子どものストレス反応、親と子どもで認識に大きな開き【全文公開】

メイン画像:「子ども×コロナアンケート」より

 新型コロナウイルスが、子どもの心にどんな影響を与えているのか。国立成育医療研究センターが、子どもにアンケートを行なったところ、7割の子どもにストレス反応が出ていたことがわかった。

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 国立成育医療研究センターが、7歳から17歳までの子どもや保護者6800人のアンケート回答を取りまとめた(第2回コロナ×子どもアンケート)。

 調査は今年4月の第1回調査に引き続き、2回目の実施となったが、前回同様、7割以上の子どもにストレス反応が見られた。

 調査を行なった半谷まゆみ医師は、7割を超えたストレス反応について「予想よりも多かった」と話す。

 不登校にくわしい明橋大二心療内科医も、調査結果を受けて「東日本大震災時も同様の調査をしているが、子どもにストレス症状が出た割合は43%だった。震災時よりも多くの子どもに影響が出ている」と語る。

 また、広範囲の子どもにストレス反応が出ていたことと併せて、半谷医師と明橋医師が懸念していたのが強いストレス反応を見せていた子どもたちの回答であった。

 「自分の体を傷つけたり、家族やペットに暴力をふるうことがある」と回答した子どもは9%。「この項目に該当する子はとくに強いストレスがかかっている」と半谷医師は分析しており、自傷や他害傾向は周囲の大人からも理解されづらく、注意が必要だと訴えた。

 明橋医師は、自由記述から、チック、夜泣き、爪噛み、赤ちゃん返りなど典型的なストレス症状が散見されたことを重視。

 アンケートで、保護者にも強いストレスがかかっている結果も出ており、「保護者の心のケアも、子どもと同じくらい喫緊の課題」だと指摘した。

 今年4月に実施された「第1回コロナ×子どもアンケート」(国立成育医療研究センター調査)の調査によれば、子どものストレス反応に気がついた保護者は24%以下。

 一方、子ども自身は7割以上がストレス反応を示しており、子どもと保護者の認識には大きな開きがあった。

 半谷まゆみ医師は、子どもと保護者で質問項目がちがうなど「単純比較はできない」と前置きをしつつも、「子どもがストレスを感じているのに親はそれに気がついていない現状の一部が見てとれる」と指摘した。

 『不登校新聞』では、親に悟られないまま子どもが学校で苦しんできた事例を何度も報道してきた。

 靴に残飯をいれられるなどのいじめを受けていた女性(取材当時20歳)も、周囲からの無理解で傷ついたひとり。彼女は、当時をふり返ってこう語っていた。

 「いじめについて知った親は『そんなのに負けてどうする』と私を叱りました。先生も理解してくれないし、親も理解してくれない。予想していた反応でしたが、私の居場所はどこにもないんだなと思いました。不登校になったのも、リストカットが始まったのも、生きる意味がわからなくなったのも、そのころからです」(2016年4月1日号)。

 SOSやストレス反応が周囲から理解されないと深刻な事態につながりうる一例だ。

 子どものSOSに気がつくためには、どうしたらいいのか。神戸で「フリースクール ForLife」を運営する中林和子さんは「子どもは苦しい気持ちを言葉や行動で示している。

 親も苦しいときだけど、いったん立ち止まって子どもの心に気持ちを傾けてほしい」と話した。(本紙編集長・石井志昂)

(初出:不登校新聞537号(2020年9月1日発行)。掲載内容は初出当時のものであり、法律・制度・データなどは最新ではない場合があります)

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