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不登校の親にとって「ちゃんとさせなきゃ」より「ま、いっか」が大事な理由【全文公開】

ゴールデンウィークや夏休み明けなど、大型連休明けは子どもが不安定になりやすい時期です。そんなとき、親はつい「ちゃんと学校へ行かせなきゃ」と気負ってしまうもの。しかし、大丈夫。もっと気を抜いていいんです、と不登校支援に携わる土橋優平さんは言います。子どもも親御さんも充分がんばっている。まずは自分を許してあげてください。(連載「出張版 お母さんのほけんしつ」第15回)※写真は不登校の子を対象にしたイベントのようす

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 ゴールデンウイークなどの長期休暇後には、やはり学校へ行きたくないと言う子が増えてきます。不登校だっだけれど進学・進級のタイミングで学校に通うようになったという子も、ここで力尽きたように不登校に戻ることも。この時期は、子どもが不安定になりやすいです。あらためて今の時期だからこそ、私たちに何ができるのかを考えたいと思います。

 先日、こんな質問を受けました。「学校だけでなく、フリースクールなど多様な学びの選択肢があることを、もっと世のなかに広めていくためには、私たちは何ができると思いますか」。たくさんのことが頭のなかをめぐりましたが、出た答えはシンプルでした。

 それは「私たち大人が自分自身を許すこと」です。一見、質問に対する答えとしては遠いように感じるかもしれません。私も今こうして活字で見てみるとそう感じています。でも私のなかでは合致したんです。

 これを読んでいる保護者のみなさんは、「どうしたら子どもは学校へ行くようになるのだろう」、「どうしたらこの子が笑顔になれるのだろうか」といったそれぞれの目標を描きながら日々子育てをされていると思います。ゲームをしているようすが目に入れば「せめて30分でも鉛筆を握ってくれたらいいのに」、「ゲームは1日2時間って決めたのにどうして守らないの」。そんな気持ちが沸き上がってきます。「明日は行く」と言っていた子どもが翌朝になっていっさい起きる素振りがないと「昨日約束したのに」とショックを受けます。

 その気持ちが生まれることは自然なことです。親として子どもに期待を持つことはごくごく自然です。でも私はこのイライラやショックの背景には、隠れたパワーワードがあると思っています。それは「ちゃんと」という言葉です。

呪縛のワード

 ちゃんと勉強はしないといけない、ちゃんとルールや約束は守らなければいけない、といった考え方です。この「ちゃんと」は、私たち日本人の心に深く染み込んでいるワードの1つだと思います。そしてこの「ちゃんと」を他人に対して思っている人は、じつは自分自身が「ちゃんと」の呪縛にとらわれているのです。「親としてちゃんとしなきゃ」と、このワードに縛られてしまっているのです。

 このワードには限度がありません。1ミリの失敗も許さず、完璧なゴールしか想像させないのです。「ちゃんと」は親も子も苦しめるきっかけになります。

 ではどうすればよいのか。ここで魔法の言葉を教えます。「ま、いっか」です。「買い忘れたものがあって料理ができなかった……ま、いっか」。「今日は気持ちに余裕がなくて、子どもに声をかけられなかった……ま、いっか」。「今日も子どもを学校へ行かせられなかった……ま、いっか」。

 イライラしたときや、ショックを感じたときにこんなふうに心のなかで唱えてみてください。いいんです、そういうことがあっても。だって、みなさんは毎日がんばっているんですから。子どものために、家族のために、自分の時間や趣味の時間もとらずにがんばっているんですから。たまにいいんです。「ま、いっか」と心のなかで唱えて、自分を許してあげてください。私からのお願いです。


■執筆者/土橋優平(どばし・ゆうへい)

NPO法人キーデザイン代表理事。不登校支援のほか保護者向けLINE相談「お母さんのほけんしつ」を開設中。

(初出:不登校新聞603号(2023年6月1日発行)。掲載内容は初出当時のものであり、法律・制度・データなどは最新ではない場合があります)

【連載】出張版 お母さんのほけんしつ
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