「ひきこもりだったから」という固定概念。僕が抜け出したきっかけ

 自分の身に起きたネガティブなことも、ポジティブなことも「僕はひきこもりだったから」と、なんでもひきこもり経験につなげて考えてしまう。そんな自身の思考回路のクセを「ひきこもりフィルター」と瀧本裕喜さんは呼んでいるそうです。「ひきこもりフィルター」とは、どんなものなのか。当事者にしかわからない心境を執筆してくれました。

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 僕は、18歳から25歳の7年間ひきこもっていた。自分の部屋から抜け出し、外の世界に出るようになって15年。最近、自分の価値観に関して気づいたことがある。それはどんなことも、ひきこもりと関連づけてしまう「ひきこもりフィルター」が僕のなかにあるということだ。思い返してみると「ひきこもりフィルター」はこれ以上自分が傷つかないよう、ずっと盾の役割をしてくれていたように思う。

面接での経験

 ひきこもりから立ち直ったころ、アルバイトの面接を受けたことがある。7年間ひきこもったことを面接中に打ち明けると面接官は驚いて、しだいに僕と目を合わせなくなった。打ち明けるまでは穏やかに会話が進んでいたので、急に対応が変わったことに僕は激しく動揺した。

 結局、その面接には受からず「ひきこもりだから面接に通らないんだ。社会復帰するには、ひきこもりを隠さないといけないのか」と当時の僕は強い違和感を覚えた。アルバイト面接での経験を思い返すたびに「僕にひきこもりの経験があるから、面接官は目を合わせてくれなくなったのだ」と、僕はつい最近まで思っていた。

 しかし、そんな僕の価値観は変わることになる。それは、記事執筆のため『不登校新聞』のある会議に参加したときのことだった。

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