の人の自然な配慮に移行することを目指していきます。
ジョブコーチの目的
ジョブコーチは、障害のある人が職場の適応に課題がある場合に職場に出向き、障害特性を踏まえた専門的な支援を行うことで、障害のある人の職場適応を図ることを目的としています。
ジョブコーチの役割
障害のある人が抱えている仕事上の具体的な課題を、短期間の支援の中で解決するのがジョブコーチの役割です。(参考:厚生労働省「職場適応援助者養成研修のあり方に関する研究会報告書」)
職場におけるコミュニケーションや人間関係の課題に対して、本人や職場からの聞き取り、分析やアドバイス、環境調整を行うことで支援します。
就職直後だけでなく、職場になじんだ後でも職場には言えない悩みを抱えていたり、新たな課題が発生したりすることもあるでしょう。そのような職場に対するあらゆる課題をいち早く見つけ、解決へと導くのが、ジョブコーチの役割です。
職場での課題の中には、長期にわたる支援が必要な場合なものもあります。その場合は、職場内のサポート体制を整えるとともに、障害者就業・生活支援センターなど、職場外のサポート機関との調整を行い、スムーズに支援を移行できるように調整します。
ジョブコーチの種類
ジョブコーチには、以下の3種類があります。(参考:厚生労働省「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について」)
- 配置型ジョブコーチ:地域障害者職業センターなどに所属するジョブコーチ
- 訪問型ジョブコーチ:障害者支援施設など、障害のある人の就労支援を行う社会福祉法人などに所属するジョブコーチ
- 企業在籍型ジョブコーチ:障害のある人を雇用する事業所に所属するジョブコーチ
ジョブコーチの支援期間
ジョブコーチの支援期間は、個人の状況や職場の状況によって異なりますが、一般的には数ヶ月から1年程度です。
支援内容、支援機関共に、個々のニーズに合わせて柔軟に対応されます。
補足:ジョブコーチになるには?
ジョブコーチになるためには、各都道府県が実施している養成研修を受講し、一定の基準を満たす必要があります。(参考:厚生労働省「(社会福祉法人等事業主の方へ)」、厚生労働省「(事業主の方へ)」)
研修の内容は、障害者に関する知識、コミュニケーションスキル、職業指導のスキルなど、幅広い分野にわたります。
ジョブコーチの支援内容
ジョブコーチによる障害がある人への支援内容は、以下のとおりです。
- 職務の遂行に関する支援
- 職場内のコミュニケーションに関する支援
- 体調や生活リズムの管理に関する支援
職場のルールや人間関係への慣れ方、仕事の進め方や効率的な作業方法、ストレス管理や体調管理、仕事に必要なスキルの習得、職場への就業前の準備、職場定着支援など、多岐にわたって支援を実施します。
加えて、障害のある人の家族へ向けて、安定した職業生活を送るための関わり方に関するアドバイスも行います。
また、事業主への支援内容は、以下のとおりです。
- 障害特性に配慮した雇用管理に関する支援
- 配置、職務内容の設定に関する支援
それに基づき、障害のある人の上司や同僚などの職場の人には、以下の支援を行います。
- 障害の理解に関する社内啓発
- 障害がある人との関わり方に関するアドバイス
- 指導方法に関するアドバイス
ジョブコーチを利用する流れ
この章では、ジョブコーチを利用する流れについて解説します。(参考:厚生労働省「(事業主の方へ)」)
流れ①相談・紹介
基本的にまず、お近くの地域障害者職業センターに相談するのが一般的です。
地域障害者職業センターとは、病気や障害のある人に対して、職業評価や職業指導、職業準備訓練、職場適応援助などの専門的な職業リハビリテーションを提供する支援機関のことです。(参考:独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センター」、独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構「地域障害者職業センターによる支援」、厚生労働省「地域障害者職業センターの概要」)
地域障害者職業センターでは、職員が障害のある人の希望や状況に合わせて適切なジョブコーチを紹介してくれます。
地域によっては、ハローワークや民間団体などがジョブコーチの紹介やサービス提供をしている場合もあります。
地域障害者職業センターの概要などについては、以下のコラムで解説しています。ぜひご覧ください。
流れ②面談
紹介されたジョブコーチと面談し、自身の希望や不安などを伝えます。
その後、現在のスキルや知識、仕事に対する意欲などを元に、自身に合った支援計画が作成されます。
流れ③支援の実施
実際にジョブコーチが職場に同行し、仕事内容の説明や職場の人々との紹介などを行います。
その後仕事のやり方を丁寧に指導したり、職場で困ったことの相談を聞いたり、必要に応じて職場環境の調整を行ったりなどのサポートが行われます。
流れ④支援の終了
支援計画に設定された目標を達成すれば、支援終了となります。
長期的な支援が必要と判断される場合は、今後のキャリアについて相談しながら、他の支援機関への引き継ぎが行われる場合もあります。
ジョブコーチを利用する3つのメリット
この章では、障害のある人がジョブコーチを利用するメリットについて解説します。(参考:厚生労働省「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業について」)
メリット①職場に慣れるための環境を作り、長く働きやすくなる
障害のある人にとって、職場への定着が難しい場合が多いですが、ジョブコーチを利用することで職場に慣れるための環境作りをサポートしてもらえるため、長く働きやすくなります。
ジョブコーチを利用すれば、自身の強みや能力に気づけて、自信を持つことができるはずです。ジョブコーチからの助言を得ながら成功体験を積むことで、自己肯定感も向上し仕事が楽しくなり、この職場でもっと働きたいと思えるようになるでしょう。
メリット②仕事をスムーズに行えるようになる
ジョブコーチは、自身の障害特性に合わせて、仕事内容をわかりやすくサポートしてくれます。
仕事で困ったことがある場合にいつでも気軽に相談できるので、課題を抱えたままになることがなくなり、仕事を円滑に進められるでしょう。
メリット③会社の人とのコミュニケーションが円滑になる
就職前にはジョブコーチが職場見学に同行し、職場の人々とのコミュニケーションの仕方を教えてくれます。
就職してからはジョブコーチが第三者の目線から従業員とのコミュニケーションのアドバイスをくれるため、円滑にコミュニケーションを進め、早期に職場に馴染むことができます。
ジョブコーチを利用する際の注意点
ジョブコーチは、他の企業と兼任している場合が多いため、職場への理解度の高い適切なジョブコーチを選ぶ必要があります。ジョブコーチと企業との連携体制を確認しておきましょう。
自身とジョブコーチの相性も大切なので、信頼関係を築けそうか、相談しやすい雰囲気かなども確認するとよいでしょう。(参考:障害者職業総合センター「ジョブコーチ支援制度の現状と課題に関する調査研究」)
ジョブコーチの支援事例
この章では、ジョブコーチの支援事例を紹介します。(参考:厚生労働省「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援とは?」、障害者職業総合センター「企業在籍型ジョブコーチ活用好事例集」)
事例①不安を和らげるためにジョブコーチが企業を訪問
本人の不安や緊張を和らげるため、トライアル雇用の初日にジョブコーチが企業を週3日の頻度で訪問。
本人や指導担当者のニーズ、関係構築の状況等を踏まえ、相談しながら、徐々に訪問頻度を減らし、職場への定着を支援してくれます。
事例②休憩時間などを利用した面談
休憩時間などを利用して本人と面談し、現在の体調や不安に感じている事柄等の相談を聞きます。
指導担当者と良好な関係が築けるまで、ジョブコーチが両者を橋渡しするような支援が可能です。
事例③業務の進め方の助言
職場から求められる作業水準などを確認しながら、本人のオーバーペースにならないように業務の進め方や休憩の取り方などについて助言してくれます。
現場でサポートしてもらうことで、個々の障害特性や職場の専門性に合わせた支援が可能です。
まとめ:ジョブコーチを活用して仕事への不安を軽減しましょう
ジョブコーチを活用すれば、障害のある人が抱える職場への悩みを短期間で解決するサポートをしてくれます。
ジョブコーチは、就職前、就職直後から職場定着までのさまざまな段階で、自身に最適な支援を行うため、いち早く職場に馴染み、少しでも長く働きたい人に有効です。
まずはお近くの障害者職業センターに相談し、自身の悩みに合ったジョブコーチを紹介してもらうところから始めるのがオススメです。
ジョブコーチとはなんですか?
ジョブコーチとは、障害のある人が職場にスムーズに適応し、働き続けられるようさまざまな支援を行う人のことです。
詳細については、こちらで解説しています。
ジョブコーチを利用する流れを知りたいです。
監修キズキ代表 安田祐輔
発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2024年10月現在11校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2024年10月現在6校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
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