ゲームの制限や勉強はどうしていた?不登校の親に聞く「8つの質問」その2【全文公開】

 高2の9月から息子さんが不登校になった、木元香織さん(仮名)。ゲーム時間の制限や家での勉強、学校への欠席連絡などはどのようにされていたのでしょうか。不登校の親の多くが気になっている「8つの質問」をしてみました。(聞き手・茂手木涼岳、編集・棚澤明子)

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――現在22歳の息子さんは、高2の9月から半年間不登校だったとうかがいました。どのような状況だったのですか?

 小学生のころから吹奏楽をがんばっていた息子は、吹奏楽部が有名な県立高校に入学しました。ところが、その部活は勝利至上主義で、部員どうしのマウンティングもひどいし、要するに「ブラック」だったんです。結局、勉強との両立も人間関係も行き詰まって、退部しました。そうしたら、学校そのものに居場所がなくなってしまったんですね。

 そんなある日、「電車に飛び込んじゃおうかと思った」と息子が打ち明けてくれたので、「ちょっと休んだほうがいいよ」と話して、休み始めました。それが高2の9月です。その後10月には学校を辞めること、高3の4月からは公立の定時制高校へ行くことを自分で決めました。

 転校までの半年間で、すこしずつ元気が戻りましたね。転校後は登校できるようになって、現在はアルバイトをしながらプラモデル製作のプロを目指しています。

――ゲームやネット、スマホの使用時間は制限していましたか?

 小学生のころからゲームが好きだったのですが、夫がとても厳しくて、ゲーム機を取り上げて捨てたり、バキッと折って破壊したり……。息子はつらかったでしょうね。私もゲームはあまりさせたくなかったのですが、「不登校の子が元気を取り戻すためには、好きなことをやらせるほうがいい」と本やネットから知識を得て共感したので、制限することをやめました。正確には、制限することをあきらめた、ということかもしれません。

――不登校になって、生活リズムに変化はありましたか?

 昼夜逆転して、午後3時ごろに起きることもありました。ゲームやプラモデルを夜中にやっていたのかもしれません。元気が戻ってきて高校2年の12月ごろからバイトを始めましたが、そこからは生活リズムがととのっていきました。

――おこづかいはどうしていましたか?

 不登校になる前と後で変わらず月額5000円でした。バイトを始めてからは、渡していません。

祖父母の圧力 私が防波堤に

――不登校中、勉強はどのようにしていましたか?

 まったくしていませんでした。私からも「勉強しろ」と言ったことはありません。疲れてしまっているわけだから、本人のしたいようにさせるしかないと思って。祖父母からは「バイトができるくらい元気になったのだから、勉強させなさい」と圧力をかけられることもあったのですが、そこは私が防波堤になりましたね。

――学校を休む際の欠席連絡など、先生とはどのようにつきあっていましたか? 

 担任の先生とのつきあいは、月2回ほど電話がかかってくるので、ようすを知らせる程度でした。ただ、毎朝こちらから学校へ欠席の連絡をするのは苦痛でしたね。途中で「しばらく休みます」と言ってからは、連絡しなかった記憶があります。「何かあったときだけ連絡ください」と学校側から言ってほしかったですね。毎朝電話をするという仕組み自体が、子どもにも親にも寄り添っていないと感じました。

――ふり返って、「こうしておけばよかった」と思うことはありますか?

 不登校になる前、朝にピシピシ叩いて起こしたり、つらくあたってしまったりしたことを後悔しています。自己肯定感が低い子だったのに厳しくしてしまったので、悪影響があったのかなあ、と。

――不登校について誰に相談したのがよかったですか?

 専門家や経験者、自治体の窓口などいろいろありますが、不登校親の会の元理事の方と出会えたことが大きかったです。息子の体調不良の相談をしたときは「あなたが学校へ行ってほしいって思わなければ、息子さんはどこも悪くならないんですよ」と言われて、そういう心持ちでいれば息子を追い詰めなくてすむのか、と納得しましたね。「若い人はものすごいエネルギーを持っているから、かならず動きたくなるときが来ます」という言葉も、息子の力を信じきれなくて揺れていた私を支えてくれました。

気持ちを吐露

 また、SNSでつながっている友人たちに気持ちを吐露できたこともよかったです。たくさんの方に励ましてもらったし、書くことによって自分の心情も息子の状態も客観的に見られるようになりました。そうして私自身も、「息子が笑って生きていること以外に大事なことなんか何もない」と自分の気持ちがはっきりしてからは、揺らぐことが一切なくなりました。

 今では息子を信じきること、そして自分自身がハッピーでいることを心がけています。自分が人生を思い切り楽しんでいる姿を息子に見せて「人生っておもしろいよ、楽しまないなんてもったいないよ」と自信をもって息子に伝えたいです。

――ありがとうございました。(了)

(初出:不登校新聞577号(2022年5月1日発行)。掲載内容は初出当時のものであり、法律・制度・データなどは最新ではない場合があります)

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