ADHDのある人に役立つコミュニケーションのコツ 具体的な練習方法を紹介

こんにちは。就労移行支援事業所・キズキビジネスカレッジ(KBC)利用者の干場です。
私は不注意優勢型ADHDの当事者で、これまで仕事や人間関係の場面で数多く悩んできました。現在はキズキビジネスカレッジ(KBC)で心理学やコミュニケーションスキルを学びながら、その経験を整理しています。
このコラムでは、コミュニケーションに悩むADHDのある人に向けて、筆者の経験を踏まえて、ADHDの特徴と困りごと、コミュニケーションのコツやスキルを磨く方法などについて解説します。
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目次
ADHDの特徴と困りごと
この章では、ADHDの特徴と困りごとについて解説します。
特徴①衝動性と多動性

ADHDのある人は、衝動性が強い場合、つい思いつきで行動することがあります。
例えば、うっかり失言したり、計画性のない行動をとったりするのが特徴です。
また、作業の優先順位をつけることも苦手で、すべてのことが大事に思えるため、急な仕事が入ったりすると何を優先すべきかわからず、と混乱することもあります。
特徴②不注意・ケアレスミス
一点に意識が集中しやすく、全体を細部まで見ることが不得意なため、書類作成などで最後の詰めが甘かったり、大事なことを見落としたりすることがあります。
どんなに気をつけていても、「なぜか抜けることがある」「どうしたらいいんだろう」と悩むことも少なくありません。
特徴③整理整頓が苦手

物を置きっぱなしにしたり、片づけることが苦手だったりする人も多いかもしれません。
片づけのノウハウがわからなかったり、自分の手の届く範囲に物を置く癖があったり、片づけの途中で他の所に気がいったりするのも、ADHDのある人の特徴と言えます。
ADHDのある人が陥りやすいコミュニケーションの3つの問題点
この章では、ADHDのある人が陥りやすいコミュニケーションの問題点について解説します。
問題点①相手の話の内容を曖昧に記憶することがある

ADHDのある人はコミュニケーションの中で、相手の話の内容を曖昧に記憶することがあります。
例えば、「○日の○時だった予定が✖日の✖時に変更になったので、その時に○○の書類を提出して、Aさんに△△と伝えてね」という内容を口頭だけで聴いた場合、正確に覚えておくことが難しいかもしれません。
そのため、仕事などの重要な話の場合は、必ずGoogleカレンダーアプリに詳細を書いて、リマインドしてもらうなどの工夫を行うことが大切です。
問題点②うっかり相手を怒らせることがある
衝動性の強い特徴をもっているADHDのある人は、思ったことをそのまま口にして無意識に相手を不快にさせるケースがあります。
例えば、仕事で問題が起きたとき、上司の対応が期待通りでないと「どうしてそうするんですか」と感情的に言うなどといった場面です。
そんな時に役立つのが、アサーティブコミュニケーションのスキルです。これは相手を尊重しつつ、自分の意見も冷静に伝える方法で、怒りをぶつけるよりも話し合いがスムーズに進みます。
アサーティブコミュニケーションについては、こちらでくわしく解説します。
問題点③会話についていけなくなる

ADHDのある人は頭の中で一度にたくさんの情報をストックできない傾向があります。
そのため、一つわからないワードがあるとそれが気になって、話に集中できなくなったり、長い説明などの途中で集中力がなくなって正しく情報を理解できなくなったりすることが少なくありません。
そこで必要になるのが傾聴力、いわゆる聴く力です。聴く力を磨くための方法は、こちらで解説しています。
ADHDのある人が心得たいコミュニケーションのコツ
この章では、ADHDのある人が心得たいコミュニケーションのコツについて解説します。
コツ①音声情報だけに頼らずメモをとる習慣をつける

一般的にADHDのある人はワーキングメモリ(作業記憶力)の機能が弱いといわれています。そのため、複雑な情報を長い間記憶しておくのが少し難しいのが特徴です。
そのため、口頭での連絡があった際には必ずメモをとり何度も確認するか、自信がなければアプリの通知機能を使って思い出すようにすると、約束や連絡内容を忘れたりすることを防げます。
コツ②感情的にならず、アサーティブなコミュニケーションを身につける
アサーティブとは、相手のことも自分のことも大事にした上で、自分の考えや意見を伝えることです。
相手の状況や立場をよく考え、「〇〇さんは今、こう思ってらっしゃるんですね」と一度受け止めることで、相手は安心することができ、あなたの話を受け止めやすくなります。
その上で、「実は、私は今こういう事に困っているので、もし〇〇さんのご都合がよろしければ、こういう風にして頂けると、とてもありがたいです。」と、感情的にならずに伝えることが大切です。
もしも、相手への怒りを感じて、衝動的に何かを言いたくなった場合は、一旦気持ちが落ち着くまで深呼吸をしてみましょう。
キズキビジネスカレッジ(KBC)では、怒りのコントロールの仕方や、アサーティブコミュニケーションの仕方を学ぶこともできます。気になる方は、ぜひ「自己理解講座」を受けてみてください。
アサーティブなコミュニケーション力を高める方法は、こちらで詳しく解説しています。
コツ③大勢で話す時は聞き役に徹する

ADHDのある人は、集中して聞いているつもりでも、興味がなかったり、わからない事や気になる事が出てきたりすると、ほかのことを考えていることが多い傾向があります。
そして、気がつくと会話についていけなくなることが少なくありません。
そういう時は、隣の人に「すみません、今何の話をしてますか?」と、小声で尋ねてみましょう。
また、話を聞いているだけでは集中が続かないなどの場合には気になったことをメモしてみましょう。書くために手を動かすことで脳が活性化されます。
ADHDのある人がコミュニケーションスキルを磨く4つの方法
この章では、ADHDのある人がコミュニケーションスキルを磨く方法について解説します。
方法①伝える力をアップする練習方法

社会人になる時に、「報連相を大切にしなさい」と言われたことはありませんか?
スケジュール管理や一緒に働く人たちとの円滑なコミュニケーションにおいて、報連相は欠かせないキーワードです。
相手に伝える力をアップするための練習方法として、相手が必要としている情報は何かを考えて、わかりやすく伝えるという方法があります。
誤解のないように、わかりやすい言葉や適切な表現を選ぶことを意識することで、コミュニケーションがスムーズになっていきます。
また、話が上手な人の表現の仕方をよく観察して取り入れてみたり、チャットやメールなどで連絡内容をわかりやすく伝えられるよう文章を書く練習をしたりしてみましょう。
インプットとアウトプットの訓練を繰り返し行っていれば、正確にわかりやすく伝える力が自然に身についていきます。
方法②聴く力をアップする練習方法
「この前も説明したよね?」などと相手から注意されたりして困ったことはありませんか?
そんな場合は相手の話に耳を傾けることを意識しながら、以下の4つのポイントに沿って練習してみましょう。
聴く力を高めるポイント4点
- 相手の表情を観察し、頷きや相づちを入れる
- 話の内容に合ったリアクションをする
- 相手の話を自分の言葉で言い換えて繰り返す
- 途中で気になることがあっても、さえぎらず最後まで話を聴く
自分が人と話をしている時、相手が自分の話を受け止めてくれているなと感じるのはどんな時でしょうか?
おそらくあなたの目をしっかりと見て「うん、そうだね」と相づちを打ってくれたり、言ったことを反復して、意見を述べてくれたりするなど、何らかのリアクションがあったのではないかと思います。
そうした態度や仕草をよく思い出し自分の中にも取り入れてみましょう。
方法③チームで考える力をアップする練習方法

仕事や学校などのチームにおいて必要なコミュニケーションスキルは、役割を分担することのほかに、ディスカッションやプロジェクトなどグループワークに参加することで養うことができます。
自身の意見を主張しつつ、他の人達の意見にも耳を傾け、互いに力を合わせて進める中で同じゴールやビジョンを共有しながら動くことを意識できます。
相手の状況を考えてコミュニケーションをするために大切なことは以下の3つです。
- 作業に没頭しすぎず、途中でフィードバックをもらう
- 「今、お話ししてもよろしいですか?」と尋ねてから、本題に入る
- 「なるべく早めに」など曖昧な表現で理解しづらい場合は、日付や時間などを具体的に数値化して伝えてもらう
この3つを実践することで、誤解によるトラブルを避け、協力しあう環境に慣れながらコミュニケーションスキルを磨くことができます。
方法④主張する力をアップする練習方法
ビジネスコミュニケーションの大切なスキルの一つに、アサーション(=アサーティブコミュニケーション)があります。
こちらでもお伝えしたことですが、相手と自分をどちらも大切にして対等な立場で自己主張を行うのが、アサーションです。
自分と異なる意見を否定するのではなく、互いの価値観を尊重しながら的確な言葉で自身の考えを伝えるためのスキルです。アサーションのコツは以下の4つです。(参考:神川町ホーム「アサーションのコツ」https://www.town.kamikawa.saitama.jp/material/files/group/1/kouho2021070405.pdf)
- 自分の気持ちは「私」を主語にする
- 相手の気持ちを聞く
- 「どうして」は後回しにする
- 気持ちを伝え聞いたうえで感謝を伝える
例えば、自分の気持ちは私を主語にする場合は、「私はこうしてもらえると助かります」などの伝え方です。
反対に、乱暴な言葉を使ったコミュニケーションや、曖昧な言い回しはお互いに気持ちよくコミュニケーションができず、新たなトラブルのきっかけとなる可能性があります。
アサーションの具体的なコツについては、こちらで解説しています。
ADHDのある人に役立つアサーションのコツ
この章では、ADHDのある人が実践できるアサーションのコツを解説します。
アサーション(=アサーティブコミュニケーション)の概要については、こちらで解説していますので、合わせてご確認ください。
コツ① 相手を尊重する

決して自分の主張を押し通してはいけません。
相手がどのような考えをもち、どのような感情になるのか、表情や言葉に注意を払い、よく観察し、尊重しましょう。
コツ② 客観的な事実を述べる
「感情的にならない」というのもアサーションの大切なポイントです。
実際に起きていることをあくまで客観的に伝えましょう。
コツ③ 自分の気持ちを明確な言葉にする

「あなたはこう考えているのですね」「私は…」と、私を主語にして、どのような気持ちになったのかを具体的に説明することが大切です。
コツ④ DESC法を活用する
DESC法とは、以下の4つのステップで意見を伝える方法のことです。
- 状況を説明すること(Describe):自身の置かれている状況を説明する
- 感情を表現すること(Express):自分はどうしたいのか、どのような気持ちなのかを伝える
- 提案すること(Suggest):相手にお願いしたい事や、自身がとりたい行動、提案したいこと、問題を解決するためのアイディアを伝える
- 選択肢を提示すること(Choose):相手に提案を断られてしまった場合の返事や代替案を考えておくことで、相手の納得を得やすくなる
コツ⑤ 非言語コミュニケーションにも気を配る

自分の気持ちや相手の気持ちをお互いに理解するためには、言葉だけでなく、表情や態度、声のトーンがあります。
自分が伝える時にも、相手の話を聴く時にもこれらを意識することで、言葉以上に見えてくるものがあります。
コツ⑥「No」と言われることを恐れない
「自分の意見を伝える」という軸を大切にもち、たとえ否定されるようなことがあっても、努めて冷静に別の選択肢を探したり、相手の意見の中でいい部分を取り入れたりしながら柔軟に対応していきましょう。
まとめ:ADHDの特性によるコミュニケーションの悩みは解決できます

ADHDと一口に言っても特性は人それぞれで、コミュニケーションのどこに難しさを感じるかも、一人一人違っていると思います。
そうしたさまざまな特性や心の悩みをもつ人と心を分かち合い、感情を一つ一つ丁寧に紐解きながら、自己理解を深められる講座がキズキビジネスカレッジ(KBC)にはあります。
また「仕事でこんなシーンがあったけどうまく対応できなかった」「こういう場面が苦手だけど、うまく対応するコツはないのかな」などの思いをプラスに転換するための『ビジネスシーン失敗回避術』といった講座や、ゲームを通して利用者さんとの交流を楽しみながら対人スキルを学べる『コミュニケーションGames&Tips』といった講座もあります。
「自分はADHDかもしれない」「診断はあるけれど、これからどう動けばいいか分からない」――そんな人にこそ、気軽にキズキビジネスカレッジ(KBC)の体験講座を試してみてほしいと思います。
一人で悩みを抱え込まず、自分のペースで未来を築く仲間や支援がここにはあります。キズキビジネスカレッジ(KBC)利用者である筆者も、そして支援スタッフも心から願っています。
一人で辛くなったら、いつでもお話ししに来てください。
ADHDのある人が陥りやすいコミュニケーションの問題点を教えてください。
ADHDのある人が心得たいコミュニケーションのコツはありますか?
監修キズキ代表 安田祐輔

発達障害(ASD/ADHD)当事者。特性に関連して、大学新卒時の職場環境に馴染めず、うつ病になり退職、引きこもり生活へ。
その後、不登校などの方のための学習塾「キズキ共育塾」を設立。また、「かつての自分と同じように苦しんでいる人たちの助けになりたい」という思いから、発達障害やうつ病などの方々のための「キズキビジネスカレッジ」を開校。一人ひとりの「適職発見」や「ビジネスキャリア構築」のサポートを行う。
【著書ピックアップ】
『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(2021年12月、翔泳社)』
Amazon
翔泳社公式
【略歴】
2011年 キズキ共育塾開塾(2025年6月現在17校+オンライン校)
2015年 株式会社キズキ設立
2019年 キズキビジネスカレッジ開校(2025年9月現在9校)
【その他著書など(一部)】
『学校に居場所がないと感じる人のための 未来が変わる勉強法(KADOKAWA)』『ちょっとしたことでうまくいく 発達障害の人が上手に勉強するための本(翔泳社)』『暗闇でも走る(講談社)』
日経新聞インタビュー『働けたのは4カ月 発達障害の僕がやり直せた理由』
現代ビジネス執筆記事一覧
【メディア出演(一部)】
2022年 NHK総合「日曜討論」(テーマ:「子ども・若者の声 社会や政治にどう届ける?」/野田聖子こども政策担当大臣などとともに)
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