「4月から学校へ行くよ」子どもに言われたときに必要な親の準備とは【全文公開】

「4月から学校へ行くよ」。不登校の子どものなかには今の時期、そんな宣言をする子がいます。親としてはうれしい反面、「本当に行けるのか」、「無理をしているんじゃないか」と悩む方もいます。そもそも、「4月から学校へ行くよ」と言い出す子どもの気持ちはどのようなものなのでしょうか。そして、それを言われたとき、親に必要な心構えと対応は何かについて考えます。

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不登校の子どもにとって、春休み中は、肩の力をすこしだけ抜くことができる時間です。学校が休みのため、昼間に街中を出歩いていても、ふだんよりまわりの目も気になりません。不登校している自分を責めることから解放されるのです。

しかし、不登校の子どもがみな穏やかにすごせているかといえば、そうではありません。3月は卒業・進級や就職など、人が動き出す時期だからです。テレビをつけると、ランドセルやスーツのCMなどが流れ、新たなステージへ踏み出す人たちを応援する雰囲気があふれています。そうしたなか、「1年前と何も変わっていない」、「自分だけ取り残されているよう」などと、不安や焦りを感じる子どももすくなくありません。

子どもの心境 2つのパターン

この時期になると、「4月から学校へ行くよ」と言う子どもがいます。このとき、子どもは何を考えているのでしょうか。「函館圏フリースクールすまいる」代表の庄司証さんは2つのパターンが考えられるといいます。

1つめは、覚悟を持った「行くよ」です。高校進学のために出席や成績が必要になり、再登校を決意するというものです。庄司さんは「新たな学校生活への楽しみや希望ばかりではありません。今を乗り切れば苦痛が終わると信じていればこそ、何とかつむぎだした一言ではないか」と指摘します。

2つめは、「4月までは休むことを許してほしい」という意味の「行くよ」です。子どもは親の気持ちや期待をじゅうぶんすぎるほど感じ取っており、休みたいと言い出すことはとても勇気のいる行動だからです。ただし、学校へ行くことが前提となっている休みである以上、「本当に休めているか、気をつけて見ていく必要がある」と庄司さんは指摘します。

直感を信じ 願いは捨てる

では、「4月から学校へ行くよ」と子どもに言われたとき、親はどうすればよいのでしょうか。

ここで大切なことは、「信じるべきは親の直感、捨てるべきは親の願い」ということです。庄司さんが指摘したように、「4月から学校へ行くよ」という一言の背景には、さまざまな葛藤があります。言ってしまった手前、不安を抱えつつ、始業式までの日にちをカウントダウンしながらすごしている場合もあります。

告げられた親の気持ちとしても、うれしい反面、「本当に行けるのか?」と悩むこともあります。そんなとき、信じてほしいのは親の直感です。「この子は無理しているんじゃないか」、「親を安心させるために言っているんじゃないか」と、わが子を前に芽生えた親の直感を信じたうえで、子どもの一言を受けとめることが重要です。反対に、邪魔になるのが親の願いです。「できれば学校へ行ってほしい」という親の願いが強くなればなるほど、子どもが無理をしていることに気づきにくくなってしまうからです。仮に4月になっても学校へ行けなかった場合、親はすくなからず失望し、その姿を見た子どもはさらに自分を責めてしまうことになります。

親にできることは、期限つきの休みを設けないことです。あわただしい周囲の雰囲気に流されず、きちんと休む環境を整備することで、子どもはおのずとエネルギーを溜めます。そして親が「自ら動き出す力を持っている」と信じてあげることが、子どもにとって、大きな支えになります。(小熊広宣)

(初出:不登校新聞622号(2024年3月15日発行)。掲載内容は初出当時のものであり、法律・制度・データなどは最新ではない場合があります)

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