追悼・芹沢俊介 若者の「言葉にならない思い」の代弁者

 2023年3月22日、評論家・芹沢俊介さんが亡くなった。享年80歳。芹沢さんは『引きこもるという情熱』、『「存在論的ひきこもり」論』などの著書に見られるように、ひきこもりについて当事者の側から考える思想家でもあった。また本紙論説委員を務め、過去何度も寄稿、また取材をさせていただいた。あらためてご冥福をお祈りするとともに、今回は不登校・ひきこもり経験者・喜久井伸哉さんが書いた追悼文を掲載する(※写真は芹沢俊介さん)。

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 芹沢さんは、若者の「言葉にならない思い」を代弁しました。文芸評論家として活動を始めましたが、90年代以降は、とくに家族や少年犯罪に関する社会時評で論陣を張った方です。2000年前後の著書を回顧すると、当時の日本社会が、いかに若者をめぐる鳴動の激しい時代であったかと思います。

 『子どもたちはなぜ暴力に走るのか』(1998年)にくわしいですが、1997年の一時期にかぎっても、4月に宮崎勤への死刑判決、5月に酒鬼薔薇聖斗事件の発生、8月に永山則夫の死刑執行がありました。若者の犯罪とその報道が過熱し、家族とは何か、教育とはどうあるべきかが、根底から問われていった時代です。家庭内暴力や、ときに「親殺し」にまで至る少年犯罪は、理解不能な精神異常と見る向きが社会にはありました。教育現場に混乱が起き、「しつけ」の厳罰化を訴える声も起きていた。芹沢さんはその渦中にあって、若者の「言葉にならない思い」をとらえていた人です。

大人の「子殺し」

 芹沢さんは、子どもによる「親殺し」の前に、大人たちによる「子殺し」が先んじていると指摘しました。

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