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「すみません」は言わなくていい 子どものことで毎日謝る親御さんに伝えたいこと【全文公開】

 子どもが迷惑をかけてしまったとき「ごめんなさい」より「ありがとう」を使ってみませんか?子どもたちに関わる土橋さんは日々「子どもの失敗のすべてが親の責任ではない。親御さんにはもっと肩の力を抜いてほしい」と感じているそうです。土橋さんが伝える「ごめんなさい」よりも「ありがとう」を使うメリットとは。(連載「出張版 お母さんのほけんしつ」第24回

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 子どもがわがままを言っている、迷惑をかけている。そんなとき、周囲の人に「ごめんなさい」と言っていませんか? でも、子どものことで「ごめんなさい」と言うのは今日から辞めてみませんか?

 すこしやんちゃでゲームが好きな、ある小学生の女の子がいました。あるとき、その子は会うなり「うわ、きっも」、「うえ〜」と私に言いました。でもこのやり取り、じつはいつものことなんです。話しかけてくる彼女はいつも照れくさそうで、しばらく経ってから近くに行くと「おらおら〜」と甘えるように、両手でポコポコ叩いてきます。本当はかまってほしいけど、素直に表現できない。だから相手の気を引くような言葉を発したり、攻撃する素振りを見せる。これは彼女なりの大人へのコミュニケーションなんです。

 でもお母さんは毎回「こら! やめなさい! そんなこと言ったらダメでしょ」と彼女を叱ります。「いいんですよ、これが挨拶ですから」と私が笑いながら伝えても、「すみません」ともうしわけなさそうに謝るばかり。謝るお母さんの姿を見るたび、私はもっと親御さんに肩の力を抜いてほしいと感じます。

 子どもの失敗は、本当にすべて親の責任なのでしょうか。子どもは1人の人間であり、たとえ親子であっても、すべてを管理することはできません。親の見ていないところでまわりに迷惑をかけてしまうことも当然あると思います。別の人格を持ち、別の場所で生活をしている子どものことすべてに責任を持つことは不可能です。だから、いいんです。「子どもの失敗は親の責任だ」とすべて背負わなくても。

 トラブルなどで相手から謝罪を求められることもあると思います。そうした場合、親として謝罪の姿勢を見せることは大切です。でも相手が「大丈夫ですよ」と言っていたら「ごめんなさい」ではなく、ぜひ「ありがとうございます」と伝えてみてください。

 「ごめんなさい」と人に言い続けることは、言っている本人のもうしわけないという気持ちを増幅させます。「子どもの失敗は親の責任」という考えも強くなっていきます。

謝罪より嬉しい「ありがとう」

 世のなかの大抵の「ごめんなさい」は「ありがとう」に変えても、問題ありません。子どもの失敗を詫びるのではなく、相手が受け入れてくれたことに感謝する。そのほうがおたがいに心地よくすごせると思います。すくなくとも私は「迷惑かけてごめんなさい」より「助けてくれてありがとう」のほうが嬉しいです。

 私は、親御さんといっしょに子育てをしていきたいと思っています。もちろん親御さんのそれには敵いません。でも気持ちとしては、おなじ保護者のつもりでいるので、「ごめんなさい」はいらないんです。極端な話「ありがとう」もいりませんね。だっていっしょに子育てをするチームですから。私たちのLINE相談窓口「お母さんのほけんしつ」でも「ごめんなさい」は必要ありません。代わりにぜひ「ありがとう」を使ってください。私たちもみなさんにたくさんの「ありがとう」を伝えさせていただきます。いつも子どものことを一生懸命支えてくださって、ありがとうございます。

■執筆者/土橋優平(どばし・ゆうへい)
NPO法人キーデザイン代表理事。不登校支援のほか保護者向けLINE相談「お母さんのほけんしつ」を開設中。

(初出:不登校新聞612号(2023年10月15日発行)。掲載内容は初出当時のものであり、法律・制度・データなどは最新ではない場合があります)

【連載】出張版 お母さんのほけんしつ
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