キズキが実施してきた「少年院での学習支援」が公的に事業化(茨城県牛久市)

2019/11/28

キズキでは、2018年から、茨城県牛久市にある少年院・茨城農芸学院にて、入院者を対象に院内で学習支援事業を提供してきました。この度、寄付や助成金などを原資としてきた学習支援が、牛久市にて少年院の学習支援が公的に事業化されることになりました。2019年度の事業は、8月からキズキが受託して実施しています。

今回の事業内容に触れる前に、キズキの少年院での取組と、少年院での教育支援に関する一般的な内容をお伝えします。

キズキではこれまでも、茨城農芸学院だけでなく、多摩少年院(東京都)、愛光女子学園(東京都)、交野女子学院(大阪府)といった各地の少年院で、様々な団体と協力しながら学習支援事業を提供してきました。

キズキがなぜ少年院での学習支援に取り組むのか。それは、少年院入院者のうちの多くが、困難な学習環境や複雑な家庭環境のもとに育っていることに関連します。

2019年現在、全国に52か所の少年院があり、入院している若者の数は2,600人にのぼります。(参考文献1)。

そして、『平成30年版 犯罪白書』によると、少年院入院者のうち、両親がそろっている家庭で育った人が3割、高校中退を含み学歴が中卒である若者が7割と、一般の家庭と比較して困難な状況の中で育っていることがわかっています。

そのような環境下にある少年たちだからこそ、少年院に在院している間に、規則正しい生活を行い、バランスの取れた食事をとりながら、学習できる時間はとても重要です。

入院中に高卒認定資格を取得し、進学や就職の選択肢を広げ、自分の未来を選択できるようになることで、再犯を防ぎ、出院後の社会生活を円滑に営むことにつながります。

各地の少年院では、教官によって、高卒認定試験に向けた授業や様々な資格取得のためのサポートが提供されています。そうした従来のサポートに加えて、院外の私たちのような存在と交流し、学びをともにすることによって、より効果的な学習につなげることが可能になります。

つまり、キズキが少年院で学習支援を行う理由は、彼らの出院後のスムーズな社会復帰のためには、外部の人間による学習面での支援が欠かせないと考えるからです。

かつて、少年院内での外部機関による(学習)支援は、積極的には行われておりませんでした。しかし、2014年の少年院法改正移行、政府は「社会に開かれ、信頼の輪に支えられる少年院・少年鑑別所」の実現を掲げ、外部との交流を進めています。(参考文献2)

とは言え少年院内での外部機関による学習支援はまだ歴史が浅く、中心となっているのは、公的予算に基づかない、民間寄付等を活動資金にしたNPOの活動であるのが現状です。

少年院にいる間に様々な資格取得を目指す若者も多くいますが、学習状況もつまずくポイントもそれぞれ異なり、学習支援はまだまだ足りておりません。

以上が、キズキの少年院での取組と、少年院での学習支援に関する一般的な内容です。

そうした中、法務省は、少年院外の団体に教育支援を委託する地域再犯防止推進モデル事業を開始しました。本事業は、入院者の社会復帰に資するものとして、とても大きなステップだと考えております。

そして、本事業のモデル対象として牛久市(茨城農芸学院)が選定され、委託先としてキズキが選定されました。本事業にキズキが関われることを、光栄に思っています。

本事業では、毎週1回、キズキが茨城農芸学院に専門性の高いスタッフを派遣して、高卒認定試験に向けた勉強、進学や復学に向けた勉強をサポートしています。

これまでの支援による積み重ねが実を結び、今後はより手厚い支援を幅広く届けることができます。モデル事業として今後のさらなる充実の一助となるべく、また各入院者の将来、ひいては社会全体の将来に資するべく、全力で支援に取り組んでまいります。

一方で、これまで同様に、公的な予算化の至らない支援やビジネスの観点にそぐわない支援につきましては、寄付を原資とする支援へ引き続き注力いたします。これまでご寄付をいただいた方々に改めて厚く御礼申し上げますとともに、今後ともご応援いただければ幸甚の至りです。

キズキでは、今後とも、一度罪を犯した若者に留まらず、様々な背景を持った若者を排除するのではなく社会の中に包摂していくことを目指していきます。

【参考文献】
1:法制審議会-少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第2回会議 統計資料2
2:法務省 矯正局「~社会に開かれ,信頼の輪に支えられる少年院・少年鑑別所を目指して~」

キズキについて

キズキは「何度でもやり直せる社会」をビジョンに、社会的包摂を目指すスタートアップとして、不登校・中退向けの学習教室「キズキ共育塾」、うつや発達障害の方向けの「キズキビジネスカレッジ」、貧困家庭の子ども支援などを行う「公民連携事業」など様々な事業を展開しています。2011年8月に創業し、現在株式会社キズキとNPO法人キズキの二法人体制で運営しています。

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